なかよし2007年夏ラブリー感想

やはり増刊の数が増えると、作家のバリエーションが増してすごく楽しくなります。また作品のテーマも幅が広く、そこも楽しめました。
新人作家もいろいろなタイプがいて、これからがすごく楽しみです。そして登場回数が多い新人の成長の目覚しさ!それらが本誌につながっていい循環を起こしてくれれば最高なのですが。

「ぴよっこガーデン」が終わり、「きららプリンセス」「私立ヤバスギ学園」も終わりが見えてきて、この「ラブリー」の性質自体が少し変わる予感がします。
どんなふうに変わっていくのか、成長目覚しい新人も多いですし楽しみでなりません。

地獄少女(永遠幸)かみちゃまかりん番外編(コゲどんぼ)メガネ王子(水上航)プラチナ*キス(青月まどか)ピンクvイノセント(桃雪琴梨)ひとりじゃないこと(春瀬サク)ふあふあコットン(ハタノヒヨコ)Yes!プリキュア5(上北ふたご/東堂いづみ)そらいろ応援歌(あおいみつ)きららプリンセス(小鷹ナヲ/田中利花)私立ヤバスギ学園(恵月ひまわり)ぼくのミーナ(栗沢じゅん)ななしのネコメール(菊井風見子)夏恋vエール!(美麻りん)とろけるサマー(高上優里子)ラブ×ダイエット(瀬崎ちか)ぴよっこガーデン(猫部ねこ)名探偵夢水清志郎事件ノート(えぬえけい/はやみねかおる)オレ様カテキョ(三浦瑞希)絶対うまくいく恋愛バイブル(野寄雅代)鏡の中のアリス(秋元葉子)

地獄少女
珍しく後味のいい話でした。毎回こうだったらなあ、と肩をすくめます。
冒頭は『烈火の炎』の過去の話を思い出させましたね。戦を起こしてまで一人の女を求める、という情熱はすごい…のに拒絶されるというのは、よほどひどいことをしてきたのでしょう。
昔の衣服や武器防具の描写は見事です。
生きてくれ、というのが刀の望みなのか…だとしたらそれほど悲しいこともないです。
さがしているもの、というのは憲法九条?最も広義の平和、人の争いや憎しみさえ過去のものとなった世界?
刀が一目連だった、というのはちょっとびっくりさせられます。他の二人も似たような形で加わったのでしょうか?骨女がいないのは、このときはまだ仲間でなかったから?
今回の話は…他に相談相手がいない、公的機関が動いていないのが悲劇ですね。なんでもかんでも家族に丸投げしすぎるから、家族・親族も邪悪な場合は救いがないんですよ…
天井が目になっている、というのはなんかすごいながめです。
「刀は人を傷つける道具でしかないのか」…少なくとも刀は…でも包丁は料理のためですし、刃物は本当に多様な用途を持っています。刀だって、刀の折れは竹細工に便利な道具として使われることもあります…彼にとってはそれが一番喜ばしいのかもしれません。
この小さい子の嫌味はなんだか邪悪なものを感じます。「心は道具のままなの?」という言葉も鋭すぎますね。
周りの噂で追い詰め、さらに放火…そこまでやって警察が動かないのも信じられないですね。
そして糸を引こうとして、その時に一目連がつい言葉をかけてしまった、存在を感じさせてしまった…もう道具じゃないですね。人間だってアイヒマンみたいに、むしろ道具でしかない人間のほうが多数派ですよ。
おじが黒幕だった、というのには…そこで一目連の行動には快哉を叫びました。
「法が晴らしてくれるといいな」という言葉も、そうであってほしいですが…あまりにも法は無力です。今回のケースでは…悪質さ・情状酌量の余地がないことを考えに入れても三年以上にはならない、両方初犯なら執行猶予さえありえてしまいます。証拠不十分の可能性だってありますし、家庭内犯罪とみなされれば法は遠慮気味になります。
また、本村洋さんのケースを見ればわかるように、法は「怨みを晴らす」ものではなく、社会…国体を防衛するものでしかないのです。
彩奈ちゃんは、一目連の目以上に信頼できる友だちがいたから糸を引かずに済んだのかもしれません。それらもまた、これまでの被害者とはまったく違いますね。
仲間じゃなくて家族、というのは格好よすぎます。

かみちゃまかりんChu
女の子への誕生日プレゼント…ため息。
みっちーはさすがに彼女の趣味もわかっていますね。
神くんの…またガラスの仮面?
まあ僕も、その価格には泡を吹きますが理由もわかっていますので…
どーんどーんの表現も楽しいです。
そして神くんのプレゼントが、彼女には一番嬉しかったようで…やはり心がこもっているからですね。
というか歌をプレゼントするということは考えなかったのでしょうか?

メガネ王子
なんというか、旅って楽しそうですね。
前回の続きではありますが、単独でもすごく楽しめます。以前と変わらない、というのは…今の彼が地なのでは?
「窓側座れよ」の優しさはじーんとします。怒らせておいて落とすなんて、さすがは夜王ってバーテンであってホストじゃない…なぜかホストだと思い込んでいたような。
メガネ美男を見られたくない、とこのフェチが要所で笑わせてくれますね。
隣もカップルで、一見優しそうでいいな、と思ったらいきなりケンカ…ここから思いがけなくつながりができてしまう…といってもパートナーチェンジはひどい話です。
計画の最後がもろに大人の領域なのは苦笑しました。無理ですよ。
有里子さんの強引さもすごいですね。
なぜ先輩はOKしたのでしょう…読めない人です。
水着を取りに取られてしまう、というのは間抜けでした…有里子さんの読者サービスは嬉しいですね。
そして健太さん、水着に見とれてから気がついてぐずぐず言う、でも有里子さんにかみつかれると何もいえない…気の弱さは見ていて楽しいです。
鍾乳洞もいろいろ楽しそうですね。転んだのを助けてくれるアキラ、助けてくれなかった、でも一緒に転んで二人で笑われる健太さん…対照的です。有里子さんから見ればそれが嫉妬になってしまうのも可愛いですね。
「へんなオーラがでててつかれる」…そういえば、彼は夜の街でいつも変なオーラを浴びまくって暮らしているんですよね…
温泉シーンも嬉しいサービスでしたが、健太さん…も、なんというか結構気軽な人ですね。さすが大人。
ここでのアキラ先輩もカッコよか…と思ったら「えんりょしないし」…おいおいおいおい…
殴りかからせておいて、やっと…というか本当にどうしようもない二人です。
あまりに深いため息で、頭が煮えそうでした。
「痴話ゲンカにまきこまれただけ」という結論は本当すぎて笑ってしまいます。
しっかりとついたてを立てて、が不満なようですが、いきなり狼になられても嫌では?
いきなり抱き寄せて…狸寝入りでしょうが。眠れないのはざまーみろです。
あのカップルに翌日もまた振り回されそう、というのは楽しいオチでした。

