パターン分類10-7

んちゃ、講義を始めます。出席カードを回してください。

少々補足。いじめのかなり国際性のある定義を見つけました。Olweus1973「一人の生徒が、一人あるいはそれ以上の生徒による拒否的行動に、繰り返し、長期にわたってさらされている場合に彼または彼女はいじめられているというのである」同じくOlweus1993「繰り返し、長期にわたって行われ、不均衡な力関係によって特徴づけられる、他の児童・生徒に対する、攻撃行動や意図的障害である。しかも、攻撃行動は、身体的な接触や言葉によるもの、意地悪なジェスチャー(直接的いじめ)である場合も、意図的な仲間はずれや社会的孤立(間接的いじめ)である場合も見られる」;世界のいじめ、金子書房、総監修/監訳森田洋司より抜粋。僕もこの定義でいいと思います。細分化した定義はできるでしょうが、本講義にもいじめ研究の上でもさして意味のあることではないです。

また、忘れていたに近いことですが、少女マンガの定番の概念として{好きな子ほどいじめてしまう}がありますね。

要するに前思春期で恋愛感情を素直に顕在化させたり上手く表現できない未熟な男子が相手の女子に対してスカートめくりなどの軽いセクシャルハラスメントや言葉によるからかい、場合によっては軽く叩くなど軽度の暴力行為、相手のものを取ったりする嫌がらせ等で接触をもつことがあります。比較的少ないですが、その逆に元気で社会的には早熟だが心理的には幼い部分の多い女子が内気で弱い印象のある男子に同様なことをすることもあります。{喧嘩友達}の関係がこの行為の結果であることは非常に多いです。ただ、これもまぎれもなく被害者の立場からはいじめの定義に当てはまってしまいます。男子が女子に、というケースが圧倒的に多く、その場合明白に物理的な力の不均衡は存在していますし、男女逆でも集団の力などで力の不均衡ができている事が普通です。客観的には攻撃行動であることもまぎれもないことです。ある行動が攻撃行動かどうかはあくまで被害者の主観によると言うのが一般的な立場です。現実には、それがエスカレートして攻撃が激しくなる危険もあると思いますし、特に攻撃的な人格の場合暴力によって相手を支配する快感が恋愛に普通付属するはずの相手に対する思いやりを上回ってしまう事もありえます。その結果、相手の人格に対する尊敬をもつことができない、ゆがんだ形の恋愛感情になる危惧があります。それが上手く表現され、かつ{好きだからこそ〜}パターンの上手い逆になっていたのが高瀬綾先生の「聖ルームメート」の昌弘(ヒロインまゆらの幼なじみでいじめっこ、はっきりいって鬼畜と言っていい手段を選ばない悪役)とまゆらの関係でした。一般に少女マンガの上では被害者である女子は、そのいじめに反発しながらも心のどこかで彼との接触が楽しくなっており(セクシャルハラスメントのスキンシップとしての一面については既述)、相手の優しさに触れたりもあっていつしか恋愛感情が芽生えてくる、そして次第に双方の成長や三角関係等で関係が変化していき・・・となります。このパターンは現在ではやや古いものの普遍性の高いパターンです。どうしてもフェミニズムといいますか、被害者擁護の立場からいって、こういったいじめ行為の容認でもあるパターンは僕的にはあまり好ましくないのですが、いじめに分類される行動にもある種の、歪んだものですがコミュニケーションの面があることを否定しきることはできないです。また関連して、スキンシップの講義でセクシャルハラスメントについての検討も不足だったかもしれません。

今回も前回の続きで、家族について考えていきます。

前回中途半端だった家族そのものの構成員を考えてみますと、家族ものは小学生から高校生あたりの娘が主人公で、その両親が基本になります。どちらか、あるいは両方が死別、生別しているパターンがあることは言うまでもありません。他には兄弟姉妹がいます。兄弟姉妹でも大きく年が離れている、年子かそれに近い、双子と分かれて考える必要があるでしょう。これが基本的な、両親と未婚の子供で構成される一般的な核家族です。加えて祖父母がいることもありますね。

家族の特殊な構造ですが、大家族は祖父母の世代であることが多い家長を中心に、その子供である幾組かの夫婦と更にその子供達で構成されます。この場合子供は直接の両親よりむしろ祖父母の世代や従兄弟などに当たる子供の中の年長者とのつながりが濃くなります。その際に嫡流と傍流の区別が意識されるようになっていくのは仕方のないことです。特に地方の有力者や歴史ものの中など、封建的な制度が強い場合には家長の独裁がしっかりしています。

