なかよし2024年6月号感想

伊藤先生の表紙絵、これも今の少女漫画のとても高い峰だと思います。
話題とかにならないのが残念…

付録は黒の使い方がとてもうまい。

来月からの連載の予告編を入れるというのも面白いです。

千紘くんは、あたし中毒。(伊藤里)ヴァンパイア男子寮(遠山えま)新婚だけど片思い(雪森さくら)どうせ、恋してしまうんだ。(満井春香)俺ともう一度、初恋。(長谷垣なるみ)わんだふるぷりきゅあ!(上北ふたご)ギフテッド(雨宮理真/天樹征丸)ぴちぴちピッチ(花森ぴんく)お金のコンパス(伊藤みんご)変幻の半狐(いくたはな)おとなりさんはキスより甘い(咲良加那)甘いのゆうわく(雨音羽香)次号予告

千紘くんは、あたし中毒。
全世界ライブ、でもトップクラスのショー以外はどれだけの人が見ているか。
むしろ問題なのはそれが永久的に残るということで…
「俺がさせると思ってる?」の自信はすさまじい。
ここでアクシデントも見事にパターン通り。いいですねえ。
「目をそらすなんて」と言ってくれる人がいる、この人も一人ではない…
堂々、という言葉がまず出る歩きぶり。すさまじい迫力です。

ヴァンパイア男子寮
この磔、いい趣味してますねえ…
わざわざキスで血を与える、というのもそこまでやるかと。…アニメでどこまでこの趣味全開を再現してくれるか。
いや身体がどうかなる出血はリットル単位ですから。
ザラに頭を下げる、互いに長として認め合うのはお見事。
で、どこを着地点にするか…

新婚だけど片思い
囲碁そのものの変化もうまく描いています。盤面をうまく隠している、もし本当に書かれたとおりすごい手をやっていても、僕を含め読者の大半はわかりません。
浪人での卒業式はきつい…
奨学金というのは今社会問題になってます、高額の借金にほかならない…
賭けの無謀さ、こういう表現も面白い。
相手のほうも情熱的な表情をさせる、これはこれで素晴らしい。
二人だけの卒業式、というのも素敵ですね。
10分だけ…と、そうなるとここをパパラッチされたら、と思ってしまいます。

どうせ、恋してしまうんだ。
おめでとう、と言えないほど傷跡が深い…といっても生命があっただけましです。もっと致死率が高い感染症だったら…
一年の違いで、天国と地獄と言わないまでもかなりの差がついてしまう…
工事の前だから、というのも悲しい話です。
いうべきことをしっかり言ってくれる先輩…言いたかったことをこらえていたんでしょうね。
人と過ごしたこと、それ自体が価値…これはため息が出ます。
そうでないとしたら、甲子園優勝ナイン以外は完全無価値、本当に努力しなかった大罪人、になってしまいますからね。
思いっきり水遊びになるのも苦笑。
「神様に試されたのかな」もすごいですね。ウクライナとかイスラエルとガザとか…逆にハイチや北朝鮮のように一片の希望もない世界もある…
今回は恐ろしく深い回でした。

俺ともう一度、初恋。
前もオムライス…失われた記憶…
前髪しかない神様、を絵にするのは爆笑しました。しかも女神ともいわれます。
期間限定、それはうまい真相です。
「恐ろしい子」は爆笑。
「秘密しかなさすぎだ」も大笑い。
腕相撲で勝負、楽しそうです。
美形比べになるのは爆笑。
結果、最後が相手にならなくなるのもなぜか大笑い。
両親に、うわお。

わんだふるぷりきゅあ!
…もっと人間界の常識教えてからのほうが、といっても…どうすれば教えられるんでしょう。「人間界の常識(日本版)」という本は見たことがありません。
…学校のあだな、もっとひどいのもあるんですよ。いやほんとここで書けないぐらい。
馬も豚も超危険動物です…死人が出ないのが不思議。あと悪臭苦情も。
猫での傷だらけは勲章、という…それは構いすぎのせいでもあります。
猫との出会いも丁寧ですね。

ギフテッド
別のモードがあるのがこのおばあさんのすごいところ。
情報分析は本当にものすごいことになってます。そのおかげでグレイマンが苦労したり、あらゆる冒険小説の前提が一変しつつあります。
完全洗脳薬や完全自白薬があるのと変わりません。
丸見えと言えば税務署にとってこそ日本の銀行は完全丸見え…
さらに対テロの時代、どれだけのことがあったやら。あのスイス銀行さえ、とも言われます。
推命律、また面白い物をもってきたものです。
それなりに強いんですねこの人たち…ただ強すぎて地味、に至ってます。
さらに裏切者、と…普通のミステリだけだと面白くない、面白い路線です。