プラチナ*キス
 美貌を武器にたくさんの男の子をかしずかせている真咲ちゃんが、ある日学校の理事長に呼ばれると、いきなりとんでもない美少年にぶつかった。
 だが彼は「二度とオレにさわんじゃねぇっこのっドブス!」ととんでもない言葉を。理事長の息子である彼、秋久はひどい女嫌いで、それを心配した父親が共学の自校に編入させたのだ。そして女嫌いを治してくれ、といわれた真咲ちゃんだが、自分も結構恋愛経験値が低いのでどぎまぎ。
なんか絵から、あのシャンデリアというかブリリアントカットというかめちゃくちゃな超高輝度が落ち着いた感じで…少し寂しいのが正直なところでもありますが、すごく綺麗ですっきりしてきました。
冒頭のよりどりみどりの逆ハーレム、それを自覚的に楽しんでいる…というのもすごく面白いキャラクターです。
それがいきなり超美少年にぶつかり、彼の暴言、ときたら強いキャラクターがうまく響き合ってなんともいえないものがあります。
そして「なら女子校に入るか!?」「悪魔かよ」という言葉が、どうしようもなく笑えて仕方ありませんでした。彼にとっては女子校より、戦前の刑務所や軍隊のほうがまだましでしょうね…どれだけおもちゃにされるか想像したら…
あと着せかえ人形やもみゃくちゃの回想も、妙に何度も思い出されてしまいます。なんとも印象が強いです。「かわいーのなんの」と父親が言うのはちょっとあれですが。
女ぎらいを治す、って怒りながら引き受けているのがなんとも迫力があって楽しいです。
プライドにかけて落としてやる、という動機も読んでいて楽しいです。
そして結構経験がなくていざとなるとびびる真咲ちゃん、それに意地を張って強引に攻める…割りに気絶してしまう秋久くん、この二人の濃厚な絡みはたまらないものがあります。二人とも真っ赤って…バカみたいです。
何でこう楽しいのでしょう。
しかしこの取り巻き…男のことをわざわざ調べ、やさしいんだからと…悲しくないでしょうか?まあ多分僕もこの中の一人だったでしょうが。
前に彼女がいた、というのも以外で面白いです。
逆ナンパに引っかかっているのを助け、それで「まさかおまえが人を助けるなんて」というのも苦笑しました。本当に面白い二人です。
百股女…実際に経験はないようなので、誰にも指一本触れさせてはいないようですね。
またキスしそうになって突き飛ばしてしまうのも可愛いです。
そして、パスケースのモトカノについて…あまりに鋭く分析剣を突き刺し、えぐって…「そーだよ」の一言があまりにも血が流れています。
「最低だよ」という言葉もすごく痛いです。
ほかの男の子と同じようにできない、という彼女の心の動きもうまく描かれていますね。
そして…ついいつもどおりに謝って、「ほかの男といっしょにすんな」…というか秋久くん、すぐ彼女がどういうことをしているか見抜いたのですか?
それで引き止めて、キスの実験台には驚きました。
あまりに不条理な行動で…ものすごくドキドキしました。本当にキスしてしまうとは!
明るく送り出し、痛みがいつの間にか涙に…ここの心の動きがすごく伝わってきます。
モトカノの正体には、なんというか呆れるしかありませんでした。
そしていきなり「ブス」と切り込んでかっさらう、なんというかかっこいいです。というか…あの取り巻きの男達も、自分だけのものにしたい!と強い情熱をぶつければ落とせたのでしょうか?いや…ただそれをやっても、ただの異常者になってしまいます。秋久くんが美少年だ、ということだけではなく、何かが違うはずです…
この期に及んでも口げんかしている…それが「いますぐ落としてやるわよ」とけんか腰でキス!ああもう…しかも親父が見ているし…
なんかもうたまりませんね。でもまあ…ここまでの美男美女、くっつかないほうが不自然かも。
面白さは抜群でした。これからもすごく楽しみです。

ピンクvイノセント
なんというか、最後まで暴走暴走。コスプレは似合いすぎて怖いです。
足だけしか見えないのに、二人のスタイルの違いが目に見えてしまうと言うのはかなりすごいです。
そして…エアリと一緒に水着で、というのは自殺行為では…すごすぎます。タカシの興奮はよくわかりますが、「とじこみポスターより」というのはかなり変態っぽいかも。
確かに来るだけでいいならここでいいですね。
エアリとタカシが二人の世界、というので…「エアリがモテるから」と勘違いして、なぜかオタクを引き寄せてしまうのが頭を抱えました。というかこんなわかりやすいオタク、そうはいないのですが。
助けてくれたのがレンジくんじゃなくて女性なのにはびっくりしました。見たことあると思ったら…またリイチ関係者!はあ…
この人気ゲームってどんな内容なのでしょう。十八禁でなければ驚きです。
それで、コスプレのカップルで仲を深め…られるわけないじゃないですか。
レンジの限界の笑顔はなんだか爆笑しました。
これからが本番、といってもあまりにばかばかしい追加アトラクション…というか、このゲームは比較的小さい女の子にも人気があるとは。で、内容が愛の逃避行?すごいゲームです。
ゴーカートで小さい子がうまかったり…怪力でジャンプ、といってもこれって009並では?やはり改造手術受けてますか?と言うか今回、ココナちゃんがお嬢様だということは忘れられているような。
ボート遊びもデートの定番ですね。多分吊り橋効果が恋心にいいのでしょう。
両親にデートを見られるだけでも恥ずかしいのに、コスプレをしているのを見られたら自殺ものですね…
父親も化石オタク、そして母親の素直すぎる愛情要求…はあ、二十年後のレンジとココナを見ているようです。
オタク船隊はある意味ホラーでした。
そして…激レア画像の美しさはすごいですが、それに飛びつくなんて…パソコンが防水だったらよかったのに。というか、激レア画像を見るのに必要なのは…URLだけなのですが。それに、なぜオタクでさえたどりつけない激レア画像を、こんな短時間で見つけられるのでしょう…
観覧車の前に女の子達、悪役のコスプレでお菓子をばら撒いて…あまりのばかばかしさに口から煙を吹きそうです。
観覧車での二人の会話、昔の回想もラブラブすぎます。
あまりにも暑い愛情、そして定番の観覧車故障…でも実際には、人間にはトイレというものがある…このオチはある意味笑い転げました。
もうさっさと結婚して、レンジの両親のようになってしまってください。結婚式も見たかったですが、それはそれで贅沢というものでしょう。

ひとりじゃないこと
今回はすごく,、静かなようで熱い話でした。比較的単純な悪役は恋愛面も含め、話をわかりやすくしてくれましたが、プラスとマイナスどちらが大きかったのか…悪についてもっとしっかり描いて欲しかった、という思いは否めません。
絵の安定感も増して、すごく読みやすくなっています。やはりシリーズの成長は大きいですね。
冒頭からとんでもない写真…柴坂くんののんきも真知ちゃんのクールも相変わらずですね。
まるで無視されている変態、なんだか見ていて悲しくなります。
写真は今はいくらでも合成できるし、嘘をつかせることもできます…
目が笑っていない愛想笑い、というのも…いかに彼女が自分の内心に正直かわかって、かえって苦労するだろうな、と同情します。
つい「柴坂くんとつきあってるの?」と聞いてしまう、それに対する冷たい目線…なんかたまらないものがありますね、ここ。
真知ちゃんが嶋を冷徹に切り捨てるのもなんだかぞわっとしました。もし真知ちゃんに彼氏ができたら、どんな関係になるのやら…
このポスターにはもう、笑うほかありません。完全に変態ですね。「人のうわさ話なんて悪趣味」というのは確かにそうですが、言語も数学能力もゴシップの副産物だとか(『数学する遺伝子(キース・デブリン、山下篤子 訳)』)
それで悪い噂が広がっていく…真知ちゃんは人間の心理がわかっていないのでしょうか?それともわかっていて…むしろ人間に対する嫌悪感が強まっている?
燕ちゃんの怒った表情はむしろ可愛いです。
何とか守ろう、とそばにいるのも拒否され…なんというか、なんだかわかります。友だちという言葉がどれほど重くなる、嫌な面もある言葉か…
会長の言葉で真実に気づくのはすごく自然な描き方で、細かな効果がすごく効いていました。
それをずるい、と思えるのはすごく素敵です。
燕ちゃんの自作自演はすごすぎました。真知ちゃんのためなら、自分自身を汚すことさえ恐れない…確かにゴシップを、他のもっとえげつないゴシップの洪水で押し流すのは有効な手でもあります。
「ぜったいほっとかない!」という言葉も、これだけの行動があるからこそ説得力があるんですよね…この半泣きですごく意志の強い表情は素敵でした。
「ホントはちょっとやりすぎたかも」…それが真実でしょう。火をつけることは簡単ですが、大火事になったらそれを止められる人はいません…小さな悪が本当に功を奏してしまったら、自分でも止められなくなってしまう…
失敗したとしても、とその覚悟があるのはすごいです。だからこそ…この真知ちゃんの笑顔はすごい効果でした。というかここまでしないと笑顔を見られないというのがすごいですが。
写真はトリミングで加工されていた、というのは納得します。
真知ちゃんが噂について謝られ、むしろ自分から謝ったのもすごいです。心が広いというか…
「そのほうがおもしろそうだったから」という言葉はすごく楽しい笑いが心に広がり、後味を極上にしてくれます。
すごく面白くなってきましたし、実力もどんどん伸びているのがわかります。
これからますます楽しみです!

