なかよし2025年4月号感想

これは面白い表紙。あまりにも異質だから目を引く…「ハニーレモンソーダ」とその点では同様。

切手の形と言うのも面白いアイデア。でもとても薄い。

で…本来の本誌連載がほとんどない、新人読み切りは嬉しいんですが、出張が何本も…
どれだけ本来のレギュラーが信じられてないのか、とも思えます。
まあ人気があったからやった、なんでしょうけど。
あと作家紹介が死ねる…

千紘くんは、あたし中毒。(伊藤里)しゅごキャラ!(PEACH-PIT)キミとアイドルvプリキュア(上北ふたご)俺ともう一度、初恋。(長谷垣なるみ)どうせ、恋してしまうんだ。(満井春香)ギフテッド(雨宮理真/天樹征丸)ぴちぴちピッチ(花森ぴんく)お金のコンパス(伊藤みんご)かえるのお姫さま(あずま祐)キミがくれたティアラ(絵馬アサ)狸田先輩の青春になりたい(大鳥いと)わたしの恋のはじめかた(森沢こまり)次号予告

千紘くんは、あたし中毒。
ラブラブの同棲生活。裸とかは描かないのも品がいいです。
婚約や同棲が受け入れられる、いい場所のようですね。
挙動不審で不安、というのもいい。
と思ったらあっさりと、遅れた誕生日…起伏の高低差は小さいけどものすごく繊細。
いちゃいちゃしたい、で結構じっくりキスシーンを描く、というのも面白い。
そして結婚式…「一応友達?なんで」というのがまた。といっても呼ばれるって金出せってことでもあるんですけどねえ。
とても柔らかい曲が響いているような、素晴らしい雰囲気。
本当にこれほどの美しさ、これほどの表現力を注目しない評論界が間違っている。
本当にお疲れさまでした!次回作もとても楽しみにしています。どこであっても。

しゅごキャラ!
話の整理も大変ですね。あと子供が夜間に外出してるのは普通は問題。そりゃ「門限を超えた外出は禁止」ですよね。
メンバーがそろってきたのがわかります。
手紙でのやり取り、急な呼び出しなどいろいろなことが起きるペースチェンジが楽しい。
さらにかなりエロいことをして、信じることについて…
「二夜に決まってる」というのも、信、なんですよね。信仰より強い確信。それが冤罪を作る。
イクト…さてどうなるか。

キミとアイドルvプリキュア
ななさんの登場シーン、ものすごい存在感。
こわくて逃げたい、さらに再会の話も面白いです。
戦闘シーンがあるのが面白いです。
マネージャーまであるとは…

俺ともう一度、初恋。
聞くかどうか選択肢を与える、というのも…
絵を利用した演出は大胆。そして「贋作」。
養護施設…日本という国の冷酷さ。公も、それに投票する国民も、寄付文化がないことも。さらに宗教団体も。
令嬢時代の美しさ、描く角度が絶妙です。
出会い方がまた…
星空の情景がまたすごい。
足を洗おうとしたときに事故を知る、…さて、それを信じることができるのか…
で、どうするのやら。

どうせ、恋してしまうんだ。
水泳というスポーツをこれほど描ける漫画家も少ない。
「ほっといたのはおまえだろう」…はは。泳ぐしかないという…
お姫様抱っこも華麗ですね。
最後に「結婚しよう」はびっくり。画面の使い方もとことん大胆。

ギフテッド
その頭の固い人たちに理解させる方法を考えるのも天才のうちなのでは?
沖縄は米軍統治が長かったのでいろいろな置き土産も多数ありそうです。
いろいろなところで活躍している人たちが呼び出される…サイボーグ009みたいでよき。
安全帯つけてないことがばれたら大問題になりますよ?今は。
大勢、というその大人数、両方資金源を追うべきでは?

