恵月ひまわり(えづき ひまわり)
作風概説
磨いた鉄のようにぎらりとして見栄えがするかなり濃ゆい絵。
現代的なセンスがあり、かなりハイな感じ。いい意味で大袈裟に盛り上げるシチュエーション作りがうまい。男の裸体がなぜか多い。
省略の多い、幼稚にも思える現代的な言葉が直裁に感情を表現している。独特の華やかさとつやもあるし、神秘についての直感力もある。
ギャグもかなり爆発的。特に読み切りでの「有明晴海」という名前のマンガ少女や三国志ネタには大爆笑した。
高い感情表現とわかりやすい展開でしっかりテーマを表現する正統派と、極端なギャグと暴走展開のどちらもできる。
代表作
99「恋スルストロベリー」
後十日でイチゴ;15歳になるそらちゃん、ご機嫌を通り越してます。ケーキの下見をした店のバイトが彼女をイチゴちゃんと呼んでくれる素敵な先輩!夢中になってお花畑状態で通いつめるそらちゃんだが、ついイチゴの箱をひっくり返してしまって。
99「あの娘はスイートvストーカー」
大好きな柏木君を見つめていたい、ストーカーと自覚(多分、本当に深刻なストーカーについてはどんなものか知らないだろう)はしているが好きなのだからどうしようもない。
そして彼の水着写真、彼の席に座る、筆箱を落としてばらまいた鉛筆の着服、給食当番用白衣、更にそのマスクとエスカレートして。軽快に明るい片思いの情熱を描いている。
2000「ウ・シ・ロNO天使」単行本全一巻。
超お嬢様で十五歳にしておもちゃ業界シェア世界一の大企業「トイズひめの」の天才デザイナー、しかも二年連続ミスティーンユニバース優勝の超美少女、「世界の天使」ケイが日本に転校してきた。
その目的は八年前彼女を振ったアイツに復讐するため!でも、そのアイツはかっこいいけど剣道バカ丸のガキンチョで、ケイにもほとんど無関心。少しでもアイツの情報を手に入れようと、いつしか目的と手段がごっちゃになって、地の果てまでつけまわす…でもいつのまにか気持ちが膨らみ…明るく楽しいストーカーライフ?な作品。
意地悪ライバルのユウがものすごく強烈な、殺したくなるほど可愛いキャラクター。
2001〜2002「みるくSHAKE!」単行本全三巻。
「めごめご」が口癖のハイテンションな手芸好き少女、みるくがある朝、自信作のお守りアップルハートを憧れの橘宙也先輩に拾ってもらった!でも先輩は実は裏表のある人だった。
ショックの彼女が拾った、VIVA CUTIE PARTY
のチラシに先輩の名前を見つけ、正体を確かめに行ってみたら突然コンテストに参加する羽目に!先輩主催、審査員には二年の美の双璧、フェロモン桃宮ジル&秀才真行寺ウメの両先輩も。張り切ったみるくは、そこらのカーテンや窓枠など、色々なものを使ってとんでもない前衛オブジェを作ってしまい、店を壊したことで先輩が「おれがお前のこと買いうけるから」と!
困ったみるくはジル&ウメ先輩の助けで、使えるゴミを手芸で再生し、自分の店
C3(シーキューブ。Cute、Cool、Crazy
の頭文字)を開店、でも苦労は多いし先輩は次々無理難題としか思えない試練を吹っかけてくるし、先輩を好きなお嬢様の薔薇宮ベリーちゃんも対抗で店を出し、先輩を社長に引き抜くなど意地悪を仕掛けてくるし悪戦苦闘、でもお客さんと先輩の励まし、仲間たちが支え。古典パターンをちりばめ、爆発的ハイテンションでかっ飛ばした名作。
作中のグッズが「なかよし」の Web
サイトからの通販などで売り出された。
2004〜7「私立ヤバスギ学園」
増刊シリーズ。
過激に馬鹿男子を制裁するのが趣味の風羽、そして苺花、龍子の三人娘は謎の指令で全寮制私立「山杉学園」に潜入することに。
そこは名門だが極端な男尊女卑で、「男子は女子を欲望のままにしていい」というようなもの。その校風を変えてくれということだが…また、学校には王子様や悪の組織のような「全校男子総連大本部」とやらもある…
いきなりタバスコ入り下駄履き電気アンマで悪玉を撃チンした風羽ちゃんたちの明日なき戦い(と恋)は?
姉妹作品の「私立モテスギ学園」も人気。
2007〜「恋☆ゼミ」
「わが校の名にはじぬよう 日々学び努力することを」生徒会長、川原周くんの新入生への演説に一目ぼれ、ずっと学年一位キープの優等生、浅井ハナちゃんは勝ち組…のはずだけど、がり勉の代償にヤバスギにダサくなってしまった。
落ち込んでいたら川原先輩に突然誘われ、そのまま学校をサボってデート、でもそれは「学校で一番ダサい子」を誘えというバツゲームだった。傷心の彼女は女子力を上げる努力を始める…
今までの実績、現在の地位
デビューしてすぐ本誌連載を始めた本誌上育成組だが見事に成長、激しい表現と感性、それを補強する絵の華麗さなどを武器に、レギュラーとしてしっかりポジションを確保。
「みるくSHAKE!」がやや急に連載終了し、2004年に短期連載してから本誌連載はない。
増刊にもたびたび登場、「私立ヤバスギ学園」は本誌にも登場するなど長く「ラブリー」を支える看板シリーズだった。
個人的な感じ、思い出
絵がきれいでかわいいのに表現が激しく、極端すぎないか?とも思う。だが、これが新しい時代の標準なのかと思うと、多少切ないが楽しみでもある。
特に「みるくSHAKE!」のベリーちゃんが、初めは少女マンガらしい意地悪役でありつつ後半は言動は変わらないながら素晴らしい励まし役に回っていたのがとてもよかった。その役立たずな腹心(知り合いがモデルらしい)もとてもいいキャラだったし、番外編に描かれた、ある話を裏から描いたマスコットたちの冒険話も面白い。そしてニューヨーク育ちのサブキャラクターが
9.11同時多発テロの話題を出したときには感動した。
増刊の読み切りでの濃ゆい美形男子には呆然とした。次は何をしでかしてくれるか楽しみ。ストーカーに対する扱いも、軽くするかと思ったらちゃんと反省させ、そこはよかった。
ただ、「私立ヤバスギ学園」はもう作品として許せないものがある。
できれば「アヒル」のような正統派作品でがんばって欲しいのだが。