作風概説
全体がとても柔らかい印象で、ぬくもりにあふれている。ガラス質の優しい、ふわふわした極細の糸がきらめくような輝きがある。最近はそれにとても強い光の力が加わり、元気が伝わってくる。またふわふわと、硬質でリアルなタッチを使い分けることもできる。
カラーも不思議と印象が強い。
手足が細く、簡潔で無駄のない素直な笑顔が心地いい。表情も豊かで光の使い方がうまい。強い色気も使い分けられる。
背景はしっかりしているし、迫力で見せる力もある。
ギャグも結構多彩で芸が細かい。
組み立てがおそろしくうまく、引っかけてひっくり返す大技もある。
ストーリーの軸がしっかりしており、安易に流れない強さがある。
部活での自信の変化など心の動きを丁寧にたどり、本人の成長を大切に描くし男子の側の心の動きもきちんと描写されている。
リズムがあり、会話のユーモアもいいし画面も見せる。
代表作
2006「恋色センチメンタル」
告白しよう、としたらが転校すると…もう告白なんかしない、と意地を張ってしまって動けない。
ハムコ(公子)、エビと呼び合うきっかけは同じ班になっていきなりハムコ呼ばわりされてケンカになり、なんだか気が合ったから。そのことを思い出し、なぜ初めからハムコと呼んだのか、と聞く彼に、食べ物どうしだから?と逃げてしまう。
そして最後の日、彼が告白されるのを目撃して邪魔してしまい、「告白なんて意味ない」とまで言ってしまって…
切ない思いを丁寧につづったデビュー作らしい作品。
2007「ぼくらの恋のうまれかた」
4月1日エイプリルフール、罰ゲームで加奈ちゃんが偶然その場にいた男子に告白したら瞬時にOK!彼は訂正する暇も与えず、話を聞かず強引に引っ張って…
部活での悩みという低層に流れるもう一つの物語の処理が見事。
2007「そらいろ応援歌」
くじで応援団員になってしまった小花ゆきちゃんはものすごく気も声も小さい。
でも明るい応援団長のすごい声と、それを支える頑張りを見て、うまく励ましてもらって熱心に練習するようになり、少しずつ自信がついてきた。
そんなとき、団長が恋人とケンカしているのを見た。彼女は海外留学しており、また長期間留学するので別れ話をもちかけてきたのだ。
そして応援団としての本番、何も言えずにいる団長を見て…
非常に強さを感じさせる、熱く青春の輝きを爆発させた最高傑作。
2008「ぼくらに咲く花」
中学一年の春、誰も知る人がいない教室。ふと見上げた赤坂鈴ちゃんの目にとても可愛い女の子、泉わかばちゃんが映った。一目で互いに友だちになりたい、と強く思った二人、直後ぶつかった男の子、森田智春の三人で自然に過ごすようになる。
ある日、古い塀に囲まれた使われていないらしい花園を見つけた三人は、三人でそこを花園にもどすと決める。
中学二年の春、森田くんのことを好きだと気づいた鈴ちゃんはわかばちゃんに応援して、と約束する。
そしてその秋、森田くんがわかばちゃんに告白したのを聞いてしまい、許すことができず三人バラバラに…
強い思いをかなりの時間の流れに丁寧に乗せて描いた、60ページセンターカラーの大作。
2009〜「魔術師にくちづけを」
古びた旧校舎、最上階の一番奥の部屋。呪いや魔法の薬をつくったり、願いをかなえてくれるという魔術師がいる…魔術師には、対価として自分の「大切なもの」をささげなければならない…
その魔術師は、一冊の本を開けるための鍵として人間の「大切なもの」が必要なのだ、という。
好きな幼馴染の男子に近づく女子のことを口にし、思いをあきらめる薬を求めた依頼人のかれんちゃんに魔術師は、ぬいぐるみや生写真ではなく、すずらんの花が封じられたペンダントを求める。
彼女はそれを拒み、放り出されそうになって抵抗した結果魔術師の部屋を壊してしまい、代償として働くことに。
意外性と細かな心理描写が光る期待の新連載!