変形の家族としてはですが、{同居}の細かい検討として考えていきますと、何らかの・・・例えば多く見られるのが両親の親しい友人か比較的近い親族で、その子が進学のためや両親の海外転勤で日本に残すために預かることになる(比較的小さい子を預かるケースは別に検討する)ものや、火事で焼け出されて等緒事情で一家ごと転がり込む、等で同居することになります。この場合は住所は一緒で、食事を含む家事もかなり共有しますが戸籍上、家計上は他人(または親族)です。と言ってもそれをいつの間にか家族として受け入れてしまうのがこのパターンですが。同居するメンバーが離れに住むケースもあります。同居ものの変形として、両親不在の状況下で幼児を世話しなければならなくなる{育児}があります。

全体に家族の構成として、より細かく検討分類していきますと一般的な理想像は機能している形で両親のそろった、つまり帰宅が深夜にずれこむことが例外である父親と専業主婦である母親に一人っ子か兄弟姉妹二人程度となります。

そこからどう外れるかですが、まず両親のいずれかが死別、生別している母子家庭または父子家庭があります。一般に一方しかいない場合や母親もフルタイムかそれに近いレベルで働いているとき、子供は両親との接触が極端に少ない、カギっ子状態になります。また、両親とも一応いますが父親が長期単身赴任や極端な多忙のためほとんど子供と会うことがない、事実上の不在状態があります。この場合には母親が専業主婦の場合、母親との密着度が極端に強いことになりますね。兄や姉との年齢が極端に離れている場合ですが、そう言った場合にはほとんど両親がいなくて姉や兄が親代わりです。また両親がいない時、祖父母によって養育されているケースも多く見られます。それ以外で両親がいないときには孤児で、親戚の家に引き取られている事がほとんどですが、一人暮らしで独立しているに近い場合もあります。一人暮らしは一般、特に(謎が多くクールでつれない、年齢より大人びており不良であることも多い)男の側に多く見られますが、他にも遠距離進学のため等様々な理由であります。これらの家庭環境はキャラクターに大きな影響を与えます。ものによっては半ば決定していると言っても差し支えないでしょう。それらについての具体的な検討は非行と最終的なまとめのキャラクター論で。

もう一つ、家族の重要な構成要素として建物としての家屋と家族に準じる存在としてのペットにも触れておかねばなりません。

建物としての家屋にですが、大人の分類として最重要なのは持ち家か賃貸かなのですが、少女マンガでは普通、それ自体がネタでない限りそれほど大きな問題ではありません。家屋の形が一番大きいです。その形は一戸建てと集合住宅、一戸建てにも邸宅から単なる庭つき、集合住宅も億ションから団地まで色々とあります。類型化されたイメージが強いので少し詳しく検討できます。一戸建ての最も高級なのは邸宅です。イメージにおいて、貴族の城に近いものが最も極端な形でしょう。日本の上流階級では和式と洋式の両方があります。和式は古い名家で、広大な敷地内に比較的古い建築様式の母屋がある、と言った感じです。洋式なのは外国の城をスケールダウンしたような感じですが、ギャグに近い誇張されたものでは城以上の、例えば県の半分以上の面積等ということもあります。邸宅でやや現実的なのは超高級住宅地の大型の一戸建てです。ワイドショーなどでよく出てくるようです。普通の一戸建ては大体3LDK位ですね。これで子供二人の個室と両親の寝室兼書斎、そして生活の全てが賄えます。庭はそれほど広くないですね。グレイハウンドをまともに飼えるような庭がある家は上記の大邸宅です。集合住宅で、億ションと言われるのは高級住宅地にある設備が充実した分譲住宅です。大概オートロックで、様々なハイテクによって管理されています。普通の集合住宅ですが、大きくわけて二つに分かれます。一つはコンクリートで固められた高層の大規模なもので、公共事業に近い形で(色々)建設されたものです。とにかく世帯数が多いです。ベランダが地続きであることも多いため、部屋が隣の幼なじみの場合そこから直接互いの個室に侵入することもできます。もう一つの類型的な集合住宅は大体二階建ての木造です。一戸あたりの部屋数も少なく、低所得層か一人暮らしの大学生です。

ペットですが、極端に大型から普通の庭で十分、屋内で飼える、個室内でいいサイズに分かれます。極端に大型なのは邸宅に、やや誇張としているもので、ライオンや虎、馬等の大型動物です。普通の庭で十分なのが犬です。庭つきの一戸建てなら飼えるでしょう。本来膨大な運動量を必要とする大型犬や猟犬は普通家屋の庭では無理ですが。室内で飼えるのが小型犬と猫です。そして個室で十分なのには小鳥、ハムスターなどの小動物があります。ペットも一つのジャンルとして見てもいいので、別章後述とします。

