なかよし2010年春ラブリー感想
今回も読みきりがたっぷりあって楽しめました。本紙連載番外編の圧力が少ないからもあるでしょう。
ホラーの多さは、新人育成としては優れていますけれど雑誌全体の読後感が悪くなるという意外な副作用がありますね。やはりホラー専門の増刊が別にあるほうがいいのかも…実際は不可能なので、ホラーの火が絶えない現状のほうが多分いいのでしょうが。
でもそれは単に僕が基本的にホラー嫌いだからであって、ホラー好きな女の子には読後感はいいのかもしれません。
読者手記も面白い試みですが、ホラー・いじめ・恋だと暗いほうが多くなってしまいます。本誌別冊読みきりのほうがよかったかもしれませんが、それはそれでますます本誌が暗くなるような…
読んでて楽しいかどうか、という単純な視点も必要なのでは?
ともだち以下っ!(山田デイジー)小川とゆかいな斉藤たち(茶匡)1年5組いきものがかり(フクシマハルカ)わたしに××しなさい!番外編(遠山えま)接・近・中(茂呂おりえ)おんたま♪(美麻りん)地獄少女R(永遠幸)インザクローゼット(渡辺留衣)彼にはいえない(瀬田ハルヒ)妖界ナビ・ルナ特別編(菊田みちよ/池田美代子)君がくれた勇気(高上優里子)ハツコイザクラ(進藤はるか)恋コイ!(春瀬サク)若おかみは小学生!(おおうちえいこ/令丈ヒロ子)家にだれかいる(明日賀じゅん)フリードリーム(星野綿)二人のバランス(瑞樹しずか)蜘蛛女(秋本葉子)
ともだち以下ッ!
超ぶりっ子の瀬谷ももちゃんはある朝、認識してなかったクラスメートの鳴海くんが新聞配達に来て、すっぴんを見られた。
それがきっかけで気になるように…
五時半ってそれこそとんでもないですよね。よほど厳しい朝連とか。
こういう、普通の女の子の普通の寝起きって見てしまうとすごくドキドキします。
アウトかセーフかだったらもっと急いでもいいのでは?
「女の子に生まれた以上〜」すごく素直な言葉ですね。それ以上に人身を得たのだからとも思いますが…
同じクラスなのに認識してなかったというのは笑うしかないですし、顔を背ける表情もすごい。
「その仮面かんたんにつけはずしできたら」…まったくですね。
バラされる、ってそれこそ犯罪や不倫級の弱みだと彼女は思っているようですが…それほどに?
「きょうもかわいいねv」と気軽に言える男子なんてそうはいません。そういうことを言わないほとんどの男子は、彼女にとってはただの気持ち悪い動く泥像でしょう。もちろん僕はそっちの側です。
王子様、という言葉は苦笑しますが、当時の僕だってそんな変わりませんし、当時の僕は自分を飾る努力さえしようとはしませんでしたし。
昨日のお返し…大人気ないというか。メイクするために五時半から七時半まで二時間かかる、って今日は四時前に起きたんですか?で、六時から七時半まで何をして過ごすんでしょう…宿題と予習でもしたら?
「ごくろうさま」「ブス顔はだれにも」という思いやりと敵意がかすかに混じり合う会話が素敵です。
名前というか苗字読みでドキッとするのもいい恋のきっかけですね。
部活の彼を見て…ここもたまりませんね。カッコいいというのがすごい伝わってきます。
自分にはまねできない…いやいや五時半起きで化粧も僕には全く真似できませんから。
朝話しに、というのもすごく可愛いアピールですね。
練習すればできる、というのもすごく前向きな性格ですね。それを瀬谷くんに押しつける、断ろうとしたけどすっぴんなのを見て食べてあげる瀬谷くん、すごくいい関係です。
野球の道具は高価ではありますが、手入れすれば一生使えますね。基本的には安価なサッカーやバスケ、逆に極端に高価なスケート類の中間みたいな存在でしょうか。
弁当のまずさは見ていてよくわかりますね。
顔が近くて、男の側がときめく瞬間も出ているのが楽しいです。案の定下痢…ひでえ。
スカートがひっかかって取ってあげる密着、それにまた余計な憎まれ口をたたき合う…本当に素敵な関係です。憧れますね。
学校では話しかけちゃいけない距離がある…それも不思議な関係ですね。
この分析は…なんというか、凶器ですね。昔の僕にはそんな脳味噌ないですし、今の僕はそれは攻撃でしかないと思っているので言いません。
「オレの友だちには」…本当に住む世界が違う人…ただ涙だけがこぼれてくる…何日も、出て行くことなく…瀬谷くんもかすかに期待しながら普通に新聞配達をして…彼の側の心がすごく細やかに描かれているのもいいです。
この、考える時間がしっかり描かれているのがすごく素敵です。
パワフルな告白もすごく伝わってきて…
やはり読みきりでの山田先生の力はずば抜けてますね。次の連載では是非、その力がそのまま出ますように…過剰な刺激じゃなくて。
小川とゆかいな斉藤たち
…部活は将来とても役に立ちますよ。嫌になるぐらいに。
この四人で入れる部活って何があるでしょう。
廃部ならそれを再興すれば?いや部活再興はそれ自体別の話になりますが。
小川部…そんな感じで、仲のいいグループ自体が部活を申請すれば…ってアホなというかカホナああああ、とちゃぶ台を返したくなります。
本気で申請して…確かに「わたしが部活に入りたいといったばかりに」ですね。
成田さんも…まあこれがないとねえ。
同好会でもよく認められたものです。
こんな感じでまた時々出てくるのでしょうか?
