なかよし2006年春ラブリー感想
リニューアル、というのはシリーズが多くなるだけのようですね。
元々メンバーの固定化が進んでいましたから、そんなに違うという気はしていません。
ショートコミックなどがとても増えているのは、これまで見逃していたかもしれない大きな変化です。
あと本誌連載番外編は一つ一つのページ数が本誌連載一回分より多かったのですが、それもこれからずっとでしょうか?
表4のお遊びはちょっと呆れましたが楽しいです。
でもその分広告を入れて、価格を下げるか価格据置でページ本数を増やすかしてくれたほうが個人的にはよかったです。
あと今回のお遊びでは、柱でのキャッツも興味深かったです。
内容はどれも満足でき、特に久しぶりの作家の良作が光りました。
反面、どうにも読みきりの枠が縮小した印象は否めません。
ここ二、三年、デビューした作家のほとんどは非常に登場回数が少ないです。それは、どうしようもなく枠が足りないということでは?
理由は単純、本誌連載番外編が多すぎるのと、水無月先生らが本誌連載に上がれず毎回登場し、結果的に枠を狭めているからです。
結果的にシリーズにしたのは、その状態を追認しています。
本誌にどうにも連載枠が開かず、別の姉妹誌を作る余裕がない…「Chu-Girl」も失敗…状態では、ラブリーを実質的な姉妹誌にするのもやむをえないかもしれませんが、それで新人枠が極度に減ってしまうのはよくないでしょう。次の次、五年後十年後にどうしようもないことになります。
水無月先生らをちゃんと生かしつつ新人枠をもっと確保することは難しいのでしょうか。
ママコレ(遠山えま)杏仁小娘(川村美香)かみちゃまかりん(コゲどんぼ)プリキュア(上北ふたご/藤堂いづみ)キッチンのお姫様(安藤なつみ/小林深雪)プティの日記(明日賀じゅん)チェリージュース(フクシマハルカ)私立ヤバスギ学園(恵月ひまわり)魔法のおとなり(水無月真)ラブパズル(高上優里子)天に星地には花キミに愛を(山田デイジー)リアルの法則(水沢友希)ぴよっこガーデン(猫部ねこ)しょんぼりキック(ゆみみ)恋とパンチ(大原彩)ラブペット(美麻りん)恋愛プリンセス(みやび鈴)小川とゆかいな斉藤たち(茶匡)あっぷるポンタン(木村千花)
ママコレ
ただただおバカ、という感じですが、さりげなく最後にとんでもないことをやっています。
意味がわかってやっているのでしょうか?
ベビーに羞恥心が…キリスト教圏から見たら、それはベビーは人間であるというのと変わりありません。創世記で、アダムとイブが知恵の木の実を食べた時に、自分が裸であることに気づいて恥ずかしくなった、それこそ人間と動物を根本的に分けるものですから。
だからベビーをペットにすること自体認められない、市民権、選挙権を与えるべきでは…とそういう問題になりますよ?たとえばもし、服を作って着ていて裸を恥ずかしるサルが発見されたら、言葉が使えないとしても、人間と同格なのではないかという論争はチンパンジーについて歴史的に起きたものより遥かに大きかったでしょう。本当に洗礼、市民権が認められてしまう可能性もあります。
まあおおむね、タマと陽介のラブラブに色々な個性豊かなベビーたちやベビ友のおバカも楽しめました。
このコンテストみたいなのは犬猫でもないわけではないですが、犬猫は主に血統が重視されますね。単純に可愛らしさを競う大会なら、うちの雑種だって…
「なんでもおねがいきくから」、でそこまで妄想するのもストレートでよし。男なら当然です。
ファッションって…ツッコみたい。
いつも自分がパパ役なのが嬉しい、というのは可愛いです。僕にはそんな幼児期の記憶ないです。
このファッションショーは、むしろみんなの服を楽しみました。
バカがいる、はただ爆笑でした。
脱げて満点というのは頭が痛くなりました。「もともとはだかじゃねーか!」というツッコミに賛成。
喜んで抱き合うのもドキドキしました…陽介は結構ドサクサ紛れかも。
はたから見たらカップル、と今ごろ気づいて、ドキドキするところは可愛いです。
抱っこしちゃって失格、というのはわかります。
このサバイバルで、やっていることのスケールの大きさと、陽介の可愛いまでに切ない心情のギャップがまた面白いです。
こういう等身大の男の子の思いをさりげなく描いているのがこの作品の魅力でしょうか。
ラブラブなのにあっさり失格だったのは…
ままごとの理由は納得します。でも…「ほかの男子はこわかった」というのが、陽介くんも同じ男子だ、とわかってからどうなるかが心配であり、楽しみでもあります。というか陽介くん、今の時点で他の男子以上にスケベ丸出しですが…
キャラクター辞典は面白いサービスでした。
杏仁小娘
中国の山奥からやってきた少女、杏仁が、着いたそうそう荷物を奪われそうになって歩いて目的地まで行こう、と決めた。そんなとき、遭難状態のハイカーがいい匂いに惹かれて言ってみると、そこでは料理を作っている彼女…ふるまってくれた料理を食べたとたん、いらいらして争っていたみんながあっという間に落ち着いてしまった。
ハイカーの一人、潰れそうな中華料理屋の息子である凌くんの店で、大食いタダ企画をやることになったが、質の悪い客(最初に出た悪者)がいいがかりをつけて…そこに現れた杏仁がぱっと料理を作ったとたん、なんと悪党が改心してしまった!
