なかよし2008年春ラブリー感想

今回は次々と若手作家が化けていくことに衝撃さえ受けました。
これだから増刊は最高なんですよ!

本誌連載番外編が最低限だったので多めに新人若手の作品を楽しめたのも嬉しいです。
ちょっとシリーズ第一回?と思わせる作品が多かったのも…それだけ楽しみになるのと、作品単独の感動が弱まるのと両面があります。

イチゴな僕ら(原明日美)メガネ王子(水上航)ぷちっと!てのりくま(ゆみみ)キッチンのお姫さま(安藤なつみ/小林深雪)20センチのライバル☆(瀬田ハルヒ)なでしこシュート!(神崎裕)パパとあたしのヴァーサスな日常(春瀬サク)ステップアップ(三浦瑞希)ハートちょうだい!(水無月真)ラブリー*ファミリー(菊井風見子)恋☆ゼミ(恵月ひまわり)ぼくらに咲く花(あおいみつ)アイドル(仮)(美麻りん)あぶない!?トライアングル△ラブ(長澤恵)よわっちヒーロー☆(みやび鈴)教室のあたし(高上優里子)名探偵夢水清志郎事件ノート(えぬえけい/はやみねかおる)ふあふあコットン(ハタノヒヨコ)桜色奇団(秋元葉子)初恋日記。(進藤はるか)うめぼし★(佐藤由梨)君はワンドル!(猫部ねこ)

イチゴな僕ら
 いきなりデビューし、今までのように遊んでもくれなくなった幼馴染の爽悟にとまどう一華ちゃん。
 彼は
彼女を作ってこれまで参加していた家族の誕生日にも出ない、それに彼女とキスしたとか…それで縁を切ったはずだけど、イライラは消えない。
 彼がカラオケに行ったはずの日に音楽室を壊したと疑われ…。

原先生らしい作品です。
冒頭部の、馬鹿の下に漂うなんともいえない悲しみも。
同じ会社で同じ社宅、という幼馴染は考えたことがなかったです。確かにありえますね…その場合親の会社での地位が問題になりそうですが。
保体で、というのがなんだか生々しい話です。春というか…春の嵐ですね、あれは。
突然、ノックなしに女子に入られるのが嫌になる…昨日までの幼馴染ではいられない…なんか男っぽい雰囲気、「ガキがうつるから」と言い放つわけのわからないカッコよさ、なんというか雰囲気がすごく面白いです。誕生日の熊のぬいぐるみ、といういいキーアイテムがあるのもいいです。
昼休み後の戦争…中学は給食、高校時代は…学食が主でしたっけ?よく覚えていません。
パンを確保してくれた爽悟くんに、喜んでいる一華ちゃん…それを見つめる目が、さりげないですがかなり怖いです。
家族同士のつきあいというのも面白いですね。「二葉のケーキだ」というのも、子の行動はあくまで家族のためという感じです。
ケーキがすごく酸っぱい、ということが悲しみのうまい表現になっている、というのが面白いです。
爽悟くんは何を話したかったのでしょう…本の貸し借り?あ、毎年の誕生日プレゼントですか。
口をきいていない、でもイライラが消えない…この時間についてもっと見たかったです。
彼に何があったのか…金曜日に…音楽室が…?
その事件自体についてはほとんど何もないですね。
そしてこの、ゆりかという子の邪悪さ…ちょっと残念です。この話に邪悪は絶対必要だったでしょうか?
あまりにも邪悪すぎて、圧倒されるような感じがします。
それで自殺しようと…本気で?
そして最後までケンカしているのが…何というか面白いです。

メガネ王子
いきなりの読者サービスお疲れさまです。
バーテンじゃなくホストクラブでは、と思うのは僕だけでしょうか?
「きょうからボスと」…妙なことを考えた読者ってどれだけいるでしょう。
二人とも独占欲がすごく強くて似た者同士感が強く呆れます。
メガネにひるまないのは好感持てますね。
「夜の世界の男があこがれる」…夜王?逆に幸ちゃんはその面はほとんど知らないですね。
右腕になりたい、というのは小さい夢ですね…本当は蹴落としたいけど言わないだけ?
「おまえがボスのまわりから消えるまで」「奇遇ねわたしもあんたに消えてほしいわ」…二人とも独占欲の強さに呆れます。
「おまえらオレの役に立ちたいのか」と、二人とも平等にジャマにしているのが面白いです。
お弁当作りは確かに女の武器ですね。
というかなぜ二人で対抗してしまうのでしょう…三人仲良く食べるという選択肢は?
データ化したアンケートが、パソコンが壊れて消えた…ただ一言。バックアップを取っていない者が悪い!
と言っても僕も、明日大震災で関東が廃墟になっても平気というレベルのバックアップは取ってませんけど。
彰彦が一人で責任を取る、と言ったのはバックアップしなかった自分を責めているのでは?
「必要ない」と全否定するのは…下手に怒鳴られるより辛いですね。
結局彰彦は、どちらも平等に邪魔がっているのが苦笑します。
ひたすら行動する幸ちゃん…これは履歴書に書けますね。
「安心してる場合かよ」って、彼には幸ちゃんを否定することにしか興味がないのでしょうか?大事なのは彰彦の仕事では?
否定されて自分自身を否定し続けるのは…見ていて胸が痛くなります。嫌というほど分かりますね。
先輩が声をかけるシーンはすごく素敵です。
データは自分で作り直していた、だから友哉くんも顔を立てられただけでどちらも変わりない…
「結果をだしたヤツだけがえらいのか?」という言葉はすごく嬉しいです。
この二人が意外と気が合うのも面白そうですね。

プチっと!てのりくま
お花見いいですね。僕は桜を見上げながら「花夢幻」を口ずさみ、家でじっくり聞きながら桜の記憶を見返すのが花見です。
こうサイズが小さいとすぐ迷子になりそうですね。
小さいと場所取りしようとしても風で飛ばされる、というのは苦笑します。
そして木から落ちておいしいシチュエーション、というのも素敵でした。
あーもう可愛いったら!