1年5組いきものがかり
頭からなんですかこのセクハラは。けしからんもっとやれ。
いきものがかりには春休みがない…生き物の世話には休みはないですね。
亀の卵がかえりそう、ってめずらしくいきものがかりらしいことをしてますね。まあ別の活動のほうが主なのは相変わらずですが。
確かにあの二人と合宿というのは無謀ですね。
クラゲが水上に飛び上がること自体あるんでしょうか…それで相談したら突然脱がされて、相変わらず安心できる色気のなさです。
こんどはクラゲの透明人間…ややこしいですね。
逆にのぞき返す、って…うわああああ。
生首だけ見えるって!
匂いでわかる、とか「いっぱいさわって」とか…もう…
これ以上どれだけモンスターが増えるんでしょうか。
わたしに××しなさい!
番外編は毎度ユーモラスな感じがよく出てますね。晶くんの活躍もいいです。
パンは難しいですよね。
手と心っていつから言われる俗説でしょう。だったら雪菜ちゃんの心なんてやけどしそうに熱いでしょうが。
もみなさい、で胸になるのは当然ですよね。男なら。麺棒は痛いです。
晶くんのためじゃそりゃ怒りますよね。
あったかいの充電…おいおい。
鳥はごちそうですねこれは。まあそうするのは読めてますけど。
接・近・中
モテるけど好きな子ができない美波秋仁くんと、外交官の娘で優等生の阿部音々さんとはどう見ても住む世界が違う。そんなある日、放課後の教室で歌っていた阿部さんを見かけた秋仁くんが、彼女に衝動的にキスしてしまい…
男視点なのがすごくいいです。恋に落ちるということの、まるで隕石にぶつかられるように外部から強制的に与えられる性質がすごくわかります。
冒頭のグラビアアイドルの胸に関する会話がいかにも男の子っぽいですね。大まじめに「でかすぎずちいさすぎずがよい!」とか。ええ、男子の脳味噌の九割はそんなことで占められてますはい。
顔がかわいかったから…どんな交際だったのやら。
小さなガムのくじをキーアイテムとして使うのも実にうまいです。
本読んでる阿部さんの凛とした雰囲気はつくづく別の世界だという感じがしますね。
「外交官ってなぁに?」「あべにきいてこい」がすごく面白い言葉でした。
鼻歌での誕生日の歌、そこにいた見知らぬ少女…ここの印象の強さは普通じゃないですね。
ちょっと時間差のある答え、というか知らないに近い男にここまで話すか、という気もしますけど。
そして、このあまりにささやかなプレゼント…前の見開きの静かな雰囲気と、ここの明るく動きのある雰囲気がすごく対照的でいいですね。
でもそれでもうれし泣きしちゃうのもわかります。ほとんど初めてのぬくもりだったんでしょうね…
お互いに相手の気持ちがわからず、不器用に探り合う、そこからかわいい、と思って即キス…これはさすがにびっくりしました。
したほうが驚いて「失礼します」って…うわあ。
本当にしゃれになりませんねこれは。罪悪感というかパニック状態というか、多分外でガラスの破片で怪我したときの僕みたいなものでしょう。
「好きだよ美波」ってシラフで何言ってんですか。
壊れてとにかく謝ろう、と、ここからの二人のずれっぷりも実に楽しい。
思い切り無視されて、つい阿部さんのほうばかり見てしまって…
男子が女子の荷物を持っていくのはまずいのでは…まあ僕はそんなこと考えたこともありませんでしたが、中学まで。高校は男子校ですしそれ以降は女子がほとんどいない環境が続いているので無関係です。
保健室でカーテン越しなら話せるでしょうね。
彼女が飛び出して、そりゃこれは、男子から見れば可愛すぎますよ。
「こたえないときはぜんぶ「イエス」とうけとるよ」は卑怯ですよ。まあ他にどうしようもないですけど。
男の目から見てこれは可愛いにもほどがあります。
逆にこれ、女性読者の視点ではどうなるのやら…
いやー堪能しました。この話の、ラッブラブ甘々な続編も読みたいですし、スペシャルなお知らせとやらも楽しみですっ!