中華料理の究極奥義を極めた彼女の目的地は凌くんの店、さてこれからどうなるやら。
また川村先生らしい、すごく楽しい作品です。
悪人のわかりやすいキャラ造形が特にいいです。
チャイナドレスに抜群のスタイル、とすごく魅力的な主人公です。中国人としてのキャラが極端でない…反日が強調されていない…むしろ「Dr.スランプ」の摘一家のような印象は、違和感と好感を同時に感じます。
いきなりえらいことに…華麗なアクションも素敵でした。
これってちょっと遭難でしょうか?道がわからないなら行き当たりばったりに動くより、水路を下るかできるだけ高い頂に上がって見回して道を知るのがいいでしょう。
また、日が暮れるまでに露営の準備を整え、まず水源、できれば食料を確保するべきです。
ケンカばかりしているようじゃどうしようもないですね。
いきなりチャイナコスプレの女の子…これは驚きますね。僕だったら…残念ながら中国語は知らないですし、漢文はある程度読めますが書けません。
ケンカしているのを見てこの明るい対応、料理シーンの微妙な色気と華やかさのバランス、すごく素敵です。
パニック状態で攻撃的になっているのが気持ちが落ち着く…この設定は素晴らしいです。
凌くんのドキドキを繰り返し描いているのもいいですね。
しっかり押し倒して別れて再会、というお約束も安心して楽しめます。
凌くんの家の設定も面白いです…「少なくとも店に客が入る」「にぎやかなほーが店が活気づく」というのは正しいです。
例の悪漢が客で、いきなりこんなせこいことを…凌くんの対応は間違っていませんが、こうやられたら実に難しいです。
いきなりドアで手をはさんで、これは痛い…ごちゃごちゃしたところであっさり料理で解決、というのは強引でしたが引き込まれました。
で、この悪漢二人が思い出を引き出されて改心するのは思わず笑ってしまいました。すばらしい。
よほどいい感情が詰まっているんでしょうね、彼女は。そのほうがすごいです。
二人で料理するシーンも素敵でした。
全員完食、賞金で大赤字…でもそれは必ず取り返せる生き金ですよ。
さて、こんなすごい料理人がどんなトラブルになるか…今はプラスの感情で一杯の彼女に、特に恋を入り口にどんな…色々楽しみです。
とにかくものすごく面白いですし。
かみちゃまかりん
というか…これまでのストーリーを忘れてしまっているような…というか読んでいない読者にとって、元夫婦とか親子とかは混乱するのでは。僕だってよくわかっていないのですから。
いきなりのイギリス行き宣言、のんきな花鈴ちゃん…ここから、徐々に花鈴ちゃんの怒りと和音くんの亭主関白が強まっていくのが面白いです。
ギャグの配合もさすが。
全てが終わったはず、でもゼウスの指輪が見つからないし…それに、ギリシャ神話の神々ならまだウラヌスなど前世代や巨人族の脅威もあるのでは。
イギリスに留学…でも読み返すと「姉妹校について質問してきた」というだけで、和音くんが留学するとは一言もいっていません。
写真をザビエルに張り替えるという公文書偽造は笑えました。
虫いっぱい作戦をやろうとしたら自分も自爆する…メイド服で甘えまくる花鈴ちゃんはすごく可愛い。
和音くんの虫嫌いも相変わらずです。
ミッチ―の思いもわかります…和音くんも、男にこだわるのも程がありますよ。さすがにこれはひどい気がします。
叫んだら木の上から落ちるって飛影みたいですね。
自分たちにとって生きる理由でもあった、というのも…その空白は危険な気もします。
「取られたらうばいかえす」って、なんだか小突きたくなってくる言葉でした。
留学は姫香ちゃん…ということは、第二部には出番なし?
見送りの服装もすごい可愛らしさです。
唐突に「キスしよっか」はびっくりしました…すごくドキドキしました!惜しいのはお約束ですが。
さて第二篇はどんな展開になるでしょうか。色々未解決の伏線もありますし…今度はコゲ先生らしい暗さもあるかも…
ふたりはプリキュアSplash☆Star
実に微妙な問題でした。
そしてしっかり話も進んでいますね。というか、ちゃんと筋の中なので、むしろ本誌しか読んでいない読者がおいていかれないか心配です。
ツーカーの仲に早くなりたい…でも、だったら優子ちゃんと咲ちゃんがどうやって名バッテリーになったかを思い出せばいいのでは?出会ってすぐそうなれるはずがない、優子ちゃんともケンカしたり、色々な試練を乗り越えてきたはずです。
積極的に相手を知ろうとする咲ちゃんと、ちょっと引いてしまう舞ちゃんのずれ、結構危機感を感じるいい展開でした。
血液型や星座など、占いを頼ってしまうのが女の子らしいというか…
兄の存在も面白いです。星が近づきすぎると互いの引力で壊れてしまう…それもいろいろパターンがあり、面白い現象です。ありのままで、というのもいい忠告ですね。一番難しいですが。
僕だったらこういう、接近を恐れている人には「ハリネズミのジレンマ」を言うと思いますが、あえてそれを言わなかったのはなぜでしょうか?
「そのおいしそうなパンひとつくれないか?」というのもいいギャグです。
自分は相手を大切に思っている、でも相手の気持ちがわからない…これが信の一番難しいことかもしれません。
咲の自己犠牲的な助け…それから舞の自己卑下、それを咲が包みこんで笑い、そしてスケッチブックで思いを確かめて…いい展開ですが、「ぶっちゃけすぎだろオマエら」というカレハーンのツッコミが笑えます。
滅びの力に逆らうことは…熱力学第二法則には確かに何物も逆らえませんが…生物は太陽や地熱という高熱源と宇宙という低熱源がある限り、その熱力学第二法則を逆用して自分を保つ存在です。
戦闘シーンの華麗さも素晴らしいです。
アクビちゃんの続編もすごく表現力豊かで楽しめました。上北先生にはもっと活躍して欲しいです。
キッチンのお姫さま
唐突ですね。ナジカちゃんの経済状態という謎も少し明かされたかもしれません。
あまりに父子そっくりで苦笑しました。人使いあらい、乱暴、石頭…ってそれもそっくりですよ。
体力がない、というのは確かに致命的かも。三十キロの小麦粉袋を扱うこともあるでしょうし。
フジタさんが話をつけておいてくれていない、というのも呆れる話です。
食べてみたらとてもおいしい、味覚で認められて…それは普通の女子中学生じゃないでしょう。
頑固商売で客がこない、というのも笑えました。本当に息子そっくり。
兄弟の協力は、本編ですごいことになっているのが嘘のようで楽しいです。
記念日…あ、大手店の量産品だと、誕生日やクリスマスもどうしても印象が弱くなるんですね。あと、ケーキ自体が贅沢品だった昔とのギャップもあるのかもしれませんが。
「おじさんにケーキ作ります」と抱きつくところ、この人懐っこい明るさも魅力ですね。そういうプラスの感情にあふれていて、それを伝える力は杏仁ちゃんにも負けないのでは。
おいしいお菓子がみんなを笑顔にする…砂糖と油脂の、習慣性があって肥満につながる向精神薬という側面もあるんですが…
思い出作りの手伝いができる…確かに素敵です。
わざわざ結城さんの説明が必要、というのがちょっとかわいそうでした。今度はどんな恥をかくことか…
確かに十分で二十人分は無茶に思えます。
ここでのおじさんの登場はカッコいいですし、「ケーキ屋としてもっと大切なことがある」という台詞もさすが。
ホットケーキミックスに電子レンジ…なるほど!入り口としては、そういう便利なものを使うのもいいかもしれません。
息子の嫁…兄弟しか見ていませんでしたが、意外な大穴が出てきましたね。
というかフジタさん、ずっと心配してのぞいていたわけですね?