キッチンのお姫さま
結構胸が痛む話でした。
みんなのいい加減な噂には苦笑します。
いきなりなんか変な人が来たのはなんだか面白かったです。
この話は他人にしていいのでしょうか…ナジカちゃんなら大丈夫だと思って?
食中毒というのはすごく重い問題です…ディック・フランシスの最近の作品を思い出しました。
誰であろうと、いざというときこんなことをしないかわかりません。死線に立たない限り、自分が勇者か臆病者かはわからないです…だから僕に人を裁く権利はないです。
ナジカちゃんの励ましはすごく暖かくストレートでした。「好きだからこそ絶望も大きかったんだ」という言葉も痛いです。
ナジカちゃんが卒業してもこの食堂を続けるのでしょうか?そして、「見守らせてくれ」という感情は…娘や妹に対する感情?それとも…
ユリさんについて、何のフォローもないのがすごく残酷に思えます。
彼女は元々良心が全くないのか、それとも罪悪感から逃げるために野心に邁進しているか、それとも罪悪感に切り刻まれながら生きているか…それさえ描かないとは。

20センチのライバル
優彩(ゆあ)ちゃんの彼氏の甲斐くんは、優彩ちゃんより彼女のペットのインコに夢中?
それで彼の気持ちまで疑ってしまううちに、インコが起こすいろいろな大騒動に…
見事に外してくれました、いろいろ。
インコをあえて可愛く描かず、ちょっと不気味な面を出しているのも面白いです。親戚が買っていたインコにも確かにそういう感じはありました。
インコの言動一つ一つが初読時は嫌がらせに見える、でも読み返してみると…人間って、何でも自分の脳内に創った物語に合わせて解釈してしまう存在なんですね。
彼のメールはすごく暖かくて情熱的じゃないですか。
友達の無責任な発言も、ますます…読者にインコがライバル、というシナリオを植え付けるミスリーディングになっています。
回想シーンも面白いです。
母親の「低レベルな争い」に全く同感。サヤカがただのインコだと思って読み返すと、全部納得+優彩ちゃんの空回りでしかないんですよね。
この大惨事は読み返すと呆れるほかないです。
「さわんなっ」という言葉も、緊迫感が読み返してみると逆に間抜け。
ここまでぼろぼろになって…「オレ優彩がいらなくなったことなんて」という言葉、読み返してみると…甲斐くんの気持ちを思っても笑うしかないです。
耳をちぎられる、というのは凄まじすぎます。
抱きついて接近してから自然にキスしようとしたのも可愛いです。
サヤカが最後まで変な行動をするのも面白いです。
なんというか…いつもに比べちょっと軽めですが、持ち味が良く出ていました。

なでしこシュート!
 中学生モデルの梨々ちゃんは職場でのお世辞、学校でチヤホヤされたり反感をもたれたりと孤立感も感じ、少し寂しい感じもしている。
 そんな時、河原でサッカーをしているのを見ながら歩いていると、ボールが飛んできてつい受け止めてしまった。家族が無類のサッカー好きである彼女は小学校のころサッカーもやっていたのだが…
 そして仕事がちょっと嫌になって飛び出し、隠れたときに昨日のサッカー野郎が声をかけてきたが…実は女だった!
 なんとなくその女子サッカーチームに加わってしまうが、仕事が長引いて約束の試合にはいけそうにない…

かなり大きいシリーズですね。懲りることを知らんのかという気もしますが、背景取っ払って作品だけを見たらいつもすごく面白いのでよしとしましょう。
冒頭の撮影シーンはすごく生気が強く、不思議な色香があって楽しめました。
お世辞ばかりなのがいや、と言っても逆にきびしい人もいるのでは?でも仕事・学校両方で疎外感を感じているのはよく伝わってきます。
その「中途半端」さは本来批判されるべきことなのですが、その中途半端さをありのままに描いているのがこの作品の一番の魅力でしょうか。
サッカーを見て男の子だと思い込むのもすごく面白くしてくれます。
確かに男の子…男役にしか見えません。
サッカー一家も面白いですね。
「きょうボールをけったの何年ぶりだろ」…僕は何年ボールを蹴っていないでしょう。
仕事を逃げるというのがどれほど愚かなのかわからないのでしょう…単に辞めることに決め、ちゃんとそれまで仕事をこなせばいいのに?
「女どうし」とわかるところは苦笑しました。
なんとなく入ってしまって相当うまい、そして桜さんと激しく競り合って面白くなってくる、という流れは見ていてすごく面白かったです。
「仕事に身が入ってない」というのは全く大人のほうが正しいんですよ。
モデルの仕事よりこちらのほうが本当の自分でいられる…というのは疑問がありますが、それはこれから処理されるでしょうね。モデルの仕事だって真剣にやるべきです。
桜さんの真剣な練習シーンはすごく伝わってくるものがありました。
自然に話が出てくるというのもいいですね。こういうのは男女問わないです。
撮影中、試合のことしか考えていないというのは…撮影前にちゃんと事情を説明しておくべきでした。
モデルの仕事もサッカーもどちらも全力投球するか、またはどちらか一方にしっかり決めるかしないと…
追われたまま試合会場へ、というのも面白いシチュエーションでした。
試合シーンはかなりすごいです。
それで決まった、と思ったところに…これは相手がファインプレイでした。
相手もプロへの道を賭けてとことん必死なのが伝わってきます。
謝るべきなのは…みんなよりマネージャー達にでは?
これからどうなるのか、作品自体がすごく面白いので楽しみです。

パパとあたしのヴァーサスな日常
 有名俳優真田カズヒコの隠し子、凌ちゃんは自分達をないがしろにしてきた父のことが大嫌い。
 でも母の他界以来居候していた親戚の仕事で、また彼と同居することに…幼馴染の宏哉君の支えはあるけど…
結構きつめの話です。
冒頭の宏哉くんの優しさはすごいです。彼はカズヒコにも信頼されている、というのがなんだか嬉しいです。
「マスコミに見られてないだろーな?」という言葉には怒るほかないです。
「お母さんもきっと悲しむよ?」という宏哉くん、おせっかいですが…そういう優しさもありでしょう。
あまりの散らかりようについ掃除してしまうところはすごく面白いです。
仏壇に手を合わせないのはちょっと信じられませんが…
げっぷとか水浸しとかでびっくりするのは、単純に男の生態に慣れていないだけ…ずっと父親なしで育ってきてますし。この戸惑いも読者にとっては親近感あるでしょうね。
あ、ちゃんと線香はあげているんですね。
段階を追って心を変化させるのもうまい技法です。
「ママーひもじいんですけど」と早くも甘えているのが苦笑します。男って結局…
仕事に真剣な姿も、サイテーと思いながら心の裏で見直す、というのをうまく表現しています。
ずっと彼女を心配していた宏哉くん…優しすぎます。
そしてすごく傷ついているとき、でも…凍傷って溶け初めに激痛が走るものです。
待っているときに隠れなければならなくなる、そして忘れられていた…このシーンはすごく痛みが伝わってきて頭が変になりそうでした。
仏壇から遺影だけ持っていくとは…どうしようもないぐらい追い詰められていますね。
それがきっかけで母親との会話を思い出し、墓に足を向けるのもうまいです。
やっと本音を吐くカズヒコ、なんだか情けないですが…分かる気もします。
おんぶも経験があるのがすごく暖かいです。
最後のちょっと馬鹿なやり取りもなんだか暖かいです。