おんたま♪
珍しく色気の強い扉絵ですね。
卒業した先輩たちもいるんですね…寂しい。
見えるのはあんたたちだけなのに、そりゃ引きますよ。
確かに見ていれば仲いいですよね。二人とも真っ赤なのが見ていて楽しいです、貧乏ゆすりしたいぐらい。
で、いとこの美少女…うわあすげえ美しさ。
「もたもたしてるからよ」はまさにそのとおり。
全国大会出て「たいしたことない」はすごい…というか学校の水準が違うじゃないですか。
またやってくれたガラスの仮面ギャグ…強烈ですね。
また想像以上のセレブですね。というか尾行はどういいわけしたのやら。
いるんですね、こういう音楽貴族…
好きな人の知らない姿に傷つく、痛みがすごく伝わってきます。真上から見るのも孤独感が伝わりますね。
自然に抱き寄せてしまうのもドキッとしますね。
ふさわしくない、って先に自分が告白すれば?とも思いますが。
歓迎コンサートの迫力は伝わってきました。
その二人との差…というかこの一家で今の彼の状態って、すごくコンプレックスが強いのでは?厄介なことに頑張れば余計悪くなる状態ですし。
いきなり留学というのもすごい話ですね。
レベルがちがいすぎる…ここでのユナちゃんの熱さ、そしてみんなのチームワーク…いいクラブですね。
そりゃまあ迷子にもなりますね。そこで一人で歌いだす、って…他に見える人がいたらどうなったでしょう。
チップとかってそれ以前に警察とか警備員とか…
先輩が来てくれたのは嬉しかったです。というか「いかないで」が遅いですよ。腹筋500はどのやり方でも実質無理では…
「おまえが泣くから」ってこれ「愛してる」の同意語ですよね?
早とちりでしたか…
いやもうラブラブすぎます。この調子でガンガンラブラブしてください。というか本誌連載移籍してください。
地獄少女R
今回は珍しくハッピーエンド、テーマもしっかりしていてほっとしました。
ウチが地獄ってこら。わがまま娘のおもり、ってますますこの家族は…たまには家族だけの、以来のないのんびりした一日も見てみたいものです。
甘やかさない母親候補、そして冤罪…読み返してみると見抜けなかった自分がバカに思えます。
輪入道はカッコよすぎでした。こういう大人がいるかどうかは子供の成長にとって決定的になることがありますが、現代はますます親と教師以外の大人と子供の接触を一切禁じる方向に向かっています…
人形を捨てることができて、それからどんなどんでん返しで誰が流されるのかはらはらしましたが無事にすんでよかったです。
毎回こういう話なら文句はないんですが。
インザクローゼット
お嬢様だけど可愛いものが大好きな凛々子ちゃんは中学までずっとぴちっとしすぎて暗い生活だった。だからこそ高校初日はおもいっきり飾って出てみたい!でもみんな結構地味でちょっと浮き気味。
そこで同じようなことを言う、やたらおしゃれな女子、松田苑緒ちゃんと会ったり男子とぶつかったり…
帰り道、可愛いワンピースを見かけたら苑緒ちゃんと取り合いになり、それから読者モデルにスカウトされたほうが勝ち、となぜか勝負になってしまって…
これまでの作風からはずれたおしゃれを最大限に活用する、前に出る意識がすごく伝わってきます。そしてこの熱さときたら!
冒頭部に思いっきり詰めこんだ、宝石箱をひっくり返すような可愛らしさの爆発…お嬢様としてのそういう生活って合う人と合わない人がいるんでしょうね。そしてその気持ちを一片も汲んでもらうことはなかったようで。
僕にとってはこの外の世界はバカに見えますが、それで禁欲的な価値観を押しつけて真っ黒にするのも同じくバカです。誰もが、本当にその人の至福であることを最大限にする、それができればいいのですが…
もし完全に自由だったら、それはそれで強いものが弱いものを支配し、幻の影(賛美歌510)にすぎないものを押しつけるだけになるでしょう。
通勤ラッシュが楽しいって…
制服って…これのどこが制服でしょう。
浮いてますよねえみんなの中じゃ。
同じことを言う、なんだか双子みたいな出会いもすごく印象が強いです。
で、いきなり男の子に乗っかって…うわあああ。
あ、僕はミラーボールは宝塚劇場でしか見たことがありません。ディスコをイメージする人もいるんですね。
どう見ても怪しい路地裏の店…大麻とか売ってないか心配になりますよ。
にっこり笑顔で「手はなせコラv」はすごい迫力ありましたし読んでて楽しいです。
読者モデルのスカウト、というのも女の子には結構重要かもしれませんね。
トータルコーデ一万円…高校入学したばかりの一年には、一万円って相当な大金では?