ぴちぴちピッチ
今回は色気がありますね。
イズールはかっこいい、としか言いようがない。王道っていいですね。

お金のコンパス
カスハラの問題、結構広がっていますね。店側のいろいろな対応も目立ちます。名札廃止とか。
止めるのはいきなり刺されるリスクもあるんですけど…逆にそれが怖いから好き放題になる。
対等、というのは面白い視点です。
歴史的には、経済においても様々な立場は、間違っても対等ではありませんでした。
というか「働く人」と「お金を払う人」…とんでもないテーマに踏み込んでいます。
「働く人」=労働者。労働者はずっと奴隷であり、奴隷制が廃止されても植民地では徹底的に奴隷同然の(あえて差別用語を使います)原住民であり、本国でも徹底的に搾取され、見下される、下等生物でした。
欧米文明の上の身分の、下の身分に対する軽蔑と憎悪はすさまじいものがあるのです。本気で同じ人間とは全く思っていない。犬や馬よりはるか以下。虐殺しても拷問しても、どんな残酷な労働をさせても何の痛みもない。何百万、何千万餓死しても何とも思わない、むしろ嬉しい。
「「お金を受け取ってもらえる」ってとてもありがたいこと」これもそうきたか、と叫びました。
昔は、物を売り買いするのには、資格・人間関係、本質的には武力を背景にした身分関係が必要でした。うちは貴族御用達だからあんたのような庶民には売らない、とか、いくら金持ちで貴族と認められてても私生児のあんたには売らない、とかも普通でした。
ユダヤ人とかならお金で何か買おうとしても買えないことも多かったものです。今も紹介を必要とする飲食店も、紹介がなければ入れないSNSもあります。
今の日本でも、例えば僕がある自動車会社の部品製造会社に、部屋の飾りにするのでバネを売ってください、と金を出しても断られるでしょう。
対等な交換…でも歴史的には多くは略奪であり、収奪でしたが…ぶちのめし、脅迫し、奪う、実質殺人強盗が経済・政治の相当多くだった…同時に交易も常に行われてきたが、商人は軽蔑され悪とみなされてきた…
それが金銭交換になった、それ自体が奇跡、と。
道徳と経済もものすごく関係が深いんですよね。膨大な人が協力しているからこそ文明がある、という切り口できましたか。
家があるのも協力の結果、乗り物も…
恐ろしくわかりやすい最短距離。これを見出した能力の高さ、これを見出すまでの苦心には頭が下がります。
協力。人類が人類である、裸でタイマンすれば絶対人類より強いチンパンジーが絶滅危惧で人類が80億である理由。
「自分の代わりに「働く人」にやってもらってた」これも資本主義の歴史で重要な、複数の本に書かれています。強制とかではなく、一人一人が欲望のままに働いて稼ぐことで自分も多くを手に入れられると。鉛筆一つ作るのに、はるか遠くの黒鉛採掘や木の伐採、その人たちのためのコーヒー農場、コーヒーを運ぶ船員、と無数の人たちが何も知らずに協力し合っていると。
「全ての働く人にリスペクトを持つべき」…そう、その結論になることもある。
しかし、この資本主義・近代工業文明の罪深さ…そうして膨大な人の協力で膨大な生産をしている限り、膨大な人々を搾取し、残酷な暴力で弾圧虐殺し、動物たちを苦しめ殺し絶滅させ、自然を破壊している…少なくともこれまでそうしてきたこと、今もそうしていることは事実。
…コロンブスから、いやカナリア諸島、レコンキスタから始まっている大虐殺と土地収奪と森林破壊、そして黒人奴隷・東南アジアやアフリカの原住民強制労働の血を絞った利益なしに、今のこの近代工業文明が可能だったとは思えません。いや、第一次・第二次大戦の膨大な虐殺も必要だったでしょう。
ソ連の数千万人の犠牲がなければ、欧米日も2歳から18時間労働、文句を言おうとしたら警官と探偵に家族ごと惨殺される社会のままだった可能性も高い。
人類…「協力する人類の集団」、特にこの近代工業文明は、徹頭徹尾悪の権化だ…そういう本ばかり最近読んでいます。
運送業者の人にもちゃんと礼儀、それも実は今の近代工業文明を維持している重要な血液で…確かにそれは素晴らしい。
ですが、一人一人がちゃんと礼儀を払うことで近代工業文明を維持する、それは別のどこかでの虐殺や残忍な児童労働を助けているのかもしれない。
この、人類文明そのものは、徹頭徹尾、とてつもない悪なのかもしれない。そして、それに協力して生きていることは、とてつもない悲惨を生み出すだけなのかもしれない…滅亡の時、拷問され虐殺され餓死する人を、増やしているだけなのかもしれない。滅亡を速めているのかもしれない。
といっても、僕は斎藤幸平コミュニズムや、グレーバーのアナキズムで全人類が幸せに永続できるとは思っていません。
かといって悲惨と格差拡大がずっと続き、滅亡するだけだ、と絶望…98%ぐらいそうなりそうですが、100ではありません。
科学技術の進歩で、残酷な暴力がなくても誰もが食える…滅亡を免れる…僕はそれを夢想し願っています。
今は、工場の動力は馬ではありません。織機に糸を補充したり石炭を掘ったりする4歳児は必要とされていません…スマホのバッテリーや、自動車や家電を作る工具に使われるコバルトを掘る8歳児はまだ採算が合うようですが。
核融合か宇宙太陽発電〜栄養素直接合成か化学合成細菌〜細胞培養で、高級牛肉やアブラヤシ油が、家畜を工場飼育せず、熱帯雨林を切らずに、今よりもっと安くなる、なってほしい、と夢想し願っています。コバルトも小惑星蒸留で、アフリカの子供兵・子供奴隷よりけた外れに安く。
あまりにも今回は深い…