ふあふあコットン
何か頭を抱えたくなるような話でした。
このイタチのリアルと擬人化のバランスは絶妙です!
ドレスもなんだか素敵に見えます。
そしていきなり大喧嘩、なんかもう呆れてものも言えません。
ドレスで流れ星草を作る、というのもすごい誠意ですね。そこまでする価値がライラにあるの…でしょうね…
素人がいきなりドレスを作るというのもさぞ大変でしょう。
「ハイヨーネル!」というのはすごく楽しかったです。
そしてまた騒ぎになって「あんな男わすれてしまえばいい」といわれて、「クロのこと大好きなんだものぉぉ」…なんかもう投げ出したくなりました。
ホタルとさらに流れ星、すごく素敵な演出ではありました。
実際にあるんでしょうね、こういうこと…

Yes!プリキュア5
ひたすらラブラブで熱いです。クーラーつけようっと。
みんな忙しいのに彼女だけ暇…宿題でおびえるのは可愛いですが、その表情を見れば八月三十一日にどういうことになるかは目に見えるようです。
教師もいろいろ大変、というのがしっかり描かれている、ココもしっかり教師の仕事をしている、というのがすごくいい描写ですね。
このプール掃除ロボットはもう市販されているのでしょうか?すごく便利でしょう。
女の子は何か特別な思い出を作りたい…しかも何を望んでいるかもわからない、というのがなんだか胸苦しくなります。
そして「おもしろさがわかるまえにやめちゃう」、とそれがすごくうまいです。
子供にとって一番根っこの部分ですよね、それは…ただ勉強だけの生活は嫌だと思っている、でも自分が本当にしたいこともわかっていないし、そして何でも面白さがわかる前にやめて…大人から見ると多くの子供がどんなにもったいない存在に見えることか。
この密着状態はやりすぎかもしれませんが、達成感と胸の高まり、ドキドキはしっかり伝わってきました。

そらいろ応援歌
 くじで応援団員になってしまった小花ゆきちゃんはものすごく気も声も小さい。
 でも明るい応援団長のすごい声と、それを支える頑張りを見て、うまく励ましてもらって熱心に練習するようになり、少しずつ自信がついてきた。
 そんなとき、団長が恋人とケンカしているのを見た。彼女は海外留学しており、また長期間留学するので別れ話をもちかけてきたのだ。
 そして応援団としての本番、何も言えずにいる団長を見て…
すばらしい!の一言。すごく熱くて無駄がなくひたすらストレート。
僕自身、応援団経験は何度もあります。ずっとではありませんが、小中高と何度も。高校には応援団などなかったので、一人で勝手にやっていたんですよ。だから声域は比較的狭いですが、声の最大値はものすごく大きいのが隠れた特技だったりします。
でも声が大きくない子には、くじ引きで応援団なんて悲惨の一言ですね。そのきつさもよくわかっています。
野球部県大会の応援で、ということは甲子園にいけるほどではなくても強豪なのでしょうか?
「声もちっちゃい気もちっちゃい、おまけに自分に自信がない」ってそこまでわかっていれば上等。
基本の声だし…懐かしいです。腹から出す、というのも基本ですし、健康にもすごくいいのでしょう。
団長がイメージとは違う、さわやか型の美形という意外性もうまい。ゆきちゃんの心の動きが最初からすごく丁寧に描かれています。
そして団長の声…あえて書き文字を入れず、感じだけが叩きつけられたようです。非常に大きな声はそれ自体が人を感動させる力がある…本能レベルでそうでしょうね。人間が二足歩行する前から、大声は脅して敵を追い払う武器としても仲間を率いるためにも非常に力があったでしょうし。また、豊臣秀吉も非常に声が大きかったといわれており、それも下民から天下を取るための大きな力だったでしょう。
それを素直に「すごいなあ」と思えるのもすごい力です。自分にない、強い力をあえて否定的に評価するのも人はよくやることですから。
疲れきっているのを母親が心配するのもさりげなくいい描写でした。
無理だ、と思っているときに、団長が一人で練習しているのを見る…ここからの気持ち、人格さえ変わっていく成長の描きかたは見事!
いきなり顔も覚えているなんて、さすが団長。「下ばっかむいてて」というのも本質を突いていますね…あごをひいて背筋を伸ばすのは武道をはじめあらゆることの基本ですし。
くすぐられて大きな声を出させる、というのもうまい。しかもここで、さりげなくスキンシップが多いことで恋心さえちょっと育てているんですよね…
それで一人ずつ…うわ、大変。フリーズしたときに太鼓で空気を変えてくれるのもよくわかっているなあ、と感動しました。
それでいわれたことを思い出し、出した声が…自分にこんな声が出せる、という感動、そして団長がうまく盛り上げてくれる賞賛の喜び、そして頭をなでてくれる駄目押し!
それで一気に自信がつき、一人で熱心に練習するようにもなって…それもちゃんと認めてくれる団長、もう息もできません。
「人ががんばってるの好き」「応援してくれたら」…なんだかわかります。僕がこうしての感想を書いているのもそれかもしれません…一人一人の作家を応援するのがすごく楽しいから…
「わたしも…団長みたいになりたいです」という言葉の素直さもすごいです。彼女の素直さがどれほど大きな長所か、彼女は半分もわかっていないでしょう。
そして着付けをしてみたり、練習を丁寧に描いているのもリアリティを増していますね。
それで母親が「まえより明るくなったね」と…それほど自信がつき、顔もよくなってきているのでしょう。
そこで突然、恋愛面が出てくるのもうまい転換でした。好きあってはいるけれど…どちらにとってもすごく辛い選択ですね…彼女が言うことはすごく勝手にも思えますが、相手のことも考えているし…あきらめたらどちらも幸せになれない、ともわかっている…
団長が少しぼーっとしていること、そして雨で一度中断して、そして…何も言えず下を向いてしまった団長に「四十五度上むいて」を思い出して…ゆきちゃんが応援を始めるのは涙出ました。
そして団長とその彼女の別れもすばらしいです…彼女のほうは何も言えていないのに、すごく二人の心が、互いの想いもすごく強い、と伝わってきます。
なんて…なんて…
最後に恋についてろくに決着をつけていない、というのもすごくいい終わり方です。ゆきちゃんは恋心を自覚してもいないし、団長も…振り切ったかどうかさえ明らかでない…でもだからこそ、すごく余韻があり、先について想像の余地も残してくれる素敵な幕切れになっています。
とにかくすばらしい傑作でした。絵も成長していますし、これからすごく楽しみです。