お互いにコーディネートをやりあってあげるのはすごく楽しさが伝わってきます。
一方だけに通知が来て、それでちょっと二人の間にひびが入るのに胸が痛みます。「べつに友だちじゃないし」という言葉も痛いですね。
基くんが助けてくれるのもいきなりですけどすごく魅力的に描かれてます。
支えがないので立てなくなる苑緒ちゃんの気持ちもすごく痛みが伝わってきますね。
「親友に」という言葉に胸がすごい熱くなりました。それに爪に「ごめんね」って…
基くんにおもいきり抱きつくのも…それを激写されていたとは!
なんというか、お嬢様設定や基くんが話に入るところが見えにくいなどやや乱暴なところもあるのですが、二人の友情と派手なおしゃれの爆発に話を絞ってパワーだけ思いっきり伝えてくるすごい作品でした。
これだけの力、もう連載でいいと思いますよ!連載で活かすのは難しい力かもしれませんが…
彼にはいえない!
アイドルの葵うららの正体は普通の中学生清野麗良…彼氏もそのことは知らない。
ある日、別れ話と思ったら彼が昔は太った引きこもりだったと告白された。さらに他にも好きな子がいる、それは葵うららだ…と。
今度はこっちが正直に言えず、サイン会で最前列に並んでいた彼に動揺して、ますます泥沼に…
なんというか、ものすごいとしか言いようがありません。ただポカーンと呆然とするしかないです。なんかすごいものを見てしまった気がする…
ギャップがまたすごい。
彼氏のイケメンぶりがすごすぎますね。
ガリ勉の美形カップルというのも面白いのでは?
確かにこの話、別れ話とまぎらわしいです。
手切れ金ってそれ大人の世界ですよ。
この写真は…メガネを取れば昔の僕ですけどね。引きこもりだったら学校に行ってないのでは?
たっぷり勉強してきたのは、まあ引きこもりというのも幅はありますけど。
こんな美少女に声かけられたらそりゃ舞い上がりますよね。
春休み中って危ないですよ。リバウンドに気をつけてください。
で、言いたいのはそれじゃなくて他にも好きな子…しかも葵うらら、もうこの時点で体の力抜けきってます。
というかなんですかこのパワーは。というかこの巨大テレビ、結構金持ちですよね…いや自室の自分用だとしたら大金持ちですよ…
なんかもうわけわからないというか、まあ彼女にとっては自分も告白しろということか…
サイン会に来られて…ちょっとちょっと、サイン会中止って…大騒ぎになりますよね…
それでこの暴言、もう笑うしかないです。
で…部屋をのぞくな…終ってるというかどっちも金持ちですねえ…
ドアに足を挟むのはひどい。「ダレ!?彼を家にあげた人」…それもすごいですよね。
電話からばれてしまうって…というか一つの携帯電話で両方やってるんですか…
これ、トラブルでもなんでもないのに深刻なトラブルみたいに描いているのがまたすごいです。
胸に飛び込むドラマチックさも、なんと言うか冷静に考えれば何これ…ですよね。
マネージャーさんがもっと活躍してくれればよかったのにとちょっと残念。
なんというか…とんでもない作家ですね、つくづく。
妖界ナビ・ルナ
昔の話ですか。スネリ変わってませんね…というかこのときのほうがむしろ大人っぽいです。
確かに服装が違いますね。
この出会い方はすごいとしか言いようがないです。
時間の進み方が違う、それは本質的に悲恋にしかならないですよね…
身長も抜かれて、普通のカップルのような感じになっていて、すごく自然な恋。
彼はわきまえているようですね、時間が違うことを…悲劇にしかならないことを。彼の一族は彼に忠告しなかったのでしょうか?
