大坪愛生(おおつぼ なるみ)
作風概説
優しく爽やかな、心温まるストーリー。絵に頼らない感情表現が上手。
以前の絵はやや平板だが、優しさが伝わってくるし背景はしっかりしていた。最新作で大きく変わり暗い感じで、強いつやを感じる刺激的な絵になっている。
ストーリー、会話が非常に巧み。恋愛関連ではちょっと不器用な感じの表現が面白い。
まっすぐな優しさもいいし、一番得意な、どうしても入れ違って会えないすれ違いラブの可愛らしさはかなり強烈。
代表作
1996「フラワーガーデン」「るんるん」連載、単行本なし。
桜井かすみと母の花屋に新しいバイト、秋元樹が入った。
口は悪いけど花についての知識はピカ一の彼に教えられ、少しずつ花と、ついでに人生そのものも勉強していく。同時に彼の事も気になって。心温まる話が詰まっている、知られざる名作。
1997「天使のたまご」るんるん連載、単行本なし。
小野寺愛、聖音羽看護学校の一年生。元気だけど血が苦手で不器用。でも、同じく看護婦だった母譲りの温かい心が多くの患者を救っていく、優しいストーリー。
1999「笑う男」
海辺で(彼氏がいるのにいないと嘘ついて)ナンパに応じた尚子。でも、その彼にはふと危険な横顔があり、夏が終わってから凄まじい恐怖が待っていた。
ストーカーの恐怖を濡れた衣服がまとわりつくような恐ろしさ、そして軽い遊びの代償の面も含めて描いた作品。
1999「BE WITH YOU」
イブ前、ケーキが生クリームかチョコクリームかでケンカした二人…仲直りしようかな、と思った美晴ちゃんだが、携帯電話は切れている、こっちからかけたら圏外、見つけたと思ったらバスが出てしまったり店の商品をひっくり返したり、とすれ違いにつぐすれ違い……最高に楽しいすれ違いラブ。最後のアツアツには湯気が立つし、正直言って腹も立つ。
2002「ムーンライトキッス」
水着選びに夢中なお年頃の奈津美ちゃんがある日、遊びに来ていた桂太を海に誘ったりしていて…襟元から胸が見えそうだからブラぐらいつけろと言われる。
でも、そんな事を平気でいうのは女の子として見ていないから?次の日、プール掃除で桂太を含む男子と遊んでいたら水をかけられ、ブラが透けてしまってまた恥ずかしい。
意識してしまうのが空回り、女の子として見られていないのが悲しくて水着の入ったカバンを叩きつけた帰り道、彼が夜の学校、二人だけのプールに誘う。
男女とも成長し、互いの性を意識する一瞬をまっすぐな視線で切り取った、衝撃さえ与える傑作。
今までの実績、現在の地位
「るんるん」では連載常連だったが、単行本は出ていない。
最近復活し、登場が増えてきた。
個人的な感じ、思い出
連載作品がとても好きだった。できれば単行本にして欲しいと思っている。心温まる、まっすぐなストーリーと独特のくすぐったくなるような、不器用な可愛らしさがとても魅力的。
最近の洗練とは逆の方向に行く成長も面白いし、とことんおバカな女の子の話も可愛い。バカだな、といいつつかなり共感し、笑うことができる。
「ムーンライトキッス」は絵の変化に驚いたが、話としては最高だったと思う。
個人的にはすれ違いラブが好きなので、もっとやってほしい。