春瀬サク (はるせ さく)
作風概説
非常に表情豊か。
目にぱっと炎を放つような力があり、印象が強い。最近は不思議な甘みが乗り、眼が非常に強くくっきりしてむしろ迫力がある。
大体はさわやかあっさり味(デビュー後第一作ではちょっと…ちょうどうまい棒のように油と辛みが強いかも)。手足と服の上からなんとなくわかる体の細さが実際に中学校だった頃の雰囲気を思い出させる。
空気が寒い冬の風、金属のように硬質。
机などの描写は無駄なく正確。アクションも割と激しく、全身で感情を豊かに表現する。空間や陰影を使った表現も実にうまい。
案外重いテーマの作品を、熱く鋭い視点で勢いよく読ませる。真っすぐで熱く力強いストーリーはたまらない魅力がある。
代表作
2004「ちびハニーv」
背が小さい泉ちゃんは、いつも必死で牛乳を飲んでいる。夏河孝志くんに「愛しのちびハニーv」などとラブコール混じりにからかわれるのが悔しいから。
本当は彼のことが好きだから、大きくなって彼を本気にさせたい!
ある日、牛乳の催眠効果の結果の居残り中に彼が後ろからひっついてきて、二人きりで普通の会話…から、突然「泉 おれおまえのこと本気だから」という言葉…
さわやかに素直になれない思いを描いたデビュー作。
2005「制服をきて会いましょう」
小雪の舞う中一の冬、小学生の男の子の告白に一足早い春…そして先輩として彼氏を迎える遥。
彼はかっこいいというより…可愛い!?でも制服を着るとカッコよく見える。
そして、せっかく中学生になったんだから制服デートを夢見るけれど、委員会などすれ違ってどうもできない。しかも委員会などで、彼のそばにやたら可愛い彼の同級生がいるようになって…
桜道のシーンが実に素敵だった。
2006「空も飛べるはず」
超待望の夏休み…でも夏期講習でせっかく学校から開放されたはずなのに、とブルーな琴子ちゃん。学校も楽しいことも別になく、ただ無難に…。
でも塾では周りが放っておいてくれず、色々な人たちが強引に話しかけてくる。それで少しずつ変わっていた彼女は、登校日にもつい塾でのように話し、笑って、みんなの見る目も変わってきた。
だがそんな時、苦手な隅田さんが学校に押しかけてきた塾仲間に話しかけ、琴子ちゃんの変化を揶揄して…
中学生の不安定な心の揺らぎを恐ろしい鋭さで描いた傑作。
2007「ひとりじゃないこと」単行本一巻。
新学期、すごく皆に好かれてる燕ちゃんは強引に生徒会役員に任命された。
皆歓迎してくれるけど、元クラスメートの真知ちゃんはなんだか怒っているような感じ。
それで皆に手伝って、と呼びかけたけど、皆は嘘をついて帰ってしまい、一人でやることに…
ひたすらいい人を演じ続ける不自然さを、溶けた鉛がかかったような激しさで描いた傑作。
その後のシリーズはとにかく情熱が爆発する傑作に仕上がった。
2008〜9「パパとあたしのヴァーサスな日常」単行本一巻。
有名俳優真田カズヒコの隠し子、凌ちゃんは自分達をないがしろにしてきた父のことが大嫌い。
でも母の他界以来居候していた親戚の仕事で、また父と同居することに…幼馴染の宏哉君の支えはあるけど…
とにかく熱い展開を組み立てていくハートフル連載。
2013〜「つばさピチカート」
北海道のバイオリン教室で研鑽を積む朝比奈翼ちゃん、小六。
でも、今回が最後…母子家庭、貧困のため。
翼ちゃんは諦めるのではなく、最後のチャンスに挑戦する。遠い札幌での、特待生選抜試験…
バスに一人で乗ることから不安と恐怖でいっぱいだけど、さりげない優しい励ましを受けて素晴らしい演奏をするが、保護者の同意欄を自分で書いたことがばれて失格に。
帰った彼女を待つ母の言葉は…?
とにかくど真ん中剛速球の熱い連載。
今までの実績、現在の地位
かなり登場頻度が高く、「ひとりじゃないこと」がいきなりシリーズ化した。連発で増刊連載を出したが増刊が消えてから少し出番が少なかった。
2013年、本誌連載!
個人的な感じ、思い出
あくびの表情がすごくよかったし、抱き上げるシーンはかなりドキドキした。
このさわやかさを色気と感じる回路があるのが不思議なのだが…一体どう成長していくか、楽しみ。
デビュー作の非常にさわやかな雰囲気、独特の体の線にも未練はあるが、今の確かな表現力はいいと思う。
最近の熱血路線の鋭さと的確さ、そしてきっちりプラスのメッセージを伝える力には敬服する。
まだまだ成長できる、と楽しみにしている。
本誌連載はとても嬉しかった。期待以上の、圧倒的に熱い作品!とても楽しみ。