どうしたらいいかじゃなくどうしたいか…これすごく素敵な言葉ですね。その一言だけでも、読者にはすごくいい贈り物だと思います。
抱きしめたら離せないとわかっていたから…
でもこののどかな恋が、あんな悲恋になり、子供たちにあれほど数奇な運命をもたらすとは…全てをわかっての覚悟だったのでしょうけど。
君がくれた勇気 もなかさんの手記より。
運動会でバトンを落としたことがきっかけで、もなかちゃんは激しくいじめられるようになる。
転校生の本条さんは励ますでもなく「そんなんだからいじめられる」という…それに切れたとき、彼女は天候が多かったためよくいじめられていた過去を打ち明けてくれた。
でも彼女がまた転校して去った時、またいじめは再会されるが…
こうして「読者手記を元にした漫画」を読むと、すごく感想を書くのが難しいことに気づきます。昔も同じような手記原作のいじめものは思い出せないだけであるかもしれませんが。
手記である以上ストーリー自体は批評できません。ひたすら「もなかさん、あなたが今生きていてよかった」というしかないです。
このように進み、自分を変えることで解決するいじめもありえるでしょう。実際にこのようなこともあったのでしょうし、そして乗り越え生き延びたことは本当に素晴らしいことです。
ただ、この話を読んだ読者は手記なのか、普通の話なのかはある意味無関係に、この話を読んでメッセージとして「いじめられたらまず自分を変えないと」と伝わってしまうのが心配なのです。何よりも、逆に「いじめが続いているのは自分が悪い」と思ってしまうことが。
多くのいじめでは、自分がどのような態度をとってもいじめが止まらない、反撃した結果エスカレートしてしまうことすらありますし、なによりもいじめられている側の罪悪感を助長しないかが不安です。
とにかくいじめられている人へ。
少なくとも自分が悪いという罪悪感だけはちがいます。そして罪悪感を持つのも自然です、でもあえて理性でそれを否定して、誰がなんと言おうと。何をすればいじめが止まるとは限らない、人間集団の行動を制御するのは実質不可能だと先に理解してください。
あなたが自分の人格を否定したら、それこそいじめる側の思う壺です…それはいじめ集団、特にその中の邪悪が強い人にはこれ以上ないほどの快楽になるんですから。
相手の行為は変えられなくても、それをどう受け止めてどんな行動をするかなら変えられます。
まずいじめは人間という、群れるサルの必然だということを理解してください。因果が通用しない、善悪で測れるものでさえない、地震や大雨など天災にも近いものです。
それから、犯罪は犯罪です。あなたの生命・肉体・名誉・性的自己決定権・財産は法で守られています。この世界には警察・児童相談所・弁護士などさまざまな、「あなたを守る」ためのシステムが、完全ではないですがあります。
いじめは「(警察の介入を許さない)群れの独特の法による(呪術的な)裁き」という面がありますから実際にはそれは困難ですが、それでもあなたを殺し、傷つけ、名誉を貶め、性的虐待をし、財産を奪い汚すことは犯罪であり、警察には本当はそれをした人を罰する義務があるのです。
そして、いつでもあなたは逃げていいんです。いじめについては、こうすれば許されるというものはありません。特に邪悪な人間が成員にいたら。殺されるより逃げてください。その群れから離れてください…その群れにいなくても、学校に行かなくても死ぬことはないんです。死ぬよりも、魂を破壊されるよりもましなんです。
たとえ親や教師が何か言おうと、あなたは自分が生きることを最優先してください。そういうと生命より義務が優先である場、徴兵制国の軍があることを思い出しますが、幸い日本はそうではありません。生命を最優先していいのです。
さて…作品自体ですけど、高上先生の表現力のすごさはつくづく素晴らしいものがあります。冗談抜きに読み終わったときにはかなり手足の体温が下がり、心臓が止まるかと思いました。
祈るしかないです、この作品によってより深く傷つくより、救われ生き延びる人のほうが多いことを。
そして高上先生が、手記という制約なしに「いじめ」の物語を作っていたらそれはどんな作品になったかも想像してしまいます。
でも僕は、やはり楽しく読める作品を読みたいです。たとえ励まされるとしても、心臓を握りつぶされたくはないですよ。中身がちゃんとあって、それでいて本当に面白い作品を読みたいです。高上先生ならできると信じています。
この手記という形も難しいですね。昔の「ジャンプいじめレポート」には強い世論喚起力もありましたし、いい影響があってほしいと願ってはいますが…
ハツコイザクラ R・Aさんの手記より。
千架ちゃんが始業式の日ぶつかった真琴くんの優しさに思いは育っていき、映画の話になったのを機に一緒に行こう、と言ってみたけど断られた。
その後、彼が心臓の病気で激しい運動もできないし、親同伴じゃなければ外出できないから女の子とはつきあえない、と知る。
両思いと知り、それでもいいとつきあいだすけれど、デートのとき引ったくりを追った彼が倒れて…
暖かく柔らかな絵にすごく魅せられました。
冒頭から服や体の線の色香に包まれるようです。
いきなり抱きつくようにとか、たまらないものがありますね。
確かに好きでもない人を…断られたのが意外で、事情が意外と重くてびっくりしました。でも病気で長期休むとかはそれほど低い率じゃないんですよね…
ラブラブなのもいいですね。
バッグを追って倒れてしまうシーンのスリルもすごかったです。
大人の助けが適切でほっとしました。そう考えると、普通自動車免許でも心肺蘇生法が一応あるのがとても心強く思えます。本当はハイムリッヒ法または掃除機法や止血も含め義務教育でやってほしいですが。
苦しみも強烈に伝わってきますね。
親同士の対話もどんなものだったのやら…親にとってこそすごく深刻な問題だったでしょう。
わかれたほうがいい、と言う言葉も、彼の親の忠告があったのかもしれません。
距離を描くのもまたうまい。
いつか、自分が死んだ時に相手を傷つけてしまうかもしれない…負担をかけたくない、そんな思いやりもすごくわかります。
すごく深い愛情が伝わってきました。
想像以上に成長しています…次の作品がどんな素晴らしいものになるか、今から楽しみです。
恋コイ!
