なかよし2018年1月号感想

一月号が二人表紙、というのは圧倒的な看板がないのかなと不安になります。

付録はとても大人っぽいです。

ショートの類が素晴らしいものが多いです。大切にしてほしいです。

秘密のチャイハロ(桜倉メグ/鈴木おさむ)先輩!今から告ります(慎本真)カードキャプターさくら(CLAMP)キミと最後の初恋を(中江みかよ)ねこ色保健室(松本ひで吉)同級生に恋をした(美麻りん)思春期女子のはじめかた(雪森さくら)黒豹と16歳(鳥海ペドロ)はちみつトラップ(甘里シュガー)君色スノウドーム(伊藤里)青葉くんに聞きたいこと(遠山えま)ゆずのどうぶつカルテ(伊藤みんご)プリキュアアラモード(上北ふたご/東堂いづみ)夢にひそむマーメイド(高鳥未唯)予告

秘密のチャイハロ
運動・勉強とも優れているが貧困層の愛川愛ちゃん。父親が女を作って逃げ、母は事故で激しい労働ができない…
貧困はいじめにもつながり、心が砕かれていく。
ある日、ある教師が「秘密のチャイハロ」…チャイルドハローワークに連れてきてくれるが…

まず、僕は「ひどいめ」が圧倒的に多い作品は嫌いです。楽しみたくて漫画を読んでるのに何が悲しくて苦しまなければならないんですか。苦しいことなんて現実だけでおなかいっぱいです。
ただ一言…ヘアピンの破壊は器物損壊罪、金を奪うのは強盗罪(現在は紙幣の破壊は罰則のある刑法がないようです)。警察に告訴し、生活保護を申請して転居することを勧めます。
警察・福祉制度は金持ちの味方だから助けてくれないに決まってる、というなら、国そのものが終わっているということです。
少女漫画はどうしても、警察・役所という選択肢を考えることも許さないものですが…
警察・役所を選択肢と教える善人が一人もいない、というのは「元特殊部隊員のヒーローを捕まえて拷問するけど、一生体が不自由になる怪我はさせず、案の定逃げられ殺される悪役」のようなものです。世界全部がストーリーに奉仕しているだけ。
児童の貧困というのは実際にとても大きな社会問題です。
父親が養育費義務を果たさず、母親も障害がある…この状態を救済しない国が間違っていますし、実際にはさすがに生活保護申請は認められるはずと思いたいです。ただし、今の日本で貧困シングルマザーを救う政党は存在しないので、投票では変えられない状態ですが。というかもうほとんど投票が無意味になってますが。
金持ちのいじめっ子や奥方の、極端な邪悪さも感情をうまく動かします…それで引き立てられる圧倒的な強さ…
でも、桜倉メグという作家のすばらしさが、この「極端な邪悪で、強さを引き立てる」形でしか出なかったのか…無念でなりません。
「なかよし」が、こういう作品を必要としてしまうということも、とても悔しい…現実世界そのものが嫌いになるほど。
それ以上に、子供の貧困、母子家庭の貧困・父子家庭の苦境、特に低知能貧困女性や無国籍者の悲惨…それらに国民が関心を持たず、彼女たちを救う政党を決して作らない日本がとても嫌いです。僕も嫌というほどその一因ですが。

先輩!今から告ります
せっかくいいムードなのが、思わず声が出て「豚まんみたいな感触」といつも通り…
「やめろきくのがこわい」でもう大笑いしました。
お気に入りスポットめぐり、ってそれはデートと言いませんか?
もうどうみてもラブラブ…さてここからどう動くのやら。新キャラですねわかります。

自動補正っておそろしいことを。

カードキャプターさくら
なぜさくらちゃんの戦いを夢として見ているのか…わかりやすいというか。
連絡…何で買われたのやら。ってプロモーションビデオ…うわ。
彼ができること…何ができるのやら。
ものすごく意味深な会話。どんな変化でしょう。
火の鳥とはわかりやすい…どんな組み合わせで封じるのやら。
裏の構造がとてもめんどくさいです。

