なかよし2008年初夏ラブリー感想

なんだか、増刊のシリーズでない作家陣が、毎号交替しているような気がします。
増刊が増えたからの贅沢でもあるのでしょう…倍の人数の作家を継続的に活躍させ続けることができている、とすれば。
今回はデビュー後第一作が多かったのも楽しかったです。

けだものだもの(フクシマハルカ)メガネ王子(水上航)なでしこシュート!(神崎裕)かみちゃまかりんchu(コゲどんぼ)ふあふあコットン(ハタノヒヨコ)セレブな奴隷(青月まどか)大きなくりの木の下で(明日賀じゅん)ふたりのレシピ(幸凪優)ぷちっと!てのりくま(ゆみみ)コイvガサ(栗沢じゅん)猫とリボンと男の子(茂呂おりえ)ロリvきゅんプリンセス(咲良あさみ)Yes!プリキュア5GoGo!(上北ふたご/東堂いづみ)ピース!(佐藤由梨)教室のあたし(高上優里子)名探偵夢水清志郎事件ノート(えぬえけい/はやみねかおる)誰かがそばにいる(秋元葉子)君はワンドル!(猫部ねこ)そのときはふたりで(佐藤みなみ)1/2(渡辺留衣)

けだものだもの
…性交体験=大人ではありません。では何が大人?僕もわかりませんし言葉で簡単に言えるほど簡単ではないです。とにかく勉強して部活も就活もがんばって、同性異性年齢問わず人とぶつかって、本漫画映画演劇問わず古典に触れて、睡眠運動食事をちゃんとやって冥想か祈りも習慣づけて、自分を大事にしてください。以上。
今度はアイドルですか。なんでもありですね…次はオイルダラーの王子様だったりして。
BOY'S BEってマンガがマガジンで連載されていましたよね…懐かしい思い出です。
ハルキが鈍いように描かれていますが、彼の前で他の男の話をする小夏のほうが僕にはバカに思えます。
「きょうはおそくなってもいい…よ」…正直凍りつきました。男にとってはありがたいですが、逆にそれを言わせてしまった自分が情けなくなります。
ここで女ハルキが出てしまうのは…まあしょうがないですね。
いきなりアイドルの登場にはびっくりしました。「ホンモノ!?」という大変失礼な反応に「ホンモノだよー」というヒカルくん、こういう反応にも慣れているんですね。
アイドルの前で女同士で痴話げんかして、「おのぞみどおりエロイこと」…この事態にはBOY'S BE側も混乱したのでは?よくまあ冷静に対処できたものです。
こんな芸能記事が出る新聞を子供に読ませるって…いいのでしょうか。あ、そう思うのは駅売りのアダルト記事があるスポーツ新聞しか知らないからで、家庭配達版は確かアダルト記事はないんでしたっけ。
「文句があるなら」と押し倒すのはカッコいいです。
ヒカルとハルキ女版で嫉妬するというのも…今までの生活で、ハルキが小夏一筋だということは分かっているのでは?
もっと素直に、という悔恨…また懲りずにケンカ、それをずっと繰り返すのが現実の人間というものでしょうか。でも、ケンカもできず言いたいこともいえないまま、生活に縛られて仮面夫婦をやっているよりずっとましでは。
それでテレビにまで出ようとするのがなんというかすごいです。
熱湯というのも懐かしい気がします…
ここからの騒ぎは、あまりのスケールの大きさ…全国ネットの痴話げんかというのは豪快の一言です。
BOY'S BEのメンバーも楽しんでいるというかうまくそれを利用してますね。また再登場するのでしょうか?
アイドルグループを殴り飛ばす小夏ちゃんも凄い。

メガネ王子
いきなり危ないことに…よく無事で済んだものです。
というかちょっと見覚えのあるスキンヘッドメガネ使用人がいるのですが。
「王子さまに決定」というのは可愛いです。
男から見たら、「ああ見えてしっかりあやつってる」のがすごい、というのは面白い視点です。
「かんたんに同情するといたい目見る」って、経験あるのでしょうか。
やはり水上先生はとことん馬が好きですね。上北先生もそうですが。そういう魅力的なせ界を知っている作家がいるのは嬉しいので、もっと馬ものがあればいいのに。
「メガネ王子!?メガネ王子よねこのマンガ!!!」というのは苦笑しました。
「ワガママぐらいいってもいいがうそをつくのは感心しない」はカッコいいです!
幸ちゃんのぶっ壊れ具合は見ていて楽しいです。
そして莉里依ちゃんの、一見いい子に見えた態度からのとんでもない嫌がらせ…敵と味方という考え方は人間の本質であり、同時に最悪の病でもありますね。
幸ちゃんは相手が子供だとかそういうの無視して、感情だけぶつけたような感じがします。
愛情の受け取り方もあげ方も知らない…今も昔も多くの人がそうですよ。
「むかしの自分に似てたから」って、彼を救ったのは誰なのでしょう。
そして「おまえはバカだなぁ」とと笑い飛ばして手をつなぐ…わかってない幸ちゃんには苦笑するしかないです。
落とし穴のオチもなんだかほほえましくて楽しいです。