きららプリンセス
冒頭いきなり熱いというか濃いキスシーン…きららちゃんもライバルがいるからこそ積極的なのでしょうか?楽しそうです。
アラジンがピンチになるのも、話を変えないほうがいいのでは?
そして巨大な宝石のプレゼント、気前がいいですがわかっていないですね…というかこの時代にブリリアントカットがあったでしょうか?いや、これはまだ完全なブリリアントカットではないですね。
「国の宝はすべて」だったら今から植林をさせたり運河やカナートを掘らせたりすれば、そのとき手に入る宝は何倍にもなりますが?国を私物化していながら国を富ませることに関心がない、というのは謎です。
友だちの証、という言葉と花がもっと価値のある宝物、という言葉もすごく素敵です。
盗賊が入りこんだ、という嘘情報でごまかそうとするのも見事ですし、「レイのことダーリンて呼ぶのよこのニセモノ!」も実にうまい。迫力もあります。
やはり返すのは賢明な選択でした。高価な宝石を持っているのはあまりにもリスクが大きいです。
現実の世界で考えれば、もし巨大ダイヤをもらったとしたら…保険料と警備費用、銀行に預ける場合も保管費用ばかりがどんどんかさみ、パーティなどにつけていこうとしたら上から下まで衣服や靴、エステからヘアメイクまでダイヤに見合う膨大な金額を費やさなければなりません。ホープダイヤをスミソニアンに寄付した最後の持ち主は実に賢明でしたよ。
そしてあの花をプレゼントしてくれたジャスミン…あのダイヤより大切な宝ですね。
ジャファーがそれを奪ったのは、悪もあくまで人間なのかと少し切なくなります。純粋に欲望だけならそんな花は無視していいのに…人が苦しむのを見たい、支配したい、という悪心のロボットに過ぎないのか、と思えば悲しいことです。
といっても花を探すのは無理ですよね…ここからアラジンと再会し、そして…ジーニーを「小さな花一つさがしだすのはムリだと思うよ?」と挑発して引っかけ…このジーニーとの会話はすごく楽しいです。
その花がティアラの最後の一つで全部そろってしまった…ちょっと寂しくも思えます。
アラジンたちとここで別れたのも賢明でした。これ以上巻き込むわけにもいかないでしょう。
ここでいきなりシルフィがとらわれ…最後の決戦?
機械の力が人間より大きいのは確かですが、今のところはそれを作り、メンテナンスする人間がいなければ機能しません。
そして…もし機械が人間なしで活動、自己増殖できるようになったとして、それは…人間ほどバカではないでしょうが、完全ではないでしょう。
「決して器用ではないけれど…新しい未来をつくる力をちゃんともってる」…僕はそこまで人間を信じることはできません。人間が自力で、誰も餓死しない、文明崩壊もない世界を作り出すことができるとは思えないのです…
でも、六人のプリンセスの面影ときららちゃんの迫力はすごいものがありました。
それがどんな力になるのか…それがクライマックスなのか、何かと楽しみです。

私立ヤバスギ学園
パンツをかぶるならちゃんと変態仮面に…ふんどしって、誰が覚えているでしょう。僕の世代向けでは、と思うほど古いです。
殿下=総帥フラグは多すぎて違ったらむしろ驚きですね。
まあどちらにしてもさっさと最終決戦をして、もっと、これとは違う作品を…せっかく実力があるんですから。

ぼくのミーナ
 とことん派手で問題児ばかりのF組のミーナと、エリート進学A組主席の貴人くんはカップル。でも彼が照れ屋なのか、公然の関係ではない。
 ある日彼のA組に行ってみたら、あまりの雰囲気の違いにびっくり。また、彼は「教室にはこないで」といってしまう。それで保健室でふてねしているミーナに会いに行き、そのときはうまくいったように見えたがスクープされてしまい、校長室に呼び出し…そこで彼は、関係を否定した…

テーマ自体もすごくいいです。これから格差社会が進展…もう学校という世界では、致命的なまでに進んでいます。そこでの恋は、それこそ江戸時代のように身分が問題になるようになりそうです。
冒頭から大騒ぎですね。
でもなぜそこまでして、髪や化粧にこだわるのか…僕にとっての武器・道具・知識と同じと思えばわかります。
だったら、成績上位者は服装自由とすれば…平等という建前に反しますか。
ぎゅっと抱きついてくっつきっぱなし、彼のほうはちょっと困惑気味…彼女のほうが「かわいい」を連発している、なんて何かいいカップルです。
限られた友人その2もミーナに片思いしている、というのもおいしい設定です。それで「目さませよ」と忠告するところも…今回は純平というキャラクターがすごくよかったです。友達として真摯にミーナを思ってもいるし、恋心がそれを侵してもいるし…彼の葛藤がなんだかうまく伝わってきます。メインヒーローより魅力的かもしれないサブヒーローがすごくうまくいきました。
いきなり「きいてくる!」と行動するのもすごいですね。
昼休みにみんな猛勉強している、というのはなんだかすごい眺めです。
でもこうしてみんな勉強しているのも、「F組べんきょしないから」というのも…どちらも周囲の空気にあわせることを強いられているだけでは、と「オレ様カテキョ」を読んでしまうと余計に思います。
「教室にはこないで」というのはそりゃ傷つきますよ。ちゃんと説明しないと…頭いいんですから、説明するぐらいはできるでしょう?
純平くんがカバンを殴りつけるように渡し「かた手間であいつふりまわしてんなら」ここが叫びたくなるほどかっこいいです!嫉妬がありながら、無理に別れさせようとはしない…ここで嘘をつけば確実に別れさせることができるはずなのに。ミーナのことを、本当の友達としても思っていることがすごく伝わってきます。うわああああああ。
寝ていると思って「大切にしたいと」…これは幸運でしかないですね。
それで大喜びで飛びついて、服が少しはだけてしまってドタバタ…ここは純粋すぎて楽しかったです。まあここで狼になられるより…
「このつづきはまたこんどねv」というのも、彼のことが可愛くて仕方ない、というのがなんとなく伝わってきます。その本番ではどういうことになるやら。
それがこの掲示…うわ、この引き伸ばしにいくらかかるやら…あ、フィルム時代ならともかく携帯電話内臓デジカメからインクジェットプリントなら、技術さえあればごく安くできますね。
純平を疑ってしまうミーナ、そして彼が否定しないのも…ここの彼の言動も、読み返してみると複雑で切ない気持ちが伝わってくるようです。
ここで、祈りむなしく「そんな関係ではありません」に…すごくショックが、簡潔な描き方から伝わってきました。そしてミーナが一転して、自分だけを悪くするように…本当のところがすごくいい子なのにも驚きます。
「写真…本当は純平じゃないんでしょ」と、そのことがなぜわかったのか…ここもすごく複雑な心理ですね。
「犯人さがしどころじゃねぇだろ」というのもすごく温かみがあります。
そして「てめぇにミーナとつきあう資格なんかねぇんだよっ」…まったく同感!それも学力とか家の収入とか将来性じゃなくて、あくまで男としてお前はこの素敵な女につりあわない、と…「資格」とかでいうなら、普通ならミーナが彼とつきあう資格はない、と思ってしまうけれど、逆ですよね。
とにかくかっこいいです。あくまで、他の男のことを思って泣いているのにそばにいてやるやさしさといい、彼も最高の男ですよ!
テスト中に、なんとなく純平くんとミーナがぎくしゃくしているのも伝わるのがまた素敵。
ここで鈴村くんの側の気持ちが…「もっと大切なことが」というのは笑うしかありません。テストだけが、成長してからは収入だけが大切…いかにそれが憐れなまでに卑小か…といっても未来は勉強もでき、収入も高い勝ち組でなければ餓死することになる可能性もありますけど。
テスト中先生が寝ている、というのも惨めな話です。
鈴村くんがずかずかと入ってきて、ここで純平くんとの会話…なんかしびれました。
いきなり公衆の面前でキス、大きな声で…うわあああああっ!
人を好きになるのは恥ずかしいことじゃないはずですよね。
影でふうっとため息をついている純平がまたカッコよすぎます。
とにかくこの話はサブヒーローの魅力があるからこそ、メインの二人が引き立ったようなものですね。お見事でした。
これからどんな作品が出てくるのかも楽しみです!
格差カップルというテーマもこれからいろいろ出てくる、重要なテーマになりそうです。

