なかよし2006年4月号感想

付録のペンケースはシンプルで、弱点となるちょうつがいがない分「ちゃお」のそれより丈夫でしょう。欠点は上のふたが浅く、太いペンが入らないことでしょうか。
全員サービスのバッグも、どれもシンプルで飾り気がなく実用的ですね。

少し気になったのが、春ラブリーの予告で、「その他」の読みきりが見当たらないことなのですが…高上先生と水無月先生のシリーズに狂喜乱舞していて忘れそうになりましたが。

今月号から、あちこちに連載の番外四コマを入れるようになったようです。これまでは番外四コマは増刊だったのですが…面白い試みかもしれません。
あと、今月号はやたらとこれまでの話の紹介が多かったですね。新入生は三月から読み始めることが多いのでしょうか?

連載のいくつかが、やっと終わりそうな気配があるのはほっとします。いくらいい作品ばかりでも、ずっと続いていては雑誌自体が停滞しますから。
といっても、「ちゃお」「りぼん」のように新連載ラッシュで始まるのではなく、その安定した作品のラストのほうで新入生を迎えるのはどうでしょうか?
いくつかの連載でこれまでのあらすじが見られるのは、新入生が読み始めるのは今月号からだ、という感じがするのですが…

ゆめゆめ☆ゆうゆう(花森ぴんく)オレンジ・プラネット(フクシマハルカ)恋愛向上委員会ジューシーフルーツ(有沢遼)しゅごキャラ!(PEACH-PIT)ふたりはプリキュア(上北ふたご/東堂いづみ)ママコレ(遠山えま)キッチンのお姫さま(安藤なつみ/小林深雪)シュガシュガルーン(安野モヨコ)きららプリンセス(小鷹ナヲ/田中梨花)王子様のつくりかた(桃雪琴梨)とき★めか!(武内直子)地獄少女(永遠幸)予告

ゆめゆめ☆ゆうゆう
カラー扉の華やかさはさすがです!
いきなり「そんなぼくだけど」と二人の世界…これ、妄想じゃなくて現実?すごいですね。
烈火くんも…すごいことに。
ぜんぶでろでろのお弁当を…
いきなり出てきた黒部先生、倒れたのは爆笑でした。というかそんなのを大量に食べてくれたあおい王子って…すごい。
二人ダブルで助けてくれて、さらに引っ張り上げるときにわざわざ豪快にパンツ丸見え…ここまでやられると色気も何もないです。
でもって、バスタオル一枚で二人きり、そこで彼までいきなり脱いで…うわ〜ばたばたするほかないです。
「アイツはいまはいっしょに〜」という言葉で、初めてあおいくんが本気だ、ということがわかってきました。
「いいっていうまでもうなにもしないよ」って今抱きしめているのはどうなのでしょう?
そして、恐れていた妃女ちゃんへの誘惑が始まりましたね。「ずっと力を願ってきた だれよりもがんばってきた」…それが彼女の本質…
昔の世界の回想も面白いですね。このユウは…そして先代の巫女様への思いも素直に描かれています。
「あのときの借り」というのも面白い関係ですね…この妙な恨みも。
くろべえの正体は、僕が気づいたのは最近ですからあまり威張れた話じゃないです。格好はいいのですが、それほど強くはないのは苦笑しますが。
いきなり桜餅というのはびっくりしました。すごく意外なボケです。
そして、もう優女ちゃんが自分の気持ちに気づいてしまって…しかしどうなるのでしょう。
妃女ちゃんがここからどう動くのか、楽しみです。
番外編での玄武は確かに変ですが、「史記」には亀やその甲羅が起こした様々な奇跡が歴史上の大人物たちと同格に書かれています。漢王朝自体にとって最も神聖な動物が亀だったようですね。

