長谷垣なるみ (はせがき なるみ)

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作風概説

 デビュー作では砂消しゴム、デビュー後第一作では麻シャツの肌触り、だがそれでいてモンブランの繊細な甘さ。上質な和菓子のしっとりした触感、どこかざっくり編んだセーターのような印象もある。
 少し前はやわらかく繊細なタッチで、触れたら崩れそうな感じもする。
 今は恐ろしく無駄がなく、シャープで画面の色量が少ない感じ。かといってシャープすぎて崩れることもない。
 色香や柔らかさもコンスタントにある理想的といえる絵柄。

 服の生地がとても流麗で色気がかなり強い。複雑な冬服の柔らかさと暖かさ、冬陽の繊細さも実に巧妙に描く。体の色気も高く、手先もとても丁寧。
 展開の唐突さとパワーはかなりのものだが、根底はとてもしっとりした話を丁寧に描くタイプ。
 淡々ととんでもないことをするのがある意味ギャグになる。

 表情豊か。細かな感情を繊細に描くのもうまく、いろいろな表情をこなす。
 男の子の繊細な感情もすごいし、個性を豊かに分けるのもうまい。


代表作

2012「ディア→ディア」
 入学式から一ヶ月、まだ友達のいない花子ちゃんのところに変な男の先輩が「ラブレターを渡しに来た」とやってきた。
 他人のラブレターを渡すのが、趣味なのかボランティアなのか、だとのこと。
 何通もあるけど、花子ちゃん自体はむしろ迷惑。というか自分の名前も嫌いで、「ラブレター係」には「くりすてぃーな」って呼んで欲しいとか…
 実は彼女に友達がいないのは、美少女過ぎて近づきがたいから。でも、「ラブレター係」が「花子リーヌ」などと呼んでくれたりしたことから、少し周りが近づくようにはなってくれた。
 それで、自分から「ラブレター係」に「友だちになってください」という…

2012「占いと0の君」
 占い大好きな雅日六花ちゃん、今日のラッキーアイテムは赤い手袋、運命の人があらわれるかも…でも朝からその手袋を落としてへこんでいる。
 でも、えらくかっこいい男の子が手袋を拾ってくれて、でも彼女は何も思わずお礼を言うだけ。友達に指摘されて、それが運命の相手なのかと会いに行く。
 注意散漫で全然話がかみ合わないけど、彼はとても優しくて、帰りにも強引につれて行って…でも、また会話がかみ合わず…

2013「電撃スターダム!」
 人気超能力ヒーローものテレビ、「サイキックエース」。
 それを真似ている、千秋なゆた(高一・女子)ちゃん。
 エキストラオーディションがある、という話に行く、と決めてしまう。
 自主制作の着ぐるみで入って視界が悪かったのか、ぶつかってしまったのは「サイエス」の主役の一人、捺沢李人さん。
 でも彼の、ヒーローをバカにする言葉にかちんときて口げんかしてしまう。
 直後のオーディションで、応募者の一人の手からすっぽ抜けた木刀を鮮やかに手にし、動きを決める。
 それでいきなり、二期から主役級…でもそれは男の子だからと思われていたから。秘密にする、と約束したけれど…

2013「星もとぐらし」
 恋愛相談したら確実にくっつける結望ちゃん。
 張真りえ子さんの相談に乗ろうとしたら、近所の新夜理一くんがいちゃもんをつけてきて…
 で、りえ子さんが気になるのは理一くん?
 熱心に協力しているけど、ある日転んだ理一くんに押し倒されるようになって…

2014〜15「利根川りりかの実験室(ラボラトリー)」全三巻(原作・青柳碧人)
 母親が有名な学者だが、理数科目が大嫌いな利根川りりかちゃんは、助けてくれる江崎くんの優しい笑顔にメロメロ。
 ひどい点を取ったある日、金髪碧眼の美少年が廊下に数式を書いているのに出くわした。
 そして不良に絡まれ、江崎くんも殴られているとき、さっきの美少年が助ける条件として「科学と契約せよ」と…
 アルキメデスと名乗った彼は家についてきていきなり風呂に入ってしまい、そこを母親にばれたらどうしよう、と思ったら風呂場には猫?

2015〜17「花と忍び」単行本全四巻。
 幼いキス、「おっきくなったら結婚しよーね」という指切り…
 むかしむかし、強い者と娘を結婚させたいと思ったお殿さまがたわむれにいいました。「唇を奪った者と姫を結婚させよう」…お姫さまの唇を守る者がいつもかたわらにいたのです…
 室町の世から続く、日本一のお金持ち、城上紅緒ちゃん。彼女の家には「二十歳まで外にでてはいけない」という掟があった。
 そのわがままに困った大人が、「友だち」を連れてきた…と思ったらチャラ男?
 振り回されるが、屋根から外の景色を見せてくれたり、普通の人間そのものが新鮮。
 そしてついに、家庭教師の一人の協力で外に出してもらえるが…
 読み切りから連載。

2017「いじめあいっこ」
 復讐するために新入生代表として…柊和喜に。
 小学三年生のころ、父親が死んでいることで「かわいそうなんだ」と彼に言われたのがきっかけで、いじめの標的にされたのだ。
 長期戦の復讐を考え、あえて明るく話しかける。

2023〜「俺ともう一度、初恋」
 横断歩道で倒れている少女…目が覚めた時に手を握っている男。
 なにも思い出せない…手を握っていた、浅海一星という男は「君の婚約者だよ」と。
 さらに何人も若い男が病室に…彼氏とか、許嫁とか、いろいろ名乗ってくる…
 彼女は大富豪の一人娘で文武両道才色兼備だとも教えられる。
 そして最初の男は、誰も知らない。ただの不審者、詐欺師…?


今までの実績、現在の地位

 デビューが本誌掲載(といっても増刊がないので当然だが)。十五歳デビューが話題だが、実力も高い。

 2014年、原作つきで本誌連載開始。

 2015年、読み切りを改題して本誌連載。

 ずっとネットの側で「極妻デイズ」を連載しており、過激な内容などかなりの話題になり長期連載。

 2023年、本誌連載に帰ってきた。


個人的な感じ、思い出

 年齢はともかく、読んでいてとても楽しい作品だった。どう変わっていくかも楽しみ。

 年齢の問題もあり、本誌連載と学業の両立が難しいかもしれないが、卒業まで待ってもいい、じっくりと育ってほしい。

 新連載で原作がつくのもちゃんと成長を支えるようでうれしい。成長してくれればいい、というぐらいの気持ちで見ている。面白いし。

 ネット時代は読んでいないが相当な活躍だったようで…その間、本誌に一年に一度ぐらい読み切りの形、また時々数ページのショートでもあればよかったのに…