桃木毎実(ももき まいみ)
作風概説
かなり濃い感じのする、つややかなで濡れた分厚いガラスの曲面か水飴に似た感じの輝きのある絵と表現。
感情描写がやや大げさで大仕掛けが多いが、その分心の動きが分かりやすい。伝えたいことをはっきりと表現することができる。
ホラーからラブストーリーまでこなせるが、恋愛より友情や親子関係を深く掘り下げるのが得意。
宝石や妖精などについて深い知識がある。魔物の造形が大胆で迫力がある。
代表作
95「まえを向いて歩こう」
望美ちゃんは親友だっためぐが、自分のオーディションの付き添いなのにスカウトされ、脚光を浴びてたのを恨んでいる。そしてめぐと憧れのアイドル、高根沢啓介が学校でロケをすることになり、ハプニングと話題のためめぐのクラスメートを使うことになってめぐはもちろん望美を推薦するが、感情を爆発させた望美は逃げ出す。
そこを啓介が自分は望美の6回に対して23回もオーディションに落ちたこと等を語り、叱責する。そして望美はめぐのがんばり、台本に書かれた祈りを見て初めて一番大事なことを思い出す。心のすれ違い、そしてそれ以上に深い通い合いを描いた感動の作品。
96「素顔の気持ちで」
麻薬組織を追う刑事の君夜ちゃんの父親は、忙しさの余り妻の臨終にも通夜にも顔を出さない。母の遺言もあって寂しさを笑顔に押し隠し、主婦代理をしている君夜ちゃんがある日、リンチを受けて死にかけた犬を拾った。
獣医の息子、瞬平のアドバイスで犬との楽しい生活を始めるが、その犬、ロックは行方不明の麻薬犬だった。ロックを利用した父を責める君夜だが、本当に言いたい事は出てこない。そして、飛び出した君夜に闇からの手が・・・男の子のカッコよさが強烈。動物との接し方、心の通い合いも強く描かれている。
96〜97「おねがい☆(六芒星)ジェムストーン」るんるん連載、単行本なし。
アイルランド系魔女の家系の混血で、宝石を用いた魔術を使う大地の娘、杏奈ちゃんが繰り広げる人の心と自然の触れ合い。重いテーマも込め、また魔術体系も精緻。某守護精霊のインパクトはとんでもない。
98〜「トワイライト・コネクション」単行本はないが、余裕で出せる量がもう貯まっている。
魔物による事件の現場に、何気なくいる地味な女性は警視庁特務課心霊・猟奇事件担当セクション「T」風祭凛子。彼女はただ一人の国家公認の陰陽師で、心の奥底から暴れ出す魔を動物型リュック、携帯電話の画面の中のキャラクター、バイクなどのアイテムに偽装した式神で押さえ、そして根本から原因を暴き出す。
基本的に勧善懲悪でハッピーエンド。悪と言える人物がいない事も多い。巧みに人の心の魔を形にしている。実際には外の魔ではなく、人間の無意識の中から生まれた魔が人を傷付けているという展開が多く、それに深い説得力がある。
今までの実績、現在の地位
集英社でデビューしたとのことだが、詳しい前歴は不明。
「るんるん」連載の経験はあるが単行本は出ていない。近年は魔術を題材にした、ホラー、サイキックアクション、サスペンスの中間的な作品が中心。
増刊では唯一、しかもかなりの長さにわたる連載を持ったが、単行本はないし最近は登場していない。
現在ファンタジーネットワークRPG『女神幻想ダイナスティア』のプロジェクトで忙しいらしい。
個人的な感じ、思い出
子供向けのわかりやすさもあり、理知的に高度な計算がなされている作品の質には感心している。単行本を出していいと思うのだが。