今日はめいぷるの小さな記憶の物語。

私の故郷はウィンダスでもカザムでもないですにゃ。
生まれ故郷は匠と鉱山の都市バストゥーク。
そのとっても狭い路地の奥にあったおうちが私の生家です。
母親は私が自立できるかできないか、そんなときにサンドリアの知人に私を預けたのです。
そして、それから私はいろいろなことがあって冒険者を始めたのです。
成り立ての頃、私の目標はジュノのガードになって、母親と一緒にジュノに移籍することでした。

でも、右も左も知らない私はジュノに行くことさえ遠い夢だとは思っても居なかったのです。

努力して、知人に助けられつつも、ようやくサンドリア大使館の派遣員としてジュノに来ることができました。
失ったものの大きさを心でかみしめつつも、幸せになろうと努力してここまでこれたのです。

そして、私のジュノでの生活は始まりました。
大使館員としての仕事はもちろん、余暇を利用して仲間たちと冒険をしたり、覚えた魔法で商売を始めたり。
そんなある日、私はとあるミスラに出会ったのです。
「今、仕事中だから邪魔しないで…」
そういいながら、慣れた手つきで街灯の明かりをつけて回るガードのミスラ。
商売の手前、彼女とは毎日顔を合わせていました。


その後ろ姿を見ていて、私はその言葉少なげなミスラに何処か親近感を覚えるようになったのです。
何処がわたしと似ているのだろう。
この人混みあふれる雑踏の中、都市のざわめきにかき消されそうになる私の言葉を拾ってやって来てくれるお客を相手しつつ。
その疑問が頭の隅からきえることはありませんでした。

とある日。
仕事もなく商売もさっぱり手答えが無く、日だけが西に向かって傾いた頃。ジュノの下層からみえる景色を何気なく見つめていたときに疑問はなくなりました。

いつもと同じように。
誰に変えられるわけでもないひの一コマを。
誰かに賞賛されるためでもなく。
私はこの場所、この体で作り上げている。

それは街灯を毎日つけて回る彼女も同じだと。

そこに既視感を抱いていたのだと。
私はその晩、少しだけ暖かい気持ちでベッドに潜ることができました。

次の日、仕事の前に一輪のお花を買いました。
そして彼女が来るのを待ったのです。



そして私は彼女にその花を渡そうとしました。
でも彼女はすこし困った顔をして言ったのです。
「今…、仕事中だから…邪魔しないで…」
それでも同じ種族だからわかります。
彼女の尻尾がうれしそうに揺れるのを。

おわり。

  この物語は8割フィクションでお送りしております。


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