ななしのネコメール
 引越してきて不安な夏澄ちゃんの部屋に、突然大きなネコが飛び込んできた。
 前に住んでいた人のネコか、と飼おうと思ったが、そのネコはあちこちの家に顔を出している。そのことを教えてくれた男の子にネコの好物を聞こうと、猫の首にメッセージを書いたバンダナを結んで連絡を取ろうとするが…

すごく奇跡のような感じがする、なんとも言えない素敵な作品でした。
なんというか『三丁目の夕日(西岸良平)』のように、よその星の話だろうと叫びたいような、それがなんとも悲しいような…複雑な思いがします。
冒頭から家族それぞれの反応が面白いですね。「わーボロー」という素直な感想が苦笑を誘います。
嫌がっていた弟がすぐなじんでしまうことにちょっと腹を立てたり…荷物から出てきた寄せ書きを見てしゅんとしたり、ここで不安がなんだか伝わってきます。でも海が見える素敵な町に見えますが…
いきなりこのネコはなんともインパクトがあります。可愛い、という部分を意識的に抜いて、どーんとした感じがして…とても存在感があります。
元のところに帰りたい、という思いもなんだかわかります…僕も幼稚園から中学まで過ごした町が懐かしくなることはあります。といってもGoogleMapで見てみたら、原っぱも森も片端から切り開かれて地形も一変していましたが…
趣味に走った家が多いとか、町のリアルな部分がしっかり描かれているのがすごくいいです。実感がなんだかあるんですよ。
そして…壁の栓をひねったら上からシャワー、というのはびっくりしました。男の子がそれを見て笑い出す…これもなんだかわかります。出会いとしてもすごくうまい。
あのネコがよそのネコでもある、と思って余計迷って…被害妄想さえ感じて、気持ちの描写がすごく丁寧ですね。
あの男の子がすごくぶっきらぼうに送ってくれる、そしてネコにも優しいのは逆に好感が持てます。
バンダナでいろいろ情報交換する、というのもすごく素敵なアイデアです。そのバンダナをすごくネコは嫌がっている、というのも楽しい。
「あいつなりにがんばってるってワケか」と男の子の側の心の動きもしっかり描かれていて楽しいです。
そのお返事で、彼のことを思い出してネコとずれた会話をしているのも楽しい。
そしてタオルを返そうとして、あのシャワーについても…聞かずに自分で解いてしまったのも、流れを考えると当然かもしれません。
彼の拒絶に傷ついた夏澄ちゃんの痛みも、彼の反省もすごく伝わってきます。ここではバンダナの残りの部分を見せていないのもうまいですね。
この段階でも彼の名前も知らない、というのも謎めかしてくれて面白いです。
ネコがいないことで不安になり、必死で探して…やはりいなくて「くるんじゃなかった」と自虐的な気持ちになっているのも、痛みがものすごく伝わってきてたまらないものがあります。
あちこちの家にいきなりベルを鳴らして、というのも驚きました。
このバンダナが回るまでは、彼ら自身も知らなかった地域の深いつながりがあった…「彼」に向けてだった「あなたの名まえは?」という言葉が、彼女自身想像もしていなかった多くの人につながっていた…ここはすごく感動しました。こんな暖かい町ってあるのでしょうか。
それで一軒ずつ案内して、最後に別の家で子供を産んでいるのを見つけて…なんかすごく深いため息が出ます。
あのバンダナに「大森心 それとごめん」と大きく書いている、というのもすごく気持ちが伝わってきて…二人ともすごく精一杯気持ちを伝えようとしているのがわかります。
だからこそ、二人ともすごく笑顔が素敵で…
そのあと「縁結びやってよ〜」というのを聞かれていたり、もういろいろたまらないですね。最後に一緒に学校に行く、ということで夏澄ちゃんが気を遣ったり、それで照れながら「…となり歩けよ」…もう痺れました。
なんかもう、全身の力が抜けるようなすごく幸せな感じがします。こんな素敵な話、そうそうないですよ。
絵もすごく安定感が出てますます暖かくしかもすっきりしていますし、これからの一層の活躍が本当に楽しみです。

夏恋vエール!
 中学にしては珍しく飼育小屋があり、その夏休み当番の今野さあやちゃんは毎日ニワトリに蹴られている。でもサッカー部の氷先輩を近くで見られる、という役得もあるしそれなりに楽しんでいる。
 ある日、ウサギの「との」ちゃんがなぜか人間の言葉でしゃべりだし、強引に恋に協力してくれることに。半ば強要されて彼に近づき始め、とのが代弁していきなり夏休みも一緒に行くことに!

お久しぶりです…絵の繊細さは相変わらずで、動物キャラクターもすごく面白かったです。
中学で飼育小屋があるとは珍しいですね。小学校のとき、僕も飼育委員だったので懐かしいです。
好きな人を見られる特等席、というのはうまい。クール、というキャラクターがしっかりあるのは好感が持てます。
いきなりウサギの「との」が極端に…可愛くない、しかもチビの方向に擬人化されているのは吹っ飛びました。
リアル化して怒鳴り散らすところも実に面白いです。
それで「毎日お前を見てて思ってたぜ…」とちょっとしんみりさせて「こいつうぜぇって」とぶち落とす間も見事です。
それで強引にじれったいからくっつけてやる、と…見ている分には楽しいですが、之をやられる立場になったら悪夢でしょう。
必殺前歯もまた楽しいです。
あっさりと「汗かかないんでいらない」…リサーチ不足というのが、いかに…自分だけで完結して満足しているかわかりますね。
ウサギがしゃべっているのをあっさり受け入れ、それがきっかけになる、というのが面白いです。
ウサギとニワトリをわける柵が、ニワトリにいじめられているウサギにとってはありがたいだろうと思うのですが何も言わないのが読み返すとうまい伏線です。
にんじんを持ってきてくれる先輩の優しさには驚きました。指を打つのはお約束ですが楽しさを盛り上げてくれます。
手が傷だらけなのを見てくれる、それだけでなくずっといろいろ頑張ってきたのを見ていた、というのがすごくいいです。
夢オチ!?おわり、ここは苦笑しました。
姫だっこはすごく嬉しくなりました。
それで祭りに誘うのがとのだった、というのもうまいです。
「心からのぞんで努力すればなんだってかなう」というのも危険ですがすばらしい言葉ですね…もちろん、努力すればですが…その努力がまた難しいんですよ、正しい方向の努力でなければ帰ってマイナスになってしまいますから。
浴衣姿も素敵です。
そして弱っていくとの…読み返すとすごく素敵ですね。
「なにが目的?」というのもなんというか鈍いというか。
巨顔戦隊、という妙なヒーローがまた面白いです。それでごまかそうとじたばたしてどんどん傷を広げるのは…見ている分には最高に楽しいです。
彼までびしょぬれ、まあ無事で何よりでした。
「とのがかってにやったことでしょ!」というのもすごく痛い…誘わなければこんなに傷つかずに済んだ、というのがもう…狂いたいような気持ちです。
消えたとの、それで探してきてくれた先輩…あくまで優しいですね。
それで、とのが実は幽体離脱だった、という真相はすごくぐさっと、鈍い刃を圧力で突き立てるような痛みがあります。
浴衣をほどいて「あきらめません!!」「今野さん気が合うね」ここがなんともかっこいいです。
そして…花束は紛らわしいですよ!読み返しているから笑えますけど…
とのに「見てて!」と言って、深呼吸して告白するのもすごくかっこいいです。
先輩がとにかく優しくてどこまでも寛容で、なんというかすごいです。
この妙な面白さ、次はどんな作品で出てくるでしょう。楽しみです。

