なかよし2011年夏ラブリー感想

シリーズおよび本誌連載陣出張作品が明らかに多すぎます。
デビュー作でない読みきりが二つだけって、増刊の「新人育成」という役割がまるっきり果たせてませんよ。
ただでさえ増刊数自体を減らすのですから、新人を育てるためにはデビューしてすぐの新人にどんどん読み切りを書かせ、調子がよければシリーズや本誌でのお試し連載としなければ。

多少値上げしてもページ数を大幅に増やすのがより現実的だと思います。
本誌の値上げは今のところ受け入れられているようですし。

そう思うと、「夢水」は作品自体が素晴らしいけれど増刊の枠を読みきり三作か四作分も圧迫してしまう、というジレンマの強い作品です。
本誌連載にしてしまえればいいのですが…

ご指名ありがとうございます(美麻りん)かみかみかえし(遠山えま)1年5組いきものがかり(フクシマハルカ)小川とゆかいな斉藤たち(茶匡)野ばらの森の乙女たち(白沢まりも)リアル女子ですか!?(みつき成流)イノセント・ワールド(山田デイジー)トイレの花子さんの育て方(伊藤みんご)若おかみは小学生!(おおうちえいこ/令丈ヒロ子)名探偵夢水清四郎事件ノート(えぬえけい/はやみねかおる)海鈴のジャンヌ(菊井風見子/阿久根治子)おかえり、ただいま(春瀬サク)色づくハート・ヒート(立樹まや)わたしから見たキミとの話(中江みかよ)蜘蛛女(秋本葉子)

ご指名ありがとうございます!
単行本に巻頭カラーと絶好調ですが本誌連載はないんですね…
ふと思ったのですが、この作品男女逆転したらどうなるでしょう。どうしようもないバカのところに、No.1キャバ嬢で才媛の家庭教師…それなんてエロマンガともなんとも言いようがありません。想像してアゴ外れそうになりました
なんでさそり座?
林間学校…いないから気が楽だと思ったらこんなところまで出張しなくても。いくら取ったのでしょう。
先生…アバウトすぎます。ここはもうちょっと官僚主義的に…
人間以外にもモテるというのはすごい。
フォークダンスでこんなダンスに誘わないで下さい…
翔くんも気の毒に。で…なんという不純な誘う動機。いや、女子に見直してもらうためだけに対して好きでもない子にキスできるとしたら逆にすごいですよ。
それで、まああとはお約束ですか。
水場なら最大の懸念は解決されます。あとは服を脱いで乾かし、水をろ過して飲み水を確保。それだけでしばらく生存できます。
ホストは男との争いにも…ま、男のライバルもいますし、それに裏のやがつく方々とも関わりが必須ですし。
これで熊となったらどうしようもない…と思ったら熊に乗って、もう大笑いするほかありません。
裸にシャツだけ、というのも恥ずかしい通り越してますね。
それで…彼、ものすごく楽しんでますねこれ。
南の空に、という問題は「北半球で」という前提を隠してますね。不完全問題。
男子までメロメロ、って変なことを教えないように。
なんというかもう…やりたい放題ですね。笑うしかありません。

かみかみかえし
どれだけ出てくるのでしょう。
神を相手にする殺し屋…天皇制とはどんな関係にあるのやら。
布都御霊…いろいろとしゃれにならないことに。
鏡…まさか、三種神器の…ホントこの家って、天皇家より神格も権力も上なんでしょうか。
日常パートは余計に近い気もします。

1年5組いきものがかり
脚立って人類最高の発明ですね。
実際問題梯子は、狩猟採集時代の人類にとっては投槍器や籠に匹敵する発明だったかもしれません。登るためだけでなく、ラダーフレームは籠や皮袋を補強するバックパックのベースになったり、ただ荷物を乗せて引きずるソリや車の前身と運搬にもきわめて重要な発明となります。
構造一般論でもA字と梯子は基本ですし。
いや、中学校の頃好きな子が高いところの作業をするのに、椅子を支えて…パンツが見えたとかじゃないけどそばにいられる役に立つだけで嬉しくて、フラフラと力加減間違えて自分の尻でガラス割ったりしたことがあったっけとかはおいといて。
文化祭…懐かしいですね。なぜか作業用にバック#110を持ってきていた人がいましたっけ、そのブラスボルスターの色が妙に目に染み付いています。
本物のオバケがたくさんいて、それでお化け屋敷…
わかってくれたってなにをわかったんだか。
風呂シーンは悪くないサービスですね。
逆に襲われてますか。
それで…なんか強引にえらいことになってますね。いや、えろいことですか。
肉食女子たちがいろいろとすごすぎます。

