福月悠人 (ふくづきゆうと)
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作風概説
真円に近い目と鼻がほとんどないことが特徴。全体に無駄を切り捨て澄み切った感じで緩急が深い。
言葉にできない強い印象がある。
(白黒画面から伝わる)色彩感覚の深さ、陰影の強さなどさりげない気持ちの描写が実にうまい。
仕掛けもあるけれど、むしろ深くしみこむような語り方が心に残る。
感情の組み立てが丁寧でごくスタンダード。全体のバランスがいい。
恐ろしく印象的な場面を出すことがよくある。
代表作
2007「空が泣いた日」
長瀬俚緒ちゃんの日課は、放課後校庭の芝生に座って陸上部の練習を見ること…山内先輩を。
同じ陸上部でクラスメートの季咲くんがよく話しかけてくるけど、なんというか先輩の話をすると怒ったり、ある日手を引っ張ってくれながら先輩はクッキーが好きだと教えてくれたりわけがわからない。
男の子の側の心理をとても丁寧に描き、一見平凡だが不思議な雰囲気で男のやさしさを描ききった印象的なデビュー作。
2008「空に君に」
巴音ちゃんは陸上部だけど早い遅い以前にスタートが苦手で、ほとんど人としゃべることもできない。
そんな彼女が見ているのはエースの一戸瑠璃くん…誘われたとき、必死でがんばっている一戸くんの姿を見てどうしようもなくひかれた。
彼が嫌っている、「瑠璃」という名前をほめたことがきっかけで終わってからも一緒に練習をするようになり、仲良くなっていくけれどそのオーバーワークで、大会を前に彼は怪我を…
男の思いの深さが丁寧に描かれている。
2008「白い記憶」
彼氏とケンカして家出し、電車終点まで行ってしまった。
そこで聞いた事もない栗州駅、そこで男の子が声をかけてくれて、彼の家に一晩泊まることに。彼とふと星について話し、それから彼とケンカしたこと、死んだ兄のことなども語って…
彼氏からも電話があるけれど、それでどうしていいかわからなくなって吹雪の中に飛び出す…
不思議な感じを、雪の不思議な暖かさに託して丁寧に描いた佳作。
2009「いつか、空の下で。」
音楽科の試験を前に入院を宣告され、嫌がっている渉ちゃんが、同年代の入院患者の衣織くんと出会う。
彼は小児科の子供たちと遊ぶのが好きで、渉ちゃんの歌を子供たちに聞かせたりする。
恐ろしいほど淡い印象、男の子の側の心理描写の深さ、安易な展開にしないで中心的なテーマにこだわったことなど、地味ではあるがまちがいなく最高傑作。
今までの実績、現在の地位
比較的登場機会が多い。
個人的な感じ、思い出
とにかくデビュー作冒頭見開きの印象が強烈だった。完全に時間が止まった。
何がこれほどの印象を産んでいるのかが全くわからない。
それが本物だったら…化けたらとんでもなくでかい、と恐怖にも似た期待を抱いている。
その後も常に、穏やかだがとても深いものがあって忘れられない作品ばかり。
この力はどう本誌連載につなげればいいのだろう…素晴らしい力があることは大声で叫びたいぐらいなのに。