川村美香(かわむら みか)

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作風概説

 大きな目とぷにっとしたほっぺが印象的な、とんでもなく可愛らしい絵と見事なまでにお約束なストーリー展開のドタバタコメディ。
 ものすごく完成度が高く、読みごたえがあると同時に娯楽性が抜群に高い。あざといまでにわかりやすいキャラクターも面白い。

 絵は目をみはり、酔うような華麗さこそないが、とても愛らしく暖かみがあって好感が持てるし安定度の高い美しさ、高い感情表現力がある。柔道シーンや昔の作品の美形妖怪など本来迫力のある描写、ファンタスティックなシーンでのディテールの華麗さもあるが、今は絵本のようなわかりやすさ、親しみやすさを重視している。
 シャワーシーンなど読者サービスの多用、子供心の深い洞察やマスコット創りのセンス等は幅広い層にアピールできる。
 尚、裸が多いのに、不思議とあまりエッチな感じはしない。

 初連載からヒットする(以前の「なかよし」では若手作家が本誌デビューする際は普通、一回読み切りで顔見せをし、短期連載をして、その次からが普通だった。現在はその余裕がないため、いきなり連載が始まる。初連載の「タイホしてみーな!」がいきなりヒットし、かなり長く続いたのは本当に例外的)などとても信頼性のある作家。

 ギャグも昔のドリフのような豪快なオチ、エッチな状況での引き、絶妙の間など多彩で面白い。
 みかんを頭に乗せた自画像キャラがアレンジを加えられ、「だぁ!だぁ!だぁ!」アニメ版の主要レギュラー山村みかんとして活躍した。


代表作

1994「きみをスクープ!」
 怪力少女のまのかちゃんはそれを新聞部の桐生くんにかぎつけられ、取材させてと付きまとわれる。だんだん彼に惹かれていくまのかだけど、やはりスクープの題材でしかないと傷つく。でもある日目の前で事故!可愛らしく、的確な展開。

1995〜96「タイホしてみ〜な!」単行本全三巻。
 神童みーなちゃんは妖怪大好きで乱暴な隣の席の風馬といつも通りの大喧嘩。なんでも教室中の物が盗まれた、ということで彼は無実らしい。いっしょに放課後残るよう、不思議な声に言われた。残って待ってみると変なねずみの妖怪、そして警官の制服を引っかけたようなモモンガが出てきた。
 そのモモン=ガーは魔界警察の署長で、魔界刑務所と二人の机に空いた穴から逃げてくる犯罪妖怪を捕まえるため、協力してくれと頼む。
 みーなが手錠を受け取った瞬間、まぶしい光と共に制服に、それから相手の苦手な妖怪に変化して捕まえろ!妖怪博士の風馬がねずみの弱点、猫娘に変化するよう指摘して見事逮捕。これから魔界警察官として協力しようって!?
 マスコットのモモン、手錠や拳銃などのアイテム等アニメ化の意図を強く感じていた。ちなみにモモン=ガーが「だあ!だあ!だあ!」の劇中アニメ、キャラクターテーマパークなどとして登場している。
 ラブコメとしての完成度、多彩な妖怪の面白さや変身コスプレの美しさ、展開の妙など肩肘張らずに楽しめる子供向き娯楽としてはこれ以上ない作品。妖艶な大人の女性の魅力や迫力のある化物なども楽しめる。

1996〜97「あわせて一本!」単行本全三巻。
 柔道少女、明日香ちゃんは県大会に優勝したので九条先輩に告白しようとする。その朝、自転車の男の子にぶつかって肝心の手紙を落とし、その転校生は手紙を返す条件として柔道で勝ったらつきあってくれと!その転校生、亜純諒也は大会などの記録には無いのに、見事明日香に一本勝ち!
 彼は明日香の小さい頃の柔道仲間で、昔から彼女が好きだった。そして三ヶ月だけつきあうことに。
 正統派で、これ以上ないほどお約束を積み重ねた、そしてお約束にどれほどの力があるかまじまじと見せ付けた力技の傑作。可愛らしさ、美しさ、ストーリーの流れ、サブキャラクターも含めた魅力、柔道シーンの迫力全てにおいて完璧。学園ラブコメ少女マンガの完成形と言っていい。

