高岡しゆ(姉