というか学食って、長期休み中はどうしていたのか…それは考えていませんでした。完全に閉めるわけにもいかないです、部活が結構ありますから。ある程度人数を減らし、その減った分の人員は…逆に需要が増えるリゾート地などでバイト、ということになるのでしょうか?
この親子の会話は仲がよすぎて…確かにケーキで片付けるしかないですね。
すごく素敵な作品でしたし、このカップケーキも簡単で便利なレシピです。
小さな妖精プティの日記
ネバーランドにある妖精の谷には妖精たちが住む。
一番小さくドジで不器用なプティーも、もうすぐ一人前の妖精になる日がやってくる。そのときには自分が何の才能を選ぶか考えなければならないけれど…それより月の宴が楽しみ!
でも小さすぎるプティーは足手まといで外されてしまい、とうとう妖精の谷を出て行ってしまう。
そこで憧れのティンカー・ベルと出会って励まされた帰り道、洪水を見て何とか止めようと上流で堤防を作るが、力尽きて…
この話、身につまされるようですごく読んでいて苦しかったです。僕自身これを読んで以来、失敗して自分はだめだと思って泣いてしまう夢を何度も見るほどに…それだけ多くの読者が共感したと思います。
無理にディズニーにせず、自分の絵で描いているのも好感が持てます。
ティンカーベルでちょっと思い当たってしまったのですが、確か…妖精は非常に寿命が短いから、ウェンディの子供の話の時にはティンクはもういなかったのでは…この話はウェンディたちがロンドンに帰った直後でしょうか?
蜘蛛の巣はかなり危険ですね…でも花や虫を小さい視点から、すごく的確に描いていると思います。
ディルのクールなキャラもいですね。
人間の赤ちゃんの笑い声がない、というのは悲しいことです。
小さくてうまく手伝えない、「そのへんで遊んでな」といわれる…これは僕にとっても消えてしまいたいほど苦しかったです。背を増やそうとして厚底靴を作るのも、その気持ちはよくわかります…誰か、プティ―にできる仕事を作ってやればいいのですが。たとえそれが、より低い年齢のための仕事でも。
一時からかい半分に受け入れても、やはり結局は排除している…この疎外感も、あまりにも共感できすぎて読んでいて泣き出しそうです。あの頃の自分に戻ってしまったら、もう…
ティンクの励ましはすごく暖かく、嬉しかったです。
倒木を利用してダム、というのは確かにいいアイデアでしたが、実はそのダムが決壊したらすごく危険でした。下流のみんなに連絡すべきです。
それで流されてしまうシーンも悲しさが伝わって、とても辛かったです。
こんな隙間で消えていこうとする、その思いもわかります。
だから、助けてもらった時の嬉しさも素直に伝わりました。
さあ、彼女にはどんな才能が隠れているのか…楽しみです。
チェリージュース番外編キミノトナリ
番外編は結婚式か新婚編か、と思ったのですが…まるで、そう…Zガンダムとその劇場版みたいに、全体を短縮して再解釈したような感じです。
出会いが教会というのも考えてみれば当然ですね。
この飛び蹴りはちょっとフォームが無理なのでは…。
南くんの立場から、キョーダイであることがムカムカすると気持ちを描写しているのもいい見方です。
男の事情というのはそれはあるでしょう。本当に言ってしまったらどうするのでしょうね。
想像して鼻血を吹いてしまうのはよくわかりました。
「南…いつまで気づかないふりしてるの?」という残酷なまでに真実だけなのは昔からだったんですね。
でもまだ素直に認められなくて、行き場のないものが…壁に押しつけて「カンケーねーんだよ!」…若いな、としか言いようがないです。
周くんに「うふv好きでーおしかけちゃいましたーv」は笑い転げました。
もうどうしようもないですね、これは。「とりけすとかナシだぞ」「こっちがムカムカしてきた」って、それだけでもう前半は尽くされてます。
やっと意味がわかって…部屋に舞い込んだひとひらの花びらが素敵です。
もう、本編全部がこの読みきりに尽くされているような気がしますよ。
私立ヤバスギ学園
ツッコみたいことは死ぬほどあるのですが…その大人っぽい先輩たちも男子の性奴隷にされているのだろうとか、踏み台にしているアッガイはどこから出したのかとか…
魔法のおとなり
塩崎先輩に憧れている瑠璃ちゃんに、突然見知らぬ制服を着た男子が話しかけてきた…が、他の皆は転校生として受け入れている。
誘われて準備室に入ったとき、彼は正体を見せた…悪魔のトイドリット・シュタイン。瑠璃ちゃんの先祖と彼の一族が契約したらしく、願いを一つかなえてくれる、と。
でも願いどうこうより、紛らわしい言葉で親しく話しかけてくるのでみんなが騒ぐ方がたちが悪い…
そして彼は塩崎先輩との恋をかなえてくれる、と魔法の卵を渡してくれたが、願いが100%でないから失敗してしまった…
さすがに面白いです。豊かな表情、学校風景から魔法までの鮮やかな描写、何もかも最高です。
確かにタンポポも春の花ですね。僕も雑草の花が好きなので、その気持ちはわかります。春を告げるおおいぬのふぐり、秋に輝くネジバナ…一年中見られますがタンポポも好きですし露草も大好き…苗はないですが、種は簡単に手に入るでしょう。駆除するのが大変なぐらいです。
「大好きです……見てるだけでもしあわせです」ってそれ、タンポポじゃなくて先輩…ふふ。
読み返しているとなっちゃんの表情も微妙ですね。
いきなり登場した転校生、そして手も触れずに閉じる戸と手の炎…から出てくる契約書、この自己紹介シーンの呼吸と迫力は絶妙でした。
「んなレトロなっ」とか「よくわかんないけど」とか、ちょっとプチツッコミが入っているのも楽しいです。
あとでいーや、で宿題を忘れる…ひょっとしたら昔の契約者もその延長で、願わないまま死んでしまったのかもしれません。
トイくんの紛らわしい台詞の連発は見ていて楽しかったです。
「着がえてよーがフロ入ってよーがこいんにちはvだ」という台詞も、確かにみんなの前で言う言葉じゃないですが実際やらかしてから説明するのではなく警告してくれたのは親切ですよね。
実際やらかして欲しかった気もしますが、まあそれは次回以降を楽しみにしましょうか。
確かにこれを見れば、願いはわかりますね…確かにそれがトップ3に入るのも世の常です。他の二つは…不老不死と富権力でしょうか。
100%本気の願いごとなら願いがかなう…それから出る制約も非常に面白い設定です。
「はてしない物語(ミヒャエル・エンデ)」も思い出します…願いをかなえるといっても、本当に何が欲しいかわかっていなければ…願う者が自分自身を知らなければかなえようがないし、いいことは何もない…
あ、アレイスター・クロウリーの「汝の意志することを行え、それが法の全てとならん」という物議をかもした言葉も、「自分自身を知り、それで自分が本当にしたいことを行え」とするなら悪い言葉ではないですね。それが難しいからこそ危険なのですが。
そういえば水野良「ロードス島戦記」はじめアレクラスト作品群で、暗黒神の教義が「汝の欲する事をなせ」であり、それは悪ではないにしても成熟していない人間には危険すぎる、と語られていました。
それに論語為政第二、七十而従心所欲不踰矩…七十歳になったら思うままにしても道に外れない、孔子が学に志て以来長い生涯の末にたどり着いた境地もそれでしたね。
魔法シーンの華麗さ、失敗の間抜けさも素晴らしかったです。
いきなり「ママゴトっぽいな」と決めつけるのは…ちょっと容赦なしに心にメスを突き刺してますが…
この口げんかは楽しいです。悪魔サベツ、というのも楽しい言葉でした。
つい隠れてしまって、それでなっちゃんと先輩の気持ちを察してしまう…もしトイと出会っていなかったら、ここまで見えたでしょうか?
