作風概説
縦長の瞳と柔らかい頬の線がのんびりした感じを与える、比較的簡略だが正統派の路線に乗る暖かい絵。作品から感じる空気が小中学校時代の空気そのまま。
少女の人生にあるリアルな悩みに密着し、とことんその目線で描いている。
ヒーローが太っている、教師への淡い初恋、おねしょなど少女マンガで真面目に取り上げるのが難しい題材も正面から描ける。
代表作
1994「バトンタッチ」
転校生の柏木照美ちゃんは馴染めるか不安。そんな中、足が長いというだけで足が速いと決め付けられ、強引にリレーを押付けられる。
どうしても断りきれなくて承諾してしまった彼女を、太った嶋野くんが追ってきた。速い!でも太っているため遅いと思われている彼と、どちらが速いか皆の話が暴走してしまい、ストレスで気分が悪くなってしまう。
特訓してくれる、という嶋野くんにも真実が言えなくて、練習を休むことで先送りをしてしまう……子供の心の弱い部分、そして素晴らしい部分をしっかり描いた傑作。
1996「あしたは笑顔」
優しく厳しい道下先輩(女)もいるし、陸上部が大好きな中本典代ちゃん。でもある日、グラウンドを掃除していたら汚い靴紐が落ちていたので捨てた。それは道下先輩が憧れの人からもらったもので、道下先輩はゆるせへん、ととことん意地悪をする。
辛さにクラブを辞めることまでを考える典代ちゃんに、坂野先輩(男)が「何もせんと泣いてるだけなんやったらやめたほうがラクやろうよ」と…胸が痛くなり、それだけの感動がある傑作。関西弁も素敵。
今までの実績、現在の地位
本誌掲載や単行本はなく、増刊でマイペースに作品を発表していたが、96年頃から登場しなくなった。
個人的な感じ、思い出
昔は「あしたは笑顔」をなかなか読み返す勇気がなかったこともあり、それほど注目していなかったが、今回より昔の作品(国会図書館)を含めて読み返してびっくりした。ここまで素晴らしい作家がいたのか、と一気にその作品に魅せられたし、それを見ていながら見逃していた当時の自分に呆れる思いだ。
考えると、読み返す勇気がないほど感情を動かされる事自体がすごい。
気がついてみたらもう出てこないのだから残念。もし再登場したら、またじっくり見てみたい。