ステップアップ
 三度のメシと暴れるぐらいが楽しみの大石かれんちゃんが、幼馴染でちょっと太って「(ぶりっ子)ブリ」と呼ばれている花園ゆりちゃんに誘われ、ダンス部を見学に行き…迫力に圧倒され、踊ってみると楽しくて入ってしまう。
 運動神経を誇る彼女がふと気づくと、ゆりちゃんもすごく上手くなっていた…彼女はプロを目指していることを告白した。
 気がつくと差がついてしまったことに気がつき、少しずつ嫉妬と焦りが鎌首をもたげていく…

まず化けたな、と叫びました。
冒頭からものすごく生気に溢れていてはつらつした感じで、すごい成長です。
よく見るとすごい省略絵があったりするのも面白いです。そしてブリちゃんがかなり太っているのも大胆に描いています…太っている子を出す、ということ自体かなり大胆ですよ。
ドアを空けた瞬間の印象・迫力も強烈に伝わってきました。
コーチの「筋がいいわね」という言葉も読み返すとうまい罠になっています。
誉められたことがまず嬉しくてなんとなくはじめてしまう…そしていきなりすごい運動神経をアピールするのが素敵です。
ブリちゃんの練習熱心さ、さりげなく「なにも知らなかった そうなにも」と伏線を置いておくのも…かれんちゃんのダンスの華やかさとブリちゃんの変化もよく描かれていて、初めて夢を語るブリちゃんの言葉に、かれんちゃんの心が言葉にならないのもうまい。
そして口では励ましていても、本当は内心では違う…その表現も見事!
その焦りがダンスに出てくるのでどんどん辛さが積もっていくのもすごく伝わってきます。
でも…嫉妬を自覚できるのはすごいです。
逆にブリちゃんが、そのことが負担でかスランプに陥りかかっている…そして本番で、音楽側のトラブルからフリーズしたブリちゃん…言葉にならない感じです。
ここでのかれんちゃんの大胆な行動はびっくりしましたし、すごく素敵でした。
二人の会話も涙がこみあげてきそうでしたよ。
そして最後の名刺には、てっきりシリーズとばかり思ってしまいました。
このパワーが次からどんなふうに生かされるのか、すごく楽しみです!

ハートちょうだい!
 幸人くんと理子ちゃんは今日からラブラブ開花宣言。小学校からの四人組、和史くんと亜里沙ちゃんはずっとラブラブカップルで、理子ちゃんはずっと幸人くんが好きでやっと告白して結ばれた。
 でも翌日ベタベタしたら彼に嫌がられ、四人でデート、途中ではぐれる計画を練るが…

新しい絵柄の可愛らしさがすごくよく出てきましたね。すごく表情豊かなのも楽しいです。
冒頭からとてもはなやいだ可愛らしさがあって、元気な嬉しさも伝わってきて楽しくなります。
四人の関係も素早く伝わってわかりやすい…大先輩バカップルもすごく素敵でうらやましいです。
ずっと夢みてきたことだけにドキドキわくわくしていたら、「はなれろ。」の一言でガーンとなる、すごく共感できる気がします。
「幸人はなにがしたいの?」…分かりきった質問しないでください。と男だから言えます。
ちらっと回想を入れて四人の関係を補足しなおすのもうまいです。
ここでの「幸人のほうから手をのばす」という言葉も読み返すといい伏線です。
私服の四人も素敵です!というか今までいつも四人で行動していた、そのうち二人がカップル…どんな感じだったのか、それも見てみたいですね。
「「カワイイ」なら理子」には吹っ飛びました。
亜里沙ちゃんたちのホラーハウスでのラブラブは強烈でした!
後ろで呆れているお化け役の人も災難ですね。
こういうことはこれまでなかったのかも気になります。
つい抱きしめてしまって、キスかと思ったら…ここもかわいい。
すぐはぐれたのはわざとだと言ってしまう正直さも、トラブルのネタになると同時にうまくラストと響いています。
僕には…なぜ幸人くんが、それをそんなに許せないのかわかりませんでした。うそを無条件に嫌う潔癖さ?
ここで「だったら和史につきあってもらえよ」には、暴言にもほどがありますよ…ショックの表現もうまいです。
つい観覧車に乗ってしまうのもすごくわかります。
窓にかかれた字をよく読めたものです。僕は鏡で見てやっとわかりました。
観覧車に引き込むシーンはさすがにすごいです。
そして…「つきあいたいと思ったの理子がはじめてだし」で充分とは…
キスシーンもすごく素敵でした。
最後の、観覧車に関するオチも正直さとうまく響いてすごく暖かい終わり方です。あ、報告というのはキスとか仲直りとかでしょうか。
あとこれはサイトでの日記へ。該当するのは多分、平成13年バウホール公演、バウ音楽詩劇「イーハトーヴ 夢」〜宮沢賢治「銀河鉄道の夜」〜監修:柴田 侑宏 脚本・演出:藤井 大介です。

ラブリー*ファミリー
一瞬シリーズかと期待しました。人気のある話だったようで嬉しいです。
末っ子の反抗期でしょうか…テレビ画面がいろいろ面白いです。どちらも小一には難しいかも。
こういうときには高圧的な兄もありがたいものでしょうか。「よそはよそうちはうち」という言葉は個人的には嫌いですけど。
浅井くんとの関係もいろいろ面白いです。相変わらず懐の深い男です。
お母さん、というのは…これ、実の母親が知ったら泣くでしょうね。浅井くんの「14歳で母になるドラマ」は二兄の立場からはしゃれになりません。こういうところが面白いです。
主婦状態だから彼女じゃないのか、と気にしてしまうのは読み返すとうまい誤解です。彼はそういうところが好きなのに…
未四くんが一人で勝手に帰るのは、児童心理学はよくあることだと言っています…独立心が増してくる頃でもある、と。
家族三人学校でもべったりなのを恥ずかしがるのはいつごろでしょう?個人差を考えると今でもおかしくないです。
「未四のワガママ父さんたちのせいだって」と叱るシーンでは、僕は個人的にはそうだと叫びたくなりました。
読み返せば違うのは分かりますが、今の状況がストレスでないはずはないです。
両親も含め皆頑張っているのだから犠牲を喜んで払わなければならない、というのは内心の一番深いところまで束縛していないでしょうか。
僕はフロイトの影響も強く内心の自由絶対主義者なので、それには反対したくなるのです…不満は不満と認めて出して、行動はちゃんとやるほうが精神的には健康では、と。
「万里なんかに気ぃとられてるから」という言葉も、今の三姫ちゃんの立場では完全に…内心さえ束縛されると感じ、堰が切れるのもすごくわかります。
ここでの浅井くんの助けはすごく暖かかったです。
すごく心配していることがサイレンから伝わるのもすごくわかりやすいです。…救急車・パトカー・消防車の三点セット同時出動ってどれだけの事態ですか…
何気なく当然のように手をつないでいますが、そのことには気づかないのがまたいいです。
万里くんには本音をぶちまけられる、というのもなんだかわかります。
これを影で聞かされる羽目になる三姫ちゃんも…恥ずかしい…
未四くんの回想…頑張ったのに無視されることの辛さもすごくわかります。これで泣きじゃくる未四くんは小さい男の子そのままです。もらい泣きしそう。よくこれが描けたものですよ…。
川に落ちてしまった未四くんに迷わず飛び込む浅井くん…確かに二次災害の危険は大きいのですが、相手が子供の場合には浮くものを投げてロープを探すだけではリスクが大きすぎますか。
冷たさにびっくりするのは強烈でした。
今はお母さんでいい、という言葉にはすごく強い愛情が溢れていてすごく胸が熱いです。
「兄ちゃんが一人増えるって思えよ」という言葉、なんというか…もうこの家族の一員みたいに彼は思っているようです。
そして二兄の、怒りをぶちまけながら…すぐ全てを察する包容力の大きさも年上ならではですね。
「いつも見てるから」、そして名前呼び…さりげない告白ですがすごくよく伝わってますね。
「好き」なんて言葉、この二人には必要ないかも…もう家族に限りなく近いですし。
オチの「なんかムカツク空気が」「前見て前」がすごく面白いです。
やはり実力がすごく伸びています!早く本誌に出て欲しいです。この力にふさわしいテーマをもっとたくさん見つけて欲しいですよ。