オレンジ・プラネット
え、え…冒頭のこれ、夢じゃなくて現実に…ひどすぎる!残酷すぎます。
冒頭のあらすじがちょっと長いです。で、大変なことになりましたね…
他のキャラもちょっとずつ動き出しました。エリカちゃんもこれからどう話に絡むか楽しみです。
香くんも、ずいぶん積極的に…「遊びにいっていい?」と、いきなり心配していた事態が起きましたね。
呼び出しの吹きだしから拳が伸びるのはうまい表現です。
いきなり女を連れこむのは確かに信じられない行動です…。
利己丸出しの天使はとても笑えました。
手にいつもえっちテキストを持っている、というこずえちゃんも面白いキャラです。
帰ったらメイド姿…これは腹が痛くなるほど笑い転げました。
というか、この扉は完全防音なのでしょうか?会話が聞こえていたりして。
エロ本が転がっているのは自分の部屋ではなく共同の居間だったのでしょうか?
彼が毎週買っている…ということは成年向け雑誌ではないようですね。または売っているところに知り合いがいるか。
「男ってみんなエロ!?」で崩れるとは…青い春と書いて青春ですね(意味不明)。あ、冗談だったのですか。
いきなり物陰に引きずりこまれて、親切な特別指導というのもなんかすごいです。
そらまあ引きますよね…有効ではありますが。実行してみたら、確かにこれ威力あります。
「甘夏が好きになるはずだよ」という言葉も気になりますが、同時にいきなりのキスとは…
ここで「性教育の指導にきました」は爆笑!すばらしい。
空けてみたらなぜ彼が…陰で何があったのやら。
さらに見られてるし…さてもうなにがどうなるでしょう。頭がぐちゃぐちゃで楽しくて笑い転げています。

恋愛向上委員会ジューシーフルーツ
自分を変える、というのは…いい面も悪い面もあるんですよね。演じていると本当にいい人になっていくこともあります。反面本当の自分を見失う危険もあります。
友達とは、ちゃんと自分を見せた上でもっと仲良くなりたいという思いもあるようですね。
性格を変えるというのはそんなに簡単にできることなのかどうか…これもわからないです。
ファッションに気合が入るのはわかります。
なかなおりのアドバイスはとてもよかったです。普遍性もありますし、いいメッセージばかりです。

しゅごキャラ!
あ、考えてみると小学生なんですねこの子達。春から五年が三人、四年が一人、六年が一人ですか。
でもその差は相当大きいでしょう。小学校時代を思い出すと、四年と六年は色々な意味で別の世界の人間でした。
それぞれのキャラもしゅごキャラも面白そうです。
こころのたまご…なんか素敵な絵本ですね。でも大人になると消えてしまうとは限らないですよ?ただ、大人になっても持ち続けている人は…残念ながらそれにとらわれて経済的には損な選択をしてしまうことも多いのですが。
あくまで拒否する、というのが意外性あります。ケープが嫌だという理由も面白いです!
王子様のきらきら攻撃はかなりの攻撃力でした。
ガーディアン入りを断って、かえってクールといわれるのも面白いです。うまくいかないものですね。
いきなり耳元に出てこられてびっくりするのは面白かったです。
で、かくしどり写真…ああもう、笑いすぎて疲れました。
お菓子作り…それに反応した第三の卵は一体?
なでしこさんの大正風の和装もいいですね。
お菓子作り自体もすごく楽しそうです。
それで、第三の卵は…「一人でできるもんっ」?でも彼女はすごく今でも独立心が強く有能な子に見えますが。
いきなり終了はびっくりしましたね。さらに格闘と思ったらいきなりラブシーンになるのも。
で、こういうキャラでしたか…さすがにすごい。まあ、PEACH-PITファンにとってはこれも想定内でしょうが。
三人目の可愛らしいしゅごキャラは一体どういう…それもまた楽しみです。

二人はプリキュアSplash☆Star
守ってあげたくなる理想的な女の子…ここで男子出番なしなのがとても悲しいです。
手が早いって、まさか…はは、お弁当でしたか。
確かにわけわからないので、この説明は…ごめんなさい、パス。あ、「永遠の滅び」は矛盾した言葉です。
家族が前面に出ているのも、前シリーズなかよし版とは違いますね。
このお姿で「名前をまちがえられるのはけっこうヘコむものだ」が爆笑でした。
戦闘シーンの華麗さも実にすばらしいです。
人には色々な面がある、という発見も面白いですね。

