美麻りん (みあさ りん)
作風概説
輝きに深みがあり、柔らかくて表情豊か。柔らかい印象は体全体や服の質感にも及んでいる。かすかな甘さがあって保護欲をそそる可愛らしさは頭がふらっとするほど。
定番の話を、とてつもない完成度で作り上げることができる。『美食倶楽部が出すサバの味噌煮定食』の趣。また以前は日常で不思議なことが起きる系統のファンタジーが得意で、変わったチビキャラも魅力的。連載ではリアリティのあるとても辛い思いから始まる、意志の強さと強い愛情を丁寧に描く。
リアルなウサギの怖さをうまく擬人化するなど、絶妙な綱渡りもうまい。
いきなり思いがけないことをするギャグがかなり効く。真理に対する勘もあるし、キーアイテムもうまく活かしている。
悪しき家族関係を描くのが異様にうまい。
善意で子供の心を傷つける母親を出したときには、本当に胸を切られたかと思うぐらい強烈だった…ただし話そのものが良くできていたので、それもすごくきれいに終っている。心の圧力さえ直接描き伝えることができるのだろうか。
代表作
2005「悪魔的恋愛序章」
いきなり「おまえには悪魔がついている」といわれた理乃ちゃん。
髪には魔力が宿るといわれ、その長い髪に悪魔が寄生した、と突然、隣の席になったばかりで今日初めて話す浜神くんが。彼は悪魔祓いの家系で、はらってやるから髪を切れ、と要求!
どうせ先輩あたりの思い出を引きずってると図星を指され、そして心の準備ができるまで居候しながら守ってくれることに。
その悪魔も結構可愛いしかわいそうだし、それに浜神くんは言葉はひどく無遠慮だけど優しいところもあるし…
心の動きを巧みに描いたデビュー作。
2005「ふしぎなミルコットン」
沙羅ちゃんは幼馴染の葵くんを恋してしまった…でも現状維持を選んでしまい、告白する勇気はない。
そんなときにおまじない効果がある毛糸、ミルコットンの話を聞き、やってみようと思ったけれどどこも売り切れ…ネットオークションで落札したのが、虹色に輝く不思議な毛糸。
完成ついでにネズミーランドに誘ってみたけど、どうもムードが盛り上がらない。
で、強引にマフラーを巻かせたら、いきなり彼は甘い言葉を連発する王子様になってしまった…
雰囲気がとても心地いよく、エピローグがたまらなく恥ずかしい。
2007「夏恋vエール!」
中学にしては珍しく飼育小屋があり、その夏休み当番の今野さあやちゃんは毎日ニワトリに蹴られている。でもサッカー部の氷先輩を近くで見られる、という役得もあるしそれなりに楽しんでいる。
ある日、ウサギの「との」ちゃんがなぜか人間の言葉でしゃべりだし、強引に恋に協力してくれることに。半ば強要されて彼に近づき始め、とのが代弁していきなり夏休みも一緒に行くことに!
何か妙なものが結構ある、何かと苦笑する佳作。
2009〜10「おんたま♪(文字化けした方へ:八分音符記号です)」単行本二巻。
全員部活参加の学校で、勉強・運動・その他何もできない…さらに母子家庭で金がかかるのも無理な初音ちゃん。学年主任が合唱部の顧問なので薦められるが、音楽を聴くと変な化け物が見えるのでそれは一番無理!
ぶつかったカッコいい男子に見えるなら来い、と合唱部に誘われ、それは絶対音感を通り越したものと知る。だが母親は音楽に関わることを許してくれなくて、母親に逆らうことができない初音ちゃんは…
待望の本格シリーズ!