恋☆ゼミ
なんか絵がすごく暴走しているような…
簡単に吹っ飛ぶ悪い虫たちにはなぜか幼稚園前後の自分の姿を思い出しました。
確かに脳が溶けている…両立を一瞬も考えないのが凄い。
カラオケのためにガリ勉をするというのは悲しくなりますが、東大のためにガリ勉をするのも本当の勉強ではないという点では同じですね。
友達の呆れながらの親切、前ページでは単にライバルとしか思われていないことを知ったら…まあ女子も、男子以上にライバルと友達は両立するようですが。いろいろと。
女子三人の登場はかなり強烈でした。
頑張っているのにうまくいかないもどかしさもいいですね。
この川原の行動は全く理解不能…人を踏みにじるのが大好きな邪悪なのかとさえ思いました。
確かに学力は努力を裏切りませんね。学歴社会も悪い面だけじゃありません…
恋愛はいくら努力しても無意味に思えます。いや…僕の世代にとっての就職もそうでした、今は知りませんが。
友達二人の励ましはすごく熱いです。
この補習はカッコよかったです!
ここでの川原の対応は…すごく腹が立ちます。単に二人空気も読まずにバカップルしていればいいのに、なぜそうしないのでしょう?
「男心学」って…それで得点するのは男女とも無理ですよ。
ソファで「ひとりじめしてみる?」はエロスギ。
なんというかひどい人です。

ぼくらに咲く花
 中学一年の春、誰も知る人がいない教室。ふと見上げた赤坂鈴ちゃんの目にとても可愛い女の子、泉わかばちゃんが映った。一目で互いに友だちになりたい、と強く思った二人、直後ぶつかった男の子、森田智春の三人で自然に過ごすようになる。
 ある日、古い塀に囲まれた使われていないらしい花園を見つけた三人は、三人でそこを花園にもどすと決める。
 中学二年の春、森田くんのことを好きだと気づいた鈴ちゃんはわかばちゃんに応援して、と約束する。
 そしてその秋、森田くんがわかばちゃんに告白したのを聞いてしまい、許すことができず三人バラバラに…

これでまた化けたと叫びました。このカラーの柔らかさと深みのある生気はなんでしょう。そしてページをめくったときのふわっとした柔らかさ!
いきなりすごくかわいい子と目が合い、強い感覚を感じる…これって男女だったら一目ぼれ描写そのものですね。それに結構近いものがあるのかも。
「なぜかわたしぜったいこの子と」この言葉のリズムもいいですし、言葉の大胆さも…同性愛さえ疑いかねない言葉です。
そしてページをめくると次の出会い、そしてもう猛烈な怒鳴り合いとリズムもまた絶妙。
新入生三人の顔を覚えている先生が凄い。名札は見えませんでしたね。
学校専属のカメラマンというのもすごいですね。
ここでやっと三人の名前が出るのも、長いページをよく使いこなしています。
それから季節の移り変わりに従って話が進むのもスケールが大きくゆったり読めます。
ガラスの仮面絵は笑ってしまいました。
この花園は学校とは関係ないのでしょうか?不思議な場ですね。秘密基地って確かに子供です。
三人で花園を作り直すのもいろいろ楽しそうです。
秋、体育祭…まるでアルバムか何かをめくるように思い出が重なっていきますね。
借り物競争で鈴ちゃんを連れて行った、紙が「好きなひと」なのも…読み返すと本当はわかばちゃんか、と納得します。
そして春、丸一年の年月がじっくり描かれていてすごくいいですね。
それまでにゆっくりと想いが育っていたことも伝わってきます。
「応援…してくれる?」という言葉、これには叫びたくなりました。その言葉がどんなに相手を縛ってしまうか!
自主練習しているシーンからも、本当はわかばちゃんも彼を見つめていることがわかる、それで芽が出た…その瞬間に告白!
それで真っ暗になり、どうしても彼女を許せなくなる…あまりにもわがままな叫びです。でもそれだけに…すごく直接胸の痛みに伝わってきます。
「きらいになったの」という叫びもあまりに重く、痛みが激しいです。
それからの長い時間が嫌でも意識されてしまうのがまた辛い。
わかばちゃんを嫌っているつもりでも、わかばちゃんの悪口を聞くのはもっと…「ムカツク」…この言葉があまりに重くて、体が壊れそうです。「ムカツク」という言葉はよく批判される言葉ですが、あまりにも激しすぎて、未熟すぎて、他にどうしようもない…そんな感じが強く伝わってきます。
ハアハアと息を荒らげるのも、僕の中学時代を思い出すとあまりにわかります…口内炎はないですか、唇をずっと噛み締めていての?
花を見て泣きじゃくり、やっと感情から言葉の入り口ができる…ここもすごく…
とうとう卒業式まで動かないまま、というのもすごいですね。卒業式での鈴ちゃんの美しさにはびっくりしました。三年間での彼女の成長が…よく見れば森田くんの身長も、見事としか言いようがないです。
わかばちゃんにふられている、という言葉には驚きました。なんというか呆然とします。
アルバムでやっと、本当の気持ちに気づいてしまった…
「きらいになろうとしてもムリ」という言葉もすごく嬉しい言葉です。前から好きなものを嫌いになるよう強要されてすごく傷ついているので。
わかばちゃんのところに、扉…心の扉を押し開くシーンには涙がこみ上げました。子の花畑の素晴らしさ!
やっと三人、あまりに長い時間…なんという作品でしょう!恐ろしい作家になったものです。
これからどんどん本誌にも出てきて欲しいですよ、これだけ力があるのですから…