なでしこシュート!
…なんというか完璧な話です。つっこむ余地がないぐらいに。
冒頭から迫力のあるジャンプですね。テクニックがすごくしっかりしてスピード感があります。
シャツにメイクがついてしまうというのも面白いです。
モデルとの両立問題も今回はまだ曖昧なままですね…次以降それでしょうか。
周囲の大人はサッカーをモデルとしての人気に利用しようとはしないのでしょうか?
「なんでもすぐにげだす梨々だ」…失礼な話ですが正しいです。ちゃんと大人を説得する力がない人に、厳しい合宿に耐えぬけるとは思えません。
家族の大喜びはなんだかほほえましいです…それも嫌なのはわかりますが。
チャレンジ合宿のレベルの高さは読んでいるこっちがぞっとします。
なでしこジャパンがかっこいいから、というのもやる動機としては…
ハードだと言いながら基礎練習についていっているのがすごいですね。
シュートの基礎は、僕には結局できませんでした。
ビジョンがはっきりしている周囲とのギャップが、今のところはごく軽いのが読み返すとうまく盛り上げてくれています。序破急のリズムまであるとは。
日本代表候補の桜ちゃんとの差を始めて意識する、というのもなんというかのんきです。
練習はすごく実戦的な緊張が伝わってきます。この作品、サッカーをあまり知らない僕にもこれだけ面白いなら…サッカーファンの男子が読んでも通用すると思いますよ。
パスを回してもらえないのは…僕もそれは昔すごく苦しかったです。でも…いろいろあるんですよね、確かに僕はトラップの成功率が低く、上述の基礎どおりのシュートができないので不正確。また、僕がいた場所が、三手先には自チームを不利にする場だったかもしれない。また僕が悪いわけではなく、小中学生にはパスを出すほど余裕はないのかもしれない…単に僕が差別に近い教室内ポジションにあったというのが一番正しいのでしょうが。
シップ地獄は…でも他にも同じ状態の子はたくさんいると思います。あと、マッサージやストレッチなどを教えてくれる人がいないのは問題だと思います…でも、それぐらい当然の前提と考えている合宿なのかも。
どんどんついていけなくなっていく描写…そして必死になったことでかえって周りが見えなくなって…これは教える側は、自分で気づけということなのでしょうか、一番大事なのはゴールに至る流れだということを…
考えろ!と叫んでやりたいです。一人練習が辛くて、悲しみで心が一杯になってしまうのもすごく分かりますから。
あまりに高いレベルにいる桜ちゃんを見ていて…「無理に決まってんじゃん」…絶望はすごくわかります。
でも、本当に出来る努力を全部した上でしょうか?
でも、もし僕に…ナイフファイティングの合宿のチャンスがあるとしても、僕にどこまでついていけるでしょう。彼女を笑う資格が自分にあるとは思えません。
でも痛みを感じられるなら…ここでの池田選手の言葉はすごいです。読者に何度も読み返して欲しいですよ、サッカーをやっていない人も。そしてサッカーをやっている男子にも読んで欲しいです…くそ、何でこの作品が週刊少年マガジンやサッカー雑誌に載っていないのでしょう。
戻ってくると信じている桜ちゃんもすごい。朝早く先に練習している梨々ちゃんにほっとするのも人間らしくて素敵です。
桜ちゃんの技術には勝てなくても高さ…先生の賞賛も嬉しいです。
なんというか、これは…なかよし増刊には、オリンピック便乗のタイアップにはもったいないぐらいいい作品ですよ。

かみちゃまかりんchu
あれ?ペンネームの改名は?
ずいぶんあっさりしたグランドフィナーレ…
全ての記憶がない、ただ頑張らなければならないという意識だけがある…神くんのことも忘れているというのが切ないです。
いきなり和音くんのHモード…というかもうこの年齢なら、避妊さえちゃんとやれば…
高校部の入試…ははは。上半分とはずいぶん厳しい移行試験ですね。
烏丸…アホなのか頭がいいのか。「一人一人のがんばりが数値に」というのは優しそうに見えて残酷です。
いっしょにいたいから勉強したい、でも…読み返してみると残酷です。
「身体の変調があったら」って、記憶ちゃんとあるのでは?
進路希望が別の学校というのは…というか、今の日本で理数を徹底的に、アイビーリーグやスタンフォード、オックスブリッジも視野に入れてやりたい、桁外れに頭がいい人はどこに行けばいいのでしょう。東大合格率だけが売りの日本の一流校では潰される恐れのほうが強いのでは?
男子校にはいけない…というのなら僕も女子だったら宝塚に…
髪を切って男の子のふりをしようというほど和音くんたちと一緒にいたい、というのは愚かな分切ないです。
封印された記憶が急げという、というのはずいぶんと都合のいい話です。僕だったらそれが悪霊に植えつけられたものではと疑って動けなくなりそうですが。
キスして説得…「わたしのこと好き?」とストレートに、これはラブラブでいいです。「証がほしい」というのは…エッチしてくれ、としか僕には読めないのですが、僕がおかしいのでしょうか?
なのに殴り飛ばされたらわけわからなくなります。
「記憶のむこうのライバルに顔むけできねー」というのも…
結局神くんとの再開はないまま…これで完全に終わりなのでしょうか?

ふあふあコットン
また豪快な…。
パイはすごくおいしそうです。
ネルの性格紹介はいきなり毒舌な…
目が見えにくくなる、というのは人事ではないです、一日平均十時間以上パソコンをやっている僕にとっては特に。
万能薬の伝説ってどこにでもあるんですね。
ネルちゃんも釣は真剣にやってますね。
そして…あまりの巨大さに呆然。この湖で維持できるでかさじゃないですね…それはネッシーも同じですが。
「ご愛読ありがとうございました」は最終兵器です。
湖で遠くを見るぐらいで視力が回復すればいいのですが。

セレブな奴隷
セレブの集う全寮制名門校私立光理学園、中でも頂点に立つお嬢様の橘華…がある日、突然父の会社の倒産で自分の屋敷も全て失い、学校にもいられないし帰る場所もない。
そんな彼女に救いの手が…学園の最高VIP、セレブ中のセレブ小野寺良介、高須賀要、倉持光太郎の三人に関する頼みを聞いてくれれば学費全額免除との申し出。
それでほっとして寝たら、起きたときは知らない部屋、メイド姿で男に押し倒されていた…三人の従順なメイドとして仕えよ、と!

微妙に雑誌を間違えている気もしますがキレイで楽しめたのでよし。というか別の雑誌で(=セックスシーンありで)やっていたらすごく後味が悪いものか、またはとっても間違った作品(要するに女が犯されて喜ぶ)になるでしょう。
あえて髪が短めのお嬢様というのも新鮮ですごく素敵です。不思議な色香と品があって…見ているだけでぼーっとしてきます。
父親の電話での暢気さ、まああまり深刻で明るく言うしかないのでしょう。
というか、この流れって『小公女』と同じですね。
お嬢さま以外の生き方がわからない…優等生という生き方があるのでは?日本には学力だけで学費全額免除・生活費全支給の奨学金システムがあまりないので難しいかもしれませんが…それがないほうがおかしいです。
朝いきなり、三人で寝ているまに着替えさせたのでしょうか。
良介くんの横暴さと要くんのスケベ、どちらが…というか要くんは、こうして抱きついたりする程度なんですから…むしろ甘えてるだけという感じです。本当にスケベなら問答無用で性行為を迫るでしょう。
創立パーティで、カンペキなお嬢さまというアイデンティティについて悩むのはうまくできています。
パーティに出るのも変に思われるから…といっても、大きい会社が潰れるというニュースが誰の耳にも入っていないと思うほうがおかしいのですが。
まあ、多少無理があっても体面を保つのもセレブ道かもしれませんが。
パーティとメイドの両立は見ていて面白いです。
というかこれ見ていると、男子三人で華ちゃんに甘えくさっているとしか思えないのですが。まあ男子はいくつになっても子供ですし。
陰口は覚悟しておくべきでしたが…今までは、忙しさからもうお嬢さまでなくなったことを直視しないですんだ…直視しないできたようですね。
今まで頑張ってきたことは、少なくとも卓越した学力はあるはずなのですが…学力だけではどうにもならないのが今の日本のゆがみです。自分が持っているものと失ったものを冷静に見極める強さは、まだ期待できないようです。
ここでの三バカの行動は…痺れました。
三人ともこうなるとあまりに華麗で…あ、ちゃんと「学園一の優等生」と、持っているものをしっかり教えていますね。
本当に王子さまなのは、そういう教育があるのでしょうか?日本では無理では…イギリスの王子様は戦争に…少なくとも前線に行きたいと駄々をこねてます。
ラストもすごくカッコいいです。
確かにネタそのものは最低ですが、カッコよさと面白さはさすがでした。
今度は…正直続きはいいです。題材もっと選んで、もっと激しい輝きを見せて欲しいです。

