大艦隊戦闘準備完了
知る限りの作品が一堂に…

「平行同盟連合軍の諸君、わたしが総司令官のエンダー・ウィッギンです」
 彼の口調はごく穏やかであった、かつてバトル・スクールで多くの仲間を理解し、扱ったように、また〈死者の代弁者〉として故人を物語ったときのように。
「多数の宇宙から集った皆、わたしは〈異類皆殺し(ゼノサイド)のエンダー〉として、われらラマン(異人類…相互理解が可能で共存しうる知的存在)全体を守るために、われわれが全力を尽くして交渉しても敵であり続けるそれらと戦うことになりました。
 わたしたちがこの戦いを避けるため、それら…彼女らまたは彼らまたは性なきものたちと、ラマンとして共に生きるために全力を尽くさなかったと思わないでください。多くの人ができることを全て行い、そのために命すら捧げました。しかし、戦いは避けられませんでした。
 わたしはそれらが本当は、わたしが一度滅ぼしたバガーと同じくラマンであって欲しいと心から願っています。しかし、今は迷わず戦います。今われらが生き延びなければ、ラマンとして手を握り合う可能性もないのです。
 皆さん、今度はわたしはシミュレーション、訓練、ゲームとしてではなく、実戦としてあなたたちの命をこうしてゆだねられました。わたしは理解しています、そして進んであなたたちに命令し、この戦いをやりぬき、必ず勝利します」
 その悲しみと、そして明確な決意が全軍の将兵に伝わり、彼らは泣き、そして戦いをより深く決意した。
 エンダーの右にはバガーの窩巣女王がおり、耳元では宝石型の端末が赤い輝きを放っていた。
『すべての艦に子供たちがいます。そしてあなた方人間のいう時空とは無関係にわたしと心を同じくし、全てをあなたに伝えます』
 社会性昆虫に近いバガーは、全員がどんな距離でも瞬時に通信できるアンシブルを生理的に備えており、全員が一つの心を形成している。
「全艦のコンピューターにアンシブルが搭載されているわ」
 女性の声がエンダーにささやきかける。アンシブルの極超光速ネットの中に生れた人格…人類、バガー、ピギーに次ぐ四番目のラマンであるジェインが全艦のコンピューターをいくつかの電脳人格と共に掌握し、エンダーのそばにいる。
 藤堂名誉元帥が深くうなずいた。
「総旗艦、宇宙戦艦ヤマト発進します!エンダー・ウィッギン総司令官収容しあり、艦長古代進!」
「同じく護衛艦隊発進します!」

「白羊宮方面土星基地より、帝国軍行動準備完了。総指揮官ラインハルト皇帝陛下、副官キルヒアイス報告します。援軍としてギャラクティス級三隻、波動エンジン搭載型ストライクフリーダム、インフィニットジャスティス、アークエンゼル到着しています」
「皇帝ともあろう方を一方面司令官として扱うこと、お詫びいたします」 エンダーがラインハルトに丁重に頭を下げる。
「気にすることはないエンダー、我々の時空を含む多元宇宙全体の危機だ。存分に使ってくれ…皆覚悟はいいな」 ラインハルトが不敵に微笑む。
「ラクスは地球で待っていればいいのに…」
「それよりこれ、キラ」 と、ラクスがキラに何かを渡した。
「ラクスとミンメイさんの合同ライブ、最前列チケット…必ず。アスラン、カガリが心配か?」
「アイツは大丈夫だ。それよりお前がまた馬鹿やらないか心配だよ」

