作風概説
(最新)
目がほぼ円に近くなり、画面から飛び出してくるように感じる。思い切って崩し、線を簡略化して最小限のことだけを伝えてくる。恐ろしく切れ味が鋭いし、体にこれまでになかった色気が感じられる。
話は徹底的に正統派少女漫画。
(2008年ごろまで)
やや崩した、行書体じみた絵。線に無駄がなく、不思議と切ない雰囲気が漂う。
ごくかすかに甘みと色香が漂うが、全体にスパークリングワインの辛味がある。
切ない感情の表現がとてもうまく、「せつな系ラブ」といわれる。
女が非常にグラマラスで男女問わず裸を多用するが、清潔感があるため色気はあまり強くない。
最近の作品は通じないどころか自分でも自分の思いがわからない、ときめきを含む自分の体に振り回されるようなもどかしく激しい恋をシャープに描き、「せつな系ラブ(やおいをギャグに使うことは結構多いが一応ノーマル)」と称される。
ストーリーは詩的な軽さと不思議な哀調が漂い、ヒロインの心の旅路をじっくり描く。思い通りに行かない感じ、もどかしさが非常に強い。
なんだか虚無的な感じを漂わせる男子が登場することも多く、それも哀調を強めている。
(初期)
「うほー」という悲鳴が特徴でとても可愛く生き生きとした、黄金のように華やかだがやや鋭い輝きのある絵。
スパイシーな甘さのある笑顔もとても魅力的。
体全体で表現する動きからの心理描写がとてもうまく、明るい気分で読める。独特の笑顔がとても魅力的で、特に男の子の表情に不思議な色香がある。小学生の男の子と女の子が小犬のようにじゃれあうシーンがとても、くすぐったいような快感。
見せ場の、見開き全体を使って余白を活かした表現も迫力がある。
ストーリーはテンポのいいジェットコースタータイプだが、爆発しているようでまとまっている。子供らしいキャラクターのバカだがとても真剣な行動、成長もしっかり描けるし、今時気恥ずかしいほど大上段から正論をしっかり主張し、描いてくる。
幼稚園児が描いたように想像力豊かでディズニーランドのようににぎやかなファンタジー描写も面白い。ギャグは細かい背景の仕掛けや会話を使うこともあるが、裸に近いエッチな状況や幼稚な絵を使うことも多い。
「子供、または精神的に幼いヒロインが大人のふりをしようと悪戦苦闘するが、その背伸びはヒーローに馬鹿にされるだけ。ヒーローはありのままのヒロインを受け入れているのだが、ヒロイン本人は素直な自分を受け入れられない」というモチーフが共通した。
代表作
99「さくらんぼ☆キッス」
学校での宿泊研修、夜さくらんぼ狩りの最中におっこちて誰かとキス。相手はだれ?アリバイのない4人の中には密かに好きな柴田も。でも、意識するとするほど余計に素直になれずに騒ぎが…意外な結末にびっくりした。
99「フォーチュン☆ケーキ」
ケーキ屋の娘でクリスマスどころではないゆみ、でも今年は特別。奥田君にもらった指輪があるから!でも、その指輪を落として商品のケーキに混じってしまった。さあ、どうする?奥田君には指輪の事がばれないようにバイトを押しつけ、必死でケーキを探すけど。
強烈なまぶしさ、そして圧倒的な幸福感!テンポのよさと魅力的な笑顔に胸がドキドキする作品。
2000〜2002「おとなにナッツ」単行本全四巻。
美容院で憧れのお兄さんに髪を切ってもらったり、なんでもできるセクシーで素敵な大人になりたい!セクシーダイナマイトに憧れる小学生の夏海がある日、不思議なピンクのナッツを食べて起きると、きれいでスタイル抜群な大人の女性になっていた!
