いなだ詩穂(いなだ しほ)
作風概説
少年マンガとも「なかよし」などの幼年少女マンガとも違う、大人びて写実性が高く鋭い線がとても印象的。感情表現も無駄なくしっかりできる。大人の女性や美形青年が得意だが、とても可愛い女の子も描くことができる。
ホラーの描写も巧みで、底知れない恐怖を直接伝えることができる。書き文字を使った大胆にして繊細な音の表現、強く使われる白黒の迫力、静から少しずつ盛り上げていく演出、血や冷気などの皮膚感覚の使い方、正確で無駄のない背景など非常にうまい。
ギャグに回るとキャラクターを大胆に崩す。
代表作
98〜2010「ゴーストハント」単行本全12巻(原作
小野不由美 悪霊シリーズ「悪夢の棲む家」含まず)
女子高生の麻衣はひょんなことからSPRこと渋谷サイキックリサーチでバイトしてます。
外見と頭はいいけど傲岸不遜天上天下唯我独尊で人使いの荒いナルこと渋谷一也所長、寡黙を通り越してロボット並みのリンさん、霊能力はないが探偵捜査の達人で自称少年探偵団の安原さん、そして協力者の霊能者エリートフォース?本業パンクなバックバンドで孔雀の元同僚(高野山にはいたけど裏高野は嘘)ぼーさんこと滝川法生、自称巫女だがある条件がそろわない限り役立たず、けばいおねーさんなのに家庭的で実はお嬢様な綾子、金髪で関西弁のエクソシストでとても気のいいジョン、テレビでお馴染みの霊媒で性格の悪い日本人形、ナルにぞっこんの真砂子と様々な霊現象を調査、解決…サイキックアクションも結構あるけど、むしろ地道な戸籍調査や記事検索、聞き取りなどの情報収集、ビデオやサーモグラフィー、デジタル温度計など電子機器による観測記録がメイン。その機材を運ぶのが重いし、さらに穴を掘ったり壁を壊したりどちらかというとガテン系。
実は麻衣にも不思議な力があるらしくて、でも寝てる間だけだし。寝ている間、といえば夢の中ではナル、すごく優しいんだけど。てか、夢でってことは…なんであんなやつにラブなんだろ。
今までの実績、現在の地位
「Amie」で連載された第一部(原作旧文庫では「悪霊がいっぱい」に相当)を「Amie」廃刊に伴い、「なかよし」に引き継いだ。以前は「LaLa」で活躍していたらしい(花とゆめコミックスがある)。
「悪霊になりたくない!」に当たるシリーズからは本誌連載ではなく、直接単行本書き下ろしという異例の形で完結。
2006年、「ゴーストハント」が本質的にはこのコミック版の延長でアニメ化。
個人的な感じ、思い出
始めのうちには原作を知らなかったこともあり関心が薄かったが、原作に触れて一気に面白くなった。ここまでキャラクターを崩すか?とツッコミつつ見入っている。特に番外編「サイレント・クリスマス」でリンさんをとことん壊した時には大爆笑した。
このコミック版の麻衣にどうも惹かれるんだが…なんとなく魅力的。
別のオリジナル作品も読んでみたい。特により大人向けの作品を。「ゴーストハント」だけではもったいない。
とにかく長い年月お疲れさまでした。「悪夢の棲む家」もぜひ見たいところですが…