兎乃心 (とのこころ)
作風概説
べっこう飴、という第一印象。それも時々液化する。なぜか非常にアルコール分が高い。
少しだけブリリアントカットのような平面の輝きもある、硬くてとても甘いタッチ。角度やゆがみなどがかなり大胆と言っていい。
男の体も大切に描く。男の顔の、一つ一つのパーツがとても大きいため印象や伝わる感情が強烈。
マフラーの描きこみも細やかで丁寧。
気恥ずかしさや緊張感が画面から強くにじみ出る。非常に細かい心の動きや人の成長をしっかり見て、的確に強調する。話がとても深さがあって豊か。
本来なら悪役の言葉もそれなりに考えさせられる、心や立場の複雑さがある。
ミスリードをちりばめるなど、軽い仕掛けもある。とんでもないことをやらかしたりする。
代表作
2017「キミはおひさま」
結構もてる張田太陽くん。ハードルで頑張っているのを、描くのが美術部の花織ちゃんの楽しみ。
ある日、描いているところを彼に見つかってしまって…彼も二軍だけれど、次には試合に出られると聞く。
友だちに背中を押してもらい、応援の横断幕を作ることになるけど、彼は怪我をして…
2018「くちどけビターチョコレート」
幼なじみの美空ちゃんの、本命チョコ作りを毎年手伝わされている春輝くん。
…本当にそれしかあらすじはないが、男の子の立場から描かれるたわいのない場面の数々がとんでもなく面白い傑作。
今までの実績、現在の地位
シルバー賞デビュー。
個人的な感じ、思い出
印象の強さは頭一つ抜けている。これからどれだけ化けるか楽しみ。
なんとなくだが、もしホラーオムニバスがあればすごいのを描いたかもしれないとも思える。ただし読みたいのは、しっかりと一人一人の心と成長を描いた青春ストーリーだが。
デビュー後第一作は期待を圧倒的に超えるクオリティの高さ。この逸材を活かせる場があればいいのだが…