まずはぐれちゃった、と寂しくなって階段から落ちてしまって、その拍子に真実が見えてしまう、というのもすごく真実だなと感じます。真実、特に自分に気づくのは思いがけないきっかけによるものです。
抱かれた状態で泣き出す、スキンシップの多さも素敵です。
「消してやろうか?彼女を」…悪魔が邪悪なのは、もしかしたら人間が邪悪だからかもしれません。もし人間の願いを何でも善悪なしにかなえる存在がいたら、それはもう邪悪以外の何物でもないでしょう。よく解釈すれば、魔法が発動した時点でリンゴを捨てるのはわかっていたことだったかもしれません。悪く解釈すれば、実はトイには契約者を破滅させる義務もある、とか…
でも、迷いもなしにこうしてリンゴを捨てられるのは…恋が軽いから、というのも事実でしょう。特に激しい恋には、自分でも制御できない、激しい憎悪を伴うものもありますから。逆に、人を憎まないような、自分で制御できるような恋は本物ではないともいえるかもしれません。あ、ここのリンゴを捨てるシーンの構図もすごい。
トイの分析の残酷さは見ていて痛いです。もしそんな悪魔と中学の時の僕が…考えただけでどれだけ、真実を見出せる代わりに傷つくことになっていたか、考えただけで全身筋肉痛です。
でも、ママゴトならおしまい、とちゃんと真実を受け入れ、切り替えられるのは…瑠璃ちゃん自身の賢明さですよ。
この願いもすごく素敵です。
そしてこの二度目の魔法はますます華麗です!
それがこんなことで失敗に向かって、まさかこんな危険なことになるなんて!
確かに少しでも魔法を知っている人間にとっては、正式でない儀式の中断は危険だとわかっているでしょう…パソコンや溶鉱炉と同じように。でもまあ、「そんな「フツー」しらないもんっっ」は当然ですね。
血と名前で、という略式召喚の設定がこんなことで活きてくるのも見事でした。これからもその略式召喚の設定、色々活きてくればいいですね。
嬉しくて抱きつく「わんころみてーなやつ」というスキンシップも楽しいですし、契約更新も楽しい意外さです。
結果オーライも嬉しいついででした。
そして…次回以降、今回見えた「汝自身を知れ、而して汝の欲する事をなせ」という相当深いテーマを追求してくれるならそれほどすばらしいことはありません。そしてトイに、悪魔なのに悪い面が感じられないのも疑問であり、もしかしたらと期待を持たせます。
ひょっとしたら、増刊だから許されるのかもしれませんね、そういうのは。
ラブパズル
宮迫高校放送部の琴子ちゃんは、いつも企画を没にされている。
逆に過激な企画をいつも考える「やらせの常磐津」くんが部長はお気に入り。でもあんなやり方認めない…
が、「宮高告白伝説」についての企画を組んでやるように部長命令!
「部活動連絡黒板」に、今は廃部になった「映画研究部」のプレートを活動アリにすると、旧クラブハウスの部室の鍵が開き、そこに呼び出して告白すれば必ず成功、二人は永遠に結ばれる…
ロマンチックな話にドキッとしたけれど、それも自分ででっち上げたやらせなんじゃ?
高校三年というにはちょっと幼い印象ですが、すごく可愛いしちょっと色気もあります。それに表情や瞳、ボディランゲージの表情豊かなこと!
やらせの常磐津…ミス宮高密着24時、ってどんな番組だったのか見たくもなりました。
この二人、普段からもこんな関係なのでしょうか?
告白伝説も面白いです。「みんな好きでしょう」って、琴子ちゃんの表情を見れば
いかに女子がそういうのが好きかは一目瞭然ですね。
この調べものの量、実は常磐津くんってかなり緻密に下取材をするほうなのでは?
資料が見つかって急接近してしまって、どぎまぎして慌てるシーンも楽しいです。
先生も今後、色々な形で出てくるのでしょうか。
ずっと反発していたのに、自分から腕を組んで「ナゾをぜんぶとくまで」と、
なんだか見ているほうが恥ずかしいです。というかもろ、胸当たってません?
プレートがかわっていて、行ってみたら…ここはものすごくドキドキが伝わってきました。
琴子ちゃんがいつも全身で感情を表現しているのと、暗さをうまく使った効果でしょう。
常磐津くんの告白…でもビデオの存在、さすがにこれは僕もかっとなりました。
殴るのもわかります。翌日の徹夜の表情もすごい…というか、ビデオはどうなっていたのでしょう。
それで、「きいてますか先輩!?あのときの告白おれ本気だったんです」はもうパニック!
全校放送じゃ…おいおい。
強引に抱き寄せての告白もすごく情熱的で、抱き合うシーンも…こんなの見せつけられた
全校生徒、もう暴れたいです。
はあ…たまりません、いろいろ。
次からはこの「宮高告白伝説」が中心のオムニバスでしょうか?