ジャンルごとの検討に入りますと、やはりギャグは検討しにくいです。ギャグの基本的なパターンとして、多く見られるのは当たり前であるものを極端に誇張したりわざと崩壊させたりすることがありますが・・・他にも無数のパターンがあり、また新しいネタの数だけパターンが生まれると言っていい新陳代謝が盛んな世界ですので。

ホラーですが、特に多く見られるのがサスペンス&ミステリーと共通する、封建的な家族の中での怨念や呪術によるものです。旧家はそれ自体雰囲気がありますし。一般の核家族において良く見られるのは普通の家族と思っていたのに、それがある日いきなり、又は徐々に崩壊しおぞましい真実が明らかになっていくパターンです。家族の誰かに魔が取り付いた(オカルト的な意味だけではなく、連続殺人などの病的犯罪者とかもっと細かいのもある)、または自覚していなかったが一家そのものが魔だったとか・・・。正直余り考えたくないし、読んでいる作品数も少ないので詳しい言及はできません。結局、普通は安心感の源泉であるはずの家庭が恐怖の対象になり、遺伝子的なつながりがある以上その自分自身さえ最も深い意味で信じられなくなり、それが自分の崩壊につながって最終的な恐怖を与えます。

サスペンス&ミステリーにおいて、特に既述の通り地方における封建的な大家族がよく扱われます。この場合、昔からの因縁も含めた様々な要素がありますね。当たり前ですが、殺人事件などが起きる動機は怨念と欲、口封じがあります。怨念には嫉妬や復讐心があり、欲の中で大きなものは金銭欲と支配欲です。単純な金銭や利権、最終的な利権である家長権を得るために争い、それが殺人にまで発展することもあります。家長権、つまり相続争いの場合、利権目当てと怨恨の両方が関わっており、状況によって片方が特に強かったり不可分に混じったりしています。別の黒幕が犯人を操っているケースも多く、その場合には黒幕は利権を求めて実行者の怨恨を利用すると言うのが多い事に注意してください。怨恨のほうが利権目当てに比べて感情的に許容されやすいからです。口封じのための殺人には脅迫に対抗するためと、単純な何かその家の暗部に触れたものに対する(家の体面を守るため)口封じ、そして突発的な事態、例えば交通事故等に関する家名の為のもみ消し工作などに分けられます。結局それが薮蛇になるのですが。

封建的な大家族は地方の名士や何らかの老舗、都会では(洋風の生活にしている)半ば世襲の地位(国会議員など)がある金満家、財閥一族等が多く見られます。世襲的な地位には家元やその他文化的なもの(梨園など)、スポーツ、芸術の世界もあります。それらについては後に検討しますが、かなり関係は深いです。その特徴は既述のように家長の絶対的な支配のもとに複数の(その子の世代である)夫婦がおり、その子達は将来の家長である嫡流の子の支配下にあります。加えて血族でない、使用人としての従業員等が住み込みの場合家族に準じる形で生活していることもあります(その中に本来血族的には嫡流の子が復讐のため、これも良く見られるパターンです)が。その職や地位、財産は全面的に家長の嫡流によって相続され、その他のメンバーは基本的には家長の道具でしかないです。また、家風や家訓などの形で表現されるルールに強く拘束されており、倫理的にも普通に比べて厳しいしつけを受けています。事件においてその封建性が白日の元にさらされ、そこから主人公達が心理的に独立し、それを主張するところまでが話のモチーフ的な中心です。その後、犯罪が露見し、家が解体されてハッピーエンドや家の論理が勝利を納めて主人公らは抹殺され、何事もなかったようにとか主人公が家を見捨てて去り、家だけは今までのようにとか色々な終わり方があります。

アクションものとは少女誌においては余り関係が無いですね。少年誌ではスポーツものに似た独特のモチーフをとります。講義趣旨と外れますので詳論しません。また、特に少年誌のアクションの一ジャンルとして不良ものがあり、少女誌においても非行が存在することには変わりありません。非行については後で独立に一章を設けて詳しく検討すべきところでしょう。