とろけるサマー
 夏休みのはずなのに毎日補習…そんな中、かれんちゃんは毎日渋谷くんにアタックを続けているが、彼はいつもそっけない。
 彼は事故で一年留年していて、それでかあまりしゃべらないのだ。噂ではその事故は恋人をかばって大怪我したからだ、とも言われるが…

扉の大胆な水着もすごく素敵でした。絵が微妙に変化し、明るさが増して少し炭酸っぽい涼しさが伝わるようになったのもいいです。
アイスキャンディーというキーアイテムがしっかり機能しているのも素敵です。
「彼女をかばって大ケガしたから」というのも…クラスが違って補習でしか会わない関係、というのはもう少し強調して欲しかったかも。
補習中に考え事をしていて課題を押しつけられる…ここの崩れた表情も面白いです。
プリントがわからなくて逃げてしまうのも、なんだか頭が痛くなります。
渋谷くんも優しいところがありますね。二人きりですし。
お礼がまたあのアイスキャンディー…なんかすごくおいしそうに見えてきます。
菓子屋のおばさんの「きゅうにこなくなって」というのもどうしたのでしょうか?
僕はアイスで当たったことがあるでしょうか?思い出せません。
「もしあたしがあたったら」「もしホントにあたったらつきあってやるよ」というのがまたすごく意味深です…ただアイスを食べに行くのにつきあうのか、それとも…
別れ際、強引に花火大会に誘って…「デートのおさそいってヤツ?」ということばにどぎまぎするところなんてため息が出ました。
そして夏祭り、渋谷くんが彼女と一緒なのを見てしまって…「イタイな…」という言葉がすごく心の痛みを伝えてきます。
翌日の、「彼女といくならそういってよね!」というあっさりした感じ、でも…なんと言えばいいのか、暑さと気持ちをうまく混ぜているのが…なんともいえない何かが伝わって、たまらない気持ちになります。
「あきらめなかったらいつかは」…切ない言葉です。そして…本当に当たってしまったとは…
この空がなんともいえない深さです。
それから、二人きりの学校での…なんともいえない透明感がたまらないです。
そしてもう終わっていた、というのが意外でした…他の人に相談していて、…でも「おとぎばなしの五月(高瀬綾)みたいに、お互いに縛って動けなくなってしまうよりはよかったのでしょう。
「安心した?」と迫ってくるのもなんだかふっと、恥ずかしいようななんともいえない気持ちになります。
そして当たり棒を見せて…なんかもうすごくさわやかで、すごく不思議な作品でした。
これだけの実力が本誌で出てこないのは惜しいです。単行本だってもっと出せるだけ作品はあるはずですし、もっと出て欲しいですよ。

ラブ×ダイエット
 愛佳ちゃんは思い切り太ってしまったことを、水泳シーズンが始まって去年の水着がきつく腹も出てしまっていることで自覚してしまった。ちょうどそのとき、隣の部屋の同級生、新之助に見られてしまって最悪!
 大好きな雅和くんが細い子が好きだと聞いて、ダイエットを決意するけど方法がめちゃくちゃでぜんぜんやせない。
 それで倒れたとき、新之助がわざわざダイエットについて調べていろいろ忠告してくれた。
 でもある日、愛佳ちゃんを太っていると雅和くんが言って、それに新之助が怒って大喧嘩…
これまたお久しぶりです…なんか不思議な下品さがあり、その変わり方にかなり驚きました。
去年の水着がきつい、というのは悲惨ですね。ヒロインの腹が出てしまっている、というのをしっかり描くのはかなりすごいことかも。
そしてそこを男の子に見られるなんて!やはり女の子にとって、完璧なスタイルで裸を見られるよりみっともない体型の水着を見られるほうが恥ずかしいでしょうか?
隣の部屋ということは幼馴染?いつも喧嘩ばかりしているのがまた…傍から見ればカップルなのでしょうね。
細いのが好き、と好きな人に言われたら、それは…ため息。沢木アユと重ねているのがまたはっきりしてしまっています。
とにかく体重を減らせば、と単純に断食しようとするのはあまりにバカ…母親がこういうときは厳しいのがまた見ていて楽しいです。
というか母親か友達が正しいダイエットを教えてやればいいのに。
好きな人が誰なのかもばれてしまって、「わるい…?」と赤くなっているところの可愛らしさ葉極上でした。新之助くんがドキッとするのもわかります。
みんなのスタイルのよさは本当にすごい…普段からみんなダイエットしていたからでしょうが、なんかもうすごいです。
食べていないのにやせないのは当然です。しかも腹の音まで盛大に…バカ。
「ダイエットのジャマしようとしてるんでしょ」というのも、飢餓で情緒不安定になっているからでしょうね。まったく危険です。
保健室での彼女は本当に可愛いです。わざわざダイエットも調べてくれるなんて本当に優しいです!
それでどぎまぎしてまたケンカするのが楽しいです。
そしてちゃんと努力するようになって、せっかく成果が出てきたのに…プールの柵にカバーがしてあって、それがちょっと風でめくれるというのは女三之宮か、と苦笑しました。
でもそのほうがドキドキするでしょう。
そして雅和くんの暴言で新之助くんが怒って、このケンカはなんだか男の子だな、と楽しくなってきました。雅和くんのために愛佳ちゃんが頑張っているのを知っているから怒っている、というのがかっこいいです。
「あいつのこと好きなのかんがえなおしたほうがいい」というのもまだ穏当な言い方ですね。
それで雅和くんには彼女がいて、そして…はっきり「北口が太ってるって」…かなり幼いですね…
それで実感してうずくまって、新之助くんが差し出した手…も触れなくて…切ないと思ったら、いきなり呪文のように無数の食べ物の名まえが…中にはかなり不穏当なものもありますよね…
このヤケ食いだあ、という叫びに共感する読者はどれだけいるでしょう。
それで新之助くんが止めるかと思ったら、とめずにおごって…何この山、何万カロリー?…
新之助くんの下心がまたすごいです。それで「おまえはおれだけのものだ」…なんかもう頭が痛いというか、なんともいえない作品です。
デビュー作が嘘のように思えますが、あれももう何年も昔ですし…今度はどんなのをぶちかましてくるのか、楽しみです。

ぴよっこガーデン
結構長い連載でしたね。お疲れ様でした。
引っ越して親子三人仲良く暮らす…それでお別れ、と思ったらこの盛大な送別パーティ!
なんかもうすごいです。
ハヤトくんの餞別がすごく素敵でした。「悪女聖書」ってある意味神をも恐れぬ言葉を…
みんないらないものばかりプレゼントしてくる、というのは苦笑しますが、子供のプレゼントというのは大人から見ればガラクタにも思えます。といっても大人のプレゼントも金がかかっているだけで価値があるのかないのかわからないことも多いですが。
みんながどんどん登場するのも、ますます頭が痛くなります。
また戻ってくるのもお約束ですね。
とにかくお疲れ様でした。単行本は出ないのでしょうか…?
次回作も楽しみです。

