安藤なつみ(あんどう なつみ)

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作風概説

 能力的には最高。ど真ん中のストレートで感動を与える力がある。
 水晶のように透き通った画面と的確で強い線の絵がとても見やすく、絵の美しさは現在少女誌最高。特に動きの中ではっとするような美しさがある。全身での感情描写がやや派手で、明るく自然な華のある雰囲気。インパクトの強いシーンも巧みに描く。
 ただし残念ながら弓道の経験者チェックはかなり減点が多い…

 ギャグもかなり弾けている。中でも明るくおちゃめな大人の女性がめちゃくちゃ楽しい。「十二宮でつかまえて」のひろりんの女装、各星霊のキャラクターもうけた。


代表作

1996「時を経ても変わらないもの」
中学の卒業式、柿本くんに告白しようとしてからかわれ、男女呼ばわりされた里夏は絶対きれいになってやる、と一念発起してきれいになった。塾で再開した柿本くんに復讐として接近するが、彼の前ではドジばかり。結局二人とも、中身は全然変わっていない。そして想いがよみがえるけど、またあの悪夢が。

1996〜97「貯めてみせまショウ!」るんるん連載、単行本なし。
 文学少女で宮沢賢治全集がほしいうららちゃんは俳優志望だが反対されていて自力で養成学校の入学金を稼ぎたい、本当はクールだけど演技でオジサン殺しになれる美少年、時田と怪力お嬢様で離婚した母に会いに行く旅費が必要なまりあとバイトで出会い、3人で協力して合計¥128360の貯金を始める。
 とても明るく、子供なりに一生懸命な力が伝わってきて、同時に大人の世界にも少し触れられる佳作。

1998「ツイてるね聖ちゃん」単行本全一巻。
霊感が強い聖ちゃんが、ある日出会ったおとら狐、銀。彼は聖を妖怪から守って婚約を主張する。
 小さい頃、こっくりさんで呼び出した銀は約束を果たすためやってきたのだった。反発していた聖だが、何度も守られるうちに、人間らしくなっていく銀に少しずつ心を開いていく。

1999「スマイルでいこう」単行本全二巻。
ミス・ユニバースをめざす美人で優等生、努力家だけど家は決して豊かじゃないラーメン屋の笑。ある日ひょんな事で弱みを握られた転校生、ひかるにある男を誘惑しろと頼まれたらそれは親代わりの兄、優。
 優とひかるの母、美人女優の幸田真理子(某有名声優との名前の一致は偶然とか)の仲を割こうとするひかるに振り回される笑だが、次第にひかるも心を開いてきて。
 とても楽しく、そして力技で感動させてくれた、久しぶりに少女マンガらしさを存分に味わわせてくれた傑作。

2000〜01「マリアっぽいの!」単行本全二巻
 猫をかばってトラックにはねられ、奇跡的に助かった「奇跡の少女」ひなたちゃん。彼女が学校に復帰した日、チャペルの懺悔に向かう人波に押し流されて、そこで出会ったのが神父の卵で学長の息子、椎名創くん。
 その夜、寮で火事があり、追いつめられて聖母マリアに助けを求めるひなたちゃんの前に、本当に聖母マリアが現れた。そしてひなたは本当は事故で死んでおり、手違いで生きているだけと告げられ、生きる条件としてマリアの代理として子羊たちを救うように、と力を秘めたロザリオを与えられる。目撃した創くんも協力してくれる事になって・・・。悲しく罪深い人間を許していく姿に感動する、まっすぐで熱い生命と愛の賛歌。

2001〜02「十二宮でつかまえて」単行本全四巻。
 星沢りりちゃんには学生だけでなく、二つの別の顔がある。失踪中の母から引き継いでいる占星術師、「マドモアゼル・りり」と名探偵スピカ。代々伝わる指輪の力で関係者の守護星霊を呼び出し、その暗示を活かして事件を解決してきた。
 学校での自殺事件が起きた朝、幼なじみでアメリカで飛び級して犯罪心理学を学んできた転校生、ひろりんこと笈川広海と少女マンガな再会をして……
 最近はそれほど陰惨ではなく、ラブコメディの要素が強いが最終的には家族に関わる深い話に。
 抜群のスタイルを誇るりりちゃんの色々なファッション(変装)や蹴りの脚線美、ちっちゃくて個性豊かな星霊たちも楽しみ。

