三月トモコ (みつき ともこ)
作風概説
ウェハースの軽さと軽い甘み。軽く口に砕けるように、情景と情感が一気に伝わる。
磁器のように細かくつややかな美しさがある。細いが力強い線。
男のあごから首がかなり細長く、妙な印象になるが色気は強い。体や服の線の色気、手の精度も水準が高い。
とても魅力的な視線を描くこともできる。
話は大胆で、心情描写が丁寧。ものすごい顔の表現もある。かなりリアルに、大型犬の表情を描くこともできている。
一般に背景は非常に簡素だが崩れてはいない。小物、箱の質感なども丁寧。
演出能力も高く、さりげない表現が非常に高水準。
言葉の表現力が高く、男が丁寧に話す言葉が耳元に聞こえるよう。
とんでもない展開で信じられない状況を作り出す、恐ろしい組み立てのうまさと強引な大胆さ。
代表作
2012「わたし的にはわんこです。」
小さい子の頃の約束。
いじめられて泣いているせーた君に、気の強い玲ちゃんの一言、「わたしの犬にならない?」
…そして幾星霜。なんでもいうことを聞き、なでなでしてちゅっと頬にキスすると大喜びな、かわいいわんこに育ちました…
ごはんも食べさせるし、一緒の部屋で手をつないで寝てますがなにもありません。
友達に呆れられた直後、なんとなく彼の頭に、いつも見えている耳がないような感じがして…
2014「未完成なわたしたち」
一年一組の教室には、いつのまにか一輪挿しの花があった。
歩美ちゃんは友だちの梨音ちゃんを少し恐れている。
ある日、合唱の練習がうまくいかないとき、突然「ちゃんとしよう」と、徳沢さん…徳子と呼ばれる子が言い出した。
彼女はまじめすぎて学校で浮いているのだが…
ある日、徳子ちゃんが花の世話をしていて、ぬいぐるみを作ったりする子だと知った歩美ちゃんは、準備の手伝いに立候補した徳子ちゃんのあとから手を上げる。
でも「徳子化してるよね」「イイ子してるのが気分いい」などといわれて…
2015「君の目がみつめるもの」
女子が気が強い、でも吉野さんは例外的に、優しく見てくれる。
そんな彼女のことが気になる池田くんが、悲しそうな彼女を見て相談に乗ると、目をくりぬかれたぬいぐるみを多数届けられていると聞かされる。
守る、と誓う池田くんだが、ずっとそばにいるというのはつきあっていると変わらない。ふと意識してしまって、逃げてしまう。
そして、吉野さんが逃げるために引っ越すと聞き、家を訪れて告白する…
甘いラブストーリーからの強烈などんでん返しが効くホラー。
2016「10年彼氏と14歳」
わたしにはつきあって10年になる彼氏がいる…幼稚園のころとほとんど関係が変わっていない。
もう友達は一万回は聞いている「こうさいしょうめいしょ」の話とか。
もちろん、キスなど一度もしたことはない。
それでみんなに言われ、気持ちを確かめようと「こうさいしょうめいしょ」の話をしたら、彼は「なかったことにしない?」と…
2016〜17「氷山くんは家庭教師」全二巻。
リサちゃんは心の声が全部出てしまう、「本能のまま生きてる子」とも言われる。
そのパワーで氷山くんが大好きなのだが、彼はとことん冷静。
そんな彼女はある日、小テストで赤点を取った。教師が新婚旅行で補習ができず、大好きな氷山くんに教えてもらうことに…
そしてしっかり家に呼んだリサちゃん、彼の奇妙だけど、いう前によく考えているし相手も思いやっている言葉にますます夢中。
そして家庭教師の延長を頼んだけれど、やはり断られて…
読み切りが好評でそのまま本誌連載。
2018〜19「キスしたいってねだってみろよ」
茉莉ちゃんは小さいころから、キスするのはたった一人と信じている…今もラブラブの両親のように。
先月、画家として成功した父がパリに行くことになり、茉莉ちゃんはお年玉貯金で母の分のチケットも買った。
それで自分はおじさんの家に世話になる予定だったけど、そのおじさんは旅に出てしまっていて住む家がなくなっていた。さらにお 金も盗まれたが、母親を呼び戻したくないので警察にも行けない、天涯孤独の家なき子。
ひょんなことから、ポスターで見た芸能人男子のオーディションに天井から落ちてしまい、彼の家に引きずりこまれることに…
今までの実績、現在の地位
2012年、前歴不明で本誌登場。
ホラーオムニバスを中心に、かなり登場機会が多い期待株。
本誌読み切りの続きが連載になる、という異例な形になるほど人気。
個人的な感じ、思い出
とにかく作品がとても面白かった。
連載は心底うれしい。実力は確か、次の連載があったのもうれしい。
少し実力が発揮できていない、何かうまく力が伝わっていない感じがする。原作つきを一度試してみて欲しい。