なかよし1999年12月号
ん、切れる。これが読み終えた後の一言です。
まあ、カラーページやマンガスクールなどを切り取るのに使った、最近初挑戦の蛤刃に研ぎ直したばかりのカウリXニッケルステンダマスクス鋼2"ガットフックスキナーも確かに恐ろしいほど切れました。でも作品と、そして意識した事も無かったのですが、それを縦に統合している編集全体が総合として、鋭利に研ぎ上げた刃を指で触れたときに感じるのと同じ、強い満足感と戦慄にも似た感動を感じさせました。
表紙からもう、人を引き付けるオーラが強烈に出ています。中心のMinkちゃんの唇に、全ての視線が吸い込まれるような、それでいて素晴らしく明るい…。いいです。
残念なのが、冬ランドの宣伝がまだ無い事。待ちきれないのが正直な気持ちです。
「電脳少女★Mink」いきなりイリヤのプロデュースで、もう息もつけない急展開!スゴイ速度で絶頂に持っていかれ、むしろこれからが不安なぐらいです。早速お約束の大手権力プロダクション、今後が楽しみです。「…うれしい〜」とうっとりしているところのMinkちゃん、たまらなく魅力的です。やや穏やかになった、それだけに深い喜びと微かな羞恥、それらがとても素直に出ています。イリヤと会うシーンも見事!カッコよすぎです、こいつ!存在自体犯罪!モトハル君に対する反応も楽しいです。思った以上のキャラクターです。そういえば、この曲のカップリングは何でしょう。本当に出て欲しいです…買います、もちろん。さりげないモトハルくんの描写も、後から見ると見事ですね…。芸が細かいです。そして真実が明かされ、真剣な二人のぶつかり合いも打ちます。感情がはっきり伝わって。それからさらに、この不安が広がっていくところ、そしてこの「社長代理として業務命令〜」この一瞬、二人の魂がしっかり触れ合った、それが強く伝わってきます!それがこの、胸が熱くなるような、最高のステージに!もしもこのライブの客席に立っていたなら、もしかしてあの「エリザベート」(一路真輝さんのサヨナラ公演)で見た、ステージの神にもう一度出会えるかもしれないです。それが鮮やかに描かれていました。
「ほしいのはひとつだけ」目から圧倒的な力が伝わってきます。意思と感情が一つになったとき、これほどの力が出るなんて。あごが痛くなるくらい、歯を食いしばっています。笑顔、泣きそうな顔、不安、諦め、悲しみ、指の動き…恐ろしい表現力です。矢野は、せめて初恋のために最高の思い出を与えてやりたい、と思っているのでしょうか。矢野の昔、僕の予想とは微妙にずれました。幼なじみか親戚、親友の妻と読んでいたのです。義理の姉、とまでは考えていませんでした。「そ」この一言、それも矢野の顔を、目を描かないで…それも上手い。その上で、全てを打ち明けて心を対等に通い合わせて、この時だけ教師と生徒でも、大人と子供でもない二人、切なくて、限りなく楽しそうです。こうして、ここで終ってくれれば!不謹慎ですがそう思います。ここで終れば、紛れも無く最高の初恋です。でも、次回がある。読まずに今回を最終回とみなしたいですが、それはできないでしょう。切ないです。
「カードキャプターさくら」まだ、本当の謎は何も解けていません。パパ、そしてママとクロゥ・リードの関係が…恐らくそれが本質のような気がします。小狼くんとの仲も、本当に深くなっていますね。もう、恋愛感情すら必要ない、とさえ思います。こんなに互いに思いやって、羨ましいです。僕が小学校中学年の頃、こんな思いやりなどある事すら知りませんでした。あの頃の僕達に見せてやりたいくらいです。魔法は自分の内面の現われ、もしクロゥが父を何らかの意味で表現しているとしたら、前回のクロゥカード編は父の世界との接触、受容、もしかしたら支配になります。