大きなくりの木の下で
大好きな信太郎くんと話したい恵生ちゃんは、自分の極度の不運体質にジャマされっぱなし。
昔雷が落ちて以来年中実をつけている、学校裏の栗の大木に石を投げておまじないしてみたら、その木がいきなり怒鳴りつけてきた。
恋愛については全然助けてくれないけど、彼の海外留学を知ってショックな彼女を木は怒鳴りつけ…
久々に明日賀先生らしい作品です。本来こういう作家ですし。
不運?好きな人と同じ学校というだけで十分幸運ですよ。
木の枝に石を投げ乗せれば、って結構危ないので落としたほうがいいのでは。
いきなり木がしゃべりだす、豪快で単純すぎる顔にはガッツポーズを出したくなりました。
末代までたたる、というのも懐かしい表現ですね。それが今の子にも有効なのが意外です。特別な力がない、ならたたることも出来ないはずですが…
木の恋というのも面白いです。イチョウは雌雄異体ですが栗は…まあ細かいことはつっこまないでおきましょう。
木の世話がきっかけで信太郎くんと話せたんですから十分幸運ですよ。
外国へ…同じ学校というだけで幸運、ということはそのときにならなきゃわからないものです。僕も覚えがありますよ…クラスが違うとか、まして同じクラスなのに隣の席じゃないとかでガタガタ言ってたんですから…
音楽やっている子が引越しでオーストリアというのも幸運な話です。
「オイ」と木が声をかけるのに「いつものことですから…帰ります…」「しぬなよー」というやり取りの微妙さがさすがです。
バスに行かれて転んでブロックが頭に当たって犬にかまれる、と不幸四連発があっさり描かれているのもすごい。
そして栗の木の恋人を探してみて、…切られた可能性があるというのはきついですね…しかもどちらかわからないとなると。
探してくれたことへの感謝を素直に出せない大木さんの微妙な心のひだも面白いです。
大木さんの怒鳴り散らしはちょっと気持ちよくなりました。
そして思いを伝えようとしたらもっとすごい不幸の連続…何かに呪われてませんか?
栗が実をくれたというのもさりげないですが心温まります。
呆然と絶望して、そして涙の激しさで自分を取り戻して空港にダッシュ、ここはすごく感動的に描かれていました。
ケーキをひき潰されてもまだ諦めないのが凄い!
そして今度は青信号なのに車が…呪いも今度こそ手段を選んでないですね。
木に抱え上げられて突っ走るのはすごすぎます。
彼の返事も…両重いかはやや曖昧なままなのもいいですね。
そして、力を使い果たしてきれいに終わったかと思ったら…今度は葉を虫に食わせて言葉にするとは、器用すぎます。

ふたりのレシピ
 ケーキ屋の息子の天野くんはいつもクラスに試作品を持ってきてくれる。中でも葉月ちゃんの分は特別。
 でも天野くん149cm、葉月ちゃん165cmの身長差からか彼を男として見ておらず、陸上部の佐々木先輩に憧れている。
 先輩が料理が好きな子が好きと知り、調理実習で頑張ろうとするけど葉月ちゃんは不器用で、天野くんがいろいろ手伝ってくれてやっとできたけど、天野くんの表情が少し気になるし…
 優しさがたっぷり詰まったとてもおいしい作品。 

なんというか輝きと可愛らしさがすごいです。
服や身体の感じがほぼ全てのページに出ているのも嬉しいです。
くるみのマーブルケーキ…マーブルケーキって要するにパウンドケーキでは?
まあそれを気にさせないほど、明るい雰囲気が一杯に伝わってきてすごく幸せな気持ちになります。読んでいてすごく心地いいです。
抱きついたりするのに抵抗がないというのも面白い関係ですね。
気がある、といわれても意識しない…しっかり回想が入っているのも、彼の側から読み返すとすごく気持ちがよくわかります。
佐々木先輩がまっすぐ走ってくる絵の迫力は凄かったです。
身長差がいい、とか言っているのはまだまだ恋に恋してるな、と苦笑するしかありません。
「千佳のいったことは気にしないっと」と、少し意識している気持ちの変化も読んでいてすごく心地いいです。
天野くんが「特別だし」と言っているの、半ば告白のような気も…というか「それだけじゃないんだけどね」なんてもう九割方告白ですよ。
先輩は料理上手な子が好き、で彼女の不器用ぶり…まあお約束ですが、できればそれは前半に出して欲しかった気もします。
彼女のことを手伝うことになった天野くんの、さりげなく嬉しそうな表情が彼の立場になると面白いです。
一つ一つのミスがしっかり描かれているのがまたいいです。
不器用で泣きわめくのも…彼を男として意識してないからですが…彼の意外と男らしいところなどをちょっと見たかったです。
「いまのままでもじゅうぶん魅力的」というこの余裕!そしていろいろなお菓子のことから、「人の魅力だっていろいろ」というの…もしかしたらこの言葉、親に言われた言葉なのかもと思うとなんだか痺れてきます。
天野くんの回想も、彼の立場から読むとすごく胸が一杯になります。そして「いつも笑顔で食べてくれる葉月さんが」と、切ない表情をしたとき…何を言おうとしたのでしょう。ここで友達が飛び込んできて、「先輩に渡せる」と爆弾を投下して寂しそうに笑って励ますのが…切ないですね。
先輩に彼女がいて、告白できなくてよかったです…もし告白してOKだったら泥沼になりかねなかったです。前半から心配していましたが先輩が悪い人でなかったのも後味がいいです。
「ヤケ食いとかしたくなったらいってね!」という天野くんの言葉、切ないです。自分にはそれしかできることがない…でもそれだけでもできるのがうらやましいです、僕には何もできないので。
責任とって、という勝手な言葉…告白なのかがちょっと曖昧なのも、今の彼女の気持ちをありのまま出しているようで心地いい感じがします。
これからの二人もずっと見ていたい気がします。
とにかく男の立場から読み返すと最高ですよ!
次回作もすごく期待しています。