ママコレ
う〜ん、ちょっと拍子抜けでした。でも後半が面白かったからよし。
この水はどこから持ってきたのでしょう。あくまで止まらない直樹の暴走はいいかげん見ていて疲れます。
あの大人は、そういう人でしたか…警察は最初から呼べって。
野性に返すのと、人間との不自然な生活と愛情の絆のどちらが幸せなのでしょう。もし、『野生の呼び声(ジャック・ロンドン)』で最後のバックの主人が…う〜ん。
ベビーのしあわせなんかより…これはベビーだから腹が立ちますが、どれだけの動物実験が行われているか考えると複雑です。
しかし、その動物実験を単純に非難するのも正しくない…近代初めにさかのぼって動物実験を厳禁することができたとしたら、僕らを含め生まれた子供の半分は病気で死ぬのがあたりまえだったでしょう。大切な人も、今は簡単に治せる病気であっさり死んでいたでしょう。けれども、その近代医学のせいで人口が爆発的に増え、今世紀中にも世界がめちゃくちゃになって何十億人も死ぬかもしれない…さあ、何がよくてなにが悪いのでしょう。
ま、賞のことしか考えていないのは論外ですが…まあ多くの医学薬理学者の本音は論文数&引用回数と終身在職権、そしてノーベル賞でしょうね。ただし、本音は言わずに建前で「人類のため、もしかしたら私やあなたの大切な人を助けるために」とでもいうでしょうが。
わがままいうと…これはひどい。
みんなちゃんと受け入れてくれたのは嬉しかったです。
そして…タマちゃんの家族のやさしさも。なんだか胸が痛いですよ。
この兄もすごいキャラですね。「お兄サマその役目ぜひオレに」という素直なスケベもいいです。
すごい顔のベビーは笑えました。
陽介くんが…今更告白する必要、あるでしょうか。
鼻にキスというのもいいですね。
今回のこのラブラブはドキドキしました。
このショートも面白かったです。家族それぞれのいい面をしっかり描いていて…
陽介くんをちゃんとパパと認めているのが嬉しいです。

キッチンのお姫さま
ギャーギャー!ハードな運動をしたくなるほどすっごいことになりました。
バスケシーンもかなり迫力あります。
告白する、と決めたら意識してしまう、というのは女の子らしさが出てきて可愛いです。
というか一々手を握るな。
この兄弟の対立もそういうことでしたか…「おまえには関係ない」という言葉が痛いほどわかります。
近づけた気がしたのに…それはまあ。
絶望しかけたところにきてくれて、「ここは客にいらっしゃいませも」ときつい一言…すごく嬉しかったです。
雰囲気が連載の前の頃とはぜんぜん違いますね。お互いあまり口をきかず、ついきつくなってしまっている茜…
そして、「べつに気にしてないわよ」「ひとりわかってくれる人がいれば十分でしょ」この言葉、もう涙が出そうになりました。
意地悪役と、こうして一番深いところでぶつかって和解できたら最高の友だちになれる…これ以上嬉しいことはありません。
カロリーゼロのお菓子…確かに夢ですね。
茜のために、と目標が定まったのも嬉しいです。
で、試行錯誤で大地が「本気で兄貴のこと」と言っているのをぜんぜん聞いていないのが…哀れ。
でもそれを見つめる瞳が、かわいそうなぐらい好きなんだな…と…あはは。
寒天なら今ちょうど流行っていますし、いいかどうかわかりませんが甘味料を使えばカロリーゼロも可能ですし…多少砂糖などを使っても、食物繊維効果を考えればむしろ体にはいいでしょう。
照れている茜が可愛い。本当の友だちがこれまでいなかったのでしょうね。
花を渡して額にキス…ちょっとちょっと…
で、これで大地にもお祝いして欲しい、というのは…ちょっとここまで鈍感なのも罪では…
大地が最低男に成り下がるほど、ナジカちゃんの鈍感さもすごいということですよね。
このキスの衝撃はすごかったです。すごくシャープでしたし。
さてこれからどうなるか…というか誰に目撃されていたでしょうか。
一気に大地が気になる存在になるし、これまでと違って男として意識するのも確か…どこに着地するか、それにどうコンクールを絡めるか…楽しみです。