2010〜「ご指名ありがとうございます!」
入学以来ビリ独走、ついたあだ名は底辺の海月姫奈ちゃん。彼女に新しい家庭教師が…高級車から崩した服のサングラスに派手ブローチ、豹柄ネクタイに十字架ペンダントに花束とどこの…な美形の若い男が「ご指名ありがとうございます」…
現役東大生でナンバー1ホストでもある彼はほんの気まぐれで家庭教師をするとのこと。勉強を嫌がる彼女に「勉強がいやならほかのことを教える」と押し倒してくるのであわてて勉強やりますと…
彼の奇妙な教え方で楽しくなり、それで成績は上がるが、それで底辺仲間だった友達に嫌われて…
超刺激的な爆発新シリーズ。
2012〜13「AKB0048」単行本全七巻。(企画/秋本康:原作/河森正治・サテライト)
国民的アイドル、AKB48。あなたは想像できますか?はるか遠い未来の彼女たちの姿を…
人類は宇宙に進出し、AKB48はAKB0048と名を変え、初代主要メンバーの名を「襲名」する形で維持されている。
惑星アキバスター中心部にある、AKB0048研究生を育てる学園、AKB学園。そこではいつの世も変わらぬ、夢を追って励む少女たちの姿が…
2014〜15「嘘つき王子とニセモノ彼女」単行本全五巻。
明るいキャンパスライフを目指して妄想している成海流凪ちゃん、でも目つきが悪くてぼっち体質。
そんな彼女の前に現れたのが、「ジーニアス」と呼ばれる生徒会。超優秀美形ぞろい、シェアハウスで暮らしている。
ある日、黒猫に石を投げようとした子から猫をかばった結果、その子の誣告で住んでいる家を追い出されることに。
そんな彼女に声をかけ、シェアハウスに迎えてくれたのが、「ジーニアス」の夏島ヒカルくん…だが、彼が彼女に迫るシーンの映像が学校中にばらまかれていて…
2016「チョコと男子と恋愛事情」
イベント運がやたらと悪い莉奈ちゃん。一度参加できた中学の入学式は、佐伯くんが助けてくれたから。
バレンタインにチョコを渡そうとして、予備として大量に持ってくるけれど失敗続き。
なんとなく、大量に受け取って「どれも同じ」という彼、たくさん配った彼女、お互いにちょっとした口げんかになり、彼が「じゃあオレとつきあってよ」と言ってくる…
2016〜18「同級生に恋をした」単行本全七巻。
沙緒(すなお)ちゃんが高校を共学にしたのは、男子苦手を治したいから…でもぜんぜん克服できない。
隣の席の泉くんがまた男っぽくて女子にモテモテ、それが余計こわい。
そんなとき、新クラス交流行事でクラス選抜スポーツ大会が…しかも先生がものすごくテキトーにチームを決めたので、泉くんと同じサッカーチームに。
超絶運動音痴な沙緒ちゃんにとっては死刑宣告。
でも泉くんが忍耐強く特訓してくれたおかげで活躍でき、お礼を言っていたら…なぜか「つきあってください」と言ってしまった。
2018〜「シーク様とハーレムで」
ウェディングベル、花嫁姿…だが、花嫁は笑顔ではない。知りもしない人と結婚するのだから…
少し金銭的に苦労しているが、普通の女子高生である沙凪ちゃんは恋にも興味がない。学費タダの特待生としてでなければ学校にも行けないほど。
ホテルでのバイトの最中、奇妙な青年に人に見つからないところに連れ出してくれ、といわれる。
そして自殺しようと言い出す彼を止めた翌日、学校の前にすごい高級車、王子様の求婚…
今までの実績、現在の地位
かなり苦しい時期もあったが、「AKB48」とのタイアップで本誌連載、それから名実ともトップレギュラー。
個人的な感じ、思い出
ちょっとラフな絵だったが、ギャグもよかったし心の動きもうまい。
意外性のあるラストもよかった。
デビュー後第一作の安定した正統派のムードもよかった。
これからも丁寧に心の動きを描き、感動できる作品を描いて欲しい。ファンタジーを混ぜて心の動きを描くのなら、魔法のアイテムをばら撒く観察者でトリックスター(要するに「アウターゾーン」のミザリィ)が様々な悩みを抱える主人公に関わるホラー気味の作品も合うかもしれない。
増刊連載と、その絵などの可愛らしさや美しさ、一度心を深く切り下げる話のうまさは見事だった。どう花開くか実に楽しみ。
本誌連載は、題材はともかく何より嬉しい。というか三年は前にしているべきだった。
話の序盤での衝撃を与えるシーンが、いつも強烈。もしホラー作家だったらさぞすごいだろう、と思う反面、ホラーが好きではない僕にはホラー作家じゃなくてよかった、と心底思ってしまう。
…うん、家族の問題から、じゃないと読んでて楽しい。
最近の作品の、圧倒的な力は毎回深く満足している。