小川とゆかいな斎藤たち
これが今までなかったのが不思議な気がします。
催眠術、って現実に、科学的に存在する物事なのでしょうか。
ヤンキーにしてしまって…かあっくいい!
息を呑むようなカッコよさです。
ここからの小川さんの表情の切れ、神がかってるんですけど。
いきなり釘バットってヤンキー通り越した凶悪非道。
で、成田さんが本命というのは笑う通り越して全身の力抜けました。
そりゃもう血の涙ですね…

野ばらの森の乙女たち
絵がどんどん成長しています…透き通るような恐ろしいほどの美しさ。
体がまた透き通るような柔らかさを感じさせます。
男としてはこれほどの美少女たちが…もったいない。
バレーの王子様…ジャンプして空に留まったまま何十回も超高速ラリーしたり、巨大隕石で恐竜が滅亡したりすることがないことを願います。
女子たちより頭一つ高い…
王子さまとお姫さま、っておい。
バウムクーヘンに見えてタオル、というのもすごいですね。
実はカワイイの大好きの普通の女の子、というのがなんかすごく可愛いんですが。
劇なんてやったら王子様役…あ、泉さまも…
お姫さま役、やりたかったんでしょうか?というか人魚姫のお姫さまって憎まれ役では。結果的にで彼女は別に悪いこと何もしてませんが。
「わたしは王子役しか」…人魚姫なみの墓穴掘り。
初めて会ったのが初等科三年、家族同然ですねもう。
これ知られてるんじゃ、彼女の前じゃ作る必要ないじゃないですか。
「似合いますよお姫さま」これが彼女にとっての殺し文句ですか。
堂々と「きっとかわいいですよーっ」と言えるの、すごいキャラですね。
潰れそうなのを抱きしめてキス、すごすぎいろいろと。
いきなり押し倒されるのは苦笑するしかありません。
なんというか…もったいねえ。

リアル女子ですか!?
咲来あき、本名羽鳥暁杜、女装少女漫画家、打ち切り。
次の連載は中学生デビューで大人気、にしの先生か…サバイバルレース。
リアルな女子を、という課題を出されたけれど、男の身にはわかるはずがなく…それで女子を調べようと合コンに出て、すごく可愛い子に出会って、連れ出そうとして胸を触ってしまい、なぜかデートすることに。女の子の可愛らしさを堪能してたら、いきなりお別れメール…
直後、女装して漫画家として彼女に再会したけど、彼女はライバル漫画家にしの先生!
そして二人で臨時の仕事、レポ漫画を描くことになって…

良いシリーズから続けての登場、好評だったことが伺えます。なら単行本出せ。
ジャンプの人気漫画である意味おなじみの、漫画雑誌編集部のサバイバル風景、見てて胃が痛くなりますね。
絵の美しいともかわいいとも、もっと違う言葉が欲しくなる魅力がさらに高まっていて、見ていてすごく心地いいです。
リアル女子のデータと言ってラブプラス…ある意味すごいですが、僕もまあひとつ間違ってたらそうなっていたかも。
合コンという手段が存在するのはある意味うらやましいです。
少女まんがぽく行動しようとして、いきなり胸触ってしまう、かなりびっくりしました。
前のシリーズでもかなりあちこちお色気はありましたけど。
かわいいコとデート、ってそれ自体が目的でいいじゃないですか。
いきなり「うちにきますか」というのも大胆な子です。それで頬とはいえキスまでも…
これだけいい雰囲気で「わかれてください」は死にますよ。
「プロならさっさとのりこえて」というのがまた厳しい。
莉央ちゃんの別の顔、ここまでとことん女の子の二重人格見せられて、女性不審にならなければいいのですが。
「なかよし団」のパロディ、しかも渡辺留衣先生のタッチがある、ここのお遊びがすごく楽しいです。
ファンとしての彼女の姿、気まぐれで感情の起伏が楽しい…いや今の僕でよかった。高校生の頃の僕が読んでたらショック大きかったでしょう。
彼女も実はネタ探しだった、というのがうまくつながってきます。やはりストーリー展開うまい。
あのストラップを大切にしている…それで今度こそ女装がばれて嫌われた、と思わせて…そこに「早くない死ぬよ」「やればできる!!!」と軽くギャグを入れるのが楽しいです。
それで莉央ちゃんの勘ちがい…弟は空気読んだじゃなくてほとんど全知の域に達してますね。
それで、やはりごまかすのではなくちゃんと、告白に両方が「これが咲来あきは」とやってくる…
女の子からのキスも大胆で素敵でした。
輝きとパワーが爆発して、すごく読んでいて楽しい作品でした。
もう本誌に枠がないのなら、増刊の優れた作家専用の新雑誌作ってください。もったいない。