アイドル(仮)
 人気アイドル二人ユニット、ACROSSの片割れ、東の双子の姉、南は今日だけ骨折した彼の影武者をやってくれと頼まれる。
 ACROSSのパートナー、竜の大ファンである南ちゃんはそっくりな姿形を活かして本当にやることに。
 結構うまく行き、竜の仕事に向けた真剣さも知って…でも休憩時、着替えを見られて女だとばれてしまった!竜はライブ中止を宣言する…

美麻先生もすごく輝きが増し、安定感がでてきてどんどんよくなっています。
コアラ化がすごく可愛いです。
大河ドラマは何でしょうか?まさか…
東くんは出番は少ないですが、子供っぽいキャラがとても楽しいです。
Wコアラがまた可愛い!
ついコアラ化して飛びつくのも可愛いです。それでぐりぐりされて、なぜおかん代表が野比…
ミーハーが暴走するのは仕方ないですね。ついてきたことなどはなかった…というか竜くん、彼女の存在を知っていたのでしょうか?
歌が口パクなのに隣で歌っている竜くんにばれない、というのも不思議ですね。というか買収済み工作員が多すぎるのも、逆にばれるリスク、後にスクープされるリスクを上げるのでは?
抱かれて悲鳴を上げてしまうのも嬉しいハプニングですし、ぐりぐりの繰り返しも面白いです。
「自信があるから」と、彼の真剣さを見直すシーンはすごく素敵でした。うそをつきたくない、と思うのもいい心の動きです。
休憩で着替えているところを見つけられて…下着はちょっとサービス不足ですが、これぐらいがちょうどいいかもしれません。逆に色気ありますよ。
「こんなふうにうらぎられるとは」という言葉がかなり重いです。引退すら考えてないでしょうか?
一瞬の横からの影絵が強烈です。
電話での東の言葉からまたやろうと思う、ここからの熱さは強烈でした。
大声で竜に叫ぶのって盛り上がりますよ。
「ライブはぶじ終了し」「お説教タイム」というのはかなり笑えました。
そしてそれまで男役だった南ちゃんの笑顔の素敵さ!病院の窓から放り出すオチもいいです。
とにかくすごく楽しく熱い作品でした。これからの作品も楽しみです…逆に重い悲劇なんかも読みたいかも!

あぶない!?トライアングル△ラブ
「西中の鈴村」と、別の中学の有香周辺でも人気(中二で同学年)の鈴村楓くんに、有香ちゃんだけは興味なし。彼女の好みは年下で背が低くて…要するにショタコン。
 そんな彼女が出会ってしまった理想の人、湊くん(もちろん小学生)が落としたレアカードを探すのにつきあっていると、弟を妙に可愛がっている楓くんも出てきてしまった。
 その後楓くんと変質者競争をしながら、湊くんがしょっちゅう落とすカードを追いかけて…

これ、全キャラ男女逆転したらとんでもなく危ない作品ですね…それを想像しながら読み返して笑いが止まりませんでした。湊くんの強烈な可愛らしさが上手いです。
ショタコン…日本では別になんとも思われませんが、欧米ではロリコン同様犯罪なんでしたよね…
棒がついた変な表情のハートマークも面白いです。
しっかり手を伸ばして握手を狙うのはうまい犯罪です…特に男女逆転版を想像すると。
祭男カードはオリジナルですよね(現実にあったらすごい)?そんなのを思いついて作ってしまうのがとんでもないです。
古めかしい顔で「未来のお兄さま」…耳から笑えてきます。
兄の異常さが徐々に出てくるのも…いきなり「ブラコン兄貴」「ショタコン女」となる、この異常に堂々とした変態っぷりが実に楽しい。
小学校の前で待ち伏せ、というのは…男女逆転だったら完全に警察沙汰ですね。
そしてあやしい人、確かに怪しすぎます。でも花粉症の季節なら普通です。
いきなりのドロップキックで見直したら実は、というのは無駄なカッコよさがずれていてたのしいです。
女の子に囲まれる楓くん、というか女の子達は彼のブラコンぶりを知っているのでしょうか?
緑の服で木にまぎれる変質者ぶりには爆笑しました。変すぎます。
あたしだって避けたい、って誰でも避けたいですよ。
自然に家にまで上がりこむのも、特に男女逆転で想像したらめちゃくちゃ笑えます。
「ただのブラコンへんたい兄さんじゃない」というのがまた、まともなシーンに見えて言葉がひどい。
誘拐のことを考えて「する…あたしならしてしまうかも…」がまた強烈でした。
絶望する楓くんを励ますシーンは妙に熱いです。ただ変態じゃなくこういう熱さが無駄にあるのがこの作品の面白いところですね。
よくカードを落とす湊くんの挙動がまた面白いです。
さりげなくぎゅっと抱きしめて「一生あたしのそばを」…ちゃっかりしています。
この穴は危険すぎるでしょう。というか工事現場にはロープの類は?僕なら腰にロープを巻いて木に巻いて確保し、滑り降ります。
楓くんが抱きしめて助けてくれたシーンもカッコいいです。
「おれにとってどれだけたいせつか」は湊くんだけですよね?
そして有香ちゃんの気持ちが揺れて、また…というかすごく管理の悪い工事現場ですね。
なんとなく三人で帰るのも気まずそうでいいです。
本当の愛、と思ったらいきなり崩壊したのがまたすごい。どうなるにしてもいろいろ苦労しそうです。
というか…変態すぎて面白すぎました。
次は一体何をしでかしてくれるのか、目が離せません。

よわっちヒーロー☆
 空手全国大会優勝者の広瀬えるちゃんがある日、気が弱くていつもパシられている松山くんを見かねて助けた。それがイライラして松山くんを鍛えなおしてやる、と宣言。
 そんなある日、川で溺れている子犬のために、松山くんはためらいなしに飛び込んだことに少しドキッとしてしまう。
 そしてまたいじめっ子とトラブルになっているえるちゃんのところに、松山くんが飛び込んできて…