名探偵夢水清志郎事件ノート大江戸編
『沈黙の春(レイチェル・カーソン)』の解説にも思えます…そして『環境危機をあおってはいけない(ビョルン・ロンボルグ)』と『不都合な真実(アル・ゴア)』でバランスを取ってください。その三つの子供向け版があればいいのですが…
巧之介さんのそば好きもすごいですし、髷を落とすときのカッコよさも強烈でした。
今に伝わらない古流剣術…いろいろ謎がありそうです。
結構こっちでは探偵業がはやっているようですね。
で、こっちでも京風石狩鍋があるとは。相談者についての推理はホームズ流ですね。
絵者、という頑固そうな老人も面白いキャラクターです。というかあの長屋、変な人が多すぎ…
人によって感じ方が違う…そして何も感じない大人がいる、というのも厳しい、ため息が出る言葉です。
でもなぜ洞穴をふさいでいるのでしょう?それは…犯罪者や家のない極貧者の隠れ場所となり、治安を乱す元になるから…でしょうか。今だったらそこで子供が事故で死んだから、というのもありうるでしょう。
大入道というのも、読み返してみるとなぜ誰も正体がわからないのかが不思議です。
教授のあまりにあっけない「できますよ」…そして丘で一眠りして、いきなり奉行所へ…なんというかすごい行動です。
で、越後の…水戸黄門御一行様と坂本竜馬は時代が違いすぎますよ!ここは笑い転げました。
というか奉行としても、葵の紋を持っている人を放り出すなんてできません。というか持っているという時点で町奉行書では処理できない、評定所の問題になってしまいますよ。
人の話を聞けない、といっても彼の説明が悪いのでは?
「しかたない」が悲しい、というのはカレル・ヴァン・ウォルフレン氏がいつも主張していることですし、僕も賛成ではあります。でも…結局ウォルフレン氏の批判を多くの国民が真に受けた結果、小泉政権というとんでもない大入道が出てきてしまいましたが…
「未来は子どもたちのものだよ」と、本当にわかっている大人がどれだけいるでしょう。そしてもっと怖いのが、そう思っているからこそ悪い方向に暴走する大人もどれだけいるでしょう…
見世物小屋のシーンの迫力もいろいろすごいです。
両手で刀を抜く、というのは居合のセオリーとは真逆ですね。
えぬえ・はやみね両先生の特別出演はなんだか嬉しかったです。
ゐつさんの登場シーンの美しさは生唾ものでした。
そして…奉行所に対して説明さえしようとしないのは、時代背景を考えれば当然ですが、それこそそれを「しかたない」としているのは彼ですよ。
そして真相も…ユスリカの蚊柱が真相だった、というのはすごく納得できますが…それも書くな…僕にはそれが納得できません。
愚民に真実は消化できない、というような感じがするんですよ。
ユスリカを殺すための薬の心配自体は少ないと思います…江戸時代には新規発明自体が国禁でしたから。逆説的に、だからこそチェーンソーも近代製紙も製鉄も発明されず、船も制限されたおかげで森が切りつくされることがなく、だから文明崩壊もなく二百年以上文明を持続させることができたのですが。
このユスリカについての話は完全に「沈黙の春」そのものです。
そして、そのことを書くな、ということは…どうすれば最悪の未来を避けられるか考えることさえ防いでしまいます。それがなんともいえない怒りを感じます。
ちなみに、「沈黙の春」にもいくつかの面があります。あれでDDTが禁止されましたが、そのせいでマラリアで死んだ人は世界中で五千万人いるとも言われているんですよ。
正しくDDTを使うべきだったのです…薬が多すぎると蚊だけでなく他の虫や鳥も殺してしまう、そうならないように使用量を制限し、害虫の天敵も有効に活用して、賢明に。たとえば蚊やユスリカが大量発生する水を川などとつないでドジョウ・コイなどが常に暮らすようにすれば、蚊やユスリカの幼虫はほとんど食べられます。
もし、奉行にもかわら版でも…全ての真実をありのままに、水路に薬をまいたらもっと最悪の結果になることも含めて書いたらどうなっていたでしょう…もちろん夢水も真理さんも殺されたでしょうが、読んだ人はどう思ったでしょう。
そして…この時代の人に聞かせるには早すぎる真実、でも今の子供達には早過ぎないでしょうか?
今の子供達は、真実を消化できるだけの教育を受けているでしょうか?それとも根本的に、人間は真実には耐えられないのでしょうか?

オレ様カテキョ
 昔「銀龍」と呼ばれる伝説の不良が支配していた問題校の上村実乃ちゃんは、本当は高校にも行きたいけれどひたすらまわりに合わせている。
 そんなとき、旅行に行く母が気まぐれで、母の親友の息子に家庭教師を頼んでしまった。
 その家庭教師はとんでもない迫力のある不良で、逆らえず勉強してしまうし完全にパシリにされるし…でも少しだけでもほめられるのは嬉しく、勉強に取り組んでしまう。
 だがそれが友だちにバレ、いじめが始まってしまい…
 結構重い問題を鋭くうがち、丁寧に成長を描いた力のあるデビュー作。
絵がなんとも好みです。
あと話のテーマがすごいですね。
みんなが同調圧力で足を引っ張り合っている、というのがどれほど日本人全体の力すら下げているか…それを考えると体の後ろ半分がなくなったような感じさえします。
そしてワルも単純に同調しているだけ、というのが悲しくなります。
すごく可愛い男の子の思い出、それがいきなり家庭教師とか、ぽんぽんいろいろ飛ぶ情報が入ってきて…それが一気にものすごい迫力のヤンキーに集合する、ここは鮮やかに決めてくれました。
「さからったらマジでボコるから」と脅してきたり、堂々と未成年者なのに喫煙していたり…相当大胆な作品です。
この典型的な間違った解き方はよくあるな、となんだか納得します。単純に記号の意味もわかっていないだけでしょう。
「ヤンキーではなくカッケーと思うことをしてるだけ」というのもかっこいい生き方ですね。
強要されている勉強でも、ほめられると嬉しいから頑張ってしまう…全ての子供にそういうところはあるのでしょう。
勉強が隠れてしなければならない、勇気が必要なこと、というのは悲しいですね。
大人には敬語、ということで「いざってときに失敗すんだ」…彼は大きい失敗をしたことがある?
タカが本物の優等生だというのはびっくりしました。
それでベッドに押し倒されて…もう母親もいないから二人きり…ここまで迫られてきょとん、としているだけというのもすごいです。
「ひねくれてるくせに自分がない」というのも悲しい評ですね。正しいのでしょうが。
「まわりにあわせないと後がこわい」というのが、十五年生きてきてたった一つ学んだことだとは…まあそれを拒否した僕は三十二年生きてきて、代わりに何を学んだのかといわれたら…
「いっしょにすんじゃねーよ」と迫る態度に、彼がどれだけこれまで努力してきたかが伝わってきます。東大医学部A判定というのはほぼ純粋に努力…いや、残念ながらそこまできれいではない、正しい努力ができなければそこにはたどりつけないんですよね…勉強自体のノウハウ、試験に適応するための頭の作り方のほうが大切なのですが…
「なにもはじめてねーし」という言葉が、一人でも多くの読者の胸に響いてくれればいいのですが。
「瞳が輝いてる」「あたしとはぜんぜんちがう」と自分を振り返る力がある、というのが彼女の一番の力かもしれません。
考えても何も見えてこない、というのもすごくわかります…一人で考えてしまうと、絶望しか浮かばないのです。
そして、なぜ勉強しているからって土下座しなければならないのでしょうか?
土下座を拒否するときの強さは圧倒されるものを感じました。
ここでタカが殴りこんできたのもすごい迫力でした。
「暴力でしか自分とおせなかった」という反省もあるんですか…
「オレ以外のヤツには」というのもすごく素敵でした。
すごく深いテーマに一気に斬りこんだ、強烈にハートが伝わってくる作品でした。
結構完成度が高いのですが、ここからどう成長していくかとても楽しみです。