イノセント・ワールド
このシリーズもずっとお休みでした、と思ったら復活と同時に最終回…残念。
自分には何もない、そして…九十点台でも怒られるという、否定される圧迫感、絶望感、閉塞感…
正直言ってもったいないです。これほど優れた作家が、その才能を負の感情を描くことにばかり使っていることが。
本誌連載での暗さがそのままこっちにまで出てきてしまっているようで…
「はい」…何という残酷さ。服従以外何もない、言いたいことが山ほどあっても、何一ついえない。
むなしい、絶望しきっている、それでもただ…
そこにいきなり飛びこんできた三角さんにはびっくりしました。
昔は仲がよかったのが…そりゃ、殺さないのが不思議です。
塾の雰囲気も、僕はそれほど上のほうではなかったので正直言ってここまでの雰囲気ではなかったと思います。でも、上のほうの…特に優秀な子がいきなり別の塾に移ったりとか、そういう変なところは垣間見た覚えがあります。
頑張っても成果が出ない…この絶望感も、すごく共感させてしまうでしょうね。
「がんばってもムダだったんだ」という言葉も。
「わたしのことだけきいてればいいの」って今までもそうしていたじゃないですか。いや、母親から見ればわがまま言いたい放題したい放題なのでしょう。際限なしに高い基準を、人に押しつけるのは簡単ですから。
サボっても、何をすればいいのかわからない…
あくまでついてきてくれる、三角さんがいなかったらどうなっていたことか。
「いますぐ消えてなくなれたらいいのに」…これも、すべての人間が強烈に抱いている感情でしょうね。わからないとしたら、その人は何かの嘘に魂の底まで食われているだけです。
あくまで引き出してくれる三角さん…昔、友達と一緒にやる勉強は楽しくて好きだった…本当は、何が嫌なのでしょう。母親の圧迫感、魂の底までの支配感覚…邪悪さ?
「えらいなあ」と認めてもらう、それほどうれしいことはないのに…
帰り道、また閉じこもろうとしたのを…手を引かれて、どの分かれ道にもあるこんな助け…それこそ王子様に一目惚れされるより確率としては…
本当の夢を思い出させてくれる…
母親との対決も、一体どんな形になったのか。あの母親も、人間だと…そう思いたいです。
ものすごく、とてつもなく力のある作家なのですから、それを…常に一番暗いように暗いように掘っていくのではなく、もっと明るく楽しい世界を描くことはできないのでしょうか。
もったいない、としか言いようがないですよ。

トイレの花子さんの育てかた
まじめで霊媒体質の秋吉好葉ちゃんが、いきなり箒を最強ヤンキーの竜崎くんにぶつけてしまった。
でも、怖いものなどない好葉ちゃんはまっすぐ見返し、その度胸を気に入った竜崎くんに旧校舎探検に引っ張りこまれる。そのトイレには小さな「花子さん」がいて…竜崎くんは花子さんを助けようとする。

