西炯子 (にし けいこ)
作風概説
省略が多く線の細い絵。多様な年齢や体格を、印象だけ強く出すように描き分ける。アイアイのような印象すらある目の大きさも。
恐ろしく淡々とした描写だが現実感と組み立てがとてもうまい。
男の切れ味がよく深みがある。
口から喉はするっと抜けるのに、腹の中に落ちてからとんでもないアルコール度数の高さに気づき、豚と牛の骨と内臓を10時間以上煮込んだような濃厚さに目が飛び出そうになる…そんな感じ。
代表作
2011〜16「恋と軍艦」全8巻。
港を見下ろす丘の上にある中学校に通う遠藤香菜ちゃんはなかなか友達の輪に入れない。
若いハンサムな男性の町長の車にぶつかりそうになり、優しく声をかけてもらって昔のことを思い出す。それ以来幼い恋に…
彼女の両親は別居しており、引き取った母も多忙で疎遠、ほとんど祖母と暮らしている。
ふと疎外感に教われて学校まで走ったとき、足に絡まったビニールハウスのビニールシートにおびえて走り回り、奇妙な家に駆け込む。そこには和服で刺青をした、髪が短く無精ひげだらけ、乱暴な日本語を使う金髪白人の若い男性がいた。
そこには町長さんと同じレモンの匂いがするのだが…
2017〜「キスする街角」
同居している祖母の幼体が悪くなった…看病をしていた小春ちゃんは、ふと祖母あての手紙を見つけてしまう。
まだ存命の祖父とは違う、別の恋人との手紙?祖母が亡くなってからの小春ちゃんは、手紙を捨てることができない。
秘密の重さに耐えきれず、旅行に出かけてしまう。
そこで出会った少年の祖父が、手紙の宛先…彼女は行くつもりだったが、同僚だった祖父が事故にあって、どうしようもなく遅れた…
やや間隔の空くシリーズ。
今までの実績、現在の地位
映画化もされた「STAY」シリーズなど、漫画だけでなく挿絵やイラストでもきわめて広い範囲で活躍している。
新連載ラッシュで「なかよし」登場、長らくしっかりと雑誌を支える土台となった。
個人的な感じ、思い出
まあとにかく面白ければ、読者にいいものを与えてくれれば…と思っていたが、想像以上に読者のことを思いやり、成長の糧となりえる、素晴らしい作品となった。
新連載も何の不安もなく期待できる。