シュガシュガルーン
一気に状況が変わりましたね。そして今回は面白い切り口で社会問題をえぐってくれました。
自分は一緒に行けない…ここのピエールはすごく心配でした。
ロビン先生が役に立ったのは今回が初めてでは?こうなるのはわかっていた、ダンブルドア的放任主義だ、とは言わせませんよ…というかダンブルドア的放任主義という言葉自体、炎のゴブレットで破綻してるんですから。
黒を扱うのに注意しているというのはわかりました。
使い魔が夢中になっているのもさりげなく描かれていますね。
純真ねえ…確かに黒、悪には純真の裏返しであるものも多いです。
頭にロウソクを乗せてシリアスにしているのもなんだか間抜けです。
カラスたちと問い詰める黒の眷属の迫力はすばらしいです。
決して白には戻れないピエール…ショコラちゃんがいつ無茶をするのか、心配にも思えます。
黒についての体験を語らせるのはすごく辛いことだと思いますが…そして、「ショコラちゃんのためならなんでもするからね」と、それも決していい関係じゃないんですよね。
まだバニラ、ショコラの関係も波乱がありそうです。
優秀で美しい、優遇される権利を持つ…ノーブレス・オブリージュがなければそれは非常に醜いものになります。
格差社会に日本が変化していると言われますから、このような露骨な差別も説得力はあるでしょう。
優越感と劣等感…魔法がなくても作り出す方法はいろいろあります。「他の人たちと自分は違うんだという自覚をもってね」という言葉自体や制服などおそろいの物、言葉づかいなども有効です。
勉強などができてもバッジがもらえなければ価値がない、というのも…将来本格的に格差社会が進んだ場合、今は実力主義ですが、実力すら意味がないほど格差が開いて固定される可能性もあります。
バニラちゃんが「もう二度とおくびょう者にはもどらない」というのもカッコいいですが、ショコラちゃんに追随しているだけなのか、それとも…不安はあります。
ショコラちゃんはさすがにカッコいいですね。
「見くだす心もひれふす心もどっちも黒」というのはまさにそうです…ヒトラーも一人でああ邪悪だったのではなく、多くの人に服従されること、そしてその多くの人が伝えてくるメッセージをかなえようとして邪悪を…大衆とキャッチボールしながら雪だるま式に大きくしていったのだと僕は考えています。
どうやってその見くだす心、ひれふす心の双方と戦うか…そして、だからって極端な見境のない社会の破壊に走ることなく正当な権威と間違った権威を区別するか…難しいテーマです。

きららプリンセス
今回の話の転換はスリリングでした。
本当に扉が開かれてしまったのは面白い転換ですね。
テーブルマナーは、周りで一番上品な人をひたすら真似れば失敗はないのでは?といっても…笑い民話にありましたが、みんなが失敗を真似てしまうという馬鹿なこともありえますが。というか教えていない両親や学校が悪いのでは…
やはりバルドーが、ここからどうなるのでしょう。
そしてきららちゃんの決意と…バルドーがだまそうとして預けるように、という言葉、このあたりはすごく緊迫感がありました。
そして突然シンデレラの世界!現実世界ではもうチェックメイトに思えるこの状況から、一体どうなるのか…そして、今ティアラは誰の手元にあるのでしょう。

王子様のつくりかた
一気に緊迫してきましたね。
颯月の回想はとても胸が痛みます。必要とされていない嫡出子と、必要とされている私生子とどちらが悲しみが深いのでしょう。
「立ちどまったらきっと〜汚染されてしまうから」という姿勢を取れたからこそ、今こうしてなんとか人間でいられるのでしょう。これだけの悲しみを背負って、負の感情に心を任せていたらもっと最悪だったでしょうから。でもいつかは…負の感情と対決しなければならないときはあるでしょう。
ユイリちゃんや…みんながそれを助けてくれればいいのですが。
禅、純は退場ですか…ちょっと残念。というか禅、結とユイリどっち?最後は出てきて欲しいですね、特にカッコいいアクションシーンで。
ユイリの立場で読んでいると、わけがわからない緊迫感と憎悪に体が引き裂かれそうになるのを感じます。
「いまも愛があるかどうか」という言葉の鋭さも強烈です。
一番深くユイリを傷つけてしまった、でも…それは自分の痛みを共有したことでもある、という満足感も…複雑で強烈な思いがガンガン伝わってきて、ちょっと正気を保つのが難しいぐらいです。
陽太のここでの行動は、ユイリのためと颯月のため、一体どちらなのでしょう。
ハイリたちが隠しているのは一体何でしょう。それも不安です。
どんなクライマックスを迎えるのか、とにかく楽しみですね。