1998〜2002「だぁ!だぁ!だぁ!」単行本全九巻。
 未夢の母は宇宙飛行士で、いきなりアメリカ行きを決める。そして知り合いに彼女を預ける事に勝手に決めてしまった。その知り合いは寺で、風呂に入っていたらいきなり男の子が!しかもその夜、その預かった家の父までインドに修行に行ってしまい、その男の子と二人きりに。大ケンカして出て行こうとしたら UFO が、そこから出てきたのは空飛ぶ赤ちゃん!事故で地球にやってきたルゥ坊やになつかれた二人は、シッターペットのワンニャーと共に奇妙な共同生活を始める事に。でも他人から見れば同棲状態と宇宙人の存在、どちらも秘密にしなければ!
 学校では彷徨はもてもて、中でもクリスちゃんのような強烈な子もいるし…
 アニメも二年に渡って安定した人気を誇った大ホームラン。乳児の目線、心理を深く描写している。

2002〜03「新だぁ!だぁ!だぁ!」単行本全二巻。
 続編で未夢と彷徨の娘、未宇が主人公。
 突然見知らぬ国で目覚めた未宇ちゃんは(同年代に成長した)ルゥくんに助けられ、ここは宇宙の彼方オット星だと告げられる。地球はあまりにも遠く、公的に送ってもらうのは無理とも…ルゥは研究を活かしたフリー体験研修として、自分の第二の故郷でもある地球に連れて帰ろうと決意。
 ワンニャー型宇宙船に乗ってみたらナイスバディのアンドロイド”アン−F90”とルゥのクラスメートでちょっと乱暴な男子のラン、そしてワンニャーの子供、ミニニャーが乗っていた。
 未宇ちゃんは、自分がルゥと乳兄妹だとは知らない。しかも遠い星から来た地球人は、宇宙犯罪者には大金で売れる商品でもある……ドキドキいっぱいの宇宙旅行。
 子供向け SF としてとても面白い。万能の科学技術のイメージがなんだか懐かしく、色々な星に立ち寄って冒険する「銀河鉄道999」の要素もある(ただし暴力性は非常に低いため、お子様でも安心して見られる)。

2005「ぱにっく×ぱにっく」単行本全二巻。
 幼なじみでケンカばかりの架と巫月…親同士も架は教会、巫月も神社で仲が悪い。
 ある日、近所の聖地にあった魔物の封印がとけ、両家の先祖が封じた魔物が解き放たれてしまった。それを二人が協力したら封じることができてしまった…
 川村先生らしい作品で、特に同時収録読みきりが楽しい。

2006〜「杏仁小娘」
増刊のシリーズ。
 中国の山奥からやってきた少女、杏仁が、着いたそうそう荷物を奪われそうになって歩いて目的地まで行こう、と決めた。そんなとき、遭難状態のハイカーがいい匂いに惹かれて言ってみると、そこでは料理を作っている彼女…ふるまってくれた料理を食べたとたん、いらいらして争っていたみんながあっという間に落ち着いてしまった。
 ハイカーの一人、潰れそうな中華料理屋の息子である凌くんの店で、大食いタダ企画をやることになったが、質の悪い客(最初に出た悪者)がいいがかりをつけて…そこに現れた杏仁がぱっと料理を作ったとたん、なんと悪党が改心してしまった!
 中華料理の究極奥義を極めた彼女の目的地はやっぱり凌くんの店、さてこれからどうなるやら。


今までの実績、現在の地位

 始めから注目を浴び、オリジナル作品では最高の人気を誇るトップレギュラー。
 98年から99年にかけて、表紙や巻頭カラーを「カードキャプターさくら」と並んで完全に独占していた。アニメ化も成功、アニメ雑誌やコミケでは無視されていたが息の長いヒット作だった。


個人的な感じ、思い出

 あまりに類型的な展開に当初苦笑していたが、それだけに引き込まれた。そしてそれは、「なかよし」は大人のための雑誌ではなく子供のための雑誌なのだからこれが正解であることに、加えてあちこちで深みのある表現もある、恐ろしい魅力に気付いた。

 第三版を作るために読み返して、「あわせて一本!」の「不安は不安しか生みださないよ」「自信は”力”と”強さ”を生みだせる」という言葉にすごく励まされた。

 作風が固まりすぎている印象があるが、はまれば本当に面白い。
 どうやって時代に合わせる、独創性、そして面白さが調和するか、今からもとても楽しみ。