すごくパワフルな絵柄になりましたね。
扉から強いパワーが伝わってきます。
全国大会優勝はすごすぎますが、迫力はよく出てきます。
いきなり空手全国大会優勝者にカバンをぶつけるとは…そっちのほうがいい度胸です。
松山くんの気弱そうな感じをメガネがすごくよく出しています。
前からは単なるクラスメートでしょうか?どんな関係だったのやら。
「男女」というほうもいい度胸ですね…
それで鍛えなおす宣言、動機が「イライラのもとは自分で解消」するためと、自分勝手をむき出しにしているのがむしろ心地よいです。偽善者よりずっといいですよ…僕も何か善事をするときには見返りを求めないよう、やらなかったら寝覚めが悪いから勝手にやっているだけだ、と自分に言い聞かせます。
声からはじめるというのも合理的といえば合理的です。
そしてランニングとかもちゃんとついていっているのが頑張ってますね。
傷つけてしまったことで泣いてしまうのは軟弱ですが優しいですね…
彼女の話は自然で、逆に松山くんがいい聞き手なんだな、ともわかります。
犬が溺れていたら何のためらいもなく飛び込む、というのは格好よすぎました。
助けたら即溺れて…えるちゃんも飛び込んだんですね。全く二人とも危険なことを。たまには浮きを投げる助け方も見てみたいものです。
子犬を抱き上げる笑顔、それを見つめるえるちゃんの表情もすごく素敵でした。
「でもちょっとかっこよかったよ」という言葉もなんか素敵です。
松山くんがどうしているか聞かれて、不満そうに指を差す態度がなんだか可愛いです。
友達のからかいも楽しいです。
那須野の徹底した邪悪さはいっそ気持ちいいぐらいですね。
というか全国大会優勝者がこんなのに殴られそうになることが信じられませんが…
ここでの松山くんの「助けるまで」の勇者がまたカッコいいです!
というか地図の巻物を折るのは、多分ボディビル世界チャンピオンでも相当きついですよ…並大抵の頑丈さではない、同じ太さの材木よりタフです。
「ゆるしません!」のドアップのかっこよさときたら!
すぐ腰が抜けて泣き顔になるのもギャップがすごいです。
「そのままの広瀬さんが好きですよ」と、意外と大胆な告白にはびっくりしました。
かなわないですね。
すごく面白かったので、これからどんな作品が出てくるか楽しみです。

教室のあたし
シリーズ絶好調、今回は少し趣が違って少し恋愛要素あり?とにかく微妙な色香がものすごかったです。
扉絵からすごくふわっとした柔らかさが伝わってきて、とても心地いいです。
指揮者は…弾ける弾けないがはっきりしたピアノと違いますね。高いレベルでやろうとしたら限りなく高い音楽能力が求められますが、ただ人間メトロノームなら…まあ今回のテーマはリーダーシップですね。
今回の話は僕も似た体験があるので、非常に感情移入しやすかったです。中学一年の応援団。いまだに声域が制限されるほど練習し、クラスでは歌おうとしないクラスメートにイライラし、歌わないやつは帰れと叫んで先生に怒られたりもしました。
森原さんが風邪なのは今回の話で彼女がでしゃばったら男の子出番なしになるから?
秋山くんもすごく面白いです。誰がそうだったか、中学の具体的な名前としては出てきませんが。
「お仕事休みだったらお母さんも」という言葉に、僕は…結局母親は着てくれなくて悲しむことになるんだろうな、と変な先読みをしてしまいました。
篠田先生はすごく優しい雰囲気が出ています。
ヤカンの乗ったストーブも暖かい感じがします…エアコンなどもいいですが、お湯も沸いて便利ですし、湿度も調整するので体にいいです。
秋山くんを責める言葉、今の僕は疑問ですが、あの時の僕ならもっと強いことを言っていたかも。
「旅人の道」という歌は…調べてもこの歌詞が見当たらないし、著作権許諾表示もないので、これも高上先生のオリジナルでしょうか?曲もあるのでしょうか…僕自身浮かんできて欲しいです。
今は本当にみんながんばりすぎていますから、こんな歌も必要でしょう。
定年の寂しさも漏らした言葉からすごくよく伝わってきます。
毎度サボっている秋山くんが、「二人くらいいなくても平気だって」とサボる他の子を見て何かを感じる、ここはさりげなくうまいです。
練習での暗い雰囲気はすごく伝わってきます。僕自身覚えがありますし。
つい厳しくしかりつけてしまった竹下さんが風邪を引いていた、それを把握し切れていない…指導者の実力不足の恐ろしさもすごく伝わります。
「指揮者むいてないのかな」という言葉も…あの頃の僕にはそんな、ものを考える力はなかったですが…
つい足を向けた保健室で泣くのはすごく素敵なシーンです。この学校の生徒は幸せですよ。
つい秋山くんと二人きりになってしまってすごく気まずい、というのはなんだかくすぐったいです。
ふっと、「お母さんが仕事休んで」と本音を言ったりんちゃん…篠田先生に心を開いた状態がそのまま続いたのかもしれません。お茶の温かさが結構効いているのかもしれません。
でも、初読時は僕は、絶対母親は来てくれないだろうな、とも予測していましたが。でも「いい合唱にして」という彼女の笑顔、澄み切っていてとても魅力的です。秋山くんがドギマギするのも分かります。
「おまえすごいな」という秋山くんの言葉…自分が恥ずかしくなったのでしょうか?
彼の昔の学校の話も…ため息が出ます。人を排除してしまった、という点では僕も同じですし…僕があの人格のまま教師になっていたらやっていたかもしれません。怖い罠です。
「先生のために歌っても」というのも素敵ですね。そんな大人が一人いれば…
先生二人が立ち聞きしているのは苦笑しましたが、なんだかまぶたの奥が熱いです。
読み返すと、この会話が実は作戦会議でもあるのが面白いです。
森原さんの、マスクを利用した迫力もかなり怖いですよ。
いきなり閉じこめて自分達の歌を強制的に聞かせ、さらに…その後の言い争いまで!
このやりかたはシリーズ全体で一貫していますね…残酷なぐらい、自分達の醜い姿を見せつける…まるで〈自分の真実の姿が映る鏡〉のような作品です。
そして本番、肩を叩かれて秋山くんの腕に倒れこんだりんちゃん…このうるうるの上目遣い、画面から強烈に伝わる体の感触の柔らかさ…このシーンのかわいらしさと色香のバランスは息を呑みました。
そして肩を抱いて「なんでもありません」と、ここでの…未熟な男らしさと、かすかに芽生えだしている女らしさ!うわあ…。
秋山くんに支えられて指揮を頑張っている、というのもすごく伝わってきます。
あの作戦は秋山くんが…自分もサボっていて、その醜さを自覚しているからこそ…というのがまた素敵です。あと秋山くんは前回の経験から、「自分の醜さを突きつけられる」ことの効果を学んでいたとも思えます。
音の表現、さりげなく描かれた母親の感動、先生たちに伝わる思い…満足の息がいっぱいに出てきます。
秋山くんの「ありがとう」という言葉にとても思いがこもっていて、胸が一杯になります。「見つけたよ 保健室以外の居場所」という言葉もすごく意味が深いです。それはどこでしょう…みんなの輪の中?それとも…
やはりすごいシリーズですよ。これからどうなるのか…言葉にならない思いです。