毎回このテンションでラブラブしてくれると思うと楽しみでなりません。
天に星 地には花 キミには愛を
赤いチューリップの花言葉「愛の告白」、それを誕生日にもらうのが夢…そんな紗枝ちゃんは幼なじみの明良くんが好きで、小さい頃から毎年それを催促している。
クラスは離れたし、彼は女の子に囲まれているから誰かに取られないか不安で…
でも、少しずつすれ違いが生まれて、なんとか「小悪魔的恋愛テクニック」で挽回しようとしたけどそれもうまくいかず、ついにヤキモチを焼かせるのを試そうと…
なんだか見ていてすごくはらはらしました。
クラスが違うのが悲しい、…うーっ!その気持ちは痛いほどわかる反面、学校が同じで家も近所なだけで充分だろ、と体がはちきれるほど叫びたいです。
窓辺のチューリップが気持ちを語っているのもうまい。
週二日は塾、二日は部活…だったら一日は空いているのでは?
毎年の催促というのも可愛いです。うらやましくもありますが。
ついチューリップの花束といえなくて、映画にする…彼が赤いチューリップの意味をわかっているとしたら、映画の方がいいというのはもう好きじゃない、という意味に誤解されるのでは?
電車の揺れで抱かれて、彼が男だとあらためて意識するシーンも素敵でした。
小悪魔的テクニック…ただ苦笑。
ヤキモチ焼かせる、というのは頭を抱えました。アホかと…素直に告白すれば…まあ人のことは言えませんが。星に祈るところで、チューリップのつぼみがふくらんでいるのがすごくいいです。
日向くんの登場も、序盤からちょんちょんとステップアップしているから素直に思えます。告白しようとしている子の可愛らしさにやられてしまう、というのもわかりますよ。
帰り道とかでチューリップがちょこちょこ出ているのも芸が細かい!
積極的な日向くんの行動に、ヤキモチ焼かせてみようと…それにはらはらして、特に明良くんの一言に傷ついているのは愚かしさに泣きたくなって…
雨の中チューリップの花びらをむしりながら祈っているシーンの切なさもすごい。
それで、映画になって明良くんがきてくれて、ここでは嬉しい喜びというかなんともいえない幸福感です。
日向くんも…結構紗枝ちゃんにドキドキしていたようですが、あえて取り持つという…すごく素敵。
そして花束を渡して、「なんか腹立ったんだよ」、お互いちゃんといってないし…確かに二人ともバカでした。
赤いチューリップの花言葉、ちゃんと覚えているようですね。
最後の笑顔もすごく素敵でした。
リアルの法則
璃子ちゃんは人形の洋服を作ったのが褒められて嬉しくて、将来は服を作ることを夢見ているけど母親には反対されている。
そんな彼女が高校に入り、イメージが沸く美少女、相沢ミキと出合った…が、実は女装男だった!役者志望の彼はオーディションに受かったけれど親が反対し、事務所が説得するためにテストとして「三か月間女子高生として生活する」をやっていたのだ。
強引に協力する羽目になった璃子は自分の夢を励まされ、ともに学園祭のファッションショーに挑むことに。
なんだか「ちゃお」の今井先生を思い出しました。
あと絵の変化もちょっと気になるところです…平板な感じが少し強まっているようです。昔から読んでいると…というか水沢先生って、ものすごい量の作品の蓄積があります。「なかよし」から単行本が出ていないのがもったいないです!
小さい頃ほめられたこと、それが子供にとっていかに大きいかを思うと、なんだか胸が痛くなります。
「あたしどっか変?」という出会いの唐突さ、初読時に違和感を感じさせず、ただクールで鋭い印象だけを与える点は実にいいです。読み返してみると結構ボロがでています。
そういうのを見られたくない、という気持ちもなんだかわかります。
「ほんの一にぎりの人しかなれない」という言葉、残酷なようですが真実です…夢を追う生き方をしたら千人中999人は「負け組」になってしまうのです。寄り道をした人には、企業社会は容赦しませんから。この親が、彼女のことを心配して言ってくれているのは間違いないのでしょう。
ぼーっとして水撒きでミスをするという葛藤の表現がうまかったです…それがこうして、正体に結びつくのも。
男の子ではありますが、この体は妙にリアルで…せっかくだからいつか女の子も…
お人好しという性格設定がこれ以降出ていなかったのがちょっと残念かも。
ベッドに押し倒して口をふさぐ、というシチュエーションはこの号では少ないサービスでした。
父親が何の仕事なのかも気になります…何かの家元か、と思っていました。
協力からスキンシップが多くなってドキドキする、というのもさりげなくうまいです。
プラス方向に励ましてもらって、それが嬉しい気持ちになる…ここはちょっとじわっとした気分になりました。脅迫が脅迫にならない育ちのよさもいいですね。
そういう服でしたか…ええと…違う方向のコスプレに行かなければいいのですが。
五万は吹き出しましたが、それはまあそれぐらいはかかるでしょう。というか、こんなのを作れる技術がすごいです。
いらなくなった服をリサイクルしていく技術もすごいです。こっちの方が、読者にも参考になると思います。
それを微笑みながら見つめている彼も、こうして思いを丁寧に描いているのがいいですね。
才能を否定するのは非常に残酷な言葉でしたが、早くあきらめた方が傷が少ないのも真実です。でも…自信を失うことのリスクもあるのですが。難しいものです。
合唱は確かにきついでしょうね、音域が違うんですから。こういう細部が丁寧です。
弱音に対するミキの怒りは強烈に伝わってきました。逆に…否定ばかりされてきた璃子ちゃんの言葉もわかります。
自信があるからいえる、というのもその通りですよ…痛いほどわかります。
この、事務所の社長の行動はちょっとリアリティがないかな、とさえ思いましたが説得力はありました。
「自信はね あとからついてくるもんだよ」という言葉の重みもいいです。読者にとって最良のメッセージだと思います、特にミキが体で見せているものは。
こういう機会をとらえてアピールしよう、と踏み出すところはすごく気持ちいいです。
ショー自体も華麗でした。
その服がここで破れてしまって…今井先生の作品だったら、鮮やかなアイデアでどうにかしてしまうところですが…そういえば意地悪役もいませんでしたね、この作品…
「すきな人の夢がこわれるのはやだ!!」にキスして「こっちのセリフ」とやるシーンはしびれました。
最初に作った服を生かし、男として出るのが…これはまあ、歓声があがるのもわかります。
理事長の息子で…というのはちょっと強引で、みんなから見れば説明不足だった気もしますが気合で押し切った感じですね。
エピローグの、「デザイナーになったらミキに告白するんだ!」「それ待てないもう限界」の呼吸は最高でした。
ぴよっこガーデン
ちょっとちょっとそれは無茶だろう…と頭を抱えるのがまた猫部先生のすごさです。
網を投げたりするのはいかにも幼稚園児の考えだな、と妙に納得してしまいました。
ユミカちゃんの「金づる…いいえ親友」は笑いました。でもやっていることはじいやと変わらないような気もしますけど…それ以上に…
隣のゴージャスな建物…もしかしたら初めからそっちに入る予定だったのでは?