すごくさっぱりしたタッチで…怖いことやってくれます。
道あるいててこんなの見たら、そりゃたまりませんよ。
不良を殴ってしまった、そのときの冷静すぎる対応、すごく不思議と安心する空気を作ってくれます。
トイレの…かわいらしい。
え、竜崎くんにも見える…あ、霊感仲間?
迅雷掌で木にクレーターを作れるってすごい超人…
女子便所で小さい女の子を抱っこしている、というのもすごい眺めかも。言ったら殺されそうですが。
「早く帰りたい」しかない好葉ちゃんの冷たさと竜崎くんの熱さがいいコンビになってます。見ていて楽しい。
こわがらせてレベルアップして…現実世界よりゲームっぽいですね。で、成仏はその先にあるのでしょうか。
こわがらせるコツ、さすがヤンキー。霊すらも怖がらせるなんてすごい…
人形系…それはこわい。
笑顔がかわいい、といわれたら…こういう心の動きを繊細に描いているのも楽しいです。
「ユーレイなんているわけないじゃん」という言葉…言われるほうも傷ついてますけど、言うほうも傷ついているでしょうね。
関係ない…それを積み重ねていくと、どこがどう傷ついていくのでしょう。
自分から竜崎くんを呼び出して突っ走る、衝動的な行動と、今までの心の動きがうまい流れになっています。
この霊能者もある意味面白いですね。
それで…消えたと思ったら、トイレからトイレに移動できる…
なんというか、なんということもない話なんですが全体にすごく面白いです。こういうのもありなんですよね。

若おかみは小学生!
またとんでもない難題を。
料理人として受けて立つ、見事にすごいことやってくれたものです。
これはこれですごくおいしそうなんですが。かなり贅沢でもありますし。
普通に立食パーティでこれ出されたら感涙ものですよ。
「心からのサービスに感謝する」…まさにサービス業冥利に尽きますね。
遠距離恋愛の話をしていたら、なぜかウリケンを怒らせて、さあどんなことになるのやら。
それで携帯電話で言い訳したら、そりゃ泥沼にもなりますよね。
若おかみの会…っていくらなんでもこの年齢はないでしょう。
本当に好きな人がわかるテスト、というのも怖い話です。自分の気持ちなんて見たくないですからね。

名探偵夢水清志郎事件ノート
冒頭の完全犯罪…以下反転。アガサ・クリスティの「カーテン」を意識しているのでしょうか、名探偵ポアロでも、自らの命と引き替えでなければどうにもできなかった犯人…。
全部吹っ飛ばして食べることだけ…
なんか懐かしくさえなりますが、三人の元気な笑顔が嬉しいです。
半額でもハンバーガーは高いです。今の日本での、米・卵・ブラジル産冷凍鶏肉二キロパック・充填豆腐の悪魔じみた安さと比べてしまえば。
お見舞いでの三人それぞれの服が何かとかわいい。
人形伝説…推理小説の探偵なら、もう生命保険かけて行ったほうがいい次元です。
いきなりクラブの予算会議に飛ぶのも楽しいです。ちゃんと学生生活してますね。
なぜ文芸部にけんかを売っているのやら…そっちのほうがすごく大人気ないのですが。
まあ、廃部にならなかっただけよかったですよね。
「いまのひょっとして映画」…ひでえ。
森川さん、いろいろすごすぎる。
映画とのメディアミックスというのも楽しそうです。
この取材も楽しそうですね。
結構大きな旅行になってしまいましたが、よく家族の許可取れたものです。
二週間で脚本を描き上げる、ってやればできるにもほどがあります。
「本音はどうなんですか」…容赦なし。
で、スピード狂…お疲れさまですいろいろ。
十字架でしいたけをというのも面白いです。
昔の話を繰り返すのもよりわかりやすいです。繰り返すほうが物事はわかりやすいですから。
かまどでご飯炊いたりできる、というのも貴重な体験ですよね。
レーチが有能なのはびっくりします。
地下電線に水車での自家発電、ずいぶんと先進的な…
吊り橋もすごいです。
塔を見せて「この人形の塔はいい映像になる」と言い切るレーチに、なんとも言えず雰囲気が伝わってきます。
人形の数がすごい。これは実際に見たらすごい恐怖でしょう。
人形それぞれの心、表情の表現がすごいです。
助監督が監督のドレイ…間違ってはいません。
この映画はそれはそれで凝ってますね。
あの、こんな服を「ミステリで」作ったら、それこそ犯人ホイホイ…
前を見ないで吊り橋…怖いとかそんなレベルじゃありません。
真衣ちゃんと美衣ちゃんのおせっかいが実に楽しいです。
この手押しポンプも美しいですね。機能美のきわみです。
男の子にかわいい、って…
人形が出るシーンの恐怖は凄まじいものがあります。
しかし…本当に面白い。とても面白い。でも…新人読みきり三本分…