名探偵夢水清志郎事件ノート
ねうちのないものばかり…エドワード・D・ホック氏のご冥福を心よりお祈りします。おそらく原作者も同じでしょう。
でもニック・ヴェルヴェットとは違って、別に二万両払ってくれる依頼人はいないと思いますが…
花見ですか…今年は桜がすごくいいです。
一週間飲まず食わず…常識どころか生理的欲求もないのでしょうか。
まあ冒頭の変人っぷりはよく出ています。
二人の曲芸はさすがに素晴らしい!
矢で渡した糸の上を歩くというのは読み返せばいい伏線です。
徳利長屋が「安らかにくらせる場所」だというのはすごく嬉しいです。
「しょうがない」に対する疑問を教えるのは、今の世界では重要だと思います…でもこの時代、逆らうことは家族ごとの死を意味しています。無謀すぎますよ。
今がどんな時代なのか、権力はどうできているのか、どこまでが命の危険なしにできるか…それを見きわめなければ…若い人は大抵何も考えずに暴走するのですが。
「去るか死ぬか選べ」に「あなたにぼくは斬れません」…抜いた時点で即斬らなければ斬れません。長尾兵衛も…やはり太平の武士、真の武士ではないです。
「あなたにわたしは斬れません」は正真正銘…腕に覚えがあって…ぞっとしました。
団子の串を、というのもすごく面倒な予告ですね。
でも…真理さんには悪いですが、この件を報道できるとは思えません。
教授のヒントは読み返せばお見事。
真相もすごく意外性が面白かったです。
盗むとは逆に…ため息が出ました。
なにもいわず反撃する…でも、実際のこの時代には恐ろしいリスクがあるんです…
まず有力武家、武士そのものの体面が汚されたとなれば石川守家自体断絶のおそれがあります。もみ消したとしても…
そしてもっと恐ろしいのが、そこらの無実の無宿者が捕らえられ、拷問で自白させられて処刑される可能性も高いのです。そのとき…ゐつさんは自首せずにいられるでしょうか?
彼女の背景まで出したのは…かなり重過ぎますね。
「人間は弱っているときなにかに責任を押しつけたくなる」というのも、あまりにも辛い真実ですが…覚えておいたほうがいいでしょう。
怪盗…この話の時期は1860年代と思われます。ルパン…ラウールは1874年生まれと思われますからあまりに違いますね。
両手をそろえて差し伸べるのは、現代式の手錠が普及している現在のしぐさでは?
もったいない、という言い草には驚きました。でも…無実の無宿者が拷問されているかもしれない、とは?
開国・攘夷にかすてえら、じょうろとつけるのはそのバカバカしさをうまく出していて面白いです。
フランス語は僕は習っていませんが、気持ちは伝わります。
夢の怪盗などに、僕はとんでもない勘違いをしてしまいました。えぬえけい先生の「B−ウオンテッド!」と関係があるのかな、はやみね先生も太っ腹だ…と。困ったことに小説版原作が今回見つからなかったので…というか僕ははやみね作品のごくわずかしか知らないんですよね…
このボロボロの…レーチも相変わらず災難です。

ふあふあコットン
赤いスカーフ…『真っ赤なスカーフ』が頭の中で流れてしまったのは僕だけでしょう。
輝く星が落ちるのは間抜けなながめです。
疑わないコットンも…素直なのか欲が深いのかわかりませんね。
ひっかかったコットンもばかだ、と認めて許すのはほっとしますね。
本物がツバメだったというのも面白いオチです。
今回は全体にほのぼのとした人情物ですね。

桜色奇談
 バスケ部の田中くんにひとめぼれした林眞夏(まなか)ちゃんはついに告白し、「いいよ」と言われた。
 浮かれている彼女だが、なぜか複数の女の子が一緒。
 それで辛くなったときに、前から話を聞いてくれた天野くんが「つらくなったらいえよ」と励ましてくれる。
 そして男女混合多数でのカラオケ大会になり、そこで失敗して浮いてしまう。
 そのときに学校の怪談を思い出す…「怨霊清女伝説」。人気者の男に恋をし、相手にされず周りの女からも嫌がらせをされて死んだ怨霊の伝説…
 そうはなりたくない、と思っているとき、田中くんが「あそびにきまってるじゃん」と言っているのを聞いてしまった… 天野くんが抱きしめてくれ、そしてカツラで変装して怨霊清女のふりをして田中くんに嫌がらせをする。その嫌がらせは失敗したけど…

デビュー作が強烈過ぎましたから、プレッシャーも大きかったと思います。
よくまとまったいい作品だったと思いますよ。
絵の感じもかなり成長していますね。全作の、生肉のような感触は影を潜め、すごくはつらつのびのびした感じです。
冒頭からすごくその感じが強くて…どう裏切られて地獄に叩き落されるかと思いました。
ごく普通にきゃあきゃあやっているシーンの…なんともない影が、読み返してみると霊では…
天野くんは格好よすぎます。絵の未熟さが出てしまっているのは残念ですが。
裕未ちゃんの大人っぽい魅力もすごかったです。彼女がもっと動いてくれれば面白かったのですが。
ぶつかってとっさに告白したのはほめてやりたいです。
天野くんの表情は…お気の毒に、としか。「よかったじゃん」という表情も。
「かわいい女の子のおねがいは」…つきあうという言葉の意味、分かっていないですよね…
放課後、当然のように他の女の子達も…勘違いです。
窓枠を握り締める手に気づいて「つらくなったらいえよいつでもたすけるから」…男です!カッコいい!ここの服の質感などもすごくいいです。力が入っているのが分かります。
清女みたいにはなりたくない、という言葉から…ふっと影が動くのが上手いです。
助けを心の中で求めていても、すぐには助けてといえず「ちょっとだけね」…二人同時に立ち聞きしてしまったのは運がいいのかもしれません。
テキトーな…もっと直裁に体だけ楽しんだら、とでも言ったら?
天野くんが彼女を抱き寄せるシーンは素晴らしかったです!熱い思いと無私な優しさが一杯に伝わってきて、胸が爆発しそうでした。
そしてこのいたずらもすごくバランスがいいですね。僕だったら殺意を抱くでしょうが、いたずらで抑えるのはすっきりしますし誰も傷つけません。
いたずらとはいえ、恐怖のシーンはすごくよく描かれていました。
そして追いかけてみたら…本物、というのはむしろいい気味でした。
「ただ…もっとちかくに…」という感情は僕自身いやというほど覚えがあるので、怖いぐらい共感してしまいます。
最後にどんなどんでん返しがあるのかと思ったら…なんというか結構すっきり終わったので正直拍子抜けしましたが、こちらのほうが後味はいいです。
次はどうなるのか…ホラー系から離れてもいい作品が書けるかもしれません。個人的には後味が悪いよりいいほうが好きですが、とにかく深淵から目をそらさない作品を…ただし深淵をのぞくとき、深淵もこちらをのぞいていますから読者も含め気をつけないと。