それでまたすごいキャラが、と思ったら、そんなのどうでもいいぐらいとんでもないのが…
昔は子守も普通でしたから…もしかしたら、日本は「おしん」の頃まで戻ってからまたやり直すか、またはやり直せずに江戸時代状態に沈むかするかもしれません…
いつのまにかバイトを手伝わせるのがまたすごい、というかおしんちゃんって…名前をひねりなしでそのまま使うとはすごい度胸です。
ものすごい巨大赤子と、繰り返される「そのころのハヤトくん」もいいですね。
なんかもう、とことんどこまでも突っ走ってください。
しょんぼりキック
自分流行語が「だるい」「めんどい」「うざい」の里桜ちゃん。逆にちょっとおだてられただけで学級委員を引き受けてしまうような、明るい隆也くんのような人は苦手。なのに、なぜか学級委員女子を引き受ける羽目に…
自分が嫌いでがり勉扱いされるのも嫌い、昔いじめられていたことが辛くて仕方ない彼女を、強引に光の中に連れ出してくれる彼。
でも、少しずつ皆の評価も変わってきたとき、隆也くんが友達との会話で、「里桜ってすげーうしろむきだし」と悪口を…
ここしばらくでの作風転換、意外といい方向にいきそうです。ふわふわのんびり路線はやりつくしている感じで、かといって下手に作風を変えたら台無しになりかねない作家性なので心配でしたが、この手があったかとほっとしています。
主人公のネガティブな心理の描写ははっとするほど真実ですし、絵柄もそれにあわせてうまいところに落ち着いています。後半の照れた顔もすごく可愛いですし。
「だるい」「めんどい」「うざい」…今の若者全般に至る、ほとんどどうしようもないほど蔓延した、世代病とも言えるものですね。
里桜ちゃんのモノローグの一つ一つがすごくわかります。
リーダー扱いされると調子に乗って引き受けてくれる…そういう子もいるんですね。
ちょっとしたことで強引に任されてしまったのが苦笑です。あ、「16分の1」ということはクラス三十二人前後?少子化はわかっていたつもりでしたがすごいです。僕の頃は45人前後でした。
里桜がリオデジャネイロ、という繰り返されるネタもいいです。
まじめだから押しつけられる、というので、小学校のとき人望があって何度も学級委員に推される子が、しまいに泣き出してしまったことを思い出します。本人はそういう感じだったのかも。
「悩みとかなんもなさそー」という言葉は…自分しか見ていない、といっているようなものです。隆也くんがきらいだから、と怒るのもわかりますよ。でも、読み返してみると別の意味も解るのですが…
そして「ほんとうはあたし自分のことがいちばんきらい」という言葉が…そのときの体から伝わる心とともに、すごく心に食いこんでいきます。もし「だるい」「めんどい」「うざい」と言っている子供から若者が、本当は自分のことが一番嫌いだとしたら…恐ろく悲しいです。
「ちっちゃいときのこととか」というのもいい伏線ですね。
「自分の考えが世界の基準だと思ってんじゃねーぞ」というのも鋭い真実です。
この自己嫌悪は成績がよく、それで妬まれているからですか…いじめの傷は激しい痛みを感じました。
そして、自己中心的な自己嫌悪にも強い共感を抱きました…いじめられると、どうしても他人を見る余裕、他者に心を開くことがなくなり、被害者としての自己中心的な世界が育っていくという最悪の害があるんです…
思い出してしまった苦しみも痛いほど伝わってきました。
隆也くんが助けてくれて、つい里桜ちゃんも心を開いて昔のことを話してしまうのは少し唐突でしたが、うまいです。いきなりの優しさでどぎまぎするのはよかったです。
それで隆也くんが里桜ちゃんに興味を持って…「どんなこと考えながら」というのは直裁ですごい。ひたすらネガティブな考えも、共感できる人多いでしょうね。
「まえむきすぎてたまにうざい」というのも本当にぶっちゃけです。
強引に日の当たるところに連れ出してくれたのは、自分がそうされたように嬉しかったです。
確かに叫べば気分は晴れるでしょうね。
やっと笑ってくれて可愛いところが出てきた、そこを好いてもらえることがどんなに人間の支えになるか…ふと思ったのですが、この話は男女じゃなくて女子同士でも(レズなしに)すごくいい話になったかもしれません。
夜になるとはじまる被害妄想タイム…よくわかります。
恥ずかしいセリフに隆也くんの方が照れまくっているのもいいシーンでした。
じっと見つめて、ふと出てしまった笑顔の素敵さもすばらしかったです。
「自分がスナオだとみんなやさしいんだ」という一言もまたすばらしい!すごく心を、一番奥から溶かして暖めてくれるような言葉です。泣きそうになりました。
それがいきなりこの悪口…僕は初読時から真相を知っていますから、やや客観的に里桜ちゃんの思いを見るポジションになってしまいます…ここからの、恋としての展開がまたじつにいいですね。
またケンカして、そして…ほっといて、ほっとけねーのやりとりはもうのた打ち回りそうなほど好きなパターンです。
それで暴発気味の告白と来るんですから最高!
最後のちょっと気恥ずかしいラブラブもよかったですし、里桜ちゃんの心の変化もすごくよく伝わってきました。
このままこの路線で頑張って欲しいです、本誌でも。
恋とパンチ
小学校の卒業式、告白…しようとしたら、相手は「おまえとはいつもケンカばっかりしてたけど…」で期待したら「きょうこそ決着つけようぜ!」その屈辱をバネに、マイ子ちゃんは泣く子も黙るガキ大将だったのが、中学デビューでモテキャラに。
今日も今日とて見たことない男子が見つめてくる、でも彼女のお目当ては鹿野先輩。だが、見つめてきた男子は転校生で、しかも彼女の過去を知るミクロこと三倉だと判明!イメージ壊されてたまるかと、なんとか遠ざけようとする。
そんなとき、いじめが転校生の目に留まって、「助けなくていいの?」といわれるけれど、今強さを出したくない…でも「ほんとはたすけたい?」という言葉が心に引っかかる。
そして鹿野先輩の悪い噂を聞いたミクロの忠告にも耳を貸さず…
完成度がすごく高いです。とことんすっきりとした絵と画面、しっかりしたメッセージとキャラのまっすぐな魅力がよく出ています。
冒頭の…告白と思ったらケンカ、というのは実にわかりやすいです。
小学校から中学校で引っ越したら、それはもう根こそぎ人格を変えられますね。…僕も高校入学直前に引越しましたから、いくらでも人格変えられたんですよね…今更気づいても遅いですが。というか結構変わったかも。
小学校の頃の元気な姿も魅力的です。それを初めに刷りこんでくれているのもうまいですよ。あと、食事で「いやソレ女のコらしい朝メシじゃねーから」と、ツッコミにことよせて本質は変わっていないことを描いているのもいいです。
憧れの人もできて、先がある程度読めてしまう僕はともかく、正規読者はどんなふうに感じたでしょう…自分も頑張ればこんなモテ子になれるかな、と思ったでしょうか?