そして、例の美容院のお兄さんに誘われ、宣伝用モデルにスカウトされて、素敵なデートを過ごすけど、やはり中身が子供だから違和感があるし、家に帰ったら元通り。
幼なじみの遊馬はそんな夏海を馬鹿にするけど、無防備な大人の夏海(86-56-85でスクール水着は犯罪だろう)に鼻血を吹く羽目に…。セクシーダイナマイトを前面に出し、大人になることの意味をまっすぐな子供の目線で描き切った最高傑作。
2002「ビビってむーちょV」単行本全一巻。
妖精の国「ワンダー・ファーム」の王女様、ビビちゃんが人間界に留学。
でもこれまでわがままいっぱいの彼女、学校でもいきなり魔法でみんなを家来にするが、美作ムサシにだけはなぜか魔法がきかない。
「しつけ」が隠れたテーマでとにかくハイテンション。ディズニーランドとスーパーマリオを幼稚園児が合わせたような、わけのわからない魔物と裸の連発がとても面白い。
2003〜「けだものだもの」増刊連載。単行本3巻まで発売中。
ラブラブのはずの小夏ちゃんと杉本ハルキ、でもハルキ(一家)には問題が…
昼間のハルキはバスケバカで女心に鈍感、女の子のほうから求めてもキスも甘い言葉もくれない!
でも夜になるとハルキは、超エッチでスタイル抜群の野獣系女の子に変身してしまう。
女ハルキにどきどきして流されるのも困るし、それにハルキの朴念仁もむかつく!どたばたエッチコメディ。
2004〜6「チェリージュース」単行本全四巻。
連れ子同士の再婚で姉弟になった乙女と南、しかも今はもう中三なのに同じ部屋で寝起き中。
料理部でもてるし最近かすみちゃんという彼女もできた南、そして南の親友、周くんとくっついた乙女…でも、南と乙女の間に流れる空気は?
皆の意味深な言葉、襲うドキドキ…そして、南は乙女とは別の高校を受けると言い出して…
シャープな切れ味、もどかしい恋心を縦横に描くせつな系ラブ。
2006〜7「オレンジ・プラネット」単行本全五巻。
誕生日に両親をなくしたるいちゃんがぶつかったお兄さんが、彼女に素敵な贈り物をくれた。あの星から両親はいつも見ている、と。そして帰ると「さみしくなったらハルさんにてがみをあずけて」という手紙を持つ、ハルと書かれたテディベアが玄関先においてあった。
返事はこないけれど手紙を出すことを支えに、一人暮らしだけど元気に成長したるいちゃん…いつも幼なじみの太郎ちゃんのベッドにもぐりこんで彼を困惑させたり、香くんにラブレターを渡しにいこうとして大人がキスしているのを目撃したりと色々大変。
そしてまた香くんのマンションに手紙を届けにいこうとしたら、いきなり香くんのマンションで火事。それはあのキス男の家で、彼はるいちゃんをかばって怪我をした。
翌日帰ったら、なぜかそのキス男…フェロモン屋が居座っていた…しかも彼は教育実習生!
せつな系の最高峰。
2008〜9「AAA」単行本全四巻。
全国トップクラスの秀徳大学付属中学と、最底辺高の悪徳中学はなぜか隣同士。
秀徳二年で生徒会長、学年トップで「AAA」と呼ばれる秀才緒方青依ちゃんはずっと、一人の「クロダハヤト」という男の子のことを思っている…大切な思い出のシャープペンと共に。
ある日、悪徳中のケンカに巻き込まれた青依ちゃんが投げつけたカバンに入っていたシャープペンが、向こうの番長に拾われてしまった。
そのまま持っていってしまった番長を追って悪徳中にもぐりこんだ青依ちゃんは、番長にはすぐばれて奴隷にされてしまった…その番長がなんと、入試トップのはずだった黒田隼人その人だった!