「金牛宮方面冥王星基地、惑星連合艦隊総司令ジャスティ=ウエキ=タイラー元帥、援軍としてギャラクシス級ヴェスパシアン、ルビコン着任。マクロス合流完了、ゲッターロボ他ロボット戦隊旗艦に収容、全艦ヴァルキリー改良艦載機配備完了。
副官兼旗艦樺太艦長、マコト=ヤマモト大将報告します」
「ふあ〜あ、おはよヤマモトくん。そんなかたくならないでさ、気楽にいこうよ、き・ら・く・に。ブワ〜ッとね、さあさみなさん、今日も元気に戦争に殺戮にはげみましょう!」と、タイラーがウクレレ片手に鼻をほじっている。
「し、司令!う…」
「ほらほら、そんなしゃっちょこばるからまた胃が悪いみたいだねえ…ドクター!ありゃ、宴会中か…そうそう、漢と漢が意気投合するにはこれが一番!勝ったらみんなでゆっくり飲みたいねえ、このたくさんの美女のお酌で。例のライブも楽しみだね、こりゃ!」
 艦隊中に呆れとなんともいえない安心感が広がった…特に誇り高いアーヴ、男女の機微を理解し得ないソルノイドも、不思議とこのセクハラに不快感を抱かなかった。

「TA-29ヤマモト=ヨーコ、ほか!」
「ちょっと洋子、何が他よ」 まどかがかみつく。
「ああっ、まぶしいっ!目がくらむそのデコが」
「あんたこそ…」
「バカばっか…双子宮方面海王星基地、ナデシコC、エスタナトレーヒおよびTA-2級四隻他戦闘準備完了。ディステニー、レジェンド、デストロイガンダム、ゲッター隊、勇者シリーズ配備完了。デンダリィ隊、バラヤー軍到着、コード調整完了。以上ホシノ=ルリ報告します」
「司令、今回はブラスターもザッパーも遠慮なく使っていいんだよね!ふっふっふ、みてなさいよ〜誰にケンカ売ったか教えてあげるわ〜」 洋子が燃えまくっていた。エンダーは彼女や勇者隊に人殺しをさせてしまう罪悪感に胸を痛めている。
「サラトガ着任しました…なんかうるさい連中ですね」
「アリエール号ほかデンダリィ自由傭兵隊集結完了、マイルズ・ネイスミス報告します!」
「バラヤー軍戦闘準備完了、アラール・ヴォルコシガン。おおネイスミス提督、いつぞやはお世話になりましたな」
「(何で父上と…嬉しいけど)はいアラール閣下。ご子息はお元気でしょうか?」
 二人とも何食わぬ顔で話しているのを、エリ・クインとエレーナ・ボサリ・ジェゼックが必死で笑いをかみ殺している。
「ううっ、またもアラール・ヴォルコシガン閣下とともに闘えるとは…死して悔いなし!全力で戦わせていただきます!」
 カイ・タングのアラール崇拝は相変わらずである。

「巨蟹宮方面木星基地、ラーシュカウ、指揮官スポール」
「なんでこんなよその宇宙の戦いに…」
「ら、ラフィール、ここの門がやられたらどの宇宙も危ないんだよ」
「ジント!援軍は?」
「は、はい、ソロシップ、クイーンエメラルダス、機動惑星メーテル、オナー・ハリントン艦長の麗将級艦十隻・軽戦支援艇母艦三隻」
「わたしは永遠に宇宙をさまようもの、この戦いもまた悠久の歴史の、かすかな波立ちにすぎない…」エメラルダスがつぶやいた。
「わたしの分身がこうして戦うときが来るなんて…長生きはするものじゃないわね、エメラルダス。でもエンダーは、私たちをも〈代弁〉してくれた…
鉄郎…あなたはハーロックと共に戦うのね、少年の日々夢見ていたように。それが夢見たものと違うことは、あなたにはもうわかっていると思うわ…」 巨大な人工機械化惑星の上で一人、メーテルがつぶやく。
「大変な人たちね。でも頼もしいわ」
 オナー・ハリントンが静かに微笑み、肩にしがみつくモリネコの豊かな毛をなでて信頼する部下たちを見回した。
 モリネコの精神感応力が、次々と大艦隊一人一人の豊かな心と熱い闘志を伝えてくる。

