ちゃお2019年11月号感想
表紙はまさに集大成。プラチナの、ただの輪である指輪のような。
付録も圧倒的な華やかさです。一つだけでないのもかなり大胆。
森田先生の連載は本当に楽しみ。
「12歳。」完結…どれほど重要な作品だったか。相も変わらず漫画評論界は節穴ですが。
12歳。(まいた菜穂)はろー!マイベイビー(かわだ志乃)メロと恋の魔法(篠塚ひろむ)片思いミステイク!(森田ゆき)ひかりオンステージ!(中原杏)番犬ハニー(如月ゆきの)ゲキカワvデビル(やぶうち優)マジたん!(中嶋ゆか)夜からはじまる私たち(ときわ藍)ねこ、はじめました(環方このみ)恋するメゾン(八神千歳)きらめきランウェイ!(ふじたはすみ)こっちむいて!みい子(おのえりこ)次号予告
12歳。
入場しないといけないのに半分いない…教師にとっては悪夢ですね。
学校というものの目的は、「卒業式で完璧な整列行進着席をする」それ以外何もありません。受験?就職?甲子園?全部卒業式の規律の前ではちり芥です。
それが完全失敗。並大抵の重圧ではありません。
力技の説得…
で、高尾くんをエサにしたらあっさり…頭を抱えます。
待たせられない…来賓がいます。議員とかとっても偉い権力者たちが。その前で恥をかくのがどれだけ重要なことか…今の教師全員の将来、そして校長の叙勲がかかっています。
教師というものの最大の報酬は、出世し校長になって勲章を受け取ることです。天皇陛下に拝謁し、子々孫々まで飾れる名誉を得ることです。その巨大な報酬を壊そうとしているのですよ?
一人一人をじっくりと…長い連載を思い返して胸が熱くなります。
「一生泣き虫だな」というプロポーズは爆弾でした。
見開きの全員!これは素晴らしいサプライズでした。
「綾瀬のこと好きになる男ぜったい出てくるし」も苦笑。
お疲れさま、という以外何と言えばいいのでしょう。まぎれもなく2010年代の幼年少女誌を強烈に牽引した最高傑作。
少女漫画の技巧の極北。
さてあまりにも早い次の連載はどんなものか…
はろー!マイベイビー
親子遠足中止、残念。
やっと笑顔になってくれてすごくうれしいです。
ハートに海苔で、これまた便利なものです。
すごく素敵なお弁当。…弁当のプレッシャーがひどいと社会問題にもなっていますが。
お弁当も…あーあ。
罪悪感で泣いているとは…
とにかくいっぱいの愛情が詰まりに詰まって、涙が出そうです。
メロと恋の魔法
そりゃ知ってますよね…はは。でも最低には違いないですが。
何とも答えようがない…「イヤじゃない」という、まあ誠実ではあると。
人間用のヘアクリップが大きすぎないか心配ですが。
Tシャツばかりって透けるのが心配なんですけど。
ファッションショーもすごく素敵です。なんかしっとりしてきれいだな、という気持ちに。…髪・体・服の色香の出し方が素晴らしいんですね…とてもさりげない極上の香りのように、目立たせずに香らせています。
そしてテスト…ああああ。さあ頑張れ…どうなるのやら。
何て作品でしょうね。このさりげない、温かく優しい魅力は。たまらなく優しい甘さ…
片思いミステイク!
やりすぎなまでのパターン通り。いい始まり方です。
そして落とした髪飾りを拾ってもらい、思い出してもらえた…
うまい…としか言いようがない展開。
「大好きです」「不合格」…大笑いしました。お手本のような「転」。
そして、なぜ生徒会に入れたのか…理由がまたもんのすごい。
あらゆる読みを蹴っ飛ばして「この子オレの彼女だから」…いやもう次が楽しみすぎて爆発しそう。
森田先生の実力が「ちゃお」の外で評価されていないのってすごい損失だと思いますよ。「12歳。」などが漫画評論界に完全無視されたのと同様。
ひかりオンステージ!
これで言おうとするって、関係者の危機管理が甘すぎるとしか…
ネットで…いやそれいろいろ許可とか必要でしょう。
「もの好きな男の子
きっと世界中で」…やってくれました。こりゃ男を見せないと…
と思ったらこのすれ違いとは。
この侵入は本当に危ないですよ。水じゃなくて塩酸という事件も歴史的にはあったんですから…ガソリンや溶剤だったらどれほどの被害になっていたか。
このまま本番、集中するとすごいですね。
これを見て勝負とは面の皮が厚いにも…
番犬ハニー
外の音、また不穏な…いやボディガードなんですから逃げ場を探すか籠城するか…
嫌がらせでしかない工事、といってもこれが繰り返されるのは、物事を決めるのが誰かはっきりしていないからです。
最終的に工事をするかしないかを決めるのが誰か。
すると決まっているなら嫌がらせはただの犯罪です。
パーティも…結局は水道を止められれば噴水ではないですし。人事、予算、法、警察…誰が握っているか。
逆に逆らう者全員の退学を断行し、警察力で侵入を阻み逮捕することができない理事長も権力が弱すぎる。
ゲキカワvデビル
どちらなのかわからない…記憶がない…
いや今ならDNA鑑定は容易でしょう。
ガチオワ、と突きつけたらいむちゃん、いい友達がいますね。
あっさり記憶は戻りましたが…この世界、飛行機は大丈夫でしょうか…
マジたん!