ぴちぴちピッチ
楽器・服・筋肉と骨と肌の質感すごいですね。
ヨットを利用した罠というのも面白い。といっても人間の死人が出たらえらいことに…
柱に縛り付ける、というのはわかってますね。オデュッセウス。
むしろ男に、というのも楽しい。
FRPのヨットはそう簡単に壊れないんですが、だからこそリサイクルができず厄介…

お金のコンパス
この作品、あちこちでものすごく話題になっています。最近はロケットニュースで見ました。
長縄跳びとかも残酷ですね、誰が弱者なのか、連帯責任、だからこそ弱いことは罪、と思い知らせます。
行動経済学、「1000mg」と「1g」から数字のマジック、と。
フレーミング、アンカリング、と実にわかりやすい。
予算の倍なのにお買い得…これは絶対やらかしますね。
慎重に、というか絶対予算上限決めておく…
今の世界は、「人間を操る技術」があまりにも膨大にあるのが現実なんですよね。
あ、それで長縄跳び…うまい、うますぎる。

変幻の半狐
「一人で解決できないことは恥じゃない」ここはうまく成長を描いています。
葛葉ちゃんの過去の苦しみ、うまくいろいろつなげてきますね。
たくさんの、一つを除いて多くは破滅の未来…きつ。
操って力を返させる、これは強すぎる。
さらに朱雀と白虎、刀まで葛葉ちゃん陣営に譲ってくれる…展開速い。
思いもかけないところから出てきた敵、さてどういう展開か。

おとなりさんはキスより甘い
「人伝てに聞いた話信じてんなよ」まったくですよね。「お金のコンパス」でそのあたりのバイアスもやりそうです。それでしっかり謝る…
上書き、というのも面白い。
分ける…はは。
ひたすら幸せなデート、実に楽しい。
さて今度は引っ越し、どんな展開になるのやら。

甘いのゆうわく
購買のみたらしパンを目当てに近道していたら、告白シーンにぶつかった。きつめに断っているのを聞いてしまう。
無視して通ろうとしたら物音を立ててしまい、男のほうに咎められるが、逆に批判した…ら、女嫌いを克服したいので友達になって、と言われてしまう。
断ったが、みたらしパンを餌に…

ページごとにどんどん印象が変わりますね。
非常にクールな絵、柔らかみのある絵、極端に簡略な絵、と。
みたらしパン、という言葉自体印象がとても強い。
冒頭のきつすぎる言葉、避けて通ろうとしたら硬貨を落とすテンポの良さが素晴らしい。
ここで実に理路整然と…
名前が書いてある上履きも緻密です。
壁ドンでどうなるのかな、と思ったら女嫌い克服のために友達、さらにみたらしパンで吊る、実にうまい動き方です。
三個、であっさりと手を握る、という単純さが素晴らしく面白い。
そして熱弁で引かれたこと…彼はそれを肯定した、それで仲が近寄っていく、ここはなんとも空気がいい。
先輩の側の過去、彼女もいじめられるのかと不安になりましたが…「何でも持っていそうな人でもきっといろいろあるんだろうな」という、相手を人間として見る、という…土台、がしっかりできていく…
食べることが楽しみになる、というのもすごく丁寧に描かれます。
ペットボトルの「冷茶」も芸が細かい。
「もっと知りたくなる」というような心の動きもしっかり、がっちり鉄筋を入れているように組み立てが見事。
ここで「うまっ」とおいしい物を食べているのを、わざと力を抜いた絵でテンポを止める、という芸の細かさ…
「桜ちゃんは落ちてくれないけど」というのもしっかり彼の側の気持ち
しばらく無理、ここをスマホだけにする、繰り返す、本当にペースがいい。
そして後ろ姿だけで美人とわかる、笑顔…自然にそう思うのがわかります。
恋してしまっていた、その涙もごくごく自然で…
スマホで、決意した瞬間に彼が来て…決意の描写が実にいい。
そして告白の色の抜きかたとかも。
考えてみれば「桜ちゃんに迷惑かかると思って」に、彼の昔のトラウマがうまく伏線になっている…
最後のラブシーンも、身体の重さと質感がすごく伝わってきて極上。
最高傑作級の緻密な組み立て。これからがものすごく楽しみな作家です。

月号は別フレ出身原作つき、あえて予告カットには男子ばかり、どんな作品なのか…まあ新連載がないよりあるほうがいいです。新人読み切りはもっと嬉しいですが。

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