戸川あき(とがわ あき)
作風概説
古臭い乱暴な感じの絵だったが、その頃からどきっとするほど感情描写力は高い。洗練されてきて後はてん書のように高い抽象性のある、原石のままのように硬く簡潔な絵になっている。
日常的なエピソードを巧みに活かした話も非常に説得力がある。ストーリーそのものは正統派少女マンガで、とても的確な展開。最近はスポーツもので、青春を正面から描く作品が多い。
代表作
97「クローバーミラクル」
四つ葉のクローバーにあおいくんと仲良くなりたい、と祈った翌日彼は転校した。落ち込んで早退した椿にその転校したはずのあおいくんがいきなり金貸して、と。そして一緒に弁当を食べ、にわか雨を避けて橋の下に行き、口笛を習って、と夢のような一日を過ごした。切なく、そして不思議な暖かさのある描写が心に残る。
98「ミルクティーの魔法」
家庭教師の中津先生に恋をした五十鈴。でも彼には恋人がいる。だからできるのは、想いを込めて紅茶をいれる事だけ。でも、なんとなく不安定な、思わせぶりな態度をする。想いの切なさが胸に染み入ってくる作品。
98「チョコレート日和」
大貫くんはいつもチョコレートを食べている。彼と素直に笑いあうことができなくて、でも想いがふくらんで誕生日にチョコレートケーキを焼き、告白しようとするが、彼はその日予定がある、と。チョコレートで爽やかに想いを綴った作品。
99「スパンコール☆ラバーズ」
優しくさわやかな好青年、仲君に憧れる小雪の目には、女ったらしの小泉は見えない。でも、本当は・・・外見や印象と現実のギャップ、そして怖さを簡潔なムードで語っている。
2000「恋のイ・タ・ミ」
歯医者で出会った超男前の彼、が目の前で待合室から逃げ出した。診察カードを拾った林さんが翌日それを渡そうとすると、その安西はじめは「クールでかっこいいベーシスト」のイメージがあるから黙っていてくれ、と。そして歯医者で再会した時、その手を握ってやって不安を和らげてあげる。
安西先輩は彼女にだけは本当の自分を見せられる、と・・・とても柔らかな恋の展開で、互いに自分をさらけ出すカッコよさを描いている。
2002「無敵にチア アップ!」
同タイトルでチアリーディング部を舞台にした努力と恋を巧みに描く読み切りを本誌、増刊などで連続発表している。連載ではなく、互いに関連はない。
今までの実績、現在の地位
出る時には連続して出てくる作家。本誌にも登場している。
実力はあるが、不思議と連載にはならないようだ。
個人的な感じ、思い出
絵に抵抗感があったが、最近その良さが分かってきた。本来の読者にとってはどうなのだろう。
これほど増刊では必要な存在なのに、なぜ本誌連載には至らないのか…中途半端な気がする。