キミと最後の初恋を
本気だと思われていない…ひ、ひど。
全力全壊で押してくるのは強烈ですね。女の子の理想でしょうか…ただし気持ち悪くない男子に限る。
ほっとけない、って本気とは絶対に思わない…どこまで残酷なんだか。
シャープペンを折るとはすごい力ですね。机が心配です。
さらに全校公開告白…もうなんでもありのすさまじさ。どこまでもやってやる、という感じですごい興奮します。
「いやなことなんてかんがえるすきがないくらい」…確かに、余命を過ごすにはいいかも。
「好きなやつにさわってんだぞ」で、…ここまでぶつけなければ本気だとさえ思ってもらえない…
そして今度は蒼真くんが倒れる…
母親も辛いでしょうね。息子が二人とも、これほど苦しんでいる…またメイちゃんのことも娘のように思っているのだから…
メイちゃんの決断がどこに行くのか、そして最終回って…いやあと8回は必要だろう、とも思いますが。どこに着地するんでしょう。

ねこ色保健室
ボランティア…何という迷惑。
都会の気づかいができない田舎者…うわあ。
メーターとかテレビとか、あなたはNHKや税務署の人ですか。
そして猫の真似をして、最後にはキスというか鼻…こりゃ確かに刺激が…
落ちは力技ですが…お気の毒に。

同級生に恋をした
「時間ちょうだい」というのが切ないです…わかっている、というのが痛いほど伝わってきます。
というかそれからしばらくデートして…
で、こっちの顔で「わたしをなぐって」とくるとは。まあわかりますが。
殴るかわりに額ちゅー、うわ…たまりませんな。
「ありがとう」の一言、それだけで…
翌日、両方が自分を悪者にしようとしてかばい合っているのがたまりません。二人とも本当にいい人。
「そもそもおまえがさ」で、よく殴らずにすませたものです。
「なんで村瀬さんとくらべんの?」…大笑い。まさに心臓に、巨大なタガネと両手持ちスレッジハンマーでのオーバーキルな一撃。やってくれました。
これで席替えとは、なんというわかりやすいフラグ。ページをめくる必要もありません。
佐田くんがほんとうに神様レベル…ここまでやられたら降参するほかありません。

思春期女子のはじめかた
この話を聞いてしまう…これはありそうですが気まずい。
そしてすごく近い…嫌悪感は感じない、ということは脈があるということでは?
で、「おれのあと生徒会長に」おひ。
豪快というかなんというか、さりげなく面白い作品です。次も楽しみです。

黒豹と16歳
ある程度事情が出てきましたか。
と思ったらなんかものすごい人が…で、父親?いろいろと終わりそうです。
「ほれてるね」とこの状況でこれをかましてくるとは。
温かい家族と自分…
話がお坊ちゃんになりそうな時にとんでもない手品、よく空気読んでますね。
心の中を知りたい人がいる…思いもかけない方向に。
ここからの父親の忠告、ものすごく丁寧で考え抜かれた言葉です。長い連載の間、大切に温めてきたシーンだとわかります。
そのあとのエロシーンは蛇足に感じられるほど、丁寧な言葉。

はちみつトラップ
ハワイ…楽しそうですね。
純情すぎて笑いが止まらないですねえこれは。
現実を見た直後、別の男の子が…これは落ちやすいですよね。まあ、「コイツはオレの恋人なんで」がやりたかっただけだとはすぐわかります。
唇と思ったら頬…
そして一瞬だけと思った男の子、まだ活躍してくれそうです。
今回はすごくわかりやすい話でしたが、一つ一つのシーンが素晴らしかったです。

君色スノウドーム
クリスマスを前に彼氏の洋くんにふられた純ちゃん…やけ食いしようとしていたら、クラスメートのトミーくんに声をかけられた。
翌日、お互いに謝って…直後、洋くんが二股していたことを見てしまう。そしてトミーくんは携帯を借り、洋くんに強いことを言ってくれた。
さらに別れ際に抱きしめて…