プチっと!てのりくま
今回は珍しく重めの話です。
やはり、ゆみみ先生には普通の作品も描いて欲しいですよ。
道徳の宿題って、うまくマスゴミや運動家を動かせば潰せそうです。
受験と関係ない宿題って、どこかで関係は出ますよ。何冊も本を読んで要約する仕事なら直接国語の勉強になります。国語力は全ての受験力の基礎です。
ケンカばかりの幼なじみもほほえましいです。
母親があまり寝ないで仕事ばかり…母子家庭?嫌な子だったのが一転するのは魔法みたいです。
みんなで悪口を言っている、と被害妄想になるのもなんだかわかります。
ケーキで糖分補給とかの優しさはほっとします。
「恋のキューピッド」「恋じゃないっ」というオチもなんだかほっこりします。
やっぱりいいなあ…つくづくもったいない、普通の作品で本誌連載してくれてもいいのに。

コイvガサ
 椿ちゃんはいつも万里くんにからかわれ遊ばれている。
 でもやはり彼が好き…ある日、日直で教室で一人でいるとき、つい黒板に相合傘を書き、人の気配に慌てて消した。翌日、その相合傘が書き直されていて大騒ぎ…彼が軽くノリノリなのも嫌で…

難しい心がすごくよく描かれています。
いきなり腕をつついて「肉だった」、これは悲鳴上げたいほどうらやましいです!抱きついて「おもちゃだし」というのも見ている分には楽しいです。
二人がどんな風にこんな恋人未満関係になったのかも見てみたいです。
この状態で片思いと思っているのも…彼の側から見てもすごく面白い。
黒板に相合傘、というのは実にいい風習です。
犯人探しの要素があるのも面白いです。
朝から当然のように二人でいる、というのは…今まで自然だったほうがおかしい、こういうきっかけで盛り上がるのも当然ですね。
「これを機につきあう?オレたち」というのが実は本気なのに、からかわれてると色眼鏡がかかってしまったら本当に全部歪みますね。
黒板相合傘から本当の相合傘、というのもすごい進み方です。
箱かぶって傘を渡そうとするのは…間抜けというか可愛いです。
すごくビクビクしてしまう気持ちもなんだか分かります。
はあ…つくづく残念です、相合傘の機会が一度もなかったのは…
素直になれない、可愛くないというのも嫌というほどわかります。「へいきでいられるってことは」と考えるのもわかりますが…本当に全く意識していなかったら、嫌で仕方ないから噂にならないように接触を控えますよ、普通。
車からかばって抱き寄せるのもうまい!「相手がオレだから」で、告白かと思わせてそういうことだとは。
この「やだっ」にはすごく傷ついたと思います。それがちょっと描かれているのが読み返すとうまいです。
そして…「いい迷惑」に傷ついてしまうの、なんというかすごく二人の心に傷がたまっていくのがわかって、たまらなく切ないです。
実際暴力ですよね、あれは…
それでつい自分が書いたと言ってしまって…「ひきこもろっかな」が選択肢になってしまうというのが怖いですが、逆に一切選択肢がない、自殺以外考えないよりはいいでしょう。本当は学校に行かなくてもちゃんと生きられる、簡単に学校を変えられるシステムであればいいのですが。
校庭いっぱいの相合傘はスケールが大きいです!
つい、って…消せよ…彼にとってはそれが想像以上に彼女を傷つけてしまったことですごく罪悪感感じていたでしょうね。
そしてみんなが見ている前でのキス、ああもう…石灰ぶちまけたくなります。

猫とリボンと男の子
 千葉花澄ちゃんは車にはねられた猫を病院に連れて行って遅刻するようないいところもあるけれど、おとなしくて友達がいない。
 それで一人ぼっちでいたら、いきなりソラという見知らぬ男の子が彼女を抱きしめ「きみが好きだ」と言われる。
 翌日仕事を頼まれ、クラスメートに手伝ってもらいたいけどうまくいえないとき、ソラくんがきっかけを作ってくれて、一歩一歩杖のように助けてくれる。でもいきなり頬をなめてきたり、いろいろ変。
 みんなと仲良くなって、自分もソラが好き、と返事をした…そのとき彼はキスして、別れを告げた…
これ、僕の高校時代の妄想に本質が近いです…素敵な異性との恋がきっかけで人と仲良くなれるようになる、という点が。悲鳴上げたくなります。
こういう、なんだか和菓子みたいな風味の絵もいいですね。
車にひかれた猫を埋めたことは僕もあります。
女子の制服は下にワイシャツがあるのでしょうか?それとも先生に借りたとか…他の男子に借りたのではないですよね。
水道の下のネット、レモン石鹸…これも懐かしいです。蛇口も緻密ですごく懐かしい…
この孤独感もすごくよくわかります…カラオケというのもうらやましいです。
誘われてすぐいろいろ考えてしまい、その間にチャンスを逃すというのも結構あったのかもしれません。
いきなり男の子に抱きしめられる、そして名前を聞かれてから「君が好きだ」と、出会いからしっかりヒントを入れているのが実に分かりやすくて切なさを増します。
車にはねられた猫で素通りするみんな…それが近代人の時間のペースと、冷酷ベースの心理なのでしょうか。
最初から「友だちもいないし〜つまんないです」と、自分のことを見ているのがなんだかすごいです。
ひとりは…寂しいけれど、今はむしろメリットのほうが大きいです。もし…高校生の僕が普通になっていたとしたら…デメリットが大きすぎて目がくらみます。
「ぼくも手伝うから」と手にキス、これも読み返してみるとそういうことなんですよね…
せっかく助けたのに長くない、というのは…想像したら泣きたくなります。怖いのは、そのことでほっとしてしまうもう一人の自分…助かったら飼って一生面倒を見なければならないから。
届かない、でも頼めない…「気軽に声かけられたらいいのに」と、あと一歩まで分かっているんですね、本当に頭のいい子です。僕はここまで言葉で考えられるようになったのは多分大学出てからですよ。
ソラくんの助けはすごくうまいです。
「なにをお願いしたいかいわないと」…これが最初ですよね。はっきり要求をいえないのが僕の欠点の一つです。
当然のように頬をなめてきたりするのも、猫だと早く読者に気づかせて…切なくさせます。
「自分が動かないとなにも変わらないよ」…はいその通りです。
怖くて逃げてしまう気持ちも痛いほど分かります。
「ぼくがいなくなったら」…死にかけた猫じゃなくても、誰でもいつかはいなくなります…直視したくないことですが。
そして自分の中の声と語り合うシーンがまたすごいです。
それでバレーボールをしているクラスメートのところに走り出して…これは見ているだけで痛いぐらいです。あの頃これにすごく憧れていたんでしょうね…
声をかけてくれるのを待ってくれていた、というクラスメートの優しさは信じられないほどです。
そしてすっかり皆と仲良くなって、そこで…ソラが痛みを覚えるのと同時に「あたしのソラが好きだよ」…切ないですね。
このキスは…読み返してみると、僕だったら自分にはそんな権利はないと思うかも…とすごく切なくなります。
別れの言葉、ネックレスのように結んだリボン、そして携帯電話…この流れは実にうまい。もっと前からわかってはいましたが、だからこそ盛り上がりが大きいです。
無人の教室の現実感もすごいですよ。
それからどれほど泣いて、一ヵ月後のすっかり明るい彼女がいるのでしょう。
なんというかすごい作品でした。僕自身の内面をえぐり出されたように痛いです。
次回作が今から楽しみです。