とき☆めか!
初めからそこを探すべきだったかもしれません。
おびきよせるといっても、美祈の目的は星子を探すことですから、今美々依ちゃんを確保することに利益はありません。泳がせて最後に押さえるのが最善です。
ルーディとアルティ…確かにこの二人も頼もしいですが、そうなると…こっちは立場がないですね。
足の一本ぐらい機械と取り替えても、と思っているでしょうが…それができるのは星子だけですから…
この議論は美々依ちゃんの言葉のほうが正しいですね。まあ論理の飛躍についていけないのはわかりますが…それは伝わらないですよ、両方が自分より相手の方が大事なんですから。
で、話したことは何でしょう…単にキスしたかっただけかも、という気もしますが。
ここでの美々依ちゃんの暴走は笑うほかありませんでした。といっても踏むこと…「指から折りまーす」はやはりロボットですね、必要とあれば…美々依ちゃんの命令ならどんな拷問虐殺も平気なんでしょう。
大人になった、って…これでいいのでしょうか。
鴨ネギは笑えましたね。
そしてアクションシーンの見事さはさすがでした。電磁鞭もパターンどおり、そしてこのパワーアップも…
「ひたすらあやまってカードで弁償&フォロー」というのもいいボケでした。
ここからはもう、めちゃくちゃといっていい…009たちより強いんじゃ、と…
腕がもげても平気というのもやはりロボットですね。
美祈に拳銃を突きつける距離も絶妙です…これまで僕が何回か、色々な感想で近づきすぎるなと言ってきたからでしょうか、この距離では逃げることも拳銃を奪うこともできません。
このロボットたち…いや、星子ちゃん自身本物でしょうか?
ムージュのお花…?
あ、この描写だと刃のように見えますが、鉢割というのは刃も鋭い先端もない、やや平たい鉄棒です。刀から身を守り、防具の上からでも打撃を加えるのに適した逮捕、護身用武器です。
すっと現れて一瞬で治療してくれるニコが一番怖い…美しい笑顔がものすごく怖いです。
ここで星子ちゃんが美々依ちゃんを無視したのは…
この幻想的な雰囲気と…というか、結局ヒーローの出番はあるでしょうか?それが心配です。