「獅子宮方面、信濃級二番艦下総、Gガンダム系とマジンガー系その他スーパーな連中を収容して合流!以下戦艦三百隻、赤色巨星番長カッツ=タイラー!悪ばっかで気に入ったぜ、こいつら酒がうまい!なあハーロック」
 こちらはすっかり大宴会である。
「ハーロック、この戦いは正しいのかい?」
 アルカディア号のブリッジで鉄郎が、戦士の銃を点検している。
「おれたちは自由だ、だからこそミーメを、異類を、我々を受け入れる君と共に戦おう、エンダー。トチローもそういっているよ、トチローとジェインやキャナル、バガーも気が合うようだ」
「コリン・マッキンタイア皇帝、旗艦ダハク2以下小惑星級艦五十隻、配置につきました。ご命令を、エンダー総司令。行きがかり上皇帝に祭り上げられてしまいましたが私など本来将官すら夢の一軍人、遠慮なくこきつかってください」
 月サイズの超巨大戦艦が多数ワープアウトする。
「オーファン・キムターク、ゼラス=メタリオム受領完了。私のような重犯罪者に再び戦艦を預けるとは、君も危険な男だ、カッツ…そしてタイラー」
「カヤマくんが誰より信じた漢だ、舵取りの僕も信じるさ。クヨクヨしないでブワ〜ッといこう!」
 タイラーの言葉。キムタークの美しすぎる顔に、涙が…酒に混じった。

「処女宮方面ソルノイド隊、配備完了」
「あなた方にとっては、男女に分かれ男性中心社会の残滓が多い我々は味方とは考えにくいと思います。その違いも乗り越えてラマンとなってくださったこと、感謝しています」
「それもカーク艦長とエンダー司令の信念と理解あってのこと、喜んで力をお貸しします」
「エンタープライズ着任。不幸な出会いでしたが、ラマンとなるのにお役に立てて光栄です」
「ボイジャー・デファイアント・エンタープライズEほか大型戦艦二十隻着任。総指揮官キャサリン・ジェインウェイ」
 カーク、ピカード、ジェインウェイ…クルーたちが笑顔で覚悟を固めている。

「天蠍宮方面、太陽系帝国艦隊、ペリー・ローダン大執政官、旗艦クレスト5他ギャラクシス級300隻、以下多数。
エンダー、皆、われわれの影と、主に我々の問題であった「それ」と「反それ」のチェスのためにこのような戦いになってしまい、申し訳ない」
「それだけではないですよ、嘆くのも全ては勝利してからです」
「その通り。この次元の地球の皆、モビルスーツと超合金Zの技術公開を感謝する。おかげで使いやすい作業機、戦闘機が大量に配備できた。またロンド=ベルの援軍にも感謝する」
「どの艦隊にとってもあなたのギャラクシス級戦艦は圧倒的に大きな援軍です!技術援助でも感謝するのはわれわれの側ですよ」

「人馬宮方面、金星基地よりニコラス・ユーイング・シーフォート国連事務総長。すみませんローダン閣下、ギャラクシス級戦艦インターソラーをお借りしてしまって」
「エンジェル隊発進しま〜す!」
「こらタクト、しゃきっとしろ!こちらルクシオール、タクト=マイヤーズ提督、副官レクター・クールダラス!」
「レイ、また戦い?もうイヤだ」
「シンジ、また情けないこといってんの?いい、エンダーはあんたより年下の時に全軍を率いたのよ!」
「うるさいアスカ、あんなやつ…人の、まして異星人の気持ちがわかるなんて、うそだよ…」
「Vガンダム改装配備完了、ジュドー・アーシタも無事合流しました」
「問題児ばかり押しつけてすみませんね、シーフォート提督」 ブライトが苦笑した。
「いえブライト艦長、鍛えがいがある連中ばかりです。私はあなたの地球の軍のように甘くはない…ヨール(頭からしっぽまで大英帝国海軍の伝統に染まることを意味するネイビー・オールからに由来する宇宙軍の標語)にきっちり叩きなおしてみせますよ、ご安心ください。もう二度と生徒を死なせて生き残ることはしません…神のご加護を!」