それがどんな神話的意味を持っているか、分析しきれないのですが。そして現在のさくらカード編は、実際に父の支配を離れた自分自身を獲得すること、父と対決しながら内面の深い象徴を一つ一つ自分のものに変えていく事、難しい!明確な分析ができないです。次の編があるのかもわからないですし…僕は昔から、この作品の最終回はさくらの初潮もしくはその象徴表現、そしておじいさんとの再会だ、と直感していますが、その直感の意味も理解できません。本当に考えると考えるほど深く、難解な作品です。これからについても、歌帆さんの役割もわかりませんし…。このタイムリミットつきの試練も神話によく見られるモチーフですから、むしろ自然な感覚もありますが、その意味までは読めないです。ここはあえて思考を放棄し、次号を待ちましょう。
「うるきゅー」いやったあっ!秋元先生の本質は健在、嬉しいです!扉の、二枚まとめて縦に使った強烈な派手さも目を打ちました。これは今まで無かったかもしれないですが、本来カラー扉に魅力のある作家ですから…。そしてこの極悪非道タカビー型意地悪役のコケティッシュな魅力も強烈。いい感じになって来ています!やっぱりこの秋元ワールド、安心できますよ。多聞とトモヒロにも微妙な変化が出てきています。「いつか刺されるぞ」と台詞は凶悪ですが、もう少女マンガの土俵に乗っています。いつもながら、ではありますがこの、相手を屈服させる事以外自分を保つ術が無い、などの人間の弱さ、身にしみて哀しみを感じます。
「恋愛向上委員会ジューシーフルーツ」この問題は…正直、重すぎます。絶対に正解の無い、限りなく深い問題です。ただ言える事は、十年先にはそんな事もいい思い出……慰めにはならないでしょうけど。極悪な解決法もありましたが、そのほうが賢明かも…笑っちゃいました。A.KさんとSちゃんの二人は本当に素敵です。残念ながら告白されなかったけど、T君はとんでもない幸せ者ですね。
「おジャ魔女どれみ」ずいぶんと途中経過すっ飛ばした展開ですね。
「B-ウオンテッド」正解、ほっとしました。もし間違えたら理学部数学科影専攻記号論理学のプライドが根こそぎ破壊されるところでした。今回気付いた、顔の赤面描写の線、ぞっとするほど鋭いです。それに前回の伏線にも気付いていない、それもショック!そしてこの金庫も考えたものです。単純だけど、開けるのに無限の時間がかかる、これほど恐ろしい鍵も無いでしょう。ま、原理的にまず開けられないシリンダー錠もありますけど。大型ワイヤーカッターさえあれば簡単に潰せる・・・それでも時間が無いですね。しかしこれ、南斗水鳥拳ですかこの破壊力は。「B」のこのダンディズムも、今までのなかよしでは見られなかったものですね。強烈なまでの色香が漂っています。この圧倒的な、クレバーでクールでホットでシャープ、もうすごいの連続です。
「けん・けん・ぱっ!」今回、不思議と…この影の中の表情に、とても深い色香が感じられました。思った異常の表現力を持っていますね。あ、クリ拾いの必需品は…MPT(マルチパーパスツール、直訳汎用道具。プライヤーを中心にした、それでいてスイスアーミー以上のツールを内蔵した携帯万能工具)です。
「ぜんまいじかけのテイナ」謎が深まっていきます。あ、パンプー…中身があったのですか。不思議な楽しさです。新キャラ二人登場、これもまた楽しみ!この先生、前回は意識しませんでしたけど、ビン底眼鏡の下は絶対とんでもない美人です。横顔からはっきり伝わってきます!限りなく優しく、そしてころころ変化するティナちゃんも魅力的ですね。シャマやかえる姫の動きや表情もとてもいいです!なんだか心の芯をあったかく融かしてくれるようなしぐさです。旅人さんとティナ、再会の一瞬の表現はさすが!自然に取った手、光の流れる河…この切なさはなんなのでしょう。そしてネジが切れて、次回、彼はそれを理解できるのでしょうか。僕でしたら見当外れな、人間に対する心肺蘇生法をしかねないです。
