神崎裕(かんざき ゆたか)

戻る もえるごみへ ほーむへ


作風概説

 無駄のない、シンプルで華やかさを殺した平板な印象のある絵と突き放した感じだがどこか暖かいストーリー。
 近年の少女マンガにしては目が小さく鼻をほとんど書かないのが特徴で、逆にリアルな感じ。磁器人形…否、むしろ金属質の重い透明感と鋭さが印象的で強い存在感がある。冷たい雰囲気だが感情表現力は高い。
 整い透き通った体の線は強い生気を持っている。

 タイアップの入った芸能界・スポーツものを描くことが多い。熱血描写がとてもよく、ダンスなどは止め絵だが迫力があり、それまで盛り上げる演出がうまい。


代表作

95「秋物語」
 大食漢の甘奈ちゃんは恋に興味は・・・実は昔、偏食で食べられないものを分けてくれた天野くんが初恋の人。転校した彼と文化祭で再会したけど、彼は単に底無しの胃袋と・・・とても可愛らしい、なんとなく軽く笑ってしまうシーンの多い作品。

96「NON STOP GIRL」
 深沢多摩美と馬が合わない咲子ちゃんがある日、階段で男子にぶつかってしまう。昼休み、彼に呼び出されて仕返しか、と思ったら告白だった!しかも彼は珠美の弟。即座に断ったら、ぶつかった時に多摩美からプレゼントされた時計を壊した、と脅してきて一週間付き合うことに。
 結構楽しくなってきたので、期限が切れてもそのままつきあおうと思ったけど、ふと多摩美と彼の会話を立ち聞き、二人に担がれたことに気付いて!軽快でどこか熱い。

99「COOL!」単行本発売中。
 むつきはひょんな事からアクターズスクールのオーディションに参加、ハプニングが続いて歌詞も忘れたけど即興でごまかす力技で見事特待生!でも実力の低さは簡単には埋められず、いびりにもあうし何より、自分を拒否する母には理解されないけれど、親友のカレンたちに助けられながら一歩一歩頑張っていく。本物のオーラが蒼く燃え上がる作品。

2000「Pinkish fish」
 わがままな彼女、奈々瀬に振り回されている透がすっぽかされて海で不思議なピンクの卵を見つけ、持ち帰ってみたら手のひらサイズの人魚が生まれていた。ピンク色だからモモと奈々瀬が名前をつけ、そのまま金魚鉢に入れて飼ってみると、言葉もしゃべるし素直で可愛い。
 ある日、奈々瀬と三人で水族館に行くと、入れていったコップからモモが出たがって怪我をした。それをきっかけに海に帰すことに…。とてもクールで切ない空気が胸に染みる佳作。

2001〜2004「娘。物語」(ストーリー田中利花 協力 アップフロントエージェンシー)単行本全六巻。
 言わずと知れた「モーニング娘。」一人一人やミュージカルなどの評伝。
 それぞれに似ているかどうかは読者各位が判断して欲しいが、できればコミックスを見て欲しい。
 それぞれの夢、そして夢が叶ってからのスポ根を思わせる苦闘を温かく丁寧に描いている。最初に思いきり苦悩をかましておいて、その後どこでもマイペースにドタバタしているが五期メンバーの話ではいい先輩になっている辻加護や、厳しく優しく皆を見守るつんくさん&夏先生の大人コンビがとても魅力的。
 舞台の迫力は相当なもの。

2003〜2004「娘。物語 ALIVE!」(ストーリー構成 星野真弓)
 無印のような評伝形式ではなく、彼女らが暮らしている架空の家を舞台にギャグを多くして構成している。

2008「なでしこシュート!」日本サッカー協会協力。
 中学生モデルの梨々ちゃんは職場でのお世辞、学校でチヤホヤされたり反感をもたれたりと孤立感も感じ、少し寂しい感じもしている。
 そんな時、河原でサッカーをしているのを見ながら歩いていると、ボールが飛んできてつい受け止めてしまった。家族が無類のサッカー好きである彼女は小学校のころサッカーもやっていたのだが…
 そして仕事がちょっと嫌になって飛び出し、隠れたときに昨日のサッカー野郎が声をかけてきたが…実は女だった!
 なんとなくその女子サッカーチームに加わってしまうが、仕事が長引いて約束の試合にはいけそうにない…
 中途半端な気持ちを熱く丁寧に描く、会心の熱血作。


今までの実績、現在の地位

 デビュー当初からクールな表現力で注目され、期待されていた。

「なかよし」本誌での初連載「COOL!」は短期連載に終わり、それからしばらく本誌連載はなかったが「娘。物語」で一気にトップレギュラーに躍進、かつてのセーラームーンさえ彷彿とさせる圧倒的な人気を集めた。
 どこまでが「神崎裕」の力なのかは微妙だが、特に後藤真希のフィギュアが全員サービスについた時には「なかよし」がどこの店にも見当たらず、書籍流通関係者が悲鳴を上げるほどの売れ行きになったものだ。

「娘。物語」の終了後はアテネオリンピックバレーボール女子日本代表の評伝などもやったが、最近やや出番が少ない。


個人的な感じ、思い出

 クールさや表情の乏しさが長い間理解できなかったが、その秘めた情熱がようやく少し理解できるようになってきた。

「娘。物語」では何度も泣かされかけた。
ただ、筆者は芸能界にはあまり関心がないので現実の彼女たちについては今でも「娘。物語」と「ちゃお」の「ミニモニ。やるのだぴょん!」のイメージしかなく、映像ではほとんど顔と名前が一致していない。
 そして辻加護が中心だったことを、加護さんがスキャンダルで引退状態・辻さんも結婚であまり出られず、他の娘関係もややスキャンダルが多い状態から振り返ると苦笑するほかない。

「娘。物語」が終わってからやはり自力で活躍する機会があまりないようなのは残念。
 きわめて高い実力がある作家なのだから、もっと活躍して欲しい。できればオリジナルで。