格差問題を前面に出した準備読みきりの切なさもかすかに含むが、「振り回される」快感に徹した冒険作。
2009〜10「ちよこれいと」単行本全三巻。
階段の多い街。ここで「グリコのおまけ」をやると運命の恋に出会える、という階段で遊んでいたちーちゃんは、いきなり階段から落ちてきた見知らぬ男の子に「今恋してる?」と言われ否定する。彼は「よかった」とチロルチョコを渡して去った…
翌朝転校してきた彼と、ちーちゃんと幼なじみのゆーとの三人は同じ誕生日だったり縁がある。
そしてその翌日、突然彼の死を告げられる…
タッチを大幅に変え、迫力と切れ味を高めて、残酷な運命に翻弄される少年少女の激しすぎる思いを謳い上げた過激作。
2010〜11「キミノネイロ」単行本四巻。
長身が悩みの種の椿屋明星ちゃんは、小三の頃兄に大きくなったら男になるかもといわれていた。そのときの夢を見て覚めた中学3年の時には幸い女のままだけど長身はあいかわらず(そのくせ胸はない)。
そんな彼女も恋する乙女で、好きな鈴木くんにはげまされて髪を伸ばしながら受験勉強もしている。
羽をつけたすごく可愛い女の子とぶつかり、いきなり渡し損ねたバレンタインチョコを食べられてしまった。
そしてその子を追ったら、鈴木くんが「この子とつきあってるんだ」とそのチョコ泥棒といた…
ボロボロに泣きながら髪を切ったその翌日は熱で鈴木くんと同じ学校は受験できず、第二志望高に入学したら…ますます男の子っぽくなることに。
そこで例のチョコ泥棒の女の子に再会し、なんと彼女は女装少年だった!
鮮度の高いネタを薫り高く調理した快作。
2009〜12「1年5組いきものがかり」単行本全六巻。
いきものなら何でも飼っちゃう…ワニやダチョウなど、小型動物園でも手に余るような動物もいる…「いきものがかり」。
その世話係、山田えるちゃんは、あるときから気弱なメガネ男子のイチローが気になるようになったが、彼はクールで美形のバンパイアで…そして、どんどん透明人間、ゾンビ…とイケメンモンスターが入ってくることに…
増刊から圧倒的な人気で本誌連載となった、パワフルで恐ろしくすっきりしたお色気作品。
2012〜14「初恋少年少女」全二巻。
進路希望調査に惑う、筧真紀ちゃん(中三)。
小さい頃から喘息の彼女は、隣家である病院に通っており、同級生である病院の息子の南忍くんとも仲がいい。
灯篭流しに行くのに、なんとなくパートナー探しの話になって真紀ちゃんはなんとなく副担任の芦田先生(男性)を誘う。
灯篭流しにはみんなで行くはずだったのに誰も来ないで、先生と二人きり状態。それでドキッとしたところを忍に助けられ、なんとなく忍が受けるという難関校を志望してしまう。
だが、十二月。忍くんの父親が事故で死亡する…
そして四月、難関校に合格した真紀ちゃん。入学式に新入生代表として立ったのが、定時制の忍くん…
2015〜「伯爵さまは甘い夜がお好き」
オレンジの髪のことで泣いた日はお母さんがいつもお菓子をつくってくれた…
髪の色が問題になり、製菓学校からも落ちるし男にも振られ、のえるちゃんはどん底。
それをごまかそうと木の上でお菓子を食べていたら、手が滑ってお菓子を追って落ちて…あれ?なんでみんな和服コスプレ?
明治時代へのタイムスリップ、ひたすら王道少女漫画を突っ走る期待作。
今までの実績、現在の地位
デビューしてすぐ本誌連載された「おとなにナッツ」が大ヒット。
しばらく短期連載が多かったが、「チェリージュース」「けだものだもの」がWヒットしてトップレギュラーに。
その後もアニメ化にこそ恵まれていないが、柔軟に作風を変え、また増刊と本誌で同時に違う作風の連載をやるなど双方において不動の大黒柱の地位を維持。
一時は不定期連載だったこともあるが、2015年には中核レギュラーに復帰。
個人的な感じ、思い出
何よりも明るさと楽しさ、素直さが貴重。絵は少しラフになりすぎている気もするが、それも成長の過程として見守っていきたい。
セクシーな面も男としては嬉しい(ある扉で、ビキニ水着のブラが取れた絵にタイトル文字が邪魔だと内心叫んだことも)が、もっと小学生男女のいちゃべたを描いて欲しい!あれがたまらなく好き。
できれば小学生を主人公に、心と体の変化をまっすぐ描いて欲しいが…それは「おとなにナッツ」を超えるという難題になりそう。
はちゃめちゃで、とことんわがままでバカな女の子に腹立たしくなることもあるが大人の目で見るとむしろ微笑ましい。一緒に前で楽しむ童心と奥底に子供の成長を温かく見守る目を感じる。
最近は表現力をうまく活かして恋心の複雑さを描いており、とても楽しめる。
徹底した正統派路線にシフトしたのも成功しているし、好き。