ロリvきゅんプリンセス
誰とも口をきかず友達がいない好葉ちゃんも、かえって着替えたら別人に…ロリータ服を着ると性格が「姫」になってしまう!
そんな彼女の正体が憧れの浅野くんにばれ、そしてずっと見られていて、そしてなんと文化祭実行委員を浅野くんと二人でやることに!

今日も誰ともしゃべらなかった、というのはよくわかります。
読者を意識したモノローグが多いのがなんか面白いです。
いきなりの変身にはびっくりしました!
というか「姫」って…まあ突っ込み不用ですね。
ぱあっとものすごい光です。
小さい頃のひとめボレ描写はすごすぎます。服ってすごい力があるんですね…
「いたいコだとか思わないで」というのがまた爆笑。
話しかけてくれたたった一人、って「ケシゴム貸して」程度も今までなかったのでしょうか?それはそれですごいです。
「お慕いしております」と祈るようにしているところは透明感があってすごいです。
ぶつかっていかにも姫な…こういう動き一つ一つがすごすぎます。
あっさり「うちのくらすの本田さん?」とばれて…翌日「おっす姫」…こりゃ恥ずかしいですね。
学校でのあまりの一人ぼっちぶりもすごい。
浅野くんに見つめられていて苦しむ、というのもちょっと苦笑します。
逃げて怯え震えているときの彼女、なんだか僕自身を見るようです。
彼女のためにコスプレ喫茶にしてくれた…というか彼女、実行委員の仕事はほとんどやていないとか…あれ、それは誰かに譲ったのでしょうか。
ゴキブリのオモチャでの因縁というのは飲食店にとっては怖いです。いい勉強になりますね。
姫に変身して撃退するのはすごすぎました!なんか脳がオーバーヒート起こしてます。
「どっちもほんとうの本田さんでしょ」という言葉も嬉しいですね。
ロリ服を着なくてもリボンだけでもある程度人に話しかけられる…というか、人に肯定されること、何かみんなに貢献することが自信をもたらしてくれたのでしょう。
最後の「浅野くんの顔が赤く見えたのは」とやってくれたのは、中途半端な分これからをすごく楽しみにさせてくれます。鈍感さにイライラする彼のしぐさも楽しいです。

Yes!プリキュア5GoGo!
テンションが低ければ、僕は諦めて寝るか運動します。
「ますます中学生に見えない」には爆笑。馬が好きなのも伝わってきます。
それぞれが服を変えることで気分が引き締まる、というのは面白いですね。なんというか魔法ですよ、服や化粧は。
だから…いろいろなコスチュームって人気のある商品ですし、男女問わず子供は変身ヒーローヒロインが大好きなのでしょう。
でもそこには落とし穴があるんですけどね、「**さえ手に入れれば(自分は完全になるのに)」という。
勉強はあくまで基本をこつこつやらなきゃできません。

ピース!
 親友のアカネと別の中学に入って悲しい沙月ちゃんに、キリちゃんという新しい友達ができた。
 でもキリちゃんにはアカネちゃんのことばかり話し、まるで二人の男を二股かけているような状態になってしまい…
 友情の難しさ、深刻さをそのまま描いたすごくパワフルな作品。
題材の大胆さ、表現のパワーなどデビュー作からすごくうまく成長しています。
中学校で、小学校のときの友達がだれもいなかったら…
ふっと友達ができるっていいですね。
学校探検でいろいろなことがあるのは見ていてすごく楽しいです。うらやましい。
七巻が出ない、というのは何でしょうか。11巻や24巻や29巻には心当たりがありますが。
そういうことを一々アカネちゃんに話す、というのも彼女の小学生時代が目に見えるようです。
プロフィールを回す、というのはすごくいいですね。
紗月ちゃんの感情表現の豊かさも見ていてすごく楽しいです。
滝谷くんの登場にはすごく期待しました。
買い物から、アカネちゃんの話になって、ちょっと悪口みたいになったら…「あのうしろ…」となるのは笑えました!でもそれ以上に、「小学校のときの親友」と、過去形にとられかねない言葉なのが…
キリちゃんも強引に誘えばよかったのに。
翌日、キリちゃんの顔色全然見ないでアカネちゃんのことを語りまくる…読み返してみると困ったものです。
「いちばんの親友」という言葉でキリちゃんを傷つけているのが、見ていてすごく辛いです。というか彼女には…いちばんなんて概念ないのでしょうが…
それでぱっと放課後買い物に行って、アカネからのメール、これは内容を見れば行かなきゃ人間じゃないということぐらい分かると思います。
無視するキリちゃんは…人間ですよね、いろいろと。すごく辛いシーンです…両方の辛さがすごく画面から伝わってきます。
アカネちゃんが突き放すのも、紗月ちゃんのことを思ってのことだとはっきりわかります。
どっちとも仲よく、というのがなぜできないのか…二人ともどう思っているのでしょう。
滝谷くんの意地悪はすごくうまいですが、ここまでする必要はないと思います。人が苦しむ反応を楽しむのは…人間やっているのがいやになります。
大声で親友親友と怒鳴るのは強烈でした。
ここで三人揃ってしまうのは…運がいいというかなんというか、とにかく熱いのがすごく伝わってきます。
「仲がいいコのことをよく人に話したがる」…そういうことでしたか。
「ばーさんになるまで仲よしこよし」というのは実に難しいですよね、実際には。
結局滝田くんが、ただ意地悪な子のままだったのが少し残念かも…でもそれが結果的に、三人の友情の熱さをうまく表現してくれました。
やはり鋭いですし、こういう表現はすごいですよ。