かえるのお姫さま
かわいい、だから人気者だと自覚している愛李ちゃん。
でも自分をひいきしない男子が一人いる、田野倉伊月。学級で飼っているカエルの世話当番をちゃんとやれ、と。
イヤイヤやったら、ハート模様のあるカエルに飛びつかれ、キスし…気がついたらカエルになっていた。
しゃべれたけど、クラスのみんなには逃げられる。ただ後から来た伊月くんはわかってくれた。

すげえっ!としか言いようがない。
絵…特徴がない、とすら思いますが、読み返し始めると、作品そのものを邪魔しない、最高の素材。完成度ものすごく高いですし。
冒頭、邪悪ではないけれど適度にわがまま、というのもバランスがいい。
やる、となったらちゃんとやるのも後でうまく響いてきます。
カエルをあえてリアルにしないのも面白い選択ですね。
キスはびっくりして、と思ったら…うわあ、と引き込まれる展開でした。
話せる、でもみんなは逃げる…暴力じゃなくてよかったですね。
カエルが人語をしゃべった、でも怖がらない…これ、実際には一人でいるのか集団なのかでかなり違いますよね。
これで「岩間か?」とわかってもらえるの、嬉しいんでしょうか…
カエルがこの、極端に人間に近い形だからこそ、大きいボディランゲージができるというのもすごいです。
リボンを結んでくれる、ここからの変化もうまい。
照れている彼に自分も赤くなる…
悪い評判になっていた、それを正してくれる、ここもしっかり気持ちを積み上げています。
あ、キスで戻してくれたんですね、ハートカエル。丁寧です。
「好きって思う」とすごく自然に言ってしまった、というのもびっくりしました。しかも「ちゃんと男子として」まで!叫びたくなりました。
最後の注意もありがたい。いやむしろカエル側が心配です。
本当にものすごい完成度の最高傑作。これからが楽しみすぎます。

キミがくれたティアラ
新入生の天才バレリーナ、でも入学早々足を怪我して、おそらくトップにはなれないとバレエを辞めている…
そんな彼女が見かけたのは弓道場。
美しい姿に引き込まれたが、稽古をしていた男子は空腹のようで、持っていた昼食をあげた。
お礼をしてくれたとき映画の話になって話が合う。

