Dunk Like Lightning
この作品は井上雄彦作「SLAM DUNK」と野村あきこ作「空よりもたかく」、あさぎり夕作「コンなパニック」、あゆみゆい漫画、小林深雪原作「デリシャス!」、えぬえけい作「RsR」、高瀬綾作「ほしいのはひとつだけ〜Real
Love in 14〜」、早稲田ちえ「Summer Blue」、小坂理絵「セキホクジャーナル」などのクロスワールドパロディです。
他にも多くの「なかよし」系雑誌掲載作品の中からバスケ部の中学生が卒業して後、出演しております。探してみて下さい。
この作品を思い付いたきっかけは、ある時ふと、昔連載された「なかよし」の作品(あゆみゆい作画、遠藤察男原作「ようこそ!微笑寮へ」です。)を思い出した事なのです。連載終了からはや数年、今、そのキャラクターたちはどうしているのかな、連載終了時中三だから、今高校で、そしてそれぞれの青春を満喫しているんだろうな・・・と。
しかもそれがサッカーを題材にしている作品でしたから、そのヒーロー、誠は今頃「キャプテン翼」を始めとした別のサッカーマンガのチームと対決していたり、ドーハの悲劇に泣き崩れ、自分の脚で日本をワールドカップに連れて行くと誓ったりしているのかも、とも思いました。
そして、他の作品でも同じように、皆それぞれの未来が、青春があると思ったとき、ぜひともそれを描きたくなったのです。いくつもの連載の作品、その主人公たちが相変わらず元気に、大きく成長して一生懸命な青春を過ごしている姿を描こうと思い、それが自然に、なかよし男子バスケドリームチームのイメージに結びつきました。まあ、「なかよし」の連載作品に他にめぼしいサッカーマンガがなかったから、比較的多かったバスケを選んだのもあるのですが。
それに「SLAM DUNK」の続編を絡めようと思ったのは自然な帰結でした。参考にと見始めたNBAにも夢中になったのが面白いです。
クロスワールドパロディの構想には、無意識のレベルで伝説の怪作、「ファミコンジャンプ」の影響も否定できないです。
少女マンガにおいては、男子のヒーローたちはむしろ、華麗ではありますが主人公ではないです。あくまで主人公は女の子で、その相手役にすぎない、その彼らにも本格的な活躍の機会を与えたかった、のもあります。
この長い…順調に行っても、湘北と大和台が戦えるまで何年かかるか見当もつかない話を書いていて、ふと後悔したこともあります。
「空よりもたかく」「コンなパニック」を覚えている人はごく少ないのですから、無理をせず一臣と竜也を湘北新入生として使ったほうが、話作りは楽だったのではないか、と。
でも、この設定だからできたシーンで気に入っているものも多いですし、もうこの設定しか考えられません。
少し、この作品の謎について、誰にも聞かれていないですが解説を。
主な登場人物(「SLAM DUNK」読者へ。尚、「空よりもたかく」以外の作品のキャラクターのプレースタイルや進学先等の設定は各原作とはほとんど関係なく、事実上筆者の創作です)、本編入学式時点
「空よりもたかく」より
「コンなパニック」より
「デリシャス!」より(番外編の設定は無視)
「RsR」より
「ほしいのはひとつだけ」より
松浦哲太;179cm,71kg;ポイントガード。大和台高校新入生。努力家で総合力が高く、パスワークと3Pを含めたアウトサイドシュートに長け、ドリブルの突破力もあるガード。ディフェンスも強い。普段は冷静だが、興奮すると爆発的な得点力を発揮することもある。
失恋と怪我、双方の古傷を抱えている。
「SummreBlue」より
北田恭二;198cm,93kg;センター(アメリカではスモールフォワード)。中学二年のとき全国準優勝、三年の大会直前にアメリカに留学し、本場でもまれつつ活躍してきた天才的プレイヤー。
「電脳少女Mink」より
「SLAM DUNK」より登場している人物については読者の方が詳しいだろう。もし知らなければ・・・どこのBOOK・OFFにも全巻そろっているはず。尚、アニメ映画版オリジナルのキャラもいる。
「SLAM DUNK」終了の学年、選抜後の三月始めに行われた練習試合から話は始まるが、本編は赤木たちが卒業した春、花道達が2年になってから。
花道の怪我は完治している。
オリジナルの登場人物
湘北高校
海南大付属高校
序章
試合会場は静かだった。
ただ静かに、残酷な時が刻まれていた。
「大和台ファイト!」
「七緒さん・・・」
「卓巳くん!がんばって」
「あきらめないで、一本!」
悲鳴となった応援も、聞こえない。
ただ、無情に時は過ぎていく。
不思議と、いつもの試合では気にならない残り時間が気になる。この拷問には終わりがあるから。
ピピーッ!