入学式の日に教室が見つからず泣いていたのを助けてくれた市谷先輩に片思いしている瀬尾莉々子ちゃんは、恋がかなうおまじない…「春よこい」と念じながらうつむいて五歩歩き、五歩目で彼に会ったら告白…を試そうと念じてみた。
すると土手だったので転んで、受け止めてもらったのが市谷先輩だった!それがきっかけで、その土手下の瓦で子供と遊ぶことが多い先輩と仲良くなる。
でも先輩のそばには、元マネージャーのすごい美人もいて…
あ、花札とは関係ないんですね。てっきり。
絵の感じもずいぶん変わりました。すごく力強さを感じます。
確かにこれは惚れるでしょうけど手が届かない…だからおまじないというものがあるんでしょうね。
春よこい…これは言霊ですね、直接的ではなく春という力のある霊の力を間接的に借りて。実際に五歩目で彼に会う確率は非常に低く、また実際に会えてしまうほど近い存在なら告白してもOKの確率は低くない…。
桜の土手がとてもうまく活用されていて楽しいです。というか通学路にこんな素敵な地形があれば楽しいでしょうね。まあこれまでにどれほど多くの洪水被害があったか、これからも大雨や台風のときこの道で通学するのがどれほど危険か想像するとときめいてばかりはいられませんが。
転げ落ちて抱きとめられたのが、効きすぎです。
話しかけるにしてもこれが精一杯…お礼とかってそういう効果もあるんですね。
それから結構近づいてしまってますね…ためらわず川に入って帽子を取りに行ったなど、彼女自身の行動がこの幸運を呼んでいるんだ、というのもよく伝わってきます。
でも川は危険ですよ…信じられないほど浅い深さでも動けなくなり溺れることはあります。
桜のふくらみと恋心がうまく響きあっているのもいいです。
菊池先輩も、読み返すと悪い人じゃなかったのがほっとできます。
桜を見ながら寝転ぶ…これって贅沢ですね。僕が最後に野原に寝転んだのはもう何年前でしょう…それ以上の贅沢はないです。
こうしてキスしかけるのもすごくドキドキするシーンでした。肩を触られているのもすごいかも。
確かにもう告白してもいいですよねえ。
菊池先輩の、おまじないは使わないという強さもすごく素敵です。
この場に菊池先輩に入られてしまって自分がいにくくなる、という…これも辛さが伝わってきますね。
そして、ついに五歩目が成功してしまって…それで告白しようとして、怖くて言えなくなる…ここの切なさは胸が痛くなるほどです。
怖くて先延ばしにしていたこと、自分の弱さを自覚して…
ここからの桜満開がすごいです。
彼女が行かないことで、子供たちに寂しい思いをさせていないか、とは思わなかったのでしょうか?寂しいのは市谷先輩ですけど。
葉桜から…思い出は残ったし、というどうしようもない後ろ向き…そこで…キスされるかと思う、頬に触れられて…育った想いがいっぱいに膨らんで、すごく自然に出た「好きです!」…言葉にならない、あんまり素敵で。
弓道の離れみたいなものですね、自分で矢を放すんじゃなく、別のもっと高い何かが…
自分の勇気…この笑顔もたまらないです。
告白されたけど断った…考えてみると特に欠点を見せなかった菊池先輩が、とも思いますが…恋って美点とか欠点とかじゃないですよね。
このキスの印象の強さもすごいです。
すごく熱く暖かい、素晴らしい作品でした。もっとこの力が活きればいいのに。次回作も楽しみにしています。
若おかみは小学生!
