なかよし2024年3月号感想
三誌合計金額、二千越えで固定かと思ったらそんなことはありませんでした。
久々の本格新連載、ただし雑誌自体はとても薄い。
男率が多いレターセットにどれだけ需要があるか…
花に噛みぐせ。(壱コトコ)わんだふるぷりきゅあ!(上北ふたご)どうせ、恋してしまうんだ。(満井春香)千紘くんは、あたし中毒。(伊藤里)俺ともう一度、初恋(長谷垣なるみ)ぴちぴちぴっち(花森ぴんく)ギフテッド(雨宮理真/天樹征丸)変幻の半狐(いくたはな)お金のコンパス(伊藤みんご)幼なじみには敵わない(やもと風夏)次号予告
花に噛みぐせ。
うわさの、とんでもなく美人の令嬢である漆原さん。本当は彼女は青春がしたいんだけどイメージがついてしまって遠巻きにされている。
あと父親が心配性。ただそれも誘拐未遂の過去があったから。
そんなある日、車に乗っていると、突然男性が倒れた。連絡しないで、という彼。
家に連れ帰って彼が目覚めると、記憶がないような…
この独特の、美しい石を見てかすかな香りを感じるような感じは健在でしたか。
イメージがついてしまって結果孤独になっている、というのも面白い始まり方です。
誰もが身分に敏感だからこそ、むやみに近づくなどできないんでしょう。
心配性の父親のせいでイメージがついたのは苦笑しました。
あれ…何か重い過去がありそうでした。
突然の出会い、これは見事な話の流れです。「どこにも連絡しないで」もいろいろと想像させてくれます。
そして手をつかむシーンの、女の服と体の質感のすばらしさ。
記憶がない?ならなぜ連絡するなと…僕は特殊部隊が襲ってこないか心配なんですが。
なんとなく、でここまで手厚く看病する、かなりわがままも許されているようですね。
接してくれる人がうれしい、と彼女の気持ちもしっかり描いているのがさすがにお見事。
それが過去でしたか。自分が誘拐されるよりきつい…
一人で外出するだけでもものすごい冒険になる、すごい境遇ですよね。
で、いきなり…まずスマホを取り上げる、というのは考えたものです。この悪党たちの悪知恵が実にレベルが高い。過呼吸のような反応、よく肉体的な恐怖を描いています。想像以上に実力を上げていますね。
ここで圧倒的な強さ…どういう人だったのでしょう。ボーンシリーズ観てません。
で、ボディーガードとして…というか金使って調べても何が出てこなかった?この父親も大丈夫かと。
「恋愛以外は何しても」がお見事。
想像以上に力のある作品です。もっと注目されるといいのに…
わんだふるぷりきゅあ!
見事な始め方。最高の華麗さ、第一印象。
犬、それも一番好きなやつ。目と耳あたりが茶で他が白。
犬が人になった…?
そして人に変身して迷子、結構怖いです。
これはたまらん…でも犬って寿命が短い…
どうせ、恋してしまうんだ。
まだ泣くほど気持ちは残ってる…?
「菓子折り持って〜謝りにいきたくない」は大笑いしました。何をやらかしたのやら。
大都会の夜景が見事です。光を抑えた地味な雰囲気で。
「水帆の中で」…あの反応を見れば…本当に終わってたら楽しくしゃべれますよね。
あ、終わってないのは自覚してましたか。
「時間が止まったままだ」…とにかく時間を止める方向に動いてますよね、この人たち。
ここで再開…いい運命もあったものです。
千紘くんは、あたし中毒。
…今更、の一言に尽きますね。
何をすべてとするか…たとえば、冤罪で残忍な拷問で自白し死刑判決が出てぎりぎりで再審無罪を勝ち取った人と、家族を惨殺されて死刑存置派になった人が、どんなに話しても合意できるはずはありません。
違う、ということは暴力です。
スペインのコンキスタドール…違う、それ自体が、自分が顔に唾を吐かれ殴られる、いや犬の糞を食わされ膝を砕かれるより激しい痛みと屈辱になり、怒りになった。
それ以外の、歴史のあらゆる侵略者、独裁者の秘密警察たちもそう。
違う、というのは存在自体が暴力です。
殺すだけでは飽き足らない。どんな拷問でも足りない。赤ん坊を拷問惨殺してもまだ足りない。
今イスラエルとハマスが互いにやっているように。ウクライナでやっているように。
それだけ。
親に要求するな、という悟りはきつすぎますが…
また見えにくいですが、法という残酷なことも。親権・子供の無権利は歴史上の奴隷法・ユダヤ人迫害法とほとんど変わらない、きわめて残酷な法。誰もが容認しますが。
俺ともう一度、初恋
映像だけ思い出した、という感じでしょうか。
ほくろ、といってもどこの、とは言ってませんよね。ふつうの服で見える部分だったりして。
ほくろ、と言われるだけで赤くなる、そういう選択がうまい。
学校で…かなり変わってきましたね、彼女も。男たちもでしょうか?