結構大胆なタッチですね。
冒頭からしっかり、怪我でバレエを辞めた、と置いてから…弓道場?
ほぼ完璧。弦の角がわずかにずれてますが。あと弓は張った状態で保管しませんが…この人数で稽古中なら。
入る時ちゃんと「失礼します」というのがいい。
どんな話になるのか、と思ったら食べ物から、そのお礼で映画の話、関係の積み上げも面白い。
映画の主人公の、ナヨナヨウジウジが自分に似ている、だから響いてしまう、ここの気持ちも鋭く描かれています。
「失ったことがない人に」は…予想してしまいました。外れても文句は言いません。
うん、弓構えも完璧。ただし弦はわずかにずれてます。経験者ではない、でも写真資料を死ぬほど模写したのでしょう。
右目…やはり。…その程度の事でよかったです。(なお思い出しているのは『トッカン』シリーズ)
ここで、ティアラ…すごい切り込み方です。
そっけない、でも多くが語られるエピローグもすごい。
とにかくヤバい切れ味。和物のすごく重い最上質の鉈。

狸田先輩の青春になりたい
去年の夏の甲子園で100年に一人の天才と絶賛された狸田(二年)を見ている女子マネージャーの須藤さん。
あわよくば、で一生懸命部活しているが、ある日着替え中の彼を見てしまい、何か困っているようなのでネックレスが引っかかってる、と外したら…タヌキ。
だましていてすまないが優勝したいと人の姿で抱きしめられ…

とんでもない美しさ。
おんなじ高校、って普通止めますよね。ものすごい距離で親の経済負担大きいでしょうし、運よく近場でも人権無視問題が多数言われ、もしホワイトでも異常な道徳水準を求められかつ深夜までの膨大な仕事。
逆に着替えを見てしまい…タヌキがものすごくリアルなのがめちゃくちゃ面白い。リズムもすごく楽しいです。
人に戻った時の美しすぎる真顔…
SNSにポエム、という話題が苦笑。
努力も必要だった、というのもうまく動かしてくれます。
満員電車で引っかかって、は大笑いしました。
「勝ってくる」…さぞかし大変だったでしょうね。
とにかく面白い。これは人気あるのも仕方ない。

わたしの恋のはじめかた
人が両想いになる瞬間が好きな千咲ちゃんは、ネットで恋愛相談をして「マチアプ先輩」とも呼ばれ高く評価されている。
友達に自分の恋はいいの、と言われ、ちょうど窓から見えたイケメンの後輩と目が合う。
そんな彼女が屋上で動画を見て悶えていたら、さっきのイケメン後輩と、その友達の男子が屋上に来た。そして友達のほうが、別の女子との恋を応援してほしいから仲良くなって、と頼んできた。
そうしたらイケメンのほうの玲央くんも近くにいるようになって…

これはよい。バター多めの絵柄もすごくおいしい。
男子側がとことんスタンダードな美しさなのも意外でいいです。
どんな話になるのか、と思っていたら…
動画を見ていた時さっきの年下男、どんな関係にするかと思ったら、その友達が「仲良くなってください」、ここからの動き方はうまい。
玲央くんは「人だ人」としっかり見てくれる…
手を握って挙げてくれる、という形で近づいていく…男側の気持ちとしても楽しい。
こちら側、手をつないでいることに戸惑って離す彼女、とここがまたうまい。
風呂シーン、というサービスもびっくりしました。
岡田さんにしつこい男の子を遠ざけるために、とやったら…これは面白い展開です。
ここで後ろから抱きしめて…さらにラーメン…「いつもあげすぎ」とくるのがまた。
そして自分の過去…
「すぐだめになったけど」のところの絵がものすごく深みがあります。
強めにラーメンをすする、という心の動きの表現も面白い。
で、ここでこの告白…それからどうなるでしょう。

月号、予告では特に特別なことがないように…

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