朝からセクシ…六年後を楽しみにしてますね(ちょっと乾いた笑い)。というかこれからたった六年でどうなるやら…人間って恐ろしい。さらにン十年で多分おばあちゃんそっくりになってしまうのも忘れてはいけないんでしょうが。いえ、充分美人ですよ!…さすがにストライクゾーンからは少々外れますが…
対抗意識というのもばかばかしいですけど…それより最優先は客でしょ。本音じゃ収益ですけど。
あまりにもウリケンが完璧。今度はホームページまで…
優劣じゃなくて自分にできることをきっちりやれ、というのを十二歳に要求しても無理でしょう。
今まで難しい客相手に頑張ってきた、確かにそうですけど。
というか鬼を使うな。
感じが変、という直感…確かに変です。まあ占い師なら…
着物の着付けもできるってすごいですね。
大好きな人…男女の恋愛とは限りませんよ?
今はだめって?
ウリケンは会ったばかりでしょうが。
ここでお互い意地になって争うより大事なことがあるでしょうが…
余計なこととは限らないですよ。人が人にできることにはいろいろある…すぐ若おかみ失格だとか盛り上がってしまう情緒の振幅の激しさも子供ですよね。
家にだれかいる 日野帆希さん原案
一戸建てに引越し、楽しい生活がはじまる…と思ったら、なんだか妙な視線を感じるように。
そして足音、怪しい女の姿までみかけるように。
極力友人の家にいて家に一人ではいないようにしているが、今度は学校にもその女の姿が…
これが「手記」だったら大笑いですけど。
こういう絵もできるんだな、と驚きましたし、こっち側の完成度の高さにも驚きます。
背景自体がかなり怖いんですが。雰囲気とか空間の使い方とか。乾ききった線とか。
足音が違う、これは冗談抜きに怖いですね。
おもいきりヘッドホン大音量で音楽を聴く手もあるかもしれませんが、それはそれでかえって怖いでしょうね。
音を録音してみるという手はないでしょうか?
ぬいぐるみを抱きしめているというのもすごくわかります。
ねじ切られたぬいぐるみ…これは強烈な警告ですね。
他の子がいると音がしない、というのは…自分がおかしいんじゃないか、と不安でしょう。
学校までついてこられるというのはそりゃ怖いです…
昔の話もぞっとします。
携帯電話が切れる、そこからの闇の中の足音…これは怖い。
ドアが開いた、これで助かったと思ったら…さらに友人まで…血も凍るとしか言いようがないです…というかここまでの事件、警察的にはどんな風に処理されたんでしょう。もはや魔ですね。
このタッチの怖さは並じゃないです。やはりどんなジャンルでもこの実力はずば抜けていますよ。
フリードリーム
お電話ありがとうございます。フリードリーム自動受付案内です。自由な夢をお求めの方は数字の1を…ネットに伝わる都市伝説。
結衣ちゃんと海瑠くんはラブラブ幼なじみだけど、結衣ちゃんは受験で必死で…そんなときフリードリームの番号を友達の千智ちゃんに聞いて試してみたら、楽しむことを思い出させ怒りを忘れさせてくれた。
でも翌日から、怒りという感情そのものを忘れてしまい…それは心地いいけれど…
自由な夢…僕も欲しいですし、それがどれほどの中毒性を持つかはわかります。
不思議な印象のタッチですね。すごく生気が強くて、それでいてすごく単純で。
海瑠くんのの「水着姿見たいし」という素直なスケベが好感持てます。
「つるぺた胸」って…本当に最低。
いきなりすごく迫力のあるきれいなタッチになったのも驚かされます。部屋で座っているのは奇妙に生気と色香が強いですし…多彩な顔のあるタッチです。
カーテンの隙間も魔の入り口ですね。上下逆の顔に対する恐怖、かなり強いですよ。
このデフォルメ世界もすごいですね…奇妙な味があります。
自分からぎゅっと抱きついていく、というのは楽しそうですね。
僕はおかしいのがわかっていますが、これだけで疑う人はいないですよね…「オコルッテナンダッケ」という言葉の恐ろしさ!
涙も忘れてしまい、そうなると心の何かが崩れてテストに集中することもできなくなる…
千智ちゃんの陰謀はぞっとします。
なんにでもなれる、なんでもかなう素敵な世界…大きい誘惑です。現実を捨てたい、夢で全能を味わいたい…苑誘う可愛らしい人が、実際には目と口を縫われた人形…干し首?