教室のあたし
恐ろしいほど切れ、スケールの大きいシリーズでした。
総合の授業は僕は経験がないので、そういうことをやるのかとちょっと面白いです。でもすぐネットに頼ることに…まあインターネットリテラシーをつける意味もありますか。
持ち主がない机というのは不安にさせられますね…ホラーじみた雰囲気さえあります。
町出身の有名人、というのは、インターネットだけで調べられるでしょうか?図書館で新聞の地方版を…あまりにも時間がかかりますか。インターネットで検索できるよう、テキスト化された新聞記事のアーカイブがあればいいのですが…OCRと校正にどれほどのマンパワーで必要か。
この詩、なんだか分かる気がします。
あげはちゃんの家庭の問題は思い出して胸がかなり痛みました。
きれいな虹を見た直後、知らない女の子とぶつかって絵の具の水をかけてしまい、えらく厄介なことに…姉が人生賭けて助けようとしてくれたからって、傷が簡単に癒えるわけじゃないというのが残酷です。
「あのときたすけられなかった」…じゃあそれ以上何ができました?
りんちゃんの「クラスメイトのことほっとけない」という優しさ、普通なら触れないほうが安全だと考えるでしょうに、やはりすごい子です。
あげはちゃんがすごく慎重に接しているのはわかります。
読み返してみると、「ステキな詩をみつけました」とあるのもいいです。
詩の中のかすかな希望がそれに応えている、というのもわくわくさせます。
パソコンを見られたときの反応は、どれほどの怒りと恐怖をためこんでいるかにぞっとしました。僕にもその怒りと恐怖が伝染しそうです。
「かわいそうな子にやさしくして気分いい」…すごく刺さる言葉ですね…僕には、その罪は承知でやることしか思いつきません。
彼女の昔の傷もすごいです。
あ…一つ、恐ろしい想像をしてしまいました…「ちゃお」の増刊で「いじめ」シリーズが売れており、本誌にも登場しました。また同じ講談社の雑誌で「ライフ」や「問題提起シリーズ」が超人気作です。だから…高上先生がその路線でやるのではないか、と…。
高上先生ならいたずらに読者の心を傷つけるような作品は絶対やらない、と信じられるのですが。
あげはちゃんのりんちゃんに対する信頼はすごいですね。
秋山くんとりんちゃんの会話は嬉しいです。傷を持っているからこそ、その気持ちが分かる…でも秋山くんが動くわけではないですね。彼は難しさを知っているから…?
「だれだって自分を守るのでせいいっぱいのときって」という言葉に、初読時思わず涙があふれました。
今回先生は影に徹していますね。というか、シリーズが進むごとに徐々に後ろに引いていました。
何をしに外に出たのか、そこでもっと深く傷をえぐられて…壊れたおもちゃなど忘れればいい、とも思いますけど、人間ってそこまで分かりやすい存在じゃないですよね。
教室での彼女から伝わってくる絶望はあまりに激しくて、そのあとの言葉が必要じゃないぐらいです。
ここはあたしの場所じゃない…自分の居場所はどこにもない…その感覚も嫌というほど分かります。あそこに行ければ、と幻想にしがみついていたことも…
彼女が「hotaru」とあげはちゃんが気づいたと同時に二人で落ちてしまう、というのはあまりにショックでした。
「生きてるんだもん!」という言葉がどんなに重いか。読者一人一人に何が伝わっているか…祈るような思いです。
あ、そう言うために家を出たのですか。
すぐ学校にこれるようになったわけじゃない…一つ一つ詩の感じが変わっていく、現実を見ながらのかすかな希望…このラストもすごく余韻を残します。
とにかくとてつもない作品でした。
これほど力がある作家が本誌にいないのは大きな損失ですよ。
これだけの作品を創った疲れも心身とも相当なものでしょう…でも次回作が楽しみでならないのです。どんな作品であれ、全面的に信頼しています。