初恋日記
 転校生の小日向薫ちゃんはすごく内気で、みんなに話しかけられてもどう返していいかわからない。
「いいよゆっくりで」と言ってくれた大木くんにほっとする。その夜手に入れた日記帳に、そのことから書き始めて見る。
 でもやはり輪に入れなくて、でも大木くんが話しかけ、そのまま一限目サボろう、と連れ出されてしまって花畑でゆっくり二人で話す…彼とは自然に話せる。
 でもみんなとはうまく離せなくてだんだん孤立していく…かわりたいと思ったのに。
 そんなある日、日記を読まれてしまい…

完成度の高さ、それと裏腹の閉じた感じがとても印象的です…冒頭での薫ちゃんの髪型が、すごくそんな印象を与えるのです。そしてすごく共感できました。
転校はしたことがないですが、
大木くんの、すうっと心に入ってくる技術はすごいです。
日記をつけることが変化の始まりになる、というのも素敵です。
光に囲まれている大木くんを見ているときの陰影の使い方がすごくうまいです。
カレーの鍋の中でおぼれる…それって地獄ですが。
いきなりサボりというのも大胆ですね。
猫を可愛がるところから好意が深まるのも分かりやすい描写です。
食事に関する話はすごくいい入り口ですね。誰でも食べますから。
体育祭で、うまく溶け込めない気持ち、そんな彼女に周りがいらいらする気持ちもうまく描かれています。
体育祭の件から、大木くんに打ち明け話をするきっかけが描かれていないのがちょっと不足に思えます。
あくまで相手のプラス面を見る大木くんの懐の深さがすごいですね。
ただ、彼の言葉が全面的に正しいとは思いたくないです…人間の可塑性、可能性には限界があるというのが今の僕の基盤になっています。そうでなければ…僕の個人的な好き嫌いも簡単に書き換えられるものになってしまい、アイデンティティが崩壊してしまいます。
でも彼女に対しての言葉は正しいと思います…彼女を深く受容しての言葉ですし。それで泣いてしまうのも分かります。
寝坊から日記を落とすまでをじっくり描いているのもいいです。
日記帳を読むのは…悪いですが、誰にとっても強烈な誘惑ですよね。それに耐え切れない人を責める気にはなりません。
パニック状態での「もうほっといて」には読んでいてすごく痛みを感じました。
それまで出番がなかった里枝ちゃんの「この日記ちゃんと読んだわけ?」という言葉がすごくいいです…
みんなが謝ってくれて、そして「あやまる以外にも…ね」という言葉の優しさ!
告白シーンの、皆まで言わせず抱きしめるのがすごく素敵で熱かったです。
みんなが大騒ぎしてくれるのも嬉しいですし…とにかくすごく嬉しい気持ちになれました。
とにかくすごく実力がありますね。これからの成長も楽しみにしています。

うめぼし☆
 桧カスミちゃんはなぜか塾で「梅ボシ」と呼ばれている。この塾では中二の生徒は本人入れて五人だけ、しかも女子は一人だけ。
 そんな不安定な構成で、ジャマだと時々言われつつ、ガタガタしながら変わっているけど楽しい日々を送っていた。
 だがある日、梅ボシとあだ名をつけた大和くんが、すねて怒ったカスミちゃんを送ってくれたことから問題になり、塾をやめさせられそうに…

非常に面白いテーマの作品でした。
こういう子供らしさって、僕はどれぐらい長いこと忘れていたでしょう。
中学生のこういう面を出してくれるのはすごく嬉しい視点です。
こういう少人数塾は…僕にはいい思い出がないですが…
梅ボシの意味がすごい発想ですね。
授業が終わってからの、一人だけ男子四人とくっついて遊ぶというのがなんだか面白いです。
邪魔にされるのが辛いというのは不思議と共感できます。
いきなり席を詰められてくっつかれ、みんなに生暖かくからかわれ…ここはたまらなく面白いです。
口げんかの進展もすごく楽しいです。
入ったときの回想もいいですね。男子も女子以上に内気な生き物ですからね…
ちゃんと桧ちゃんからも仲良くなろうと前進しているのもいいです。
ごきげんとり、という大和くんの言葉…偽悪的というか真実を飾らずにいう方針は僕にもあるので好感が持てます。手をつないでいるのも、夜が寂しいからで…同性でも恋愛感情なしでもつなぐのでは?
ただし問題は、みている、特に何も知らない人がどう思うかですけど。
近所に見られて、塾をやめろと…これはすごくひどいことに思えます。でも…親の側も理解できる、とは書きたくないんですよ。冷静に考えたくない、100%怒りだけになりたいです。
でも…「君子は李下に冠を正さず、瓜田に靴を入れず」…僕もどこかのビルでエレベーターを待ち、来る直前に小学生の女子が一人でやってきたとき、「李下に冠を正さず」と一言言って先に一人で乗るよう譲ったことがあります。
両親がちゃんと心配してくれていること、近所の監視が機能していること…窮屈ですがプラス面も大きいです。
疑っているのはひどいと思うでしょうが、人間は…わからないものですから、疑うのも当然ですよ。
でも僕自身はすごく強い怒りを感じてしまいます。
みんなが追い出そうとするのも、それも優しさなのがすごく傷ついてしまいます。
「決めんのはオマエじゃなくて親だろーが」という言葉も、悲鳴を上げたくなります。僕もどれほどそれを思い知らされ続けているか…死んでしまたい、生まれたこと自体なかったことにしたいぐらい。大和くんを初め、みんなも同じなのでしょう…
変なのに絡まれたときのみんなのヒーローぶりは、あ!五人パーティで女の子一人ってガッチャマンや五体合体ロボ、戦隊もの特撮の組み合わせでもありますよ!道理でバランスがよかったわけです。
「ウチの大切なコに」という言葉もすごくカッコよかったです…ここを親に見られていたというのも幸運でした。
だれかさんの連発も面白いですね。
最後はすごくすっきりしましたし、なんというかすごく幸せな感じが伝わってきます。
これからどんな作品が出るか…とにかくいっそうの成長を楽しみにします。

君はワンドル!
このいろいろな食事は犬に食べられるものでしょうか?デブ、と言ってしまいそうになるのが苦笑します。
左手で端で大豆をつまむのはかなり難しいですよね…
桜小路くんの冷たさは、一緒に仕事していたならわかっているのでは?といっても生前の彼も似たようなものでしょうが。
一発芸には爆笑。

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