「磨羯宮方面、天王星基地、共和国モン・カラマリ・スター・クルーザー発進しました」
「ソードブレイカー、合流します。すっかりジェインとキャナルが意気投合して大変です」
「ヤン・ウェンリー以下同盟、全軍集結しました」
「今回は味方だな」 と、ラインハルトからの通信。 「帝国相手では負けられない、だろう?」
「あの帝国はあなたとは…」 ヤンが微笑む。
「今度こそ勝負だ、ルーク!剣の腕じゃ負けられないんだ」
「ソロ、うちの家族の問題だ。君まで」
 ルークはケインをほとんど相手にしていない。
「まったくバカだよ!いいか、誰があいつのところにおまえら二人を届けられる?こんなコンピューターの小娘に任せられるか?」
 ソロが怒った表情でルークの肩を叩く。
「クレーンの事故がおきて、大事なあなたのファルコンに傷がついても知りませんよ」 キャナルの怒りの表情に、ケインが震え上がる。
「ウフォ〜オ」
「さあいきましょう、フォースが共にあらんことを」

「宝瓶宮方面、ラアルゴン艦隊戦闘準備完了」
「誇り高いラアルゴンの皆さんに心からのご挨拶を。そして勝利を!」
「智仁勇、栄光と理解を兼ね備える強者よ、感謝する。我々は英雄たちの中でもラアルゴンの名を汚すまい」 ル・バラバ・ドムが静かに顔を挙げ、エンダーに答礼した。
 そこに超遠距離通信。
「キャスバル=シャア=クワトロ、オデュッセウス。現在アンドロメダ銀河が視認できる、五分後には太陽系に到着しラアルゴン艦隊に合流する」
「みんな…ご心配を…ご案内ありがとうございます、ピカード艦長、男主人公さん。ブライト艦長…アムロ、ただいま…戻りました」
 秒速百万光年でかっとばす巨艦の姿とアムロの声に、ラー・カイラムが沸いた。
「帰ってきたぞ、タイラー!キサラの顔を見せてくれ!」
 アムロの傍らの老将が静かにタイラーを見る。その顔は涙に濡れていた。
「ハイフェッツ准将!」マコト・ヤマモトが号泣する。
「あたしがキサラよ…ほんとにもう、バカたちの言うとおりの…」
 中央、エンダーの帷幕にいるキサラをシゲチヨ・ヤマモトが支えようとして蹴り飛ばされた。
「おまえなんかに支えられるほどやわじゃない、とっとと補給計算にもどれ!これからの戦いにこき使ってあげるからね、ハイフェッツおじさん!」
「おうおう、楽しみにしているよ…」ハイフェッツが泣き崩れている。
「ハイフェッツ、アシュラン戦役での貴官の奮戦には私たちラアルゴンも心から敬意を表する。ともに闘えて光栄だ」とドムがハイフェッツに敬礼する。
「帰ってくると信じていたよ。二階級特進にはしてないしポストも用意してある、さあこれで勇気百倍だ!」タイラーの叫びに全艦が唱和する。

「双魚宮方面、ホレイショ=ホーンブロワー戦闘準備完了です」
 豪壮な帆船が宇宙空間で総帆を上げた。
「君も士官候補生の身で、運命的に艦長となることになったんだね、女主人公宙尉」
「はい、シーフォート校長、失礼しました国連事務総長。人数が必要な本艦に、多くの熟練士官と水兵をありがとうございます」
「…勝利を期待する!武運を」
「はい…」
「プレザントヴィル・イーグル(銀河遊撃隊:ハリ・ハリスン)離陸!何か必要なものがあったらどこにでも届けるよ、ファッキンなヤードポンドとメートルの換算さえなければね」
「みんながヤードポンドにあわせろってんだ!ゴッドブレスアメリカ!」
「銀河中心なぐりこみ艦隊並びにバスターマシン合流、編成完了」
「コメット号戦闘準備完了」キャプテン・フューチャーことカーティス・ニュートンの不敵な笑顔。
「銀河パトロール隊中心艦隊、鉄槌百隻ほか、旗艦ドーントレス号、キムボール・キニスン独立レンズマン。さあいこう!」

「全軍準備完了」
 窩巣女王とジェインの声、そして各艦隊指揮官の報告が告げる。
 敵も味方も光点に過ぎない…あの時と同じく。だが、今回は知っている…一つ一つに多くの人命があることを。
 エンダーは一瞬瞑目すると、そのまま自然に口を開いた。
「全艦隊戦闘開始!」

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