明日賀じゅん (あすか じゅん)
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作風概説
やや小さめの真円に近い瞳が印象的で、清潔感がありくっきりした絵。鼻が低いのが特徴だが、はっとするような美しさがある。最近は全体に極薄くかすかに香る色気とコクも出てきた。
ホラーである最新作では生気を殺し、藁人形のように切れ味だけに集中した。浮き出るような目と、かさかさに乾いて荒れた手のような痛みさえ覚える感じ、背景すら簡略化して乾燥感を強めている。
アクションシーンも秀逸で、世界観もとても緻密で深く、感情描写も抜群。世界全体を小道具として自在に使う力がある。
題材は唐突で大胆だが、描写そのものは淡々としている。わずかに泥臭い印象があるが、表現力は豊かで感動させる力がある。
ギャグ用の小さいアイテムも細かくちりばめているし、デビュー作での剣道の防具など小物の描写も一応しっかりしている。乱暴にものが飛び交うギャグシーンが多く、見ていて楽しい。
代表作
2003「恋する宇宙人」
平凡でフツーの中学生、芙実ちゃんには秘密があった。何と彼女と両親は、惑星アルゴンからやってきたポノポノ星人なのだ!本当の姿はもろにタコ形宇宙人…しかも、最近異変が出てきたので故郷の惑星に帰ることに。
剣道部仲間の里くんやあやちゃんと別れるのも嫌だし、あたりまえの生活がこんな突然終わるなんて…さらに里くんに触れられたところが痛い。ポノポノ星人は塩分に弱く、汗に反応した…そう、涙さえ流せないのだから中途半端に人間のふりを続けるのは危険なのだ。
最後に一日学校で過ごそう、と学校に行ったら突然里くんに告白されたが遠距離恋愛どころではないし、宇宙人の姿に戻ってしまった。そしてあやに「二度と会えなくなるってわかってる人とさ…いまさら両思いになってもしょうがないよね」と言うと「居間自分がどうしたいかを考えたほうがいいんじゃないかな」と優しく包んでくれた。
そして出発、でも…幼い日の出合いを思い出し、体が崩れていくのに学校に飛んでいった!
使い古されているようで突拍子もない印象を与える設定から、非常に丁寧に心情を積み上げていったデビュー作。
2003「さるっち」
元気を通り越してサル、女らしいところなどかけらもない猿渡あい、通称さるっち。文化祭のファッションショーで、サルの着ぐるみで呼び込みをする事になっている。
だが、美形の転校生、碧くんがきたことで突然これまでのサルが恥ずかしくなる。
そんなある日、彼女を別のクラスが化粧の実験台にしてくれて信じられないほどきれいになったのだが、なぜか評判はいまいち。それで笑われたのが情けなくて、碧くんがモデルになってと誘ったときも同情はいらないと断ってしまう。
これが自分、と割り切ってサルの着ぐるみで呼び込みを頑張って、でもなんとなく落ちこんでいる…そんな時、碧くんがもう一度誘ってくれた…ギャグ絵とファッションショーでの美しさのギャップ、内面を深く表現する美しさで度肝を抜いた。
2004「シューティング☆スター」
素直になろう、と決意してもまず「出目金」と彼の一言、ケンカが始まってしまう…どうしようもないケンカ友達のむつみちゃんと紺野くん。もう小三のときの出会いからそうだった。
昔、それが両思いのように思えて天体観測のときに告白しようとラブレターを書いたのだが、その手紙を落として探し回っているうちに、結果的に一緒に流れ星を見る約束を破ってしまった…そのまま一歩も進めない。
そして今、突然映画に誘われて気合を入れておしゃれしたのだが、不自然だと思ってまた普通の服にして、結局遅刻してしまって彼はもういなかった…そして、「なに?おまえマジでいったの?」「バーカ!いってないって!」と、冗談に紛らわせてしまった。
もういやだ、と思っている中突然彼の転校を知り…すれ違いが妙にリアルで胸が痛くなる佳作。
2004「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」
ディズニーによる同名映画の単行本書き下ろし漫画化。
2006〜7「小さな妖精プティの日記」単行本発売中。
ディズニー・フェアリーズより。
ネバーランドにある妖精の谷には妖精たちが住む。
一番小さくドジで不器用なプティーも、もうすぐ一人前の妖精になる日がやってくる。そのときには自分が何の才能を選ぶか考えなければならないけれど…それより月の宴が楽しみ!
でも小さすぎるプティーは足手まといで外されてしまい、とうとう妖精の谷を出て行ってしまう。
そこで憧れのティンカー・ベルと出会って励まされた帰り道、洪水を見て何とか止めようと上流で堤防を作るが、力尽きて…
2007「リトルレボリューション」
イケてる中学一年生をめざしている藤原良ちゃん、でもくせ毛だし、何より皆にいろいろチェックされるのがなんだか辛い。
難関私立のこの学校に入ったのは大好きな高校一年の幼馴染、春本卓二くんがいたから。
でも抜け駆け禁止とかいろいろうるさい…ある日、春兄の友達とケンカして知り合ってしまい…
女子の言葉にならない圧力と、それに負けないまっすぐさをしっかり描いた力作。
2009〜「ナイトメアバスター」
授業中、恐ろしい何かの長い髪に首を巻かれる夢に目覚めた倉本怜夢(レム)ちゃん…そのときから、結構多くの人の頭に暗い影がさしているのが見えるように。
しかもの特濃のやつが友達の慧ちゃんに!その夜から、彼女とともにおぞましい魔女に追われる夢を毎夜見るように…翌朝見た彼女の首には締める指のように闇がまとわり、その首にも深い傷が見える…
突然その悪夢に見知らぬ人が出てきて、その魔女と戦い始める。翌朝、その戦士そっくりの男子生徒と出会い、「夢入り」をしていると知らされる…
かなり力のある本格アクションホラー。
今までの実績、現在の地位
かなり登場頻度が高く、ついに別冊付録だが本誌にも登場した。
映画の漫画化だが単行本も出る。ディズニーとの縁が深い?
Chu-Girlの創刊号にも登場するなど、やや大人っぽい方向で活躍、増刊シリーズも得た。
個人的な感じ、思い出
デビュー作の始まり方には驚いたが、読み進むうちに丁寧に描かれる心情と温かい言葉に打たれた。
「さるっち」はファッションショーのシーンのギャップに驚かされる。
絵の急成長も期待以上。こういうタイプの新人が化けると本当にすごい。
増刊のシリーズは非常に嬉しく、内容もすばらしい。これからますます楽しみ。