名探偵夢水清志郎事件ノート大江戸編
そうでしたね、幕末のあの時代も…庶民はお芝居見物をしていたりしていたんでしょう。固有名詞と数字を詰め込むよりそれを忘れちゃいけません。
なぜれーちが転がり込んできたのかも何かと面白いです。
舞台のからくり…宝塚でおなじみのアレもコレもソレも全部この頃できていたんですね。もちろん大階段のあの仕掛けも、それまでの蓄積があったからこそ…その蓄積をいかに使うかが演出家の手腕、その技術を維持し、新しいのを加えるのが大道具の日々の研鑽…レヴュー万歳!宝塚よ永遠に!
二枚目役者の迫力はすごい!そしてフランクな雰囲気で会ってくれて、突然目がすっと冷たくなる…痺れますね。
暴れ馬を一瞬で切り伏せた…「楽に死なせてやったんだ」というのは確かに正しいのですが。
竹光、天真流だとすぐ気づいた観察力はすごいですね。
命を奪うことをなんとも思っていない…人間は誰だってそうですよ。「ウチ」の者以外、「ソト」の命や苦痛苦悩はなんとも思いません。今の日本人はみんな…世界での毎年一千万人以上の餓死者、何万匹の捨て犬猫の安楽死、日々食べている無数の牛豚鶏魚、日本での年間数十人の餓死者、その何倍もの路上などでの凍死・病死、三万人の自殺、何十万の堕胎…どれもなんとも思っていないから生きられるのでしょう。
時代と国によって、ユダヤ人…反革命…アイルランド人…フツ族…様々な人々を「ソト」に出して虫より簡単に殺せる、どんな残酷な扱いもできてしまうのが人間という生き物ですよ。
夢水が探った、馬を暴れ馬にした針は誰が打ったのかも気になるところです。
それぞれが自分の信念を持って…斬りあってしまうのが最大の間違いです。ただ一言、「わたしはあなたの意見には反対だが、あなたが意見を表明する権利は命に代えても守る」と全員が合意すればいいだけなのに…
でも今のネットでさえ、それに賛成する人は少数派のようです。
まして当時は…いや第二次大戦が終わり、そして独立に至るまで何を言っていいか悪いかはお上が決めること。
そして討幕派だろうが誰だろうが、自分は絶対に正しい、反対する者は悪即斬、が当たり前だった…別に過去形じゃありません、今でもアラブで開明的で近代化・民主化・人権・政教分離などを訴えれば政府・原理主義者双方に殺されますし、中国にもロシアにも言論の自由はありません。アメリカにも完全な言論の自由があるとはいえません…愛国心・神など異論を認めない価値は多いです。
お上の事情より不景気のほうが、という亜衣ちゃんたちの感覚も忘れてはいけませんね。
勝海舟の登場はカッコよすぎました!
坂本竜馬からの手紙…あくまで「死ぬな」…それがどれほど難しい時代だったか。
時代への犠牲を容認する勝海舟と容認しない夢水…ここはとことん考えてほしいです。
もし明治維新に失敗していたら、今の僕たちも白人の奴隷同然だった可能性が大きいんですよ。今のアフリカのように、子供は餓死が当たり前で人工的に分断された民族同士殺し合い…という生活だったかもしれません。
夢水はそこまで考えて、時代のための犠牲を容認しないと言っているのでしょうか。
歴史の先を見通すことが、夢水にできないはずはないのに…
ただ…問題は、時代のための犠牲というのが…プラスだったかマイナスだったか、誰に決められるのでしょう。明治維新は本当に最善だったのでしょうか…志士全員を邪悪強欲と切り捨て、明治維新自体を全否定している歴史小説もありましたっけ。
でも、あまりにも歴史は多くの犠牲を求めすぎる、もう嫌だ…それもわかります。
勝海舟のつぶやきもすごく重いです。そして畳の血…心身とも鉄のように、という言葉は嘘じゃない…あの時代心得の有る武士というものは、今の子供には想像もつかない凄まじい修練を経て育っています。最も厳しい運動部の合宿と学習塾の合宿の三倍の量を毎日やっていたと思えばいいでしょうか…それも体罰はおろか、師や先輩は刀で切り殺してもよかったのです。生活の躾だって今の最悪の校則や刑務所よりはるかにすごいのが当然でした。
自他の命の重みを知りつつ、それを犠牲にする覚悟がある…あまりに凄まじいあり方です。命をなんとも思わないほうがどれほど楽か。
夢水の涙はすごく胸が痛いです。
フランス革命の話も…あ、平民はどんどん貧しくなったというのは…正しくはどうだったか、よい歴史書を多数読んで考えてください。豊かだったのが貧しくなったのか、それとも気候が変って寒くなったせいか、産業革命を前に延長して貧民の流入という流れを考えるべきか、それともずっと貧しいままだったけれど情報技術の発展で貧しさを自覚しただけか…あらゆる見方があります。
革命の素晴らしさと、その反面の…歴史書では些細な、数字の中の二人だけれど、彼にとっては共和国主席画家の座やスペインの王座とも、プール一杯の純金とも決して換えられない犠牲…
革命というのは果たして意義があるのでしょうか。フランス革命はプラスマイナスどちらが大きいか、いまだに結論が出ていません。そしてロシア革命ときたら…何千万の死者、その一人一人に名前があり、家族があり…
むしろ北欧諸国のように暴力革命ではなく、平和裏に立憲君主国になった国々のほうが安定し、戦争が少なく、庶民の生活水準も高いことが多いです。
れーちが江戸に来たのはそういうことでしたか…危険なことを。失うものを持たない人が立ち上がったら…
「みなが笑顔でいられる革命」というのはあまりにも大きすぎる理想ですね。
一人一人が命の大切さを知っている…というのも美しすぎて冷笑したくなる言葉です。
やることが長屋の改築、というのがなんだかすごいです。
あまりにのんきなみんな、そして…何も手伝えない三つ子へのれーちの言葉、また重いですね。
江戸城を消す、というのはあまりに大仕掛けで…単純で拍子抜けしました。
確か江戸城の天守閣は振袖火事で焼け落ちて以来再建されていなかったのでは?
亜朱たちが御庭番…それもまた緊迫してきました。そのシニシズムも冷たく伝わってきます。
どんな恐ろしいことになるか…あえて原作は我慢して楽しみにしましょう。

誰かがそばにいる
保健室で寝ていたら、男の子にキスされそうに…夢?
バスケ部の遠野サツキちゃんは地区予選大会を目指して頑張っているある日、少し腹が痛い気がして保健室で寝ていたらそんなことがあった。
それからも練習中突然足が動かなくなり、あとで見てみたら足に握られたようなあざがあったり、なにかと変なことがある。
保健室で五年前に、無理をして熱中症で死んだ生徒がいたのだ…

デビュー作があれだったので、ずっとそれを警戒し続けることになりそうです。初めから「叙述トリックの達人」とある折原一先生のようなものでしょうか。
冒頭のキス未遂、男の子の背中がすごくしっかり描かれています。
それだけでなく、全般的に絵がすごくよくなっています…厚みのある色香と現実感が彼女の明るい性格をよく伝えてくれています。
乙女チックな夢を、と笑ったメガネ男子をねじ上げる手がなんかすごい。
練習試合の迫力もものすごいです。
足が動かなくなる、透明な手も怖い。
そして保健室での「心配しすぎ」という言葉からの回想…どうしても、若いと無茶をするものですよね…自主練習となると指導者の責任を問うのも難しいですか。
この保険医も…責任を問われないのが一瞬疑問に思えましたが、状況を考えれば納得できます。必要のない罪悪感…ですね。
人が死んだベッドは変えましょうよ。
足のあざはかなり怖いです。単なる足首フェチ、とかいう冗談は措いといて。
霊じゃないか、という恐怖が盛り上がるのはなんかうまいです。恐怖感がどんどん育っていくのが一つ一つ絵になっているのがすごくよく伝わります。
この先生、女生徒を気軽にお姫さま抱っこ、ってセクハラにとられそうですが、単なる天然?
いきなり腹が痛くなるのも、初読時には霊障と思わせるのがまたうまいです。
ここからの闇と、見開かれた目の活用がまたお見事。
額が開いてその影から出る手は凄まじいまででした。見上げているサツキちゃんの表情も怖いですが。
盲腸だった、それで…「屁でた?」と言って叩かれる、前も締められていたメガネ男子…こういうところも面白いですね。
霊が助けてくれた、という流れはいいのですが、…やはり最後のどんでん返しを警戒し続けてしまいました。
ハグさせて、という気軽な感情表現も、明るくて本当にいい子です。怖がる顔は怖いですが。
先生がタカシくんの霊に語りかけるラスト…警戒していたのできれいに終わってほっとしています。
これからもこういう、後味のいいホラーが中心でしょうか。それとも…いろいろな意味で楽しみです。