スポーツなどは基本的には既述です。やや詳しくやり直しますと、家族の誰かとの葛藤が中心になるモチーフと家族の支え合いを中心にしたモチーフに大別できます。家族の誰かとの葛藤ですが、その相手は親と兄弟姉妹に大別できます。多いのが母親と父親、それに姉ですね。母親の場合には同じ女性であり、特にデザイナー等では直接同じ土俵(コンテストなど)の上で対立できます。また心理的にもエレクトラコンプレックスがあるため、深い描写が可能です。父親の場合には、主人公が男である少年マンガの場合の基本モチーフは父親は指導者または主人公を成長させるために敵側の指導者として、です。それはある程度少女マンガでも該当します。主人公にとっては恨みを増幅させる不可解な敵対行動をとることが少なくありません。姉妹(普通女子主人公の場合兄弟、男子主人公の場合姉妹とライバルとしての対立は少ない)は直接的な相続争いの面が強いです。主人公の家庭は理想的には(正常というのは語弊が多い、日本はともかく欧米では上記の理想的な家庭が少数派だったりする)機能していません。主人公が養子にでており、養家は家庭として機能しているが実家の、血族的な家族とは相互無視でむしろ恨みがある、という状況も多いです。より細かく分類してみましょう。構造として、主人公と最終的に対立する相手が父親の場合と母親の場合、姉妹の場合について考えてみます。

父親が葛藤の対象である、ということには大別して別居状態での対立関係と、同居している状態で反発を覚えるのとがあります。対立する相手であるのは、多く見られるのが両親が離婚しているケースです。両親の離婚の原因は父親が極端にその話の中心となるスポーツや芸術性の高いファッションなどのビジネス、芸そのものなどに入れ込み、家族を省みないからというのが多いです。この場合には子供は父親に捨てられたという恨みを強く持っており、その父親が没頭したものにも憎しみさえ持っています。それが原因で、幼いころからやっていたそれを捨てることも多いです。しかし、何らかのきっかけでそれに関わるにつれてその魅力と自分の才能に目覚めて行きます。その中で、結局初め無視していた父親の影を意識します。再会してすぐのころは大抵父親は子供の能力を全否定し、くずよばわりなどをすることも多いです。そして子供のほうの成長にしたがって、大きな壁として立ちふさがることがあります。その真意・・・子供の成長を期待する・・・に気付くのは事実上父親の出してきた障害を克服してからです。その時には父親は死病に侵されていたり既に死んでいると言うのもパターンなのですが。これは多分に少年誌のパターンですが、少女誌でも同様の構造は見られます。その構造上、家族構成の変形として、父親は事実上家族を捨てており、母親も父親の犠牲となって早世、主人公は祖父母など親族に育てられたというケースも多く見られます。

父親と同居している状態での反発ですが、これには二種類あります。いずれにせよ主人公は父親の名前と存在の大きさを強く意識し、それに囚われています。一つは父親は主人公に対し指導者として高圧的に厳しく指導してくる場合です。この場合には父親が自分を子供としてでなく、一選手としてしか考えていないということに反発します。もう一つは父親が子供に何も教えず、むしろ父親自身の種目など世界に入れないようにしたがる場合です。この場合には無視されているような寂しさを感じ、それが反発に結びつくものです。

葛藤の対象が母親の場合にもこの構造は大体当てはまります。むしろ、同性である母親のほうが多く見られ、葛藤も強いかも知れません。母親との葛藤はもっと深い検討の余地がありますので後述。

姉や妹について、ライバルについての検討で既述です。

家族の支え合いが基本になるケースですが、この場合には余り問題が深刻でなく、それと関連して主人公のレベルも余り高くない(少なくともオリンピックレベルではなく、地区大会がどうのこうのの次元)状況と、極端に高レベルの世界に大別されます。それほど大げさではない世界では、むしろホームドラマとして日常に近いレベルの話です。その中で主人公が人間関係や記録の伸び悩み、怪我などの悩みを家庭に持ち込み、それを家族の励ましで支えていく、またはその中で家族の中でもトラブルがあり、その解決の中で家族全体が成長していく、そう言った形です。高いレベルでの話ですと、それら競技などの世界の描写と、特別な世界に関わってしまった普通の家庭(特別な家庭の子供が特別な世界に入った場合には家族の葛藤があるのが普通、例外はあるが)のギャップが話の芯になってきますね。巨大な経済的負担、兄弟姉妹がいる場合には有名人が家族にいることの学校内外での影響、その他様々な影響が家庭にとっても試練としてふりかかってきます。

(ファンタジーの疑似も含む)歴史においては上述のようにより容易に封建的な家族制度を用いることができます。その際には現在の法ではできないような非人道的な政略結婚も自由です。

芸能界などは家族関係が中心の場合スポーツ等とモチーフ的に同じです。少し変わったパターンとして、ギャグの要素が強い{奇人家族}や{芸能人一家}等もあります。

今回はここまでにします。何か質問は?御静聴深謝。

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