柏木志保(かしわぎ しほ)
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作風概説
とがったあごと縦長の口、多くの流れが満ちて華やかな感じが印象的な、少し冷たくあっさりさくさくした感じの絵。
最近は冷たさが少し減り、可愛らしさが増している。ただしホラーに回ると、七色の原色が鉄砲水に荒れ狂うようなすさまじい表現力にもなる。
体や服はやや現代的で書き込みが非常に細かく、高い画力を秘めている。服のしわなどもとてもこまかく、肌の柔らかさが妙に実感でき、さわやかな色香がにおう。結構セクシーな描写も多いが、それもむしろ小悪魔的な可愛らしさを強める方向に使う事が多い。
動きの多い髪の毛が目とうまく調和するとすごい可愛らしさになる。男の子にそのかわいらしさを与えるとアルコール度が高く澄んだ甘みに微かに松脂が香る、ギリシャのレツィーナワインのように極悪非道な色気になる。
デフォルメされたギャグ気味のキャラもはっきりうまく描く。
女の子の妄想をストレートに描き、そのマイナス面をしっかり出しながらきれいなハッピーエンドにする作品が多い。
気持ちを伝える力が強く微妙な心理を巧みに描いているし、どんでん返しも意外性がある。
アクション・ファンタジー系の描写もバリエーション豊かで華麗。
代表作
2004「ハッピーリング」
ファーストデートで手をつなぎ、夢みたい…だったのに手が離れてしまって、それで後悔と不安の渦。
そんな優々に友達が教えてくれたおまじない…そのリングをつけた哲弥くんは急に大胆に抱きしめ、デートに誘ってきてくれた!
そのデートではいきなり腰を抱いてきたり、お姫様抱っこでメリーゴーランド…嬉しいけれど、これっておまじないが呪いに?なんとか解かなくちゃ…揺れる気持ちを大胆な動作で丁寧に描いたデビュー作。
2004「世界一☆オヒメサマ」
¥3000のパフェ…高いッ!という平凡な彼氏の直樹くんと、それなりに幸せにやっている梨乃ちゃんが、小鳥を捕まえたことをきっかけに某国の王子様に見初められ、まさにシンデレラの生活に!!
首相を始め日本中の期待が集まる世紀のロマンス。それに倒れたら…医師団の診察など、やたら大騒ぎする周囲に振り回される。
そして、あのパフェは食べられなかったことから王子様は、自分も生のたまねぎは苦手だけれど、自分が何かをいえば大事になるからと言えない、だからこそ「あなたのまえではすなおにお話しできるわたしがいるのです」と誠実に求愛してくる。
彼女のおつきになった、王子への思慕を秘めている女官も含め皆がかごの中の鳥…そして運命の舞踏会、直樹くんの行動、そして梨乃ちゃんの決断は?
シンデレラストーリーを別の角度から適度に大げさに、美しく描き出した傑作。
2004〜5「ココア」単行本全一巻。
増刊でのシリーズ。
芸能コースがある私立星の原学園、つばめちゃんは興味なしだけど、外でいきなり芸能コースのスター、地緒くんにキスのふりをさせられる。
ファンよけとしてだけど、それで腹がたった彼女が突っかかるとさらにからかわれ、投げつけた紙がこともあろうに健康診断書だった…それで脅迫され、連れられた先でいきなり撮影開始!
男子の魅力と若い感性が爆発!
2006「乙女色チョコレート」
紗雪ちゃんと杉原君は幼馴染、だけどカッコよくなった彼が大好き…そんな関係を変えるチャンスがバレンタインパーティー?
それでベストカップルに選ばれると永遠に幸せになれるという伝説もある。でも絶対無理と思っていたら、いきなり彼に誘われた!彼は商品のT-Podが目当てだというが、これは大チャンス!
でも当日、服選びに付き合ってくれるなど応援してくれていたはずの友達の箕輪さんが同じ服を着てきた!
チョコ用のリボンを使って服をアレンジしたけれど、今度はドリンクが服にかかって…
意地悪役の圧迫感もうまく、シナモンがきいた極上の甘味が光る正統派の佳作。
2007「すっぱだもん!」単行本全一巻。
アイドルの伊吹くんにかなりやばいレベルで惚れている梅ちゃんは実は忍者…素っ破の子孫だった!
おばあちゃんに偉大な先祖の力を込めた巻物(というか魔法少女のバトン)を渡された梅ちゃんはいきなり可愛いくのいちに変身、スパイダーマン以上の身体能力で東京タワーのてっぺんまで上って、今度は変身の術を駆使して伊吹くんに会う!
でもそこで、伊吹くんがマネージャーに変な仕事を強制されているのを見て…
とにかく子供向きと割り切り、パワーを大爆走させた快作。
今までの実績、現在の地位
「BLACK CAT」のアシスタントとしても知られ、デビューしてすぐ一気に増刊でシリーズ連載と注目されている。
増刊の連載は早速単行本化が決定。
本誌にも登場し、レギュラーの有力候補。しばらく休んでいたがいきなり本誌読みきりで復帰、何度も登場して連載も期待させている。
「地獄少女閻魔あいセレクション激こわストーリー暗」にも登場し、すさまじい力を見せつけた。
個人的な感じ、思い出
洗いたてのシーツのような感じには結構ひきつけられるものがある。
正確な心理もとても面白いし、大胆な題材も素晴らしい。
次は何を見せてくれるか楽しみ。
本誌初登場は正統派の学園恋愛もので、逆に新鮮だった。
復帰はとても嬉しく、作風が微妙に変わってより小さい子供である読者にアピールするものになったのがなんだか嬉しい。
ホラーも想像以上のすさまじさ、これだけの力を全部出し切れるのはどんな作品だろうか。枠に囚われず、力を出し切ることを優先して欲しい。
この調子で、読者を楽しませるいい作品を描いて欲しい。