秋元奈美(あきもと なみ)
作風概説
傑作「ミラクル☆ガールズ」の作者で、現在に至るもトップレギュラーの座を堅持している。
全体に、絵もストーリーも豚バラを油で揚げたようにとても脂っこい。
華麗で目を引く美しい絵。ブリリアントカットのダイヤモンドや水面に照り返す日光のような華やかさがある。昔は絹を思わせる柔らかさだったが、最近は緞子のような暑苦しいまでの装飾。特にラブシーンに長け、「半開きの口元」と密着している男女の表情の色気は絶品。感情表現力も高い。ピンクハウス好きでもあり、花やファッションなど、ページ全体を一つのキャンバスにした華麗さと舞台仕立ての凝り方はすばらしい。カラーページの華麗さも素晴らいしスポーツやアクションの描写、ギャグ顔も安定している。
最近は表現の色香がとても強い。
エロがかなり強く、特に彼氏がいる主人公に鬼畜に迫ってきて、それから非常に迷惑な傍観者になる超絶美形がヒーローを食うほどのエネルギーを出す。
話の展開は基本的にスタンダードだがつぼを外さない。
B級映画のノリで大袈裟でスリリングな状況を作り出すのもうまい。シチュエーションで好きな人に誤解され、どうしたらいいのとパニックになる展開がとてもうまい。
また大長編をしっかり仕上げる力には定評がある。キャラクターの人間的魅力や葛藤なども非常に深く描く。
ギャグも十分面白い。特に「P なつ通り」で、テレビで主人公の弟(アイドル)が受験の話題で「源氏物語」の作者を聞かれ、満面の笑顔で「光源氏!!」とぶちかまし「そのまましばらくおまちください―TBCテレビ―」はいまだに思い出しては笑える。「うるきゅー」のホモギャグも切れるし、かなり自虐的におばさんを強調した自画像キャラも楽しい。
色気たっぷりの男の子や意地悪な女の子の造形、よく出てくるおやじもとても魅力的。
代表作紹介
90〜94「ミラクル☆ガールズ」単行本全九巻。アニメにもなった超大人気作品。
ショートヘアでスポーツ万能の松永ともみ、ロングヘアで天才的頭脳を持つみかげの双子超能力姉妹が恋に冒険に大活躍。二人の間にはテレパシーが通い合い、手をつなげばテレポートもできるが、それはないしょ・・・。みかげのピンクハウスファッションも注目!
第一部はみかげがともみに泣きつき、体育祭で恥をかきたくないから、学校を入れ替わって!と頼むことから始まる。中学校時代はみかげは名門の共学校、ともみは運動神経で入った女子校に通っていた。みかげの学校に行ったともみは、みかげが強く嫌っているみかげの同級生、野田に一目ぼれする。入れ替わり自体は順調、と思ったら細かなミスをみかげの担任、影浦先生に見咎められ、少しずつ怪しまれて、ついにはテレポートの瞬間もビデオに撮られてしまった。雰囲気の違いを怪しまれた野田と、みかげが恋する倉茂先輩に結局真相を告白、そして影浦のしくんだ事故から野田と倉茂先輩に超能力のこともばれたが、二人は秘密保持を誓ってくれた。だが、影浦の脅迫が・・・。
第二部は改心した影浦先生の招きで、ともみとみかげに野田と倉茂先輩もいっしょに、海辺の別荘に行った時に始まる。野田がみかげの作った変な薬を飲んでしまい、遠くの豪華な別荘に住む謎の兄妹の執事に助けられる。翌日、その妹が溺れた時に野田が念力で海を断ち割って助け出した!その薬、頭のよくなる薬のはずが超能力者になる薬を追って、なぞめいた上述の兄のほうが転校してきて。実は彼も強力な超能力者!そして超能力集団の陰謀が。
第三部はみかげと、イギリスに留学を決めた倉茂先輩の恋を中心に、伝説の王国ディアマスとロンドンをめぐってもう一組の双子の王女のお家騒動を華麗に描き出す。
1997「スノードロップ」下の単行本に収録。
高校入試の下見で、彩菜が雪の中見つけた小さな白い花とそれを一心に描くあの人。その絵をドジで傷めてしまい、お詫びとして彼;水城の家、花屋でバイトをする事に。水城の妹、千花にしごかれ、励まされながら水城の事を知っていくにつれ思いは募る。
でも、水城の父の事故をきっかけに心がすれ違い、店から離れてあの白い花、スノードロップで激励する。そして見事芸大に合格した水城を訪ねた彩菜の目に映ったのは!!
