石塚沙織(いしづか さおり)
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作風概説
ストーリーのテクニックと感情表現力が高く、心をうつ。
重みがある浮き上がるような線はどこかほのかに大人っぽい色気を隠している。どきどきするような大胆さと、繊細さを併せ持っている。
描写は丁寧で、運動シーンも素晴らしい迫力。硬い印象があるが、大人の鑑賞にも耐えられる。
エピソードが特に巧みで、そこで感情移入をさせて余韻のあるクライマックスに持っていくのがうまい。場面転換と言葉で感情を盛り上げていくのもうまい。少し情けないぐらい誠実な男の子がとてもかっこいい。
代表作
95「No.1」
学年一位の座を石井に奪われて怒り心頭の祥子。彼の賭けで学年一位を、とのふざけた発言に切れて五教科全満点を賭けてしまい、惜しくもおごる羽目に。
そこは失恋のやけ食いをした思い出の場所。中学時代、からかわれてメガネブス呼ばわりした、その中野と再会してまた酷い事をいわれた時、石井が中野に殴り掛かって!そしてテニス勝負、でも中学時代からエースだった彼にかなうはずはないけど?かっこいい、しかもテンポのいい作品。
95「中野くんの恋」
テニス部のエースでモテモテの、上作品の悪役、中野が出会ったのは学校一の秀才、水瀬桐子。大人っぽい彼女には不思議と可愛い面があり、昔の苦い思い出などを語り合ううち、心が通い合っていく。でもどうしても彼女には読めない部分が残るし、自分の未熟さに焦りも感じる。
気持ちの変化の描写が見事で「No.1」と互いに絶妙の複線になり、単独でも十分楽しめる名品。微妙な恋のタイミング、すれ違う心、切なくてそのうちほっとする。最後のさわやかさも印象的。
97「シークレットサマー」
幼なじみの亮は明日引っ越す。だから最後の記念、4人組で秘密の、夜中の花火。でもなぜか他の二人は遅刻し、二人きりに。今がチャンス、でも告白なんて!タイミングを逃してごみ拾い、この時がずっと続いて欲しい…。
切なくて切なくて、感情そのものを昔にタイムスリップさせ、中学時代好きな子が転校する頃の唇の噛みすぎによる口内炎を再発させてくれた最高傑作。
99「メルティング
ポイント」
一年前告白したけど友達のままがいい、と言う小野田に、まだ想いが募り続けている美咲。でも、卒業は明日。そばにいられるなら友達でいい、でも勇気を出して!でも答えは変わらなかった。卒業の切なさ、どうしようもない恋心の強さを情熱的に語り尽くしている。
特に後悔の描写に、昔の体験を重ねてしまってとても切ない思いをしてしまった。周辺のエピソードも深く心を打っている。
2001「wing!」
長いリハビリからやっと復帰したバスケ部の真沙美ちゃん。夏の大会、そして推薦に燃えているけれど無理はできないことに焦りは募る。そして残酷な推薦取り消しの知らせ。
ついに退部届けを出してしまった彼女を、香坂くんが事故にあった兄の姿を見せに、車椅子バスケの大会に連れて行く。復帰を決意した彼女だが、親友の梨華が勝負を挑んできた。
凄まじい迫力、真正面から熱い魂をぶつけてきた傑作!
今までの実績、現在の地位
実力はあるが、近年の増刊の少なさに苦しんでいる一人。
ネット上で94〜96年世代が活躍する草分け。
個人的な感じ、思い出
「中野くんの恋」に衝撃を受けた。大人っぽい物腰の柔らかさと可愛らしさを併せ持つ桐子さんも素敵だし、ガキなりに精一杯誠実に、前向きに突っ走っていく中野くんもかっこいい。
そして何より「シークレットサマー」に、恐ろしいほど感情移入が強くなってしまった。文字通り感情そのものを昔の、いつも切なくて仕方なかった時代に戻された。
今後の活躍を期待している。特に青春を熱く描く話が読みたい。