地獄少女
間違っています。絶対間違っています。人間として、これが正しい道だったとは絶対言えません。
この作品のコンセプトで、これまで見逃していたことがありました。
多くの話で、「子供が大人に寄せている絶対的信頼が壊れた」ときに「子供が何を言っても誰にも信じてもらえない」ということが、被害者の無力感を過剰に増幅させ、地獄少女の道以外ないと思い込まされているのです。
子供はそれ自体はほとんど無力であり、大人が保護(反面として監督)する必要があります。
だから子供は大人を信頼します…特に親に対しては、生来ほぼ無条件の愛情と信頼を抱きます。
そして大人がその信頼を裏切ったときは?
思春期の不満の本質の一つにそれ…大人、社会に裏切られたという感じがありますが、この作品で描くようにもっと直接的、暴力的な形で信頼を裏切られたら?
子供の本来的な無力さを考えれば絶望は仕方がないように思えます。そして、その絶望から逃れる道はこの作品のような悪魔か、または実際に虐待を受けた子供がやるように自分の心を壊してなんとかある程度機能するようにするかしかない…のでしょうか?
僕はそうは思えません。悪の被害者となった人には、子供であろうと大人であろうと、いくつか自分を守る手段があるはずなのです…誰かの助けを求めること、同じ痛みを持つ者同士で助け合うこと、そして、最後に自己防衛…暴力。どれも、多少失敗しても痛くても信じてもらえなくても頑張りぬく意志の力と、どれか…特に法…にこだわりすぎず、どれか、誰かがダメなら他を模索する柔軟さが必要です。
どれも子供には不可能だというのは、そう思い込まされているだけです。どうしようもないと思えた五千万恐喝事件も、たった一人の真人間がいただけで急転直下解決したのですから…
今回はちゃんと、被害者にどうしようもないと思わせる悪の迫力が描かれていてその点は満足できました。やはり永遠先生の力はすごいですよ。
序盤の「天国でまた会えるように」という言葉と、徐々に高まっていくサスペンス性は見事でした。
最初はいい人だと思い込んでしまう、そして…千紗ちゃんが、もしかしたらお姉ちゃんも自分の言葉より百合絵の言葉を信じてしまうのでは、という不安を感じたのも強烈に伝わって、胸が詰まりました。
そう…最初は千晶ちゃんも「ウソつくような子じゃなかったのに」と、百合絵の、大人の言葉のほうを信じているのです。
傷を見たことで初めて信じ…なぜ千紗ちゃん自身がやらなかったのでしょうか…彼女がパソコンに触れられないようにしていた?
糸を解く、というのが今回初めて出てきましたが…これは人を殺すかどうか、というためらいの暗喩でしょうか。
この後も、どちらを信じるか揺れてしまっているのがわかります。百合絵がもう少し巧妙だったら、千晶ちゃんもそちらを信じてしまっていたかもしれません。それがとてもいいサスペンスを作っていて、胸を締めつけてきます…心拍もどうしようもなく上がっています。
「あんたたちのいうことなんて信じてもらえないってわかってんの」…今は写真機付き携帯電話というものがあり、単にここは引き下がるふりをして盗聴器、隠しカメラを仕込んでそれを警察とマスコミ両面に流せばまず大丈夫。
まして、刃を相手が振り上げた以上、わざと怪我をして警察に駆け込めば…一度は警察が言いくるめられたとしても、もう一度同じ状況を、今度は隠しカメラの映像付きで作るようにすれば確実。
というか、警察が捜していたのですから大声で悲鳴をあげるか警察に駆け込めばよかったのです。
といっても…今回は、恐怖に圧倒されていたので冷静に考えられなかったし、この現場に至るまでどちらを信じるか揺れていたので冷静にいろいろな手配をしておくことができなかったのですが…
かといって、地獄少女以外になかった、というのは僕は認めたくないんですよ。
それぐらいだったら、暴力で相手を殺してでも自分たちを守るべきだったのです。
地獄落しはもう見ていて疲れるだけでした。
この作品では、あくまで地獄少女しかない…大人が子供の信頼を裏切ったら、子供同士でも信を失ったら…絶望が答えのようです。
でも僕は絶対にそうは思いません。それは間違ったメッセージです。
千晶さん…あなたには自分や大切な人を守る権利があります。この世で、現実の力で。
それはたとえ、警察検察世間は事実上正当防衛を認めていないという現実があっても、決して否定できない憲法以前、法以前の普遍の権利なのです。
絶望よりは、自分を守った上でソクラテスやカサンドラのように正しいことを行い、悪法も法だと毒杯を甘受することを選ぼうではないですか。それも来世ではなく、現世で、自分の手で。
僕はあなたが魂を失わず生きていてくれればそれでいいです。
きっとお母さんもそのほうがよかったと思い、この結末を悲しんでいますよ。千紗ちゃんが救われたことを喜びつつ、天国で千晶ちゃんに再会できないこと、そして何もできなかった無力を何よりも悲しんでいるでしょう。
というか、ラストで姉妹を見守る地獄少女の目は、これでよかったのだといわんばかりの微笑ですが…許せないですよ。あのときに「どちらがウソかはわからないけど、万一のために本当に虐待があったら確実に告発できるよう、隠しカメラや盗聴器を仕込んでおいたら。そして自分も念のため武器を持っておいたら」と忠告しなかった以上、地獄少女はこの結末以外ないように千晶を誘導した…その罪は百合絵以上に重いです。
やはりこれほど許せない作品はないです…確かに永遠先生に脚光が当たり、その意外な力を引き出してくれているのは嬉しいですが。

次号の白沢先生の連載はすごく楽しみです。またあの可愛らしさを堪能できるのか、と思うと…

あと、予告では地獄少女のあいが「苦笑」と書かれた扇子を持っているのが笑えました。

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