白沢まりも（しらさわ まりも）
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作風概説
非常に美しく繊細で深い暖かさと不思議な哀しさを感じる、いたずらっぽくとてもかわいらしい絵。甘味が強く満足感がある、ふわふわで非常に細かく泡立てられたメレンゲクリームの感じが強いが、別のどこかに蜂蜜の鋭い甘味も隠れている。
表情も非常に豊かで感情表現力が高く、幼児からおじさんまで多彩なキャラクターを使いこなせる。
衣服、体の実感が非常に高いのも特徴で、幼い柔らかさが実によく出る。
ストーリーもとても上手く、少女の心の微妙な揺れをきれいに描いている。不思議と心の琴線に響き、悩みを自然に優しく引き出して深いところから励ましてくれる。
童話風の可愛いファンタジーも得意。
代表作
９６「A little summer days」
髪を切った美紀。夏休みに悠木先輩と小夏さんがつきあい初めて、気持ちが邪魔になったから。そして昔告白された達郎が他の女の子に告白された、とも聞く。
達郎を好きになっていればよかったんだけど。小夏さんと悠木先輩もけんかしているみたいで、夏が深まって切なくて、告白して…苦しい時に達郎がそばにいてくれた。やさしく、可愛らしい感性を全開にした名作。
９７「笑顔のフォトグラフ」
日課にしている朝の読書。でも、ある日宮口くんが勉強していた。彼に勉強を教える事になって、おとなしい秋野ゆかちゃんにはちょっと面倒。
でも互いを知って励まし合うようになり、そして遠足の時のいっしょに写っている写真をお守りにする。でもそれを落としてしまって。受験期の不安と人間的成長を巧みに組み合わせた作品。
９８「スノー＊フレイク」
体が弱い真波ちゃんが昔病院でいっしょだった達也くんと再会した。語り合ううち、昔夢見ていた看護婦の夢を、病気が再発したから諦めた事を告白する。
達也くんは彼女を看護婦学校に連れて行き、夢と昔、手術の時におねがいした雪の妖精の事を思い出させるが、真波の彼氏、日高は心配ゆえそれに反対する。そして、達也くんも急な別れを告げる。切なく優しく心を励まし、支えてくれる最高傑作。
９９「約束の夏休み」
登校拒否中の美夜ちゃんを訪ねてきたのは近所に逆帰省してきた大地くん。連れ出されたのは外に出すため、親に頼まれてと疑う美夜に彼は昔から好きだったことを告げる。彼は動物園に連れ出してくれて、そこで想いの強さを受け止めかねて美化しないで、復讐ばかり考えてた、とまで言って、でも彼は優しく受け止め、励ましてくれた。
深い愛に満ちた、優しく励まして勇気を出してくれる最高傑作。
９９「マジック･ピンク」
内気な花音ちゃんが憧れの飯村くんと同じ美化委員！でも、あいさつもできないし顔も合わせられない。
そんな中、花壇の中から、小さなピンクの羽の天使、アユアが現れた。アユアは花音ちゃんの中に入り込んでかわりに飯村くんに話しかけてくれたり、真剣に優しく励ましてくれたりする。でもある日、いきなりアユアが花音ちゃんの体で、「好きなの」の一言！
6kmのランニングコースを二周したほど可愛い、それでいて深く心を温め、励ましてくれる傑作。
2000「夢をかなえる夏休み」（原作；小林深雪）親友の涼夏が自分の恋人、太陽とつきあっていることを知った星羅。傷心の中、助けてくれた家出中の銀河と、なんとなく同居生活を始めて…。とても柔らかな優しいタッチで、悩みを抱えた者同士が支え合う姿を描いている。
原作として講談社Ｘ文庫ティーンズハート「願えばきっとかなう」も発売中、それからの星羅と銀河の遠距離恋愛が描かれている。
2000〜2001「ODAIBAラブサバイバル」（原作；小林深雪）単行本全二巻。
星羅の妹で正義感と空手が強い礼羅が、お台場の学校に転校。先生はかっこいいし友達もできた、隣りの席のナンパヤロー（誤解）嵐はうっとうしいけど楽しい。そんなある日、友達がストーカーに悩み始め…青春をまっすぐ語った「ザ・ネクスト」優勝作品。
2002「仔犬ダンの物語」単行本一巻。同名映画の原作。
両親の離婚に苦しみ、心を閉ざして一人祖父のところに行った真生ちゃんと、目の見えない子犬を拾った千香ちゃんが出会い、仔犬を助けるために奮闘する。前編で辛い状況を積み重ね、後編で一気に解決していくのはたまらなく感動した。