海鈴のジャンヌ
すごい。
それ以外に言葉がありません。
竜神の存在感と迫力、過酷ともいえる命令…
「あるかぎりの力をつくすこと」それが彼女のすべて…それに命じられたら、それは動くほかないでしょう。
誰も鎧を脱いでいない、士気は高い。
教えに従い、自らの手で…迫力と凛とした美しさの凄まじさ。
遊女の館、そりゃ兵士は…逆にそれをあくまで許さなければ、最悪反乱の危険さえある…絶好の隙ですね。
盾に身を隠して船を操る、細かい描写も、全体の大まかで、無理に細部まで描くより水墨画のような簡潔さに勢いを載せた迫力もすごい。
港係留中の船の弱さときたら…第二次大戦でも、真珠湾から日米問わず港で沈んだ艦船の多さ。
そして、「焼きつくせ!」と叫ぶ、竜神と炎の迫力。戦争の狂気…将が狂い、その狂気が全軍に感染して、全員が狂って押し寄せる、それ以外の戦争はないんです。
敵船が全滅しても、国力が隔絶していればいつかは攻め落とされる…それを考えるのも正気であり、戦う人たちの狂気とは関係ありませんよ。
すべてのつとめが終わり、竜神に呼ばれる…僕が感じるのは「物狂い」という言葉です。狂気の一つ、でも神に呼ばれる、または何かに激しくこだわる…
それこそダマスコへの道で復活のイエスに命じられたパウロも、その状態です。現代の精神医学の診断基準では狂ったといわれるでしょう。
民も、戦略的なことを考えるよりただ、強く美しい姫君の手柄に喜ぶだけ…その単純さが、かつて攻められた時に見せた強さにもなるのですが。その庶民の、考えないからこその強さは…今回の大震災でも強く強く見えました。逆にこれほどまでに強い民が、選挙権を持っていてもこれほどの政治の閉塞を止める知性がなかったりします。
鎧を解いて力尽きる、これも凄まじい疲労が強烈に伝わる、非常に力のあるシーンです。
目が覚めたとき、あの衣装を見て明成の死を実感し、その時の激しい慟哭もすごく強烈に伝わってきて、言葉が出ません。
かねさんの細やかな心情と強さがまた素晴らしい。
凄まじいまでの美しさと、荒れる海の対比が強烈です。
そして幻を追って海へ…この、激しすぎる、狂気とさえいえる思いの激しさに、言葉も出ません。
僕はいつも、作品がどんなメッセージを与えるかをうるさく言って、それで多くの作品を批判しています。でも、この…そう、自殺を美化していないか?と言われるでしょう。
でも、「自殺してはいけない」「彼も、生きて幸せになることを願っているはず」「一人じゃない、家族や領民がたくさんいる」…それは、人の、正気の、現世の道徳です。
彼女を駆り立てたのは神。
戦に勝つために彼女の力のすべてを引きずり出し、敵味方…敵だって一人一人は遊女と遊び戯れ、飲み食い、恐怖を酒と賭博でごまかす生きた人間です…の生命を炎と海に飲み食らいつくし、さらに生贄として最も美しい生命すら求めた…恐ろしく欲深く、凄まじい神。
神は善だ、と思ったら大間違いですよ。神は横暴で理不尽でめちゃくちゃなのが、当然なのです。世界各地の神話の神々も、いや大文字のGodで書かれるキリスト教、ユダヤ教、イスラム教の神でさえも。旧約聖書にはその理不尽で激しい暴力と嫉妬がオブラートなしで描かれています。
戦争も、恋も、どちらも狂気の、神の、物狂いの世界です。正気じゃない、正気ではありえません。
それを徹底的に描ききる勇気と、それを支える自然・武具などの精密な描写、人物の心を深く描く表現力…凄まじいとしか言いようがないです。
周辺の戦略的な歴史背景、長期的な戦略や外交を略したのも、この回数で描くべきなのは、姫の恋心と神に憑かれた物狂い…力を尽くし、燃え尽きる激しさ、生き様を描くと目標を絞ったのは正しいことですし。
あと、あの世で幸せになる、というのは宝塚で見慣れてますしね。そうそう、これそのまま宝塚でやったらすごく面白そうです。今の宝塚にできるかなとも思いますが。
とにかく、とてつもない、凄まじい…
この作品を描ききれただけでとても嬉しく幸せなことです。もしそれが単行本にならなかったとしたら…それほど大きな損失はないです。
そして、菊井先生のこれから。これほどとんでもない実力を見せつけて、それでも「なかよし」本誌に入れないなら、どこであれ高い実力を出せる場があって欲しい、そう強く強く願っています。
お疲れさまでした…なんて生易しいものじゃない、それこそ全身全霊を使い尽くしているでしょう。その成長が、もっと大きな舞台での、もっと素晴らしい作品に結実しますように…