転校生は自分の過去を知る人…それは悪夢ですね。ジャイ子というあだ名もすごいですね…というか、ドラえもんではジャイ子は嫌われているようですが、人間的にはかなり魅力的な子なのでは、ちゃんとした将来の夢を持って努力しているのは彼女だけですし…嫌っているのび太が子供なんですよね…でもまあ、イメージをよく伝えるあだ名です。
昔を封印する宣言を聞くと、逆にどこまでボロを隠せるかな、と意地悪な笑いが浮かんできました。つい怪力が自然に出てしまっていますし。
ミクロもいつまでも「ミクロ」じゃない、と成長している…ようで変わっていない部分もある、この微妙さがいいです!
このあたりのやりとりをミクロの立場から見るととにかく笑いがもれてきます。
友達を助けなくていいの…昔の彼女の正義漢ぶりと今のギャップに戸惑っているミクロの気持ち、わかりますね。「…ほんとはたすけたい?」という言葉に、正義感を持つことの難しさがさりげなくあらわれています。
「ふーん」と、ミクロが背中を見つめるシーンがさりげなく重いですよ。
「ジャイ子のいいとこみんな知らない」と、子分たちはそういういい面に惹かれて集まってきたんだ、というのもいいですね…仮面をつけるとどうしても、いい部分まで封じることもあります。
「ウソつかなきゃ恋なんてできないじゃない」という言葉、確かに真実なのですが…寂しい言葉です。いや、もし鹿野があれほどひどい男でなく、それなりにうまくいっていたら…すごく寂しいことになっていたのではないでしょうか。
どんどん彼女に失望していく…あ、そのためにも昔のジャイ子のエピソードを、もっと具体的に描いて欲しかったです。
いじめからの展開は見事でした…ミクロの(ジャイ子に学んだ)勇気、鹿野の正体、そして勇気を思い出してジャイ子に戻る決意などが一気にできて、勢いで感動させてくれます。
本性はすごいですね…はは。アクションシーンの弱さは残念ですが、勢いで…
今でもヒーロー、というのもいいですね。人間としての尊敬なんですから…男女であっても、人間と人間には違いないです。
最後のやりとりもすごく素敵です。どちらも本当に素敵な人ですよ。
ラブペット
総合ペットショップの娘、愛ちゃんは発情期でうるさいワンニャンにちょっとやつあたりするお年頃。出会いを夢見るある日、きれいな男の子とかわいーネコが、でもその男の子は猫を置いていってしまった…捨てるため?
怒り8下心2でいろいろ調べて猫のかわいらしさを彼にアピールするけど相手にされない…でも、猫の心を思いやってよく見てみたら、何か事情がありそう…
絵がすごくすっきりし、くっきりした瞳がとても印象的になりました。
動物と少し話せるというのがもっと活きればよかったのですが…その点は残念。家族ももっと活かして欲しかったです、結構魅力的なキャラですから。
ところどころにはさまる動物のおしゃべりが実に楽しかったです。
あ、まず猫の悲しそうな表情から違和感がある、その猫の悲しさが後でうまく話に絡んでくれました。
いきなりの「捨てにきただけ」で、強烈な怒りを感じ、もちろんそれが愛ちゃんと同調する感覚もありました。
でも、なぜ「なら安楽死でよろしいんですね!」としなかったのでしょう…安楽死は絶対いやだ、というのではこの仕事はやっていられないはずです。まあそれはつっこんではいけないことでしょうね。
愛ちゃんの、ついでにアピールもするという動きの不純な動機もうまいです。
この作戦も見ていて楽しいです。豪華衣装はさすがに…というか今号、他にもそのネタが…
不純な動機もしっかり読まれて「あいにく中学生は相手にできないんで」ときたのもくすっと苦笑します。
親御さんの、いろいろな事情があることを知り尽くした大人の視点もしっかりあるのが素敵です。
まずタマの気持ちから、というのもいい視点ですね…大人の視点といっても冷酷なのを押しつけるのではなく、視野を広くしろというのが。僕は感想でよく大人の見方をするので読者には嫌がられているかもしれませんが、大人の見方といっても…不合理な権威主義、露骨な利己主義や差別主義など悪いものと、視野が広く感情にとらわれない見方があると思っていますし、できるだけ前者にならず後者になるよう努力はしているつもりです。
自分を責めて涙ぐむ表情も可愛いです。
ここであえてタマには言葉を話させないのは…確かにここでタマがしゃべったら安易になってしまうのはわかります。
優しい笑顔という本質に触れて、踏み込もうとしたときの彼の拒絶が面白いです。
そして…そういう事情でしたか。こういう、優しさが違う方向に行ってしまうのは何より悲しいです。
直後に事故から助けようとして、緑くんの優しさが強調されるとともに彼が心を開いてくれた、というのもなかなか説得力があり、感動的な展開でした。
まあ初めから、素直に店に事情を打ち明けて相談していればよかったのですが…
いろいろツッコミたいところもありますが、リズムがよく楽しかったです。
恋愛プリンセス
男の子ととっかえひっかえデートするのが楽しい、相手の考えや行動を読んでじぶんにはまらせるのがおもしろい、恋愛はゲームだと言い切る里子ちゃん。
そんな彼女の前に現れた転校生の、超美形の吉井くん。彼を落とそうと、デートに誘い、彼の好みに合わせてスポーティな服装…にしたら、「女の子らしい服期待してたのに」とくる…実は彼、彼女と同類だった。
悔しくなって、彼に女の子が近づけないように彼につきまとっていたら、彼はラーメンに誘ってくれて「オレといっしょのときくらい素直になれよ」と…飾らなくていいのがとても楽になって、いろいろな思いがあふれてきて…
絵の甘みが強まっていて、個性が際立っています。今の本誌には花森ぴんく先生、桃雪琴梨先生と甘みが強い作家が多いので、適切な戦略かもしれません。
そしてすごく嫌な子と思える主人公が変化していくところも丁寧に描かれていて、説得力もありました。
たくさんの男と遊ぶ…結構危険もあるのでは、と思えますが…
「恋愛ってゲームでしょ?」と、まず僕を怒らせるための言葉のようですね。読者は同感かそれとも怒るか…
相手に合わせる、というのは確かに有効かもしれません。でも「なにがおこるかわからないからいいんじゃないの」という悠美ちゃんの言葉に賛成ですよ…そう、ゲームだというなら、コンピューターゲームで楽しんでいればいいんです。それなら危険もないですし。
影から走って出てくる、って面接心得みたいですね…やむをえず遅刻したら連絡の上、とにかく走って汗だくになっておいてまず謝れ…
肩を抱かれたりするのも抵抗がないようです。
あ、「なにがおこるか」という言葉を思い出し、今の状態でいいのかなと疑問も抱いている、というのもいいですね。変わるきっかけは意識できないところで育っていた、ということですか。
転校生、ヒーローのカッコよさもすばらしいです!
