青月まどか (せいづき まどか)
作風概説
クリスタルガラスのように硬質のくっきりした線で、画面から飛び出してきそうな華やかと明るさ、何とも言えない迫力がある。デビュー当初はシャンデリアのように輝きが過剰だったが、2012年ごろではそれが抜けて澄み切った美しさが出てきた。
体の線もとても生き生きとしていて、髪の毛がいたるところに飛び回っている。
少しつんと来る甘みも感じる。決めシーンのカッコよさも特上。
会話がコミカルで設定も丁寧かつ大胆。ギャグ絵も大胆でサブキャラも結構おいしい。
特に、非常に深い部分の「邪悪」を描くのがうまい。
派手な画面と分析すればスタンダードなストーリーがとても読み心地がいい。
代表作
2006「ハニー*ブラッド」
吸血鬼のクオーター、樹里ちゃんは男子の人気者で、毎日血には不自由していない…幸い吸われた人が吸血鬼になることもない。
でも、やはり一度飲みたいのは、極上のご馳走とされる美少年の血…そう、蓮くんのような。ただ、彼は彼女を蚊呼ばわりして全然吸わせてくれない。
ある日、樹里ちゃんが虫歯になって牙を抜かれ、その間血は吸えずトマトジュースで代用するしかないけれど、元からトマトは嫌いで…
血を吸うのを我慢すれば蓮くんは優しい。でも理性も体力ももたない…
吸血鬼の恋にからめ、未熟な思いの成長をコミカルに描いたとても楽しいデビュー作。
2006「ミラクル◆メーカー」
クリスマス当日にふられた羽奈ちゃんが自転車で、トナカイにぶつかった。若いサンタがお詫びに手伝え、と。
自然に抱き寄せるようにするし、当然のようにピッキングで各家に入っていくしで振り回されるけど…
華やかで楽しいが、奇跡というテーマがしっかりしていてとてもいい。
2007「プラチナ*キス」
美貌を武器にたくさんの男の子をかしずかせている真咲ちゃんが、ある日学校の理事長に呼ばれると、いきなりとんでもない美少年にぶつかった。
だが彼は「二度とオレにさわんじゃねぇっこのっドブス!」ととんでもない言葉を。理事長の息子である彼、秋久はひどい女嫌いで、それを心配した父親が共学の自校に編入させたのだ。そして女嫌いを治してくれ、といわれた真咲ちゃんだが、自分も結構恋愛経験値が低いのでどぎまぎ。
2008「ダーリン オンリー ユー!」
超ブラコンの柚季ちゃんは兄に彼女ができてしまって絶望。そんなときに兄そっくりの男、敦士くんに出会ってしまい、いきなり「運命っだと思いませんか?」とか不審者まっしぐらで迫ってしまう。
学校を探って待ち伏せたり、今度は兄がデートしているのを尾行して彼に見つかり、そのまま二人で逃げたりと怪しい行動ばかりになってしまい、彼も流されるように…特に兄の思い出が詰まったマフラーが川に落ちたとき、真冬なのに敦士くんは川に飛びこんでくれた!
でもそれで、家で彼に着替えを貸しているところを兄に見つかって…
2008〜9「セレブな奴隷」単行本全二巻。
セレブの集う全寮制名門校私立光理学園、中でも頂点に立つお嬢様の橘華…がある日、突然父の会社の倒産で自分の屋敷も全て失い、学校にもいられないし帰る場所もない。
そんな彼女に救いの手が…学園の最高VIP、セレブ中のセレブ小野寺良介、高須賀要、倉持光太郎の三人に関する頼みを聞いてくれれば学費全額免除との申し出。
それでほっとして寝たら、起きたときは知らない部屋、メイド姿で男に押し倒されていた…三人の従順なメイドとして仕えよ、と!
サブキャラに本物の邪悪の気配があり、それを吹っ飛ばす輝きが魅力の人気作。
2010〜12「ミスプリ! Miss
Princess」(原作:Ruby Party)単行本全四巻。
セレブの間で個人執事が流行している。
各種武道に優れ女の子が困っていればすぐ助ける、最高の美少年にしか思えない姫岡こころちゃんはボーイッシュですが女の子。
普通のカフェの娘だけど、よく働いてお金を貯めて、執事を雇って「ミスプリ」に出るのが夢。執事派遣会社の最高峰、「バトラー」による国内最大規模のコンテスト、唯一の出場条件は自分の執事を持っていること…でもそのための貯金が入ったカバンをひったくられ、追っていたとき車に轢かれかけた老女、とっさにそちらを助けて預金を失った。
だが、助けた女性がくれたメモ、行った先は幽霊屋敷…そこで風にメモが飛ばされて屋敷に入ってしまい、とろうと塀を越えたら…次々出てくる四人の超絶美形男子。
そこに助けた老女がやってきて、彼女は執事派遣会社「バトラー」の社長で、自社最高の四人の執事をこころちゃんに貸し与えてくれた…
華やかさいっっぱいの新連載!
2019〜22「東京ミュウミュウ
オーレ!」原案・講談社単行本全八巻。
日向あんずちゃんは花の女子校生なのに絶滅危惧動物種に興味津々。
そんな彼女がハロウィンに出かけ、ナンパされている女の子を助けた、そうしたらそのナンパ男がなんだかおかしい。
そこでカボチャ仮想の男が助けてくれた、超絶美形で知られるクラスメートの渋谷葵くん。
と思ったらいきなり怪物が出現…鉄骨に潰されそうになった瞬間、渋谷くんが…
今までの実績、現在の地位
デビューしたばかりだが登場頻度が高く、本誌登場!
増刊での連載も安定し、本誌にも再登場するなどとても人気が高い。
しばらく登場しなかったが、ついに待望の本誌連載!…と思ったらかなり異様な終わり方。
何年か別のところで活躍してから2019年に連載。
個人的な感じ、思い出
明るく楽しいとてもいい作品だったのでこれからも色々楽しみ。
とにかく明るさを失わず、どんどん大胆な挑戦をして欲しい。
変な輝きが抜けるとぐっと美しさが増してきた。これからも持ち前の表現力と見せる力を生かした、濃厚並ぶシーンをガンガン楽しませて欲しい。
本誌登場は眼を疑うほど嬉しかった。この華やかさが本誌読者にも受ければいいが。
「セレブな奴隷」シリーズの人気は作家の活躍は嬉しいが、作品自体の「奴隷」という要素にとても抵抗がある。
別の本当にいい作品でブレイクしてほしいのが本音。
本当に「邪悪」を描けるのなら、それを軸に描いてもいいのでは…
本誌連載はとにかく嬉しい。いるだけで誌面が華やかになるぐらいの魅力。余計なことは考えず好き勝手に暴走して欲しい。
その連載の終わり方…その最終回に、膨大なまでにポジティブなメッセージを詰めこんだのは感動した。
そして本誌復帰は本当にうれしい。とんでもない作品だからこそ、それをきっちり仕上げる実力は本物。