超のつく棒で笑ってしまい「これも練習になる」…はは。
突然拾われ…でもどこまで本当なのやら。
詐欺師、やはり管理している人…ハンドラーがいましたか。
ぴちぴちぴっち
ずるい篭絡もあったものです。
そしてライブスタート、これももう何十年前のことか…
ギフテッド
始末、というのもどういう裏があるのやら。政府の密偵なのか…
虫?…そんな能力も?そそのかされた…
犯人が口封じされる、というのは相当大きい事件になるんですが。
こちらにも何か家族の事情があったとは…ややこしい。
暗殺集団…問題は政府、公安や特高との関係…それどころかGHQ、ソ連共産党…どことつながっているか。
うらな、で占い、にたどりつけないのがもどかしいところで。
変幻の半狐
今回はアニメのポスターのようなカラー扉でちょっと面白かったです。
大分慣れてきたようですが…
今回は過去話ですか。…骨が折れるほどの力、でも彼は「逃げて」と、彼女を守ることしか考えていませんね。それが伝わってない。
…カレーはタマネギ入ってるからイヌ科にはやばいのでわ…というか塩分過剰な人間の食物自体…
ここで自分の事情も…
そんな危険物に近づくの、反対してもいいのに。
そしてやっかいなのが出てきたようで…
お金のコンパス
今回は契約ですか!またすばらしい。
契約の世界法制史、考えてみると僕はほとんど知りません。
ユダヤ・キリスト・イスラム、中東由来の三大宗教の根幹が、神と、ユダヤ人の祖というべきアブラハムの「契約」にあったことは知っています。旧約聖書・新約聖書の「約」は契約そのものだ、とも。映画『レイダース
失われたアーク《聖櫃》』も、契約の箱と呼ばれていることも。
また、近代西洋法の祖である古代ローマ法でも様々な契約があることも。
そしてヨーロッパ中世騎士は、さまざまな契約で動いていた…一人の騎士が複数の王と契約を結び、その契約通りに戦っていたことも聞いたことがあります。
では、ほかの古い法である、ハンムラビ法典・マヌ法典、古代中国の律令、日本の鎌倉幕府や徳川家の法にはどの程度契約概念があるでしょう?そういえばモンゴル帝国の法はどんなでしたっけ?
それどころかイスラム法の契約概念についても全く知らない…
そりゃ借金は断る一択。
家族でも金の貸し借りは銀行や弁護士と相談して、トラブルが起きえない形にすること。貸した貸してない返した返してないの「ツェねずみ」は本当に見苦しい話なので。
スマホのガチャ…あれは単なる悪質なギャンブルです。帰ってくるのが金じゃないだけで。しかも、人間を操作するあらゆる知恵が、膨大な科学…人間そのものを研究し、コンピュータのプログラミングを極め、さらに膨大な競争で進化し続けている悪質を通り越した代物です。
借金は友情を壊す、じゃなく契約、から入ってくるのもうまいですね。
コンビニでの売買も契約、というのはとても面白いです。
契約を取り消せる条件、というのも切実ですね。特に連帯保証で大金というケースだと、相続放棄という逃げ道を知るか知らないかで天国と地獄があります。
守ってくれる道をいろいろ紹介してくれるのもうれしいです。
「いろんな「契約」をするであろう君たちに」からの忠告は叫びたいぐらい嬉しいです。
損害賠償請求がある、というのは、要するに契約で払うことになってしまったのを逃げようとしたら、借金取りはお国、警察という暴力を味方につけて暴力的に財産を奪い取ることすらできてしまう、ということなんですよ。ある意味ヤクザを味方にした借金取りと同じく。
責任…責任能力、こそ法の上でも本当に重要なんですよね、責任能力の有無は人間かどうかですらあるほどに。
本当に全国民にこれを教科書に学んでほしいほど。
金ではなく相談、という友情…これもすばらしい。
幼なじみには敵わない
理生くんの朝は琴羽ちゃんという幼なじみに起こされて始まる。それからもずっといっしょ。
ただ琴羽ちゃんは男子に人気がある。…付き合っていないことを友達に知られた理生くんは、ずるいと責められた。
何でよろずメモテキストにないかと思ったらシルバー賞…あああ、全然チェックしてませんでした…あまりにそういうことがなかったのでもう見るのもやめてたんですね…
まあしょうがない。
こういうド正統派、こうして読んでみるとどれだけ飢えていたのかよくわかります。
めっちゃくちゃな甘えぶり、苦笑するしかない…
気が付いてみるととことん男子中心なのが見事に定番を外してくれます。
このメールも読み返すと深いですね。本当は家事万能でしっかりしているのに。
二人の全身像をしっかり描いてくれるのもうれしいですし、実力の高さがしっかりわかります。
付き合ってないことに驚く友達、「彼氏でもないのに琴羽のこと束縛してんの」が大笑いするしかありません。
抱き寄せるのを拒まれる、それで好かれてないと思ってしまう…男の心理が実に丁寧。
ここで入ってくる光太先輩、期待通りのいい展開です。
読み返すと「理生くんも勉強会どう?」が…いやわかりませんって。
ベッドで背中に足をのせている、警戒してないにもほどがありますね。
ここの目線の動き、「見えるの着た私も」と微妙に胸元が見える服、こういうのも実にうまい。
押し倒して、拒否されているのがわかって…この壁も実に切ない。
それで自立する、彼女を避けて…
「口を慎みなさい」「きゃーっDVよっ」というのもやってくれます。
ここで「琴羽の気持ち一回でも考えた?」とやってくるのも強烈です。こういうサブキャラにものすごい魅力があるのも素晴らしい。
で、とうとう行動に…真相はあまりの意外性に頭が消し飛びました。知って読み返すと本当にうまく伏線が配されてるんですよ。でもそれをやるかと。
しっとりした告白シーンはものすごく濃厚なクリームたっぷりのケーキのよう。
拒んだのもそういうわけで…なんというか普通の少女漫画とは逆に、女の気持ちで再読するべき作品ですね。
とんでもない実力。これからが楽しみです…「なかよし」はどうせ苗代がないんですから他誌ででも。
来月号は「さくら」…なんというか、知ってた、という気分ですね。
重大ニュース…アニメ化かドラマ化、できるんでしょうか?