ホイッスルが鳴り響いた時、ある意味安堵感が走った。
そしてそれが一番、敗者の心を押しつぶした。
湘北のメンバーは喜びに飛び上がっている。
特に桜木花道の喜びようときたらなかった。
山王戦で受けた傷から復帰して初めての試合、それでもう15リバウンド、そしてダンク5本を含む42点を上げている。ブロックも5!名実背番号(ごねまくって無理矢理取った)ともに赤木を継ぐ、県でも屈指のセンターである。
「すごいすごいすごい、桜木くん!!」
「はっはっはっ、見てくれましたか!これこそ天才の天才たるゆえんですよ晴子さん!」
「そうよう、天才よ!」
マネージャーの赤木晴子は興奮気味に叫んでいた。
「この間まで跳ぶこともできなかったのに、すごいわ!」
その声にざわめきが走る。同時に伝説が口々に伝わっていた。
初心者ながら信じ難い運動能力とセンス、ガッツで活躍、ついにあの山王を倒した伝説の赤頭。その風貌と傍若無人な言動でも知られ、ある層には圧倒的な人気がある。
「天才ですから!」
「りえこちゃん、まるで・・・・・・似てるわね。」
「秋衣先輩!いえキャプテン、ケタが違いますよ。」
「ううん、夏のりえこちゃんの活躍は劣らないと思うわ。」
どう見ても高校生に見えない、下手をすると小学生に見える女の子が体育館の二階廊下で頬を染める。
「さ、これからこっちの試合よ。確かりえこちゃんたちが入って以来、二勝二敗ね。湘北の方も見てくださることだし、がんばりましょ!」
「はい!」
「流川様・・・・・・・・・」
「どうしたの、ゆき?」
りえこのとなりで長身の女の子が目をハートマークにしている。そして、ふらふらと体育館の一角にある流川楓ファンクラブ受付に歩み寄っていた。
「もう、ゆきったら。」
「いいわよ。ゆきちゃん、お昼食べたら集合よ!」
昼休み、りえこは恋人、大和台キャプテンの七緒を訪ねていけなかった。
あまりにも無残なぼろ負け。湘北125大和台58のダブルスコア。
しかも湘北は大黒柱の赤木のみならず、選抜が終わって引退した三井寿をも欠いていたのだ。それを慰められる者はいないだろう。まして彼女は他校生で、これから大和台高校女子バスケ部と試合の身。
大食いのりえこには珍しく、食事ものどを通らない気分だが、試合を考えると無理矢理にでも腹に詰め込む他になかった。
母の心づくし、好物の自家製梅干し入り巨大お握りと丸一羽分のフライドチキンも食欲をそそるものではない。
そこを横から手が伸び、一つづつまとめてむしり取った。
咎める言葉は出なかった。
2mの天をつく巨体、そして燃える赤い髪。
「桜木花道!」
「ふん、ほへはふふぁひ!」
驚きと、どんぶり一杯分ご飯を固めたおにぎりをほおばった、屈託のない笑顔で気が抜ける。
「ふはん、(もぐもぐ、ごくん)部で取り寄せた弁当だけでは足りなくてな。つい手が。」
「ううん、もしよかったらどうぞ。元々食欲がなくて。」
「いかんなあそれは、これから試合だろう!食べんと持たんぞ!」
と、言いながら遠慮も何もなく、手も止めずに食べ続けている。
りえこに笑顔が出た。
「さっきの試合、素晴らしかったね、復活おめでと!」
満面の、屈託のない笑顔が応える。
負傷でバスケができなくなり、新人戦も選抜予選も出場できなかったこと、そして苦しい闘病を伝え聞いている分、りえこは信じられない思いがする。
「はっはっはっ、まあ天才ですから。」
同じリバウンダーとして、その発言は納得できる。りえこも抜群のジャンプ力と瞬発力を武器に、初心者なのにレギュラーを勝ち取ったのだ。
瞬発力は天性のもので、ある程度からは努力だけではつかないものだ。人間の筋肉の配合はあくまで先天的なのだから。
それはりえこにしても同様である。
「今日のリバウンドはすごかったです!あたしもリバウンダーだから、うらやましかったな。あんなに背が高かったら、どんなにゴールが近いだろう、ボールが取りやすいだろうって。」
「まあな。まあ才能と努力次第だな。」
りえこが笑い出したのを見て、花道は怪訝な顔だった。
会話が弾み、二人とも腹がこなれた頃に秋衣キャプテンの声、
「りえこちゃん、集合よ!」
「あ、そろそろ時間ですので。お疲れ様でした!」
「ああ、ごちそうさん。がんばりたまえ。」
りえこは知らなかった。
七緒が無意識にせめてもの慰めを求め、りえこを探していたことを。そして、花道との語らいが目撃されていたことを。
そして桜木花道も予想していなかった。その日の練習試合で、りえこが自分を上回る16リバウンドを上げることを。