2003〜04年「ワイルドだもんv」全三巻。
 ちのちのこと千野ちゃんの、冒険家で小説家のパパのお土産は秘境の島で育った野生児、ヒョウくん!突拍子もない行動をとる彼に引っ掻き回されるちのちのだけど、美形でカッコイイところもあり、純粋すぎて吹っ飛んでいる彼の行動に……ハチャメチャでありつつ正統派、とにかくいちゃいちゃいちゃいちゃが強烈だった。

2004〜8年「キッチンのお姫さま」原作:小林美雪 全10巻。
 2006年講談社漫画賞受賞。
 孤児になってすぐ、命を助け、おいしいものを食べる喜びを教えてくれた王子様…彼が置いて行った銀のスプーンの紋章と同じ学校、星花学園に入学した風見七虹香(ナジカ)ちゃん。 
 ものすごい設備のマンモス校に驚き、そして…素敵な男の子と出会い、そして彼にぐちゃぐちゃな実習で作ったプリンを渡そうとする女の子に同情して、なんとなく調理室に溶け込んでしまった。
 細かな技術も含めた小林節、キャンディ時代を思い出させる、しかも単なる意地悪役にとどまらず深く描きこまれる意地悪役の迫力など懐かしく新鮮な味のレシピつきスイート連載。

2009〜12年「ARISA」単行本全12巻。
 両親の離婚で引き離された双子の姉妹。
 上原つばさ、 ケーキ屋さんめぐりが趣味のかわいい女の子のはずだったが人一倍の正義感と戦闘力からついたあだなが「東中の鬼姫」…
 そして久々に会うことになった、ありさ…久々に二人で暮らし、一日だけつばさがありさに扮して彼女の学校へ(つばさの学校は休み)。たくさんの女友達と素敵な彼氏がいる女らしい委員長。
 そしてその楽しい一日を語り、彼女宛だった手紙を渡そうとした、そのとき…ありさが突然窓から飛び降りた。
 あまりにショッキングな始まりの、緊迫感あふれるサスペンス。

2012〜「ワルツのお時間」
 じいさんの代から続いているダンススクール。その看板息子、たんご…Jr期待の星である勇誠・菫コンビ、ずいぶん差はついているが…
 でも、たんごはなぜか、競技ダンスは踊らない、と決めている。
 中学生でもある彼は、学校で…告白をひどい言葉で断っている男を見て、その女の子を助けるが、彼女がクラスメートだということも知らなかった。
 その女の子、姫愛(ひめ)ちゃんは、たんごの母親であるダンス教師に誘われて体験入学することになり、たんごと踊ることになるが、ふしぎなほどやりやすい…「運命のパートナーに出会うと、手をとった瞬間わかる」?


今までの実績、現在の地位

 安定した実力は早くから注目されており、「るんるん」の連載など安定して育てられてきた。
 現在本誌連載のレギュラーで表紙や巻頭カラーもしばしば担当する人気作家。


個人的な感じ、思い出

 デビュー作から実力に注目していた。成長も著しく、特に最近の絵の美しさは凄いものがある。現在なかよしでは貴重な有無を言わせない華麗さも身につけるにあたり、ますます応援している。

 ジャンルとしては正統派学園恋愛、特に主人公の性格を今までの「明るく元気」とは違う、心情を絵で語る泥沼三角関係など主人公の成長を描くものをやってほしい。
 現在の「なかよし」ではオリジナル作品がアニメ化されるのは難しいが、それも期待している。

 初期短編など、まだ単行本未収録策品が多いので、それもどんどん出して欲しい。

 特に「スマイルでいこう」のミスコンテストのシーンでは、読み返すのをためらうほどの気恥ずかしさとそれだけのカタルシスという、少女マンガ本来の魅力を満喫させてくれた。
 また、「マリアっぽいの!」の聖母マリアの登場は今まで読んだすべてのマンガの中でも指折りのインパクトのあるシーン。今までの「ひわ鳥の聖母」「受胎告知」などのイメージを根こそぎひっくり返してくれた。

「ARISA」という作品には、ひたすら圧倒された。評論されないのが残念なほどスケールが大きく、心理描写と迫力に優れた力作だった。

 新連載は雰囲気が一転して、今まで同様に力強い生の讃歌になっているのがとても嬉しい。