1997〜98「ミル・フルール」単行本全三巻。
上にも登場し、それより少し成長して最近恋にも目覚めた花大好き少女、千花の花と恋の可愛い青春。
突然花を買いにきて、その翌日秘密の庭に引っ越してきたむかつく転校生、朝倉はその庭を見せてくれた思い出の人に酷似している。花の描写の美しさと男子キャラクターの華麗なまでのかっこよさが光る。
1999〜2004「うるきゅー」単行本第全九巻。
徹底的に男運が悪くていつも同じ人を好きになり、男が逃げてしまうため彼なしの幼なじみ、運動神経抜群で大食いの元気女、あみとスタイルと成績が図抜けているロマンチックな色黒美人、のあ。たまたま出会った最高の男子二人組、多聞とトモヒロに急接近するけど、彼らは恋愛をゲーム扱いする最低男だった。それでも好きだから振り向かせる、と攻め続けるあみと、なにも知らないのあ。
そして、多聞&トモヒロの元彼女で極悪非道なお嬢様、ミカも現れ、多聞を再び誘惑し、学園祭などであみ&のあを攻撃し始める。また昔あみ&のあが追いまわした元塾講師のチャッキーこと宮村博之が新任教師として着任、色々と協力したりかき回したりしてくれる。
でも、恋はどちらかと言うとだしで、本当は友情に素直になれない二人。
ついにあみの思いが通じ、多聞とラブラブカップルに…反面、のあはトモヒロの冷たさに自信を無くし、別れを告げてあみを見守る。宮村先生の弟(かなり濃ゆいキャラ)、伸之がのあに迫ってくるけどどうしてもその気になれない。そしてラブラブのはずのあみと多聞も、次々と妙で素敵な女や男が現れて…
色気の強い表現を前面に出し、華麗&過激に「今時ラブ」の理想像を描く人気連載。危ないほうに行くか行かないかぎりぎりの綱渡りを織り交ぜ、誰にも止められない勢いでハイテンションに突っ走っている。色気の強い表現を前面に出し、危ないほうに行くか行かないかぎりぎりの綱渡りを織り交ぜながらハイテンションに突っ走る人気連載。
2004〜5「プリ☆ハニ」
重病に苦しみ、十六歳なのにまだ中学生のみきなちゃんは、十八歳になったばかりの恋人、鉄人くんと両親の反対を押し切って結婚。直後、病気はほぼ回復する。
それで結婚は取り消して共に海外にいこうと父親は言うが、あくまで結婚生活を続けるとH禁止、学校にも結婚は秘密を条件に鉄人くんの家に住み、同じ学校に通うことに。
しかしめちゃくちゃもてもての鉄人くんと、交際も明かせない状態は辛くて次々と変な男女が関わってきて…エッチぎりぎりシチュエーションの連発で話題の過激連載。
これまでの経歴、現在の地位
かつて「ミラクル☆ガールズ」がアニメ化される人気を呼んでいた。「美少女戦士セーラームーン」と並んで、一年以上巻頭カラーを独占していた時期もある。
一時「なかよし」から離れていた(近年もデザート系雑誌に時々描いており、単行本も出ている)がレギュラーに復帰、かなりの期間連載を続けてからより大人向けの他誌へ。
次々とベテラン作家が連載から引いていく中見事に時代に順応してきた。現代的な、セックスすれすれの過激な言動、派手なファッションやとことん前向きで破天荒なキャラクターも、「なかよし」に新しい時代を切り開いたといえよう。
考えてみると「対照的な二人の女子」というのは「ミラクル☆ガールズ」とかぶっていないか、と不安だったが、見事に乗り越えて誰も追随できない境地を開いている。
個人的感慨
なかよしを初めて読んだ1991年9月号が「ミラクル☆ガールズ」の第二部の始まりで、その華麗さと可愛らしさには圧倒された。その後の展開も実に面白かった。
その後の作品(特に読み切り)も素晴らしく、純粋な感動や強烈な刺激を与えてくれる。
アニメの「ミラクル☆ガールズ」があまりうまくいかなかったのは残念。また次のアニメがあっても面白いと思う。
カラーも安定度が高く美しい絵が多いので、ぜひ画集を出して欲しい作家の一人だ。また今の少女マンガとは多少ずれるが、外国を舞台にした大河ドラマもやって欲しい。
現在の連載はあまりにもセックス要素が強すぎる印象だが、それが時代というものなのか…平行して「デザート」などでも描いている分、視野が広いのだろう。
ただ、他誌でだがトップアダルトビデオ男優の自伝をコミック化したのはさすがに引いた。