パターン分類5-2
んちゃ、講義を始めます。
レポートを出席カードの代わりにします。今回は前回の補足を少々。前回不十分な点がありましたので。
少し恋愛そのものを分類してみます。スタンダールの恋愛論が有名ですがそれとは外れて僕なりに。といっても多分に重なりますが。まず虚像に対する恋。別名恋に恋する。他肉体だけの恋、とこれは幼年少女誌の範囲外。さらに甘えだけの恋。自立できない者がぬくもりを求めているだけ。後計算ずくの恋。見栄、実利などから。そして本当の恋。
- 虚像に対する恋ですが、これを前回はっきりと説明しておくのを忘れていました。思春期前期から(メディア等で学んだ)恋愛に対する憧れが男女ともあります。そのときに当然起こることとして、始めにある対象を空想の中で極端に理想化します。女子の場合自分の理想の王子様を描き出し、その誰か(年上の異性が多いです。同級で成熟度の高い(ように見えるだけの場合も多い)知れません)をそれだと見なしてしまいます。「風と共に去りぬ」でスカーレットがアシュレに行ったことが代表例です。想像の中で作り出した幻影を生身の相手にかぶせ、その幻影に対する恋を相手に対する恋と勘違いしてしまう訳で。ひどい話です。この状態の事を恋に恋するお年頃とも言いますね。ありのままの自分と相手では無く、自分と相手を想像の中で美化し、それと重ね合わせる恋です。これはうまくいっても虚像と実像のギャップのため長続きしません。でも大人になってもこの段階を卒業できてない者の多いことといったら。特によく知らない相手に恋する場合はまずこれです。少女マンガでは始めはこの状態から出発し、相手の実像を目の当たりにして混乱し、そして相手の実体を受け入れて本当の恋に変わるケースが多いです。それが思春期から大人への重要な発達段階の一つだと思うのです。本当はこれ、物凄く難しいことだと思うのですが。
- 肉体だけの恋とは単に性欲を恋愛と混同しているだけです。意識的にせよ無意識的にせよ現実には結構多いと思われます。幼年少女誌の範囲外ですのでそれ以上の説明はパス。面食いの恋もこれの変形です。
- 甘えだけの恋を本当の恋と区別するのはすごく難しいところです。辛いことからの逃避、寂しさを満たすだけ(この場合一見肉体だけの恋に見えることも)等。悲しいことですが、やはり独りで立てない人間には本当の恋は難しいのでしょうか。この場合不安感が強く、不安定でそれと結びついた強い独占欲が見られます。心の傷が非常に深い場合、ドメスティックバイオレンスなどの問題行動もあります。相手を過度に理想化することも多いですね。その点恋に恋する段階を卒業しきれていない印象があります。(現在はやりの)アダルト・チルドレンの恋はどうしてもこうならざるを得ないようです。
- 計算ずくの恋、つまり見栄や実利が恋と言えるのかどうかは疑問です。例えば「あたしだけ彼氏がいないのってかっこ悪いから明日だけ彼氏になって」と友達に頼む(で結局そのままくっつく)とか「あたしと顔が釣り合うのはこいつしかいないからまあいいか」とか家同士の事情、有体にいえば政略結婚とかは結構あります。まだ恋の重さを知らないケースが多いですね。少女マンガにおいては大抵そのまま恋に変わります。
- 本当の恋、つまり相手の実像を知った上で全て受け入れ、ありのままに愛すること・・これが理想像です。でも難しいです。もしかしたら現実にはあり得ないのかも知れません。
今まで解説した色々な偽の恋がいかに本物の恋に変わるか、これは少女マンガの最も面白い部分の一つです。
それではこの辺で。何か質問は?御静聴感謝。
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