2003〜4「なっちのはじまりタイムスリップ」「ティンティンTOWN!」で放映されている番組のコミック版。
なっちが色々なものの始まりを図書館の高橋さん、タイムスリップができるロボットのスリッピィの協力で訪ねていく21世紀版「まんがはじめて物語」。
2006〜7「ボンボンビザール」（原作／橋本裕志 原案／ゼネラル・エンタテエイメント）単行本全二巻。
おまじないのおかげで好きな一哉くんと同じクラス、しかも席まで隣になって大喜びの青島ななみちゃん。でも彼は占いやおまじないが大きらい。
クラスメートで恐れられている不良の丸山さんに、強引に恋のおまじないを教えるよう迫られ、困っている時に四色の四葉クローバーが手に吸い込まれて消え、突然使っていないはずの旧校舎に。その「Bon
Bon Bizarre」と張り紙がある部屋に入ると、そこにはおまじないの本の山がある。
その中にある「Bon Bon Bizarre」とかかれた本を手にとると、不思議な二人組の青年が話しかけてきた。「その本にはビザール国でもとびきりよく効くおまじないがのってるってことさｖ」…。
その本に載っていたおまじないを丸山さんに教えると、火事まで起きるとんでもない事態の連続で、結局丸山さんの恋がうまくいってしまった。そしてなぜかななみちゃんの下駄箱が恋愛相談箱になっており、手紙の山が…どうしよう！
恋とおまじないにあふれ、後半では魔法戦闘も意外と迫力がある楽しい作品。
2007〜9「夢みるエンジェルブルー」単行本全四巻。
おしゃれが大好きだけどなかなかお金がない森野天音ちゃんがある日、中学生なのにヘアメークのカリスマとして知られる中山葵先輩に強引に誘われた。
行った先には大好きなエンジェルブルーの、未発表の服がたくさん！葵先輩の姉がエンジェルブルーのデザイナーで、少しユーザー世代の意見が必要だったのだ。
それでドキドキしている彼女は、普段はおしゃれなんかに興味がない、と言っている高野さんが服を選んでいるのを見かけた。塾で好きな人にアピールしたいのだが、太っている彼女には似合う服がない、と思い込んでいるのだ…
そんな彼女に似合う服を見つけようと奮闘し、そして葵の姉は天音ちゃんの構想を実現すべく…！
おしゃれのすばらしさが可愛らしい絵柄で画面狭しと表現される、楽しい快作。
2010〜「野ばらの森の乙女たち」
音羽女学院高等科…名門お嬢様学校で、寮に入るのが待ちきれない、おさななじみの初美ちゃんとさくらちゃん。
初美ちゃんが階段から落ちかけて助けてくれたのは王子様のような人だったが女性で、財閥のご令嬢で成績トップの三条泉さま。その隣にいるのが旧華族のお姫様、白川繭子さまの「音羽の華」コンビ…
そして朝く目が覚めた初美ちゃんが散歩したら、馬に乗っていた泉さまとぶつかってしまってドキドキが止まらない。
さらに初美ちゃんとさくらちゃん二人で外で食事しようとしたら、繭子さまが泣いていてそれを泉さまがキスで慰めていたのを目撃してしまい、つい自分たちもしそうになって…
今までの実績、現在の地位
「ザ・ネクスト」優勝で本誌連載を見事に勝ち取り、その後「モーニング娘。」関係映画のコミカライズを中心に活躍。
ショートコミックで本誌連載をしていたこともある。
2006年に久々の本誌連載に復帰、それ以来やや特殊なポジションだったがコンスタントに本誌にも出続け、2010年やっと本格連載に復帰。
個人的な感じ、思い出
「ラブサバイバル」時代の絵の可愛らしさはもう真っ白に萌えつきた…あの可愛らしさを活かした作品ができればいいのだが。
もし「スノー＊フレイク」と「約束の夏休み」を読むことがなかったら今生きているか疑わしいほど自分を見つめ、受け入れて絶望から歩き出す助けになった。ある意味命の恩人とも思っている。
「モーニング娘。」関係の作品だが「17才」は数分間体が動かないほど感動した。本誌連載でこういう作品を描くのは難しい以上、皮肉な幸運だったかもしれない。
本誌連載復帰は非常に嬉しい。ちょっと不思議な可愛らしい話には定評があるので、題材も合っているし楽しみ。欲を言えば小さい妖精がほしかったが。その後も本誌読みきりに出てきてくれたのは安心した。
まだまだこの可愛らしさと、できればデビュー作の延長のような、高い表現力と構成力を生かせる作品を期待したい。
最新作は賭けに出たなという感じで楽しみ。