水沢友希(みずさわ ゆうき)
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作風概説
楷書体の硬く正確な絵で状況を上手く表している。会話がうまい。独特の、固い甘さがある。
男の子の優しさを描写するのが実に上手い。
ストーリー展開も的確で、盛り上がりと後味がとてもいい。
近作では絵に無駄がなくなり、かなり甘い。
代表作
98「ナチュラル・ブルー−ときめきを届けて−」
まりちゃんが写真部に入部したのは、一枚の女性の写真に感動したから。それを撮った天根先輩はお調子者だったが、やっぱりかっこいい。夏合宿の時ミナミさん、例の写真のモデルで写真部のOGがいて、天根先輩との関係が気になる。そして昔ミナミさんが天根先輩を好きだった、と告白したのを立ち聞きして切なさから天根先輩が好きだと自覚し、写真部をやめる決心をするが。切なく的確に、写真に心を語らせている。
98「笑顔のきもち」
美夜子は最近笑顔が可愛い弟の真に彼女ができ、複雑。もう一人の弟同然の幼なじみ、誠も他の女子に告白されて、それも複雑。ある日愛称の「マコちゃん」と呼ぶな、と怒鳴られる。また自分が真のように笑顔ではなく、真面目な生き方しかできないのにそれを利用されていることに気付き、それらの負の感情から真の彼女へのクリスマスプレゼントを隠してしまうが。複雑な心理を風邪の進行とに重ね、巧みに描いた作品。
99「桜時間」
夜、桜の下で何かを埋めている篠原さんを目撃した矢沢。何を埋めたのか気になっていると、殺して埋めたと応える。冗談と紛らわすがその深刻な表情が心配。ある日ひょんな事から彼女の兄が結婚すること、そしてその兄が連れ子どうしの再婚で血のつながりが無いことを知る。
笑顔を失いた彼女が心配で、桜の下を掘り返した彼が見つけたのは一通の手紙。男子の女子に対する思いやりと心配、率直な恋愛感情を最大限に描き、神秘的な感覚で彩った佳作。
99「聖夜の訪問者」
好きな人は大好きな従姉妹の恋人。抑えた想い、ただ彼のオルガンで歌うのが幸せな由希。でも、彼は由希をかばって事故に。助からない、もし助かっても右手は動かない!神様助けて、と祈ったが、新月だったので応えたのは悪魔。命と引き換えに、その願いをかなえてやる・・・
次の満月、クリスマスイブに先輩のオルガンで歌を、それまでの命でいいからとその契約に同意した。その通り先輩は治ったが、悪魔は静かに容赦なく誘惑する。本当はお前が彼女になりたいんだろ、この薬を恵先輩に飲ませればあいつはお前のものになる。あとわずかの命、どんな夢でも、と。
静かな雰囲気で、誘惑に負けない魂の真実を美しく描いた佳作。痛みさえ感じるほど、人間の心の美しさを描写している。
2000「世紀末KISS」
クリスマスイブに、つきあっていた先輩にふられ傷心の千香・・・無駄になった手作りケーキを叩き付けてしまったのは、遊び人の丹羽くん!謝るついでに、年明けまで恋愛ごっこをすることに。せっかくだから楽しまなきゃ、とわざとデートに遅刻したり、ドキドキしたり嬉しかったり・・・そんなある日、彼が大遅刻して・・・熱があったのに点滴してまで来てくれた。そして、看病してあげながら、ふとキスを!暖かく、甘やかに恋心の成長を描いている。
2009「デリシャストラップ」
テニス部一のイケメン、カズ先輩がラブリーランドの恋人同士しか入れない限定チケットで誘ってくれて幸せな、甘いもの大好きなあおいちゃんがいきなりデリシャス同好会に強引に誘われた。
高校生パティシエNo.1決定バトルに参加したいのだが、三人しかいない部員の一人を辞めさせたから試食係として参加してくれ、と。
甘いもの目当てと限定チケットで脅迫されて引き受けたけれど、いきなり基礎のスポンジ作りから修行させられ、恋愛も邪魔され…
今までの実績、現在の地位
「Amie」の新人賞でデビューした。「なかよし」に引き取られたが、もともと「なかよし」の増刊は少ないので、心配。
一時期増刊の登場数が異様に多かったが、本誌登場の気配はない。
最近角川書店から単行本『電池が切れるまでの仲間たち』が出た。「なかよし」の増刊にも引き続き出るようだが、今後はよくわからない。かなり登場頻度は低いがたまに出る。他から単行本を出すこともあるらしい。
個人的な感じ、思い出
硬質な描写と話の組み立ての上手さには感心している。実力はあるので、もっと活躍して欲しいと願っている。