どんな作品なんでしょう。いつもの雰囲気はありますが。
種を説明するとは大胆な…
いろいろな人たちとの仕事、また大変そうで。七光りもありますからプラスもマイナスも大きい…
天宮くん、本物のマジックマニアですね…
…と思ったら、ミステリだったんですね(タイトルで気づけよ)
そして決め方、「タネもシカケもあるんです」と決め台詞、なかなか面白い。
人体切断の種明かし…まあこれも知られていますけどね…
種明かしをためらわないのがこの作品の恐ろしさ。
また出てきてほしいですね。作家の力量によっては豊かな鉱脈、そして中嶋先生の力量が高いのはわかっていますから。
夜からはじまる私たち
この作品は、ずっととりつかれたように思い出し考え続けていました。
まあ悪い癖があるんですがね、ちょっと悪徳警官が容疑者を殴る話を読んだら世界拷問史を全部思い出すという。自分で自分を拷問してるだけです。
結局のところ、冒頭で主人公が進学校にいて、そこで潰れた…それで、単なる意地悪ではなく、攻撃する側の心理がいやというほど理解できてしまうこと、それがこの作品の恐ろしさです。
この作品は、「部活動」の、人の群れの恐ろしい部分も描いている。
「部活動」は時にとても攻撃的になる。
たとえば体罰・内部いじめなどで死者が出た時、被害者やその家族を激しく責め責任を回避することがしばしばある。
「部活動」には、カルト的な宗教、軍隊の面も常に強くある。軍国主義国家、原理主義宗教団体の面。
自分たちが絶対の正義。自分たちが勝利するために、世界の全部は奉仕すべき。自分たちの勝利は正義。
自分たち以外は敵であり、絶対悪であり、穢れ。
そんな「部活動」の目に、定時制という異物が入ってしまえば、それはもう一寸刻みでも足りない絶対的な敵、無限大の憎悪がはじけるのは当然の事。
…自分がしていることは絶対正義。間違っても悪事ではない。
特に甲子園級の野球部は、とんでもないことでも地域社会ぐるみで守ってしまうことがよくあります。
逆にがっちり身分制度が固まり、いっそ「身分が低い者は踊ってはならない」と定められている方が摩擦がなくて楽かもしれないと思えるほどです。
さらに、この作品に「外国人」という要素があるのが恐ろしいところです。
「定時制に行くような人間は努力していないから罪人・穢れだ」では外国人は?
外国人も定時制、だから穢れ…「生まれてきたこと自体が罪」。人間にとって、外国人はそれ自体が潜在的に、皆殺しにすべき罪人、敵なのです。
そして、ナチスドイツの優生学が人種理論と結びついたように、能力主義は国籍や人種でゆがむ…外国で生まれた人間=劣等存在=(努力不足と等しい)罪人という、論理的には狂ったことになる。
基礎の基礎からの努力、単に努力すること自体が彼女にはとてもつらいこと…努力で壊れたことがあるから…
そして努力したことがあるから、そのやり方を応用できる。ここもすごく高いですね。
さらに基礎体力から始める…
それに次々と変な子が出てくるのも話が深まります。
ランニングで景色の美しさを見る、というのも素晴らしい。些細な努力でも世界を広げ、小さな報酬が重なる…
弱気を切り裂く迫力…
妨害などがまったくなかったのもうれしいところです。
短期連載でいろいろ話を絞っていますが、どんな着地になるか…とにかく今回は、主人公の心を深く深く掘り下げるに徹していました。
ねこ、はじめました
最近帰省でひっかかれた実家の猫も太ってますからね…去勢雄なのに子猫いつ産むの、と言いたくなるほど。
ダイエットフード…はは。
犬と比べてどうする…
減ったのは飼い主では?
でもそれも終わったようですが。
この落ちは実にうまい。
恋するメゾン
お祭りデート、それは嬉しそう。
お邪魔虫一杯ですが、まあ…作者が八神先生でよかったですね、としか言いようがないです。
浴衣姿、ものすごく魅力的です。
「女子にはきょーみねーし」といったら目が輝く…ご愁傷様。違うと思いますが。
そして二人きりデートの楽しさ、たまりません。
「キスならおれが」と腐女子サービス…
きらめきランウェイ!
僅差ですが負けですか…
出ていく、確かにそれもすべきことでしょう。
新しい雑誌、ココちゃんの姿を丁寧に描いていく…ここは我慢させてくれます。
唯華ちゃんは使われているようですね。
ドリーミンという雑誌への愛着…そして洋服を引き立てる、という彼女の在り方の中心。
だから…この選択がどう出るのか。
そしてココちゃんと碧くんの三角関係…
これまでとは違う感じで厳しい今シリーズ、どこに着地するか楽しみにしています。
こっちむいて!みい子
中学の話題が出てくる…本当に終わりが近づいているんでしょうか?
「そのまんま卒業するつもり」…まさにそれですよね。
で、「このままじゃまずいかな」と、これはむしろびっくりしました。
ろくなことにならない、と星新一のショートショートで無限に石油が沸くツボを手に入れたより悪い予感がします。
そして両方にウソいい放題…いや普通に絶交案件…
いやまあ絶交沙汰にならなくてよかったです。
来月号は「キョーダイ」と素敵な読み切り、実に楽しみ。