相手を調べ、合わせていくのは見ていて面白い…そして、彼の本性を知ると、それが見ていてものすごく面白いです。
お互い美形という時点でそうなるのも当然ですよね…
くやしがるのはあくまでゲームで負けたから、という感じですね。それが…「あんたがいつもやってることだよ」という悠美ちゃんの鋭い言葉の的確さが、この話をうまくもりたててくれています。いい脇役ですよ。
ぱっと誘ったのがラーメン、というのも面白いです…本性を知っているからこそ、お互い素直に自分を出せる、というのは見事な切り口でした。
でもそれがわかるのも、序盤に描かれたこれでいいのかな、という思いがあったからで…うまい。
おいしく食べる笑顔、それを見つめる微笑も素敵です。
吉井くんは、自分のこれまでの恋愛ゲームのマイナス面もよくわかっている…もしかしたら、理子ちゃんが傷つくのが心配になったからかもしれません。
そこから恋心が芽生えるところの描写も丁寧で、すごくよかったです。
ここで衝動的に邪魔をしてしまい、それをとがめられて…吉井くんの「オレは本気の思いをぶつけてくれる子には」という言葉も、彼の人格的な別の面をうまく出してくれてすごくよかったです。
それで、理子ちゃんがそれまでの自分を反省するシーンも素敵でした…それを見ていると、吉井くんの過去もますます知りたくなってきます。吉井くんがとても魅力的で、そして理子ちゃんも自分の悪い面を見ることで嫌な子から変わっていくのが実に魅力的…お見事。
素直に自分の気持ちをぶつけるって、ここまでやるとは…これは強烈でした。
「ウザいって…」という、これまで生きてきた恋を軽く捉えるのがいいという価値観、ここをもっと描いて欲しかったです。多分、それ…集団の空気がその価値観に染まっていたことが、理子ちゃんが恋愛はゲームだと割り切っていた大きな理由だと思いますから。
で、最終ページのキスは全校生徒の前で?
実にすばらしい作品でした。これからも丁寧に構築して欲しいです。
小川とゆかいな斉藤たち
パシリ体質の小川ちゃんがある日、いろいろな失敗の罰として、「恐怖の斉藤三人衆」…アンケートの「こわい人」同票一位、そろって苗字斉藤、三年の金髪ピアスで短気な大喜、二年の無口で怪力な仲良、一年で怪しげな薬を持ち歩き、敵を実験台にする保茂の三人にひざカックンをやれ、と。
逃げようとしたら、それどころかカンチョーやらズボンおろしやら…恐怖のあまり気絶して保健室にいた彼女を、当然斉藤三人衆が取り囲んでいた。殺される…と思ったら…実は小川さんも「パシられ」「ドジ」「ヘタレ」「逃げ足はやい」などで一位で、なぜかいつの間にか「友達がいなさそうな人」同票一位の、斉藤三人衆+小川の四人でなぜかおともだちになってしまった。
もちろん、掃除を押しつけられたら…斉藤三人衆が手伝うよと来てくれて、悪者に傍観者までまとめて掃除してくれた。数日後、小川さんまで恐れられるようになってしまって…斉藤三人衆ともどんどん仲良くなってきたけど、今度は悪い噂がしきり…
絵の感じが実によく生きています。
不思議と色気もありますね、重そうな髪や袖がちょっと長すぎるところとか。男の子もかなりの色気がありました。
このパシリは実に腹が立ちましたが、僕みたいに同情過剰でない読者はムカつく気持ちもわかるのでしょうか?
恐ろしい三人組にひざカックン…このあたりはもう、怒りで心を閉ざすほかなかったです。
で、逃げようとして転んで、前の二人に何をしたのかがいまいち見えないのが残念…最後のズボンおろしは強烈でしたが。
この恐怖感もよく伝わってきました。殺気をこめて振り向き、カーテンを引きちぎり…思わず笑いたくなるほど強烈です。
この学校内アンケートというのが面白いですね。結構有名人なのがまた…
そして、だんだんわかってくる三人のキャラが実に魅力的でした。
三人組といわれつつ初対面、というのも面白いです。そして変な語り合いになって、わけのわからない展開…共同戦線…これも絶妙なアイデアです。
それぞれの名前もまた面白いですね。
いつも一人で我慢していた…この掃除の痛快さは胸がすっとしました。
小川さんが、徐々に斉藤ズを友達と認識していくのもうまいです。
クラスメートの方針転換、そして小川さんが…一人じゃないから強くなる、というのがすごく素敵なメッセージです。
仲良くんの妖怪みたいに怖い笑顔がまた面白い小ネタです。
いきなり友達だと自覚して解決して…この雰囲気もなんだかいいです。
非常に面白い作品でした。こういう個性的な作風がもっと活きてくれるといいです。
あっぷるポンタン
142cmで決めるのが苦手なポンタンと、170cmでしっかりしている桜、対照的だけど仲がいい。でも対照的過ぎて、親子に見られることさえある…
そんなとき、ポンタンが同じ中学の制服のメガネさんに激しい一目ぼれを!
お久しぶりです、おかえりなさい!あまりの懐かしさに感激でした。
冒頭の二人の対照が実に入りやすいです。特に親子というのがすごい。
逆に桜さんの弱点が何か、ちょっと気になりますね。
恋心の描写も、そのみずみずしい想いがよく伝わってきてすごく胸が温かくなりました。
そして…なんてあっけない…桜さんの容赦ない優しさも見ていて楽しいです。
この素敵なコンビがこれからどんな話になるか、すごく楽しみです。