水無月真 (みなづき しん)
公式サイトあり、リンクへ
作風概説
しっかりした線で、元気さが内面からあふれ出す整った絵。照れる表情は細かなトーンワークを使っていてふわっとした感じがある。色気も必要に応じて出せる。最新作では目が円に近い感じになり、ふしぎな迫力と可愛らしさにつながっている。
風や光、水を縦横に使った繊細な感情描写も巧み。
さわやかな甘味もあり表情も豊か。画面構成も大胆で無駄がない。
背景や小道具がものすごく緻密で正確、無駄がなく中学時代をビデオで見ているような現実感がある。
アクションのうまさは第一級!スピード感と迫力が素晴らしい。
ストーリーも非常にうまく、男の子の気持ちもよく描けているし読者をオチに向けてミスリードすることさえできる。中学生の心理、行動もリアルに描かれている。会話のユーモアも絶妙。
指などに「うふふ」などとちょっとした気持ちを書くことで、楽しく状況を盛り上げ伝えることができる。
とにかく読んでいて最高に楽しい!
代表作
2003「はんどめいど@PLANET」
部員わずか四人の弱小地学部、文化祭を前に廃部の危機。部長の柿崎実ちゃんは週番のパートナー、唐沢くんを命令権を餌に泣き落として文化祭まで仮入部させた。
地学部の活動は地味そのものだが、実ちゃんは去年「高津先輩」が作った恐竜の展示などを熱っぽく語り、今年の地球儀に情熱を傾ける。
そのハイテンションな姿に驚く唐沢くんは、「特別」な好きが自分にはないことに気がつく。そして高津先輩への嫉妬が芽生え、それがきっかけで事故が…
緻密な背景描写、的確なストーリーと構成、見事なオチで度肝を抜いたデビュー作。
2003「スカートめくりラプソディー」
中二にもなってスカートめくりが大ブレイクしてしまった”西中の小学生”こと二年三組。最後の一人、千星ちゃんを元凶の川上夕人が「三日間逃げ切ったら一週間女子掃除免除」を賭けて狙い宣言。仲良く楽しんでいるみんなに千星ちゃんは呆れ気味。
襲われては撃退を繰り返す中、ふと放課後二人きりになってしまって…突然彼が迫ってきた!
パンツの連発はもちろん、楽しいドタバタに暖かい恋を交えた傑作!
2004「KISS ME ダーリン!!×3」
三人娘のお弁当トーク、彼氏がいる結奈ちゃんにキスの経験があるかという爆弾話からいつのまにか、三人でファーストキス競争をしよう!と盛り上がってしまって。
お色気でうぶな男子に迫る久香ちゃん、人気の高等部の先輩に記念にと放課後の今使っていない図書館を予約する凛…さて二人の挑戦は?そしてどうにも意識してしまう結奈ちゃん…
とにかく楽しい傑作!
2004「スクランブル・エッグ」
夜に猫のモモを探していると、不思議な服装の人が抱いていた。その彼はいきなり「ばけるかもしれない」「トキシアの卵が寄生している」「違う世界から」「などと…どこかおかしい人?と思って逃げ帰った。
近所で動物の失踪が相次いでいると聞き、そして…またモモが行方不明に。彼を見つけて問い詰めてみると、彼も協力して探してくれて…見つけたモモは怪物に変貌した!
が…意外な展開にドキドキ、抜群に鋭いアクションシーンにわくわく、そしてふんわりした面白さにほっこり。
構成が明らかに連載第一話なのが少し気になるが、連載としてはとても面白そう。
2004「帰りみちの約束」
みんなは恋話に持っていこうとするけど、唯ちゃんはあまりそういう話をしたくない。両親の離婚で、「そんなにがんばって恋してみて とちゅうでイヤになったときはどうするのかな」となんとなく入りたくないのだ。
転入生の男の子、佐竹慎一くんは初対面で不思議な視線をくれて、そしてなぜか初日から一緒に帰る。川と土手に感動する彼、むしろ自分はもう会えない父と遊んだ思い出が…
強引に友達になってくる彼と、少しずつ心を通わせていき、同時に父親への手紙で心の変化を静かに綴る。
そんなある日、雨に降られて橋の下に逃げ込み、互いを男女と意識してしまった。そんな時突然母親の再婚話が…
見事なミスリードとどんでん返し、自然や手紙を使った巧みな心理描写など超絶技巧を活かし、とてもしっとりとしたムードにまとめた60ページ長尺の最高傑作。
2006「魔法のおとなり」
塩崎先輩に憧れている瑠璃ちゃんに、突然見知らぬ制服を着た男子が話しかけてきた…が、他の皆は転校生として受け入れている。
誘われて準備室に入ったとき、彼は正体を見せた…悪魔のトイドリット・シュタイン。瑠璃ちゃんの先祖と彼の一族が契約したらしく、願いを一つかなえてくれる、と。
でも願いどうこうより、紛らわしい言葉で親しく話しかけてくるのでみんなが騒ぐ方がたちが悪い…
そして彼は塩崎先輩との恋をかなえてくれる、と魔法の卵を渡してくれたが、願いが100%でないから失敗してしまった…
深い省察とテンポよい面白さ、魔法シーンの華麗さがうまく調和した期待の新シリーズ。
今までの実績、現在の地位
2002年大量デビューの一人で、増刊巻頭カラーの期待株。
「ネクスト☆ジェネレーション特集」で本紙別冊付録にも登場、増刊のリニューアルに伴う連載開始と大活躍の実力派。
個人的な感じ、思い出
デビュー作のオチには見事にだまされた。それに至るミスリード、テーマの表現とラブの進行も見事だった。
デビュー時点からずば抜けた力があるが、なんとなく完成されている印象。ただ、何よりとにかく楽しいのがいい。
繊細な心理描写もできることに驚かされたし、これなら本当に感動させる話も創れると確信した。
すぐにでも連載して活躍して欲しい。
増刊の連載というのは、本誌連載を待望している立場では少し残念なのだが、面白さと構成力が連載でどうなるかじっくり見るにはいいチャンスで、楽しみにしている。