「ゴーストハント」強烈!リンさんの受難だなんて、それこそもう日本全国七十二億千五百三十九万人のリンサンファンが主上への感謝を叫びながら鼻血を吹いて倒れる様が目に見えるようです。今回のギャグ表現と、美しいところでの深い表現のギャップ、すごかったです。麻衣のさりげない優しさもすごく素敵。ケンジくんの過去、何があったのでしょうか…事例から言ってどれにしても、想像したくも無い事ばかりですね。ぼーさんの冷徹さを諧謔でごまかし、分かりやすい言葉に徹した解説、これもうまいです。そして、本当に辛い事、必要な事にはユーモアも捨てて冷徹さを出す、魅力的なキャラですね。そして、「おとうさん」リンさんの汗、これでもういくつの悲鳴が上がった事か。なんかもう、ずっと笑いっぱなしでした。ビデオのダビング、これも考えました、もちろん!慌てて崩れたジョン、底を突き破って崩れまくったリンさん、笑いを抑えるのに一苦労ですよ!そしてナルまで「お父さん」と冗談を言いますし…。影で必死で笑いを抑えるぼーさんもおかしいです。そしてリンさんのこのミス、これも見た事も無いものですね。もう、GH業界にセンセーションを引き起こしているでしょう。シリアスモード、そして次、かなり辛いものを、麻衣といっしょに見ると思います。覚悟をしておきますか。
「ワーキング娘。」絵が一気に強くなり、安定しました。そういえば日栄の取りたてが問題化されたようですが、関係ないでしょう。本当にこの娘、何をやっても天才的ということですか…そしてそれを巧みに巧が(意図していません)利用している、かなりここに深い意味がありそうですね。この、簡潔なまでの急な展開も見事です。ばーん、どーん、がーんの三段攻めも新しい、そして上手い技法ですね。人名やブランド名をどうもじったのかまでは知りませんが、この価格表示は説得力が高いです。巧とジェームスの関係も不思議で、何か深い裏がありそうです。ジェームズの勝手な論理、ですが、最終的に愛と金で単純化したとき、どちらを選ぶか読者全員に突きつけていると思います。これを読者一人一人がどう受け止めるか、そして早紀ちゃんは…目が離せないです。
「スマイルでいこう」急すぎます、でも、久しぶりに・・・・・・いや、これこそが「なかよし」です!なかよしはやっぱ、こうでなくちゃ。この胸の底から湧きあがってくる幸福感、そして一種の気恥ずかしさと共に納得する、これがやっぱりなかよしですよ!そしてこのストレートな告白、素直な気持ち、好きと大きく書いた写真!もう最高の幸福感です。だから僕はなかよしが好きなんです!番外編も楽しみです。
「トップオブザワールドな人たち」道明寺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。すげえ。りんごをむくために包丁を隠して、これ必要ないですよ?りんごはカッターナイフや危険剃刀(安全剃刀でない、顔剃り用のやつ)で十分むけますから。まあ、ASKがあればそれに越した事はないですが。あ、ふと今の言葉、解釈を変えると恐ろしい想像が…考えないで下さい。この絵的にに地味、という言葉が、この連載の苦しさをとても雄弁に物語っている気がします。そして、ここまで胸くその悪い思いをしたのは一ヶ月ぶりです。考えてみますとなかよし、層が厚いですね。二ヶ月連続でこんな思いをさせられるなんて。
いや全く、なんだか不思議な気分です。ここまで色々と感情をコントロールされる・・・。
来月号に延ばされた冬ランドの予告と、そして今後なかよしがどう変わっていくか、次号で一番楽しみなのは、予告です。