君はワンドル!
何この夢…
ふと疑問になります。生前のカッキーって、本当に超人気アイドルだったのでしょうか?
強引に映画出演というのはその力をちょっと見せてくれている気もしますが。
みうきちゃん、さりげなくおいしいポジションですね。といっても写メール友達に送るのはとんでもない守秘義務違反でしょう。
読み返してみると、二人のラブラブな雰囲気は見事でした。
出会いのシーンでセミのまねとはなんて器用な犬。
一々ホラー映画にするのは笑うほかありません。
助けてお礼を言われて手を握って…やはりみうきちゃん、得してます。
あゆゆちゃんの気持ちを考えろ、というみうきちゃんの…人間って心の理論があるから厄介ですね。こうして考えすぎてしまいます。
そしてカッキーが身体を張って二人を助け、オチはものすごかったです。
…生前、そういう裏表は知らなかったのでしょうか?

そのときはふたりで
 どうしようもなくモテない結衣ちゃんはある日一念発起して世の中見た目だと悟り、きれいになった。
 そうしたらいきなり別のクラスの男子に、すごく情熱的に告白された!彼は校舎も違うから、過去の彼女のことは知らないはず。
 とりあえずデートするけど、彼をだましているんじゃないかと罪悪感が…何より昔のプリクラ帳は死んでも見せられない!

微妙な面白さがありますね。全体にやや大味ですが満腹感がとても大きいです。
ポッキーをくわえている表情がなんというかすごいです。
「男の子はつね日ごろから女の子を見ている」って、男女を入れ替えても同じことになりますか?
世の中は見た目、というのは僕も強く感じます。というか…見た目というもの自体が、言葉にするといろいろな意味があるようですね。
変わろうという努力から…一ヶ月で全くの別人です。これだから女って怖い。
「元は結衣だぜ」と笑っているそばかすの男子がてっきり重要なキャラになると思ったのですが…サギといわれて八つ当たりにつねられたり。
告白の唐突さはびっくりしました。これほど大胆な告白…少なくとも僕は見たことないです。
「マジですっ!!」という笑顔は本当に素敵でした。
「世の中は見ためでした」というのは苦笑させられます。
デートで男子を待たせるのは女子の常ですが…走って疲れている彼女は少し女らしくない印象があります。これが彼女の地ですよね。
事故にでも、というのはさすがにいい人すぎますし、「かわいいね」はもう人間かどうか疑うレベルですよ。
「あの子だれ?」と相馬くんを見ている子の存在も、どう関わってくるかすごく楽しみになりました。
プリクラを見せられない、というのは厄介な秘密ですね。「これはうっかり八兵衛」という、言葉遣いの中でなんとなくある泥臭さも面白い魅力です。
なんかいやになってプリクラをやめようか、といったら…いきなりツーショットの携帯写真!ストレートすぎます。
プリクラ見せて、といわれて…「あたし死ぬわ本気よ」は…笑うしかないです。
バスケの自主練のことがここまで出てこない…冒頭から、彼女は顔はともかくバスケでは一生懸命な子だと強調しないのが少し残念でした。
デートを目撃した子の登場は待ってました、という感じでした。
「くだんねーこといってんなよ」というのは…読み返してみると男として大きいです。
本当の自分はひとりぼっちでは、と思ってしまう、この複雑な気持ちはとてもうまく伝えてくれています。
後ろめたくて心を開けない、そんなときにキスを拒否してしまって…といっても、彼もちょっと先走ってる気がします。彼女はまだ一度も、彼のことを好きだと言っていません…
あ、確信犯でしたか。試すために…
ここで彼女がすごく素直に心のうちを語ったのは胸が熱くなりました。
その告白にいきなり頭突きはびっくりしました!
「結衣さんしかかわいいと思わない」はもうとろけましたよ。
何度も何度も愛の言葉を繰り返すのもすごいです。
最後のキスもすごく素敵でした!
なんというかすごく不思議な雰囲気です。これがどう化けるか楽しみですよ!

1/2(にぶんのいち)
 ライブで投げられたピックを手に入れたアキは、それを半分に割って天野にくれた。
 このときは、天野はあたしの恋うまくいくかも、と簡単に考えていたが、アキは加奈に夢中…加奈もアキが気になるみたい。
 二人とも半分こしたピックを手にしていることを知り、バンドの話が出来ることも嬉しいと彼が言ってくれて…でも彼はピックをなくし、それがきっかけで加奈と近づいてしまう…
すごく不思議なタッチです。なんだか刃物のような危険性と魅力を感じます。
ピックというキーアイテムもうまく生きていました。
割と簡単に考える、でも現実は甘くない…それが普通ですよね。よくわかります。
目があっただけで大騒ぎするというのも青いですね。
実は加奈ちゃんと仲が良かった、しかも彼女もアキくんを気にしている…うわ、まずい、というのがすごく伝わってきます。
彼とはいつも朝から頭撫でられたり、すごくスキンシップが多い仲のよさですね。
彼を加奈ちゃんから隠そうとして、もっとスキンシップをしてしまうのもなんだか嬉しさがこみ上げてきます。
あのピックをストラップにするとは器用なものです。
ピックがある、それは別の特別…その優越感、読み返してみるとそれをひっくり返すのが実にうまかったです。ここの笑顔も素敵ですし。
ピックをなくしたことを言ってくれるのはすごい誠意ですね…
怪我してまで探す天野さん…そのことをアキが知らないのが切ないです。
そして…うわ、この偶然は運命以外の何物でもないですよ。
一緒にライブに行く羽目になりそうに、「トクベツ」という言葉にしがみついているのがすごく切なくて共感できます。ここでの「よかったね」という笑顔の悲しさも鮮烈でした。
つい泣き出してしまい、そして…割れたピックを見つめなおす…26ページの、四段を交互に使うのもすごくうまいです。
アキくんが飛んできてくれたのはすごく嬉しかったです!
そして割れたハートのピックをまた合わせてくれた…こんな素敵な告白ってないですよ!
とにかくすごく切れるし、不思議なスピード感があってこれからが楽しみです。

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