伊藤 里 (いとうさと)
作風概説
完成度が高い。
画面の深さがあり、線がとても強く深い感じがする。余白と影の使い方が絶妙をきわめる。
とんでもない量の色気を叩き出すことができる。
顔や髪の描線すべてが柔らかく正確、服と体の質感も素晴らしく、胸元や鎖骨の色香もとても強い。生気の強さと深さは最高水準。
男の体、動きの鋭さも見事。男の首筋や鼻筋などの表現力がすごい。
表情の豊かさも特筆すべき。照れた表情の、熱が伝わってくるような感情表現力も素晴らしい。
背景も無駄がなく、とても深みがある無垢の木材のような雰囲気。
ちょっとしたデフォルメキャラも可愛らしく、うまく使われている。
話も冒頭部の意外性、とんでもない言葉などから、申し分のない完成度。背景やコマ技術も非常に高く、話に没入させる。
大胆なまでに単純で、テーマがしっかりした話を作ることができる。
代表作
2013「とあるネコかぶり少年の秘密」
ネコの着ぐるみ頭部?をずっとかぶっている夏目くんと、文句を言う風紀委員長の鈴乃ちゃん。
頭をはずさせるために水をかける、という作戦を旭くんに考えてもらったら、バケツで仕返しされた。
そしてなんとなく意識し始めたら、彼が校門で一人の女の子に素顔を見せているのを見てしまう…
2016「初恋スイートオレンジ」
いつも他人優先の凪ちゃん。
ただ、小学校から一緒の見吉くんとは気を使わずに接することができる。
ある日、見吉くんが別の女の子を見つめていることに気づいて、応援するが…
2017「花笑みセンチメンタル」
小さな花屋がわたしの家…手伝ってはいるけれど知識はなく、ある日男の客に「それくらいおぼえておいてください」と言われる。
悔しくて勉強を始め、相手が優等生だと知る。だが、彼も完全無欠ではなく…
2018「君色スノウドーム」
クリスマスを前に彼氏の洋くんにふられた純ちゃん…やけ食いしようとしていたら、クラスメートのトミーくんに声をかけられた。
翌日、お互いに謝って…直後、洋くんが二股していたことを見てしまう。そしてトミーくんは携帯を借り、洋くんに強いことを言ってくれた。
さらに別れ際に抱きしめて…
2018「家政夫さんは甘くない!」
寮で一人暮らしをはじめるみつばちゃん。
でも炊飯器の使い方も知らない。
そこに、管理人から忘れ物を預かったと来てくれた男子に食事を作ってもらい、「わたしの家政夫になってください」と頼んでしまう。
彼は同じ学校の先輩でもあり、学校ではその関係は秘密。
ある日、自分でも何か作って感謝を伝えようとしたみつばちゃんは、雨に濡れて倒れてしまい…
2019〜「千紘くんは、あたし中毒」
頼まれた買い物、ケンカに遭遇した未知ちゃんに、ケンカの一方の男は言った。「ずっとさがしてた
あんたがおれのミューズだ 脱いで」
その未知ちゃんは学校では、尽くしてくれる男子の気持ちに全然気づいていない。
そして学校で、「脱いで」とかました男子に再会。まあ彼はデザイナー志望で、モデルを求めていたという…
今までの実績、現在の地位
史上最年少タイの、まんがスクールシルバー賞デビューで注目を浴びた。
2017年、よみきり総選挙に参加。2018年には前後編も。2019年本誌連載、と今の体制では奇跡的に段階を追って本誌連載に。
個人的な感じ、思い出
凄まじいまでの実力にただただ圧倒された。
だからこそ、どこかでオールタイムベスト級の短篇小説のコミック化に挑んで欲しい。
創作の世界の底知れない深さを、自分の筆で思い知って欲しい。
そしてこれだけの実力から桁外れに成長し、その力を発揮できるような作品を、自分の手で創り出して欲しい。
どうかこの逸材を潰さないでくれ、と祈るような思いだ。
今の「なかよし」で本誌連載に這いあがるのがどれほど困難なことか、それを成し遂げる意志と実力には脱帽。