おかえり、ただいま
実体験シリーズはワンパターンが多かったのですが、今回はとても重要なメッセージを伝えてくれたと思います。
親側の、理想的な対応。
「親」という学科があるなら、教科書に載せたいほどの模範解答です。
ただ問題なのが、親がこれほど理想的とは限らないということ…
さらに、教科書どおりに完全にやっても、それでも叩き潰されることすらある、「こうすれば」というマニュアルが存在しないのがいじめの世界です。
ほとんどのケースはこの対応で解決できます。ただし、さらに上を行く邪悪もありえるし、最悪は地域全体、警察までも敵に回す可能性すらあることは覚悟してください。
子を殺され、学校を訴えたら地域全体に村八分にされ、激しい嫌がらせで仕事も人間関係も財産も名誉もすべて失い、遺された一家全員精神を壊されたケースも多くあるのですから…
ただ、ここまでの対応ならほとんどのケースで解決できるでしょう。恐ろしいことがあるからいじめられたなんて言っちゃいけない、我慢しなさい、などと言うぐらいなら、その場で子供を殺したほうがましですのであしからず。
もちろん無視などの、裁きようがないいじめは続くでしょうが親の支えがあれば…
難しいのは、親に助けを求めるというその一歩です。
それ以前に自分がいじめられていることを認めること…
いじめという人間の本能的な行動では、いじめる側もいじめられる側も、精神が石でできているように固められてしまいます。どちらも、本能の中のプログラムに支配されてしまい、洗脳と同じ精神状態になってしまうのです。
自分がいじめられていることを認める、大人に訴える…どちらも、石になったのが元に戻るより難しいのです。
とにかく、この漫画はすべての親必読です。子供も。
春瀬先生の表現力もさすがでした。次は明るい話で活かされることを願っています。

色づくハート・ヒート
 小宮映優、中三、生活委員の委員長…でもかなりのドジ。対照的にしっかりしているのが一組の委員、木和田くん。
 ある日、荷物を運んでいる最中ぶつかりそうになった上手伝ってもらって、少し近づいた感じがした。
 ただ、それ以来すぐに謝る癖を、彼が責めてくるようで…

