たておか夏希(たておか なつき)
作風概説
幼児の描写が上手い。暖かく、リアリティーのある童話風のファンタジーに仕上がっている。
比較的短いページ数、幼児向けにほっこりさせるような、一種の童話を描いてきている。
心の救済を得意とし、そのためにはやや危険な表現さえ辞さない。恋愛に限らず、友達や親との関係など、子供にとって大切なものを上手く描き出すことができる。
絵そのものは楷書体だが、とても柔らかなものを感じる。
シフォンケーキのように甘く軽く、どこかしっとりした、優しい神秘性と純粋さがはまると中毒になるらしい。
代表作
95「ふたりの絹ちゃん」
葛西くんはいつも絹ちゃんにちょっかいを出す。それをからかわれた時、照れ隠しに絹と言う名前をおばんくさいとけなした。ショックを受けた絹ちゃんは自分の名前をいらないと叫ぶ。
そしたら、見知らぬ小さい女の子が家にいる。両親はなぜかその子を絹と呼び、絹ちゃんの妹としている。そして代わり好きな名前を選んで、と・・・絹は違和感を持ちながら大喜びでありさを選び、葛西くんは名前がありさだったら好きになってくれる?と期待するが。でも、ある時彼は絹と呼んだ。
とても深いテーマで子供の心、そして名前の意味を語っている。
95〜97「あゆとブン」るんるん連載、単行本あり。
おしおきのため、物置に閉じ込められた双子、気の強い女の子のあゆと気弱な男の子のぶん。物置の時計が10時を指した時、そこでは魔女のパーティ!あゆは強引についていき、魔法を学び始めて・・・幼児の純粋な強さを上手く描き出した、とてもわくわくする童話。
97〜98「水色のたまご」単行本あり。
ただ一人の親友が転校して、絶望しているなつちゃんが見つけた、小さな二つの空色の卵。それからかえったのは小人だった。チルチル、ミチルと名を付けて一緒に暮らす事にする。暖かく、完全な純粋さが孤独を癒していく姿を描く。
98「月はなんでも知っている」
身長が好きな男子より高く、互いに気にするあまり暴言を吐いてしまった逸子ちゃん。
次の朝、見知らぬ男の子がベッドの上に座って声をかけてきた。学校もサボってさまようと、そのままその子はついてくる。どんなにどなっても、無視してもまったく怒らずに色々話しかけてくるその子は?ここまで全てを受け入れる存在、夢想以上の何か、痛みさえ感じたほどの純粋な救済を描いた傑作。
今までの実績、現在の地位
かなりのベテランで、昔レギュラーだった(筆者が「なかよし」を知る以前も多くの作品あり)が、かなり長い事「なかよし」本誌からは離れて「るんるん」連載中心に活躍していた。90年代後半に一度「なかよし」で連載をした。
短編に力があり、中毒状態のファンも多い。
ここの所登場していない。
どうやらこのポジション(アニメ向けでない優しい童話風の幼児向け)自体が今の「なかよし」には必要ないようだ。
個人的な感じ、思い出
その徹底的に、心だけを切り離したような描写は心を洗っていく。幼児の身になって感じると、激しい感情とそれだけ純粋な感動がある。
例えば正式な性教育と同等の内容をマンガで、のように、「なかよし」以上に高度なことでも確実にやれる力はあると思うが…または実力を出せるような本当に幼児向けのコミック誌があればいいのだが。
できれば「なかよし」に復帰して欲しいし、他でも作品が出たら、子供ができたら読ませたいと思っている。