絶対うまくいく恋愛バイブル2007
 まわりが恋で騒がしいけど、エリカちゃんはまだあまり興味もない。バカップル化した友だちが、タイトルの名の本をくれた。
 ふと別に仲良くもないクラスメートの宮崎智之くんが告白してふられるのを目撃し、なんとなくその本の受け売りで協力しよう、と言い出してしまった。
 最初からバラ百本を断られるのを承知で出して、なら一本だけといえば相手は断りにくくなり、結果的には印象付けられる…という例を彼は本当にやってしまい、結構うまく行ってしまう。でもうまく行くことで逆に、自分が初恋もまだとは言い出せない。それに彼の輝きがどうも気になって…
何人かの作家の名前が浮かぶ絵柄に一瞬引きましたが、読んでみるとすごく面白いです。絵も全体にはつらつとしていて元気が伝わってきます。
恋って…辛いことも楽しいことも大きすぎて制御不能になります。今の僕には、最も恐ろしいことです…誰かに恋してしまうより、余命半年の宣告を受けるほうがずっといいです。
この恋愛バイブルの心理学自体うまく書けています。専門的な心理学はともかく、人間の心理として正しくはありますからね。
本を受け取っていきなり「好きです」と告白が聞こえてくる、というのもうまい!
お互いクラスが同じなのにフルネーム呼び、というのも面白い関係ですね。
それでとりあえず誉めれば機嫌がよくなったので「あの本すげえ!!」と思って、それでアドバイスしようと…というかあの本をあげちゃえばよかったのに。
バラを百本渡す、というのは本当にめちゃくちゃです。というかこの本の内容を考えれば、バラ百本はあくまで例で、別のもっとまともな何かに応用するべきだと思うのですが…
そして本当にバラ百本を渡す、っていくらするんですか!
「どこの王子だよっ」とか「あたしゃあんたの行動に目をうたがったよ…」とか、細かいところがなんとも言えず面白いのです。
彼のキラキラする笑顔にドキッとする、とエリカちゃんの気持ちもしっかり描かれていますね。
次からのいろいろなアドバイスも通俗心理学としては大体正しいことを言っていますね。
そして初恋もまだ、ということが周りの噂でイタイと思ってしまう、というのもうまいです。
毎日報酬を買ってきてくれる、ってかなり金持ちでは?まあバラ百本買える自体で相当金持ちですが。
「のろけお断り!!」というのもなんだか楽しいです。
「おまえはまだつぼみだってこと」と、バカにしないで受け入れてくれる優しさとこの構図がすごくいいですね。
それで本を落として、それで今までのアドバイスが本の受け売りだと告白して…まあちょっと考えれば、同じ本を買えばいいのですが。
ここでの智之くんの優しさも素敵でした。
それで「智之くんみたいな人好きになりたい」から…頭の中が智之くんでいっぱいになるのもうまく描けています。
そして、もう一度告白という話で…いらいらして拒絶してしまい…まなみ先輩と話したことで、一気に想いを自覚してしまう、というのが見事でした。
ここで「あたしのするコトはどうしたら智之くんを笑顔にできるか」とすぐに気づいてしまうのがまたすばらしいです。
それでみんなにいろいろ聞いて…みんなのアドバイスはなんだか迫力がありました。全体を読んでみたいぐらい、ちょっと怖いぐらいです。
ラブレターかと思ったらあらためての励ましと、この無数のアドバイス…
そして彼の告白…余計なことを考えてしまうのは悪い癖ですね、まなみ先輩に改めて告白していたらどうなっていたのか、というかまなみ先輩は振り回されただけじゃないかというか…
でもまたバラ百本、というのがすごく華やかな告白シーンを作ってくれました。
第一印象はびっくりしましたが、読み返すと本当に面白い作品です。これからもっと成長し、絵柄もオリジナリティを増して明るさと輝きがうまく出た、素敵な作家になってくれるといいですね。期待しています。

鏡の中のアリス
 放課後遅くまで残っていると、血まみれの女の子の幽霊がさらいに来る…学校前の横断歩道で事故にあった少年の霊…そして放課後四時四十四分、大鏡の自分に自分のケータイの番号にかけると…
 こわがりだけど意地っ張りなありすちゃんは、勢いで鏡の噂をためすことに。
 その放課後名前を呼ばれた直後、突然知らない男の子に手をつかまれた。彼、ヒロキは同じく「アリス」と呼ばれる、有子(ゆうこ)という女の子と間違えたらしい。
 そして鏡の噂を試してみたら、本当に鏡の中の自分とつながった。そのオバケはそれほど怖くない雰囲気だが、次の日から友だちが次々と姿を消す。
 そしてヒロキが、友だちをさらった鏡の中の少女に強く話しかける…有子の恋人だった彼は横断歩道で事故にあい、そこにかけつけた有子は階段で転んで死んだ。それは五年も前だが、幽霊の噂を聞いて中学生のふりをして確かめにきたのだ…
完全にやられました!最後の一ページ、あまりに鮮やかなどんでん返し。
ホラーでデビューということでよほどすごい作品なんだな、と思いましたし、冒頭の暗い画面にセンスを感じてどきどきして…いたらすごく可愛い絵。これでまずだまされました。
いきなり男の子に手をつかまれて、ふうむ…服や中の骨がすごくしっかり描けていますね。
いつも鏡をのぞきこんでいた、というのもなんだか危ないかも。「だった」というのもわかりやすくて…そのわかりやすささえも罠。
幽霊に会いたいから、というのがなんだか怖いです。
そして本当に鏡に電話してみて、うわ…ぜんぜん怖くない。すごく普通の明るい子に思えます。
消えたミカ、その鏡に浮かぶあまりに邪悪な表情…これに気づくべきでした。
噂に鳴り、震えているナナミちゃんも…
こんなことをしておきながら笑顔で電話してくる、というのは、読み返してみると怖いと思うべきだったんですよね。
昔の回想の、鏡に「その人の名まえはね」に本人が「きいてくれる?〜」と重ねるのはあまりのキザに爆発しました。
でもこの画面全体の暗さは…あ、全部回想なんですね。
五年も経って、どんな名目でことわって入ったのでしょう。童顔にあきれているありすちゃんがなんだか面白いです。
それでありすが電話して、そこにヒロキが介入して…ここの手の不気味さはかなりのものです。
ぎゅっと固く優しく手を握る、霊に対しても優しい愛情のまま…でも彼は最後まで笑顔だし、二人の友達も無事に帰ってきたようですし…「もう友だちがいなくなるのはいやだよ!!」という言葉の熱さも素敵ですし、なんというかここまでの作品全体ではあまり怖くない、むしろ優しい感じが強い、プラス方向の作品かと思っていたのです…オセロのほとんど真っ白な盤面のように。
それが、ページをめくった瞬間一気に真っ黒になったのです!有子はとことん邪悪に狂っており、ヒロキもまたその仲間に…魂を根本的に汚されてしまって…あまりに邪悪な有子の目と、一見柔和な笑顔のヒロキ、どちらも最悪に怖いです。
見事にしてやられました。違うジャンル、ホラーを題材にしてはいるけれど後味はいい作品だと思ったら…思わされたら…脱帽、呆然、背筋が寒く…何と言っても足りません。
これ以上の仕掛けをこれからもやってくれるのでしょうか?
そしてホラー自体も復活するのでしょうか?「ちゃお」の成功の大きな要因に、期待される作家には強制的にホラーをやらせることがあるとも僕は思っています…ホラーは人間のすごく深い部分を引き出す力があり、作家にとってはいい修行になっているのでしょう。
それをこれから「なかよし」もやってくれるのなら、怖いですがプラスになるでしょうね。
今の段階で完成度が高いですがここからどう成長するか、楽しみではあります。

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