季節上とっても暑い…
冒頭から不思議な雰囲気が伝わってきて、すごくリズムいいです。
この重さは、一度にいくべきじゃなかったような。
とにかく謝りまくる、というのが、変に思えないのが木和田くんの一言で変なことになってしまう、というのが印象強いですね。それまで比較的、人物小さめだったのが二人のアップになるのも印象を強めてくれます。
役員の名前とかも芸が細かいです。
冷えの話も楽しいです。
ちゃんと話せたことの嬉しさがすごく伝わってきますね。
すみません、という言葉の三つの意味…これをしっかり伝えてくれるのがとても嬉しいです。柱がしっかりしている話は見ていて気持ちいいですよ。
ありがとうでもいい、という思いがあるのがいいですね。
マフラーで雪をごまかす、というのもうまい考えかも。
謝らなくていい、と…そう暖かく深く伝えてくる、伝えたいことを繰り返し繰り返し語りかけてくる…
相合傘で暖かなラブシーン、それ自体もすごくいいです。
「ことわる気じゃないわよね」…実際には、ひたすら謝りひたすら従う、が正しい…というより、唯一生存が許される場のほうが多いんですよね。
絶対服従・完璧があたりまえ、でも人間はそうでないから、常に生きる価値もないゴミ。毎日全員そろって殴られ、それで「ありがとうございました」、人間にできるはずのない質量を倒れるまでやって「あたりまえ」「ぜんぜんできてなくてまことに申しわけありません」「もっとご指導お願いします」それが、日本のきわめて多い場での、「あたりまえ」です。
作者本人が、その日本のあたりまえに強い憤りを感じているのすら伝わってくるようです。
それに、はっきりとNoを言えるヒーロー、作者本人がすごく欲しかったのか…または身近に、多くそんなことを見聞きして、ひたすら黙って生きてきていたのか…そんな感じすら伝わってきます。
クリップが外れる表現がまたすごく見事です。
こうして見ると…この作品、かなり深いテーマをえぐってますよね。
最後の、あふれ出すような告白とキスシーンも素晴らしかったですが。
この高い完成度と表現力が、次以降どんな作品で出るか楽しみです。おそらくはいじめ実録や「地獄少女激こわストーリー」で試されるのでしょうが。
もっと別の、何かとても深いところを掘り抜くいい物語を期待しています。

わたしから見たキミの話
 進級早々…学級委員が超長身で超無愛想の大山田くん&すごく小さいいち子ちゃん。
 いち子ちゃんは背が小さくて、そのことも回りにからかわれ、ゆるキャラシリーズのねこ星人に話しかけたりし…ながら携帯電話でブログを巡っていると、「あんなのと学級委員なんていやすぎる」と、自分を半ば名指しで…大山田くん?
 翌日、そのブログで得た情報から嫌がらせしたり、重いものを持って潰れて逆さ吊りに引っ張り上げられたり…
 それでブログに文句書こうとしたら、「小さくてかわいいからよけい緊張してうまく接することができない」などと。

これは冒頭のインパクトが最強。
大山田くんの迫力、いち子ちゃんの怯えたチワワじみた可愛らしさの両方、インパクトが強烈過ぎます。さらに次のページでも、それがもう一度これでもかとばかりに強調される…
この「スペアニ」シリーズがまたかわいいです。それに、ぬいぐるみを抱えてベッドに寝そべる、その仕草の女の子らしくてかわいいこと!
携帯ブログで、「K倉とかすげー最悪」…やっかいな偶然ですね。
メロンパン五個、ってどんなカロリーでしょう。というかよく見てますね。まあ僕も、二個目が三個目、四個目になったら見ますか。
このイメージ映像で、まず連想したのが『トッカン(高殿円)』だったりします。
しかしこの尻の形がすごい…
朝、笑顔でやってきてとんでもないいやがらせ。
重い荷物を持つ表情も極端でかわいいです。
でも、僕は…ただ荷物持つだけなら、担げるなら上限が想像できない、手で持つにしてもゴム軍手あれば100kgぐらいなんとかなりますよ?
というか荷物の持ち方が間違ってます。
あと、人間腰が砕けて倒れるより先に落とします。
いきなり逆さ吊りにされて、パンツ見えなかったのでしょうか?
この表情もものすごいです。
枕元のスペアニ、字も結構きれいですね。
人に嫌われることが悲しい、と素直に気持ちが出てるのがかわいい。
ブログで、ここまで心情ありのままに書くとは…いろいろと命知らずな。コメント欄見てみたいもんです。
保健室の外で待っていて、「ご」を繰り返す…ほんとうは「ごめん」と言いたい、という、ここすごく心が温かくなりますね。かわいいですし。
「もっと知りたいとか思ってるわけじゃ全然」…すごい告白。
二人で委員長の仕事をしているのがとても楽しい、ということが、無言での仕事描写からすごく伝わってきます。
それからぱあっと、ポップコーンがはじけるようなおしゃべりになるのも楽しそうです。男女でこういう会話ができるのってかなり先のことなんですよね。僕は中三でやっとでした。
いきなり抱き上げて景色を見せる、このシーンも素晴らしいです。
ドキドキのカタマリ…すごく素敵な恋心の表現で、見ていて胸がたまらない思いに満たされるようです。
そしてブログのことで信頼関係が失われ…ここでの友人が、手で顔に触れて話しかけるの、すごく情感が満ちています。これほど暖かい気持ちを、手と目線で表現できるなんて…
そして机に飛び乗ってのキス、すごいですね。
みんなの前でですけど…いや、なんかすごい満腹感。
とても素敵な作品ですし、素晴らしくパワーがありますね。
そのパワーがどう活きるか、すごく楽しみにしています。