2009「流星ドロップ」
星に夢中で恋がわからない紗恵ちゃんは、最近恋の話しばかりしている友達とうまく話題が共有できない。
そんなとき、星空を見ていて転んで男の子とぶつかった。彼の「星をね
つかまえるとねがいがかなうんだ」という言葉、それに不思議な気持ちを抱いた…また突然、流れ星に手を伸ばした彼がバランスを崩し、キスしてしまう…
その彼は翌日転入生としてやってきて、昨日キスしたことまで言ってしまう。彼はストレートに好きと言ってくるのだが、紗恵ちゃんは気持ちが混乱して動けない。
そのとき彼がプラネタリウムを見せてくれて…実は彼は…
2012〜13「キミが好きとかありえない」全三巻。
恋に恋する小町かなでちゃん。特に「はちみつベイベ」というマンガに憧れてるけど、友達はとことんリアリティのないそれをギャグマンガ扱いしてる。
恋には憧れるけど、男の子と会話自体ができないのは…そんな時、転校生が。彼、宮原日向くんはものすごい美形で運動神経抜群、女子の憧れの的に。
そして落ちたマンガを拾ってくれた宮原くんに、これが恋?
必死でラブレターを書いたりして、でもそこを美形な女の子たちに馬鹿にされたりしたけど、飛んだラブレターを拾った宮原くんは…逆に好きだ、と言ってくれた。
でも幸せな彼女に宮原くんが言った一言。「コレ(はちみつベイベ)かいてるのオレ」それどころか、彼女を尾行していろいろ写真集めたりまでしてる、変態!?
超王道から一転した爆裂作。
2014「死ぬほど好きってダメですか?」
渚下先生が大好きな星野ななみちゃんが、いきなり車にはねられた。
気がついたときには幽霊?これはチャンスとばかりにキスを狙いまくるが…
2014「呪われさん家のお嫁さま」
16歳になったら婚約者と結婚する、と言い聞かされて育った東雲杏ちゃんが、ついに(特別なイベントなしに普通の見合いみたいに)婚約者と会った。
その婚約の理由は、しっと深い女神の怒りを買った家系の呪いを解くため。
そしてその婚約者はアイドルだった…
拒絶する彼だが、拒絶すると呪いがかかるし、文字が浮かび上がる帳面の通りにして認められなければ死ぬとか…
2014〜15「2.5次元彼氏」
友だちが恋話をしていても乙女ゲームに浸ってる恋乃つむぎちゃん。
恋?いやトッキー(土方の影武者)が現実に出てきたら…そんなことを言っていたら、おっさんにからまれたときに、剣道着姿の美形が助けてくれた…
そして父親の仕事で、(コミケやアニメ目当てで)都心に残るため父親の友人の家に引っ越すことになったが、そこには…
トッキーとしか思えない美形はもちろん三次元の現実の人間で、しかもオタクアレルギー。
今までの実績、現在の地位
デビューしてから割と登場御頻度が高く、増刊だがカラーも得た。
2008年春センターカラーの60P、2009年増刊シリーズ、本誌読みきり登場とますます大活躍。
2012年、やっと本誌連載。
個人的な感じ、思い出
とても肌が合う印象。デビュー後第一作も想像以上に面白かった。
これからも丁寧に編み上げたいい作品を期待している。
かなり重いテーマの作品でも、この雰囲気なら嫌な感じを中和しつつじっくり染みこむように味わうことができるのでは?
「ぼくらに咲く花」の、化けたという衝撃は忘れられないものになりそう。
できるだけ早く、せっかくの力をもっと大きく花開かせてほしい。郷愁を誘うような、ちょっと不思議な話や幼児・動物を主にリアルに描く話も楽しそう。
やっと本誌連載、でももっともっと前でもよかった。それほど早くから実力はずば抜けている。