これはうまい。派手さはない話ですが何とも旨い。
何よりもヒロインがとても魅力的です。髪も服もすごく生気にあふれていて。
冒頭からひどいというか暗いというか。
序盤、トミーと純ちゃんの関係がはっきりしない、という重大なマイナス点はあるんですよね。扉の文字がなければわからないという。…といっても、感情的な関係ははっきりしているので、必要ないのかもしれません。
それで心を開いてしまう…
「クリスマス会うっていってなかったっけ」という言葉から、かなり親しいか、トミーがつねに純ちゃんの声に耳を集中していることがよくわかります。
言われてみると、カレシの事をそれほど好きじゃなかったと感じてしまう…ここが、すごく重みのある表現です。
お互いに謝ってからが絶妙ですね。感じる音楽みたいなものがいい。
二股判明はびっくり。そしてトミーの言葉…サイテー野郎のやることをよくわかっています。
「前しめなさい」でセクハラに近い、「ない胸を」…ここの会話も面白いです。小田氏が出番は少ないですが、しっかり中身があって面白い。
ときめいたことを否定して、…ここで「恋人候補に」…たまらない愛情の深さ。
反応もできない、そのときにこの連絡…そしてぜんぜんうれしくない、と自覚して即座に…
ラストシーンも暖かく、独特の雰囲気。
どんどん化けていきますね。もう連載でもいいと思います。

青葉くんに聞きたいこと
「全員で熱い思いを伝えれば」…ええとそれ、一つ間違えると暴力事件…
あっさりと二人に休まれて…
そして遥真くんの父親から…この父親もいいキャラしてますね。というかこの服を用意するのにいくらかかると…
通報準備完了は爆笑。
イップス、面白い言葉を出してきましたね。
「バスケットといっしょです」「そうだね」というここはとてもいいシーンです。
ここでキスのふりを見せつけて、わずかでも青葉くんの心が動いた…
さてどうなるのやら。

ゆずのどうぶつカルテ
短期退院…二週間が短期、ってどれほど深刻な病気なんですか。
母親がわり、ってまたハードなことを。
実にややこしいですね。犬猫と人間の栄養の違い…これがどれほど多くの犬猫、特に仔を時には死に…
無理をしている母親…そのささいな争いから子犬の世話に全力を出し、それで母親への感謝に…
相変わらず見事な気持ちの組み立てです。
里親探しも母親の治療も、うまくいくといいですね。
本当に最高の作品。

プリキュアアラモード
本当に動物がうまい作家です。馬が絶品というのがどれほど高い画力を要求するか。
カバなど、リアリティと手塚治虫・ディズニー的なデフォルメの実に絶妙なバランス。
カバに接近するっておそろしいですね。
実に素敵な作品の二連発。
「なかよし」もこういう作品をもっと増やせばいいのに。

夢にひそむマーメイド
声楽部の椿くんの、歌声が一月ぶりに響いた。病気がちだけどコンクールで優勝したホープ。
ただ、おどろおどろしい雰囲気から「声楽部の幽霊」とも呼ばれている。
彼の声は好きだけど雰囲気が嫌いなありさちゃんは、ひょんなことから夢の中で好きな場所に行ける菓子をもらう。
そして夢で彼と会ったのは海の中。声が出せないので、ホワイトボードで筆談を始める…

絵柄にある種の衝撃を受けました。今の趨勢とは全く違う、昔の少女漫画らしいタッチ。
とんでもないほどの画面の白さ、それでいて深い表現力。
ちょっとホラー気味になる雰囲気も…
「夢渡りの琥珀糖」という言葉のすばらしさ!なんて素敵な響きでしょう。
改鋳の雰囲気…声は出せない、それが『人魚姫』との関係、ここは実にうまい。
お互いにジェスチャーで通じ合おうとするのをじっくり描いているのも素敵。
一番の驚きは、彼が優しいこと…
ホワイトボードは苦笑しました。
いきなり呪いの話になったり…そして不気味がられる理由は笑うしかないです。…というか彼がいじめ殺されていないのがとっても不思議です。
この作品は手書き文字、言葉の使い方が絶妙です。「わたしでよければなかよく」の字の小ささと丁寧さ。
倒れる椿くん…突然緊迫する物語。
歌うことが困難になる、死の気配すら…
楽譜を捨てる、ここもすごく衝撃的です。
「うん」と丁寧に話を聞く、ここも何とも言えず心を締め付ける空気。
ここからの会話も…さらに水に飛び込んで…
ものすごい素質を感じさせます。デビューもわかりますよ。そしてそれが、これからどんな…
とんでもない卵です。

月号、「さくら」アニメスタート。なんかもう自然災害級の圧倒的なものを感じます。
三月先生の新連載、菊本先生の読み切りも十分楽しみなんですけどね。

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