蜘蛛女
悲鳴を音楽として楽しむようになる拷問官もいるそうで。
一人のミスはみんなの…連帯責任、僕は大嫌いですが、船が沈んだら泣こうがわめこうが連帯責任、全員が溺れるだけです。連帯責任なんか大嫌いだといくら叫んでも、海もサメも一言も聞いてくれません。
一心同体…それがスローガンのところって実際とてもたくさんありそうです。
心を一つに、と本気で信じていたらそれはそれで怖いのですが。
その願いをかなえたら、そりゃもう…
整列してといった瞬間これ、人間という群れ動物にとっては最高の幸福感でしょうね。
これが正しいと思ってしまう、というのも苦笑するほかないです。
倒れて、それでも…みんなの熱意に応えるためにもっと頑張る、というのも群れでよくあることですね。
というか日本の企業によっては、違法で人間の限界を超えて確実に死ぬ働き方を、その集団での熱意と空気を駆使して実質強制するのがシステムとなっていることもあり。それが標準になっている、そうしないと生き残れなくなっている業界もあるそうですが。
悪口を言われただけで言った子を、そして目撃者を殺す…集団というのも、魔というかある意味神、それも理不尽でむちゃくちゃな意味での、その力があるんですよね。
これは、チェリーちゃんの魔力がなくても現実にいくらでもあることです。
集団が団結し、そのまま暴走していく…主導者も、菅野さん自体は魔法をかけられていなくても、みんなの熱意と団結の力、それ自体が魔力となって正気だったはずの彼女を狂わせていく…
よくあることです。としか言いようがないです。
そして…舞台で、全員食われた無残な姿…単に内面を外に出しただけ、内面のほうがずっと怖いです。
一心同体、その中に潜むエゴ、無残としかいいようがありません。
「群れる動物の考えることはわからんな」心から賛成します。
蜘蛛という、僕が知っている限りは孤立生活する動物には、骨の髄からわからないことでしょうね…まあ、客観的にはわかっていて、的確に捕食できているようですが。
そうそう、アリやシロアリ、ミツバチからみても、人類は「わけがわからない」でしょう。群れ動物のように見えて一人一人に自我とか個別の名前とかがあり、個別に繁殖しているわけのわからない動物。群れる動物なんて名乗る資格もありません、社会性昆虫から見れば。一心同体があまりに当たり前で、それで破綻することもなく生きていられるのですから。
蜘蛛には、素晴らしい家は作れても飛行機は…いや、蜘蛛は空を飛べます。冗談抜きに。蜘蛛のごく小さい子は、尻から糸を出し、それを風に乗せて、大陸間レベルの長距離飛行をするのです。
でも蜘蛛には宇宙にはいけない…人類だって、宇宙に進出することを事実上諦めました。いく力が本当にないのか、あるけどただ止めたのか、中国がオーストラリアに到達しなかったように。どちらにしても同じことです。
というか蜘蛛も電磁気力で宇宙に行っているかもしれない、と、誰か日本SFの短篇集にありましたっけ。
だとしたら、蜘蛛が人類に劣る部分など何もありませんね。
ひたすら群れるだけで、自分たちさえも破壊し、アリのように環境を変えつつ熱帯雨林を保つことも、宇宙に進出することもできない…どうしようもないです、この人類という愚か者は。

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