あさぎり夕(あさぎり ゆう)

戻る もえるごみへ ほーむへ
公式ホームページあり、検索してみよう。


作風概説

 繊細ではっきりした絵。よく見ると結構ラフなのだが不思議な美しさがある。
 特に男子が魅力的で、男子同志の絡みも抜群にうまい。一見大した事のない女子がやんちゃな少年、乱暴な不良、優等生、キザな超絶美形など複数のいい男にもてる、という形が多い。

 ストーリーが抜群に上手く、青春の素晴らしさと少年少女の成長を実に見事に描く。ギャグも面白く、独特の口調や厚かましいサブキャラがまた魅力的。スポーツやダンス、銃撃戦まで多彩なシーンも迫力満点。

 昔は古い少女まんが特有の荒くアンティークドールのような彫りの深さと温もり、宝塚のような華やかで甘いムードがあるタッチだった。もちろんその頃から男子の魅力はずば抜けている。


代表作

1981〜82「あいつが HERO!」文庫版全二巻のほうが入手しやすい。
 小さい頃から愛読する絵本、「ライラックの花の王子さま」に高校生になっても恋している若菜ちゃん、入学早々下駄箱にラブレターが。ぶりっ子していても興味を抑えきれず指定された剣道部部室に向かう途中、えらく乱暴な男子に出くわす。
 剣道部ボロ部室にいたのはギリシャ神話から抜け出たような超絶美形だが、彼はラブレターの主、竜の悪友、宇佐美ジョーだった。さらに竜は若菜ちゃんの婚約者!胸ときめかせる彼女は例の、乱暴な男子に出くわすがなんと彼が風見竜。
 嫌がる若菜ちゃんの前に、イトコで「ライラックの花の王子さま」そのものの一人さんが現れ、若菜ちゃんの家に下宿することに。
 竜の乱暴さを嫌う若菜ちゃんだが、一人さんと竜の決闘などいろいろあって竜を少しずつ見直していく。でも王子さまと目の前の竜、そして自分と竜の家庭に隠れた秘密に惑う……
 素晴らしく魅力的なキャラクター、そのそばにいることでどんどん成長していく主人公の姿、そして深いメッセージなど古きよき少女マンガの素晴らしさを全て詰め込んだ最高傑作。

1986〜1988「なな色マジック」文庫版全三巻のほうが入手しやすい。第11回講談社漫画賞受賞作。
 目をつぶって七つ数え、目を開けるといいことがある、というおまじないが好き、7月 7日生まれでラッキーナンバーの七があればご機嫌な菜々子ちゃん。でも七番のクラスメート、小林一樹にスカートをのぞかれ、最悪の出合い。
 ダンサー志望でお祭り好きな彼はアイドルの相本友理が大好きなミーハーでもあるが、菜々子ちゃんは複雑…なにしろ相本友理は自分の双子の姉、可愛い姉と可愛くない自分のコンプレックスで悩ませてきた存在なのだから。
 ある日、原宿で素敵な外人のマジシャン、ミッシエルさんとパワフルなストリートダンサーに出会った菜々子ちゃんは、ダンサーが一樹ではないかと疑う。その一樹が菜々子ちゃんの家(母がOGでダンス教室をしている)に、家出してダンスを学びたいと転がりこんできた!
 そんな時、相本友理のミュージカルでの相手役を選ぶオーディションに一樹が出ることに。そこで二人は圧倒的な力を見せるBというストリートダンサーと出会う。Bがあのダンサー?Bは菜々子ちゃんに興味を抱くが、どちらがあのダンサーだったか惑う菜々子ちゃん…そしてコンプレックスを乗り越えるよう、菜々子ちゃんも舞台に出るように。
 凄まじい迫力に満ちた舞台描写、丁寧な恋心の変化、深いコンプレックスなど素晴らしく魅力に満ちたキャラクター、そして…全てが最高の傑作!

1991〜92「コンなパニック」単行本全五巻。
 好きな人に告白できない、弱虫の自分が嫌い…バスケ部のスターの卓巳くんと、雑用係と化している万年補欠のまいちゃん。自己嫌悪に「べつな自分にかわりたい!」と悩みながら寝たある朝、鏡に映る自分の顔にキツネの耳が。さらにしっぽも、しかも突然ダンクシュートまで決めるジャンプ力が!!
 惑う彼女の前にキツネ族の青年、乱が現れて注意するよう告げる。だが、スラムダンクに注目した卓巳が声をかけてきて……変身コメディの傑作。


今までの実績、現在の地位

 70年代から「なかよし」の四番として講談社漫画賞を受賞するなど抜群の力を発揮、最高傑作を次々と生み出す。マンガのみならず、自作のノベライズなど少女小説分野でも第一人者の力を持つ。

 90年代に「なかよし」を去り、ボーイズラブに転向してファンを驚かせた。だが本来その作風や深い内面を持つ美少年の絡みを考えると納得できるものがあるし、そちらでも今や第一人者。
 朝霧夕の名でかなりセクシーな作品も描いている。


個人的な感じ、思い出

「なかよし」を買い始めるまではもちろん名前も知らなかったし、それからもしばらくは後期の作品しか読んでいなかったため、割と好きな作家の一人という感じだった。
 そして昔の作品を読み返し、衝撃を受けている。少女マンガとはここまで素晴らしいものなのか、と読み返すたびに涙する他ない。
「卒業写真」のコミックスを駅の本屋で立ち読みしながら泣いてしまい、当時の「ちゃめっこクラブ」の投稿に「キャンディ・キャンディ」を立ち読みして泣いている高校生の男の子がいた、と投稿されて(ほぼ間違いなく筆者。時期も合うし、その駅の本屋にはキャンディもあった)苦笑したこともある。
「ひまわり日記」に収録されている作品のキスシーンは今でも思い出しては震え、にやけてしまう。