楽しくないからそのまま抜ける、感情がなければ…罪や恥の概念もないから、追試を抜け出すのを悪いとも感じない…
振り返る無感情な顔に対する恐怖は圧倒的でした。
ひっぱたいて必死で…本気で怒っているのは千智ちゃんに対してでしょうけど。
目を侵食される恐怖は凄まじいですね。腕をぶった切られるより目に迫る針のほうが怖いです。
抜け出したときの代償が大きすぎるのにはぞっとしました。彼の愛情の深さもすごいですが…
とにかくすごいですね、これは…頭を散々揺さぶられたようにショックで吐き気がします。
この「奇妙な味」を生かすためには、ぜひ『異色作家短篇集』全部読破して、どれかいい作品をコミック化…挑戦する価値はあると思いますよ。
二人のバランス
みゆき、絵梨、健、まもるの四人は幼なじみ。絵梨ちゃんは健くんの、みゆきちゃんはまもるちゃんの自転車の後ろに二人乗りするのがいつも。
でも絵梨ちゃんと健くんがつきあうから明日からは二人で帰って、となった…それがきっかけで、二人乗りのバランスが取れなくなる。
この絵にはある意味びっくりしました。すごく奇妙な感じがして…ちょうどモップ犬みたいな。でも男のこの方の絵はすごくきれいと言っていいんですよね。あと体の線も。
背景や自転車、服のきれいさも本物です。
男と女での二人乗り、というのは僕には違和感あります。僕は少なくとも女の子を後ろに乗せたことは一度もありません…近所の女の子に自転車を貸したことは何度かありますが。
安心するバランス、という感じ、心地よさはすごく伝わってきます。
健くんがヘッドホンをつけているのも、特徴がすごく強くてわかりやすいですね。
つきあうから二人で帰って…いきなりやられましたね。
「いわすの?」ってこりゃもう拷問ですね。「だきあったりとか」という言葉がすごく生々しいです。そう、二人乗りだって充分ラブラブ…
「お子さまなのはみゆきだけだよ」という言葉、彼の側の切なさが強烈に伝わってきます。
どんな気持ちで、と思った瞬間今まで自然にできていた二人乗りができなくなる、「バランス」に話の焦点をしぼるうまさ!
二人乗りより、男の子であるまもるくんがもう怖い…
練習しようとして、ドキンとなるのも彼女の気持ちをうまく描いてますね。
ポケットに手を入れる、というのもかなり過激な…転んで抱き合うシーンがすごくあったかくて…正直うらやましい。
というかポケットに手を入れていた状態で転んだらかなり危ないような…
そりゃ二人とも真っ赤になりますよ。
つないだ手の大きさに改めて意識してしまう、その手を彼が見てくれたのもなんかドキドキします。
また四人で笑えるようになったのが嬉しいのも伝わります。
イヤーウオーマーもなんというか表情の幅を広げてくれているというか、活きるアイテムですね。
「もうつなぎたいって思わないのかな」…自分がつなぎたい、という感情がこっち側に…
とにかく二人乗りしたい、という形にしか出てこない思いももどかしいですね。
接着剤とか脚を固定とかジャージで縛るとか、縛れば縛るほど危険になりますよ。
健くんのおせっかいもドキドキしますね。彼となら二人乗りはなんでもない…いかに男として意識していないかわかります。
だからこそ…それをみたまもるくんにとってはショック…彼のショックが伝わってしまって、すごく苦しい…
バランスが壊れてしまう、こわい、こわい…すごい恐怖が伝わってきます。
自転車を握って追うのもすごく印象強いです。まあ自転車でぶつかるのは冗談抜きに危険ですが。
橋の上での告白の構図も、爪にキスするのもすごく色っぽいです。
新しい関係での二人乗り…二人ともドキドキしているのが伝わってきて…これからの二人、というか四人、もっともっと見たいです。
次回作ではどんな風になっているか…とにかく地力が素晴らしいので、楽しみです。
蜘蛛女
蛾と蝶は英語じゃ同じなんですよね。
可愛いものは可愛いです。
チェリーちゃんとは可愛いどうしでうまく合っているようですが…
トモエちゃんという、これほど醜い女子をしっかり描けてしまうのはすごいですね。実際どこにも、美しい人もいれば醜い人もいるのが現実ですが、普通の少女漫画では誰もが美少女なのに…
外見の醜さを穢れとして扱うのも人間の通弊ですね。
この残酷さ…でも男子の多くは、それも可愛いから許すとか子供は残酷なもんだとかきれいなバラには棘があるとか容認しちゃうんでしょうね。
どんどんあざが濃くなる、このリアルさはすごい恐怖ですね。
切れたときのこの態度…悲しくなりますね。その男を惑わしてやまない胸もどんな薄いナイフで簡単に貫けるか…その魅惑の腰の中の内臓がどんな醜いか、その顔の中に…どんな醜い脳が詰まっているのか…
蛾の模様が目に見えるのも進化の芸術というべきですが、それがこうして…ここからの恐怖描写はすさまじいものがありました。
蛾に逆に顔が…これは怖い。
そして種明かしをして、この凄まじい憎悪と…あまりにあっさりした死…
なんというおぞましさ。つくづく素晴らしい実力です。