宮本千裕(みやもと ちひろ)
作風概説
はっきりした線で巧みに日常の輝きを表現する。明るく後味がいい。やや稚拙な印象を持つ絵を上手く利用し、的確に周囲から人の心を描写していくため、説得力が高い。
青春の爽やかさが絵の内面から、香りの形でにじみだしている。明るい笑顔がとても魅力的。
代表作
96「今日もこんなカンジっ!」
君ちゃんと紀市くんはとても仲がいい。端から見れば完璧に付き合っているけど、告白もしていない。そんなある日、男子がやっかんで紀市を袋叩きにし、その興奮からか突然紀市が君ちゃんにキス!
ついなんとなく、といわれてショックを受けた君ちゃんはあてもなくさまようが、捨て犬に対して紀市がとった態度から彼の本当の優しさを思い出して。青春の香りが高く漂う佳作。
97「夏の決心」
水泳部の長谷川先輩に夢中な沙夜架ちゃんは河童のお守りを渡して励ます。でも友達の森友さんからお守り(実はただのアメ)のお返しをもらったのを目撃され、誤解されて叩き返されるけど。さわやかな夏の空気とはねる水がとても心地よい。
99「春のアルバム」
受験生なのにくじでアルバム委員に当たってしまった琴子ちゃん。受験に失敗する、というジンクスもあっていやいや行った委員に優等生で優しいかつてのクラスメート、能勢くんが。
受験が迫り、疲労から判断ができなくなったのか窓を開いて風で写真をぐちゃぐちゃにしてしまい、後始末を引き受けた琴子ちゃんを能勢くんが手伝ってくれた。試験の前日、能勢くんの合格を知った時、胸に痛みが走る。
そして合格発表の時、合格なのに思わず泣き崩れ、初めて自分の気持ちに気付く。そして告白しようと思い出あふれるアルバム委員の部屋で…。受験のプレッシャー、その中でどんどん成長していく姿、そして卒業の切なさと男の優しさを鮮やかかつリアルに、空気の缶詰のように描写した傑作。
今までの実績、現在の地位
元々作品数が少ない。近年登場していない。
個人的な感じ、思い出
最近その、中学時代の雰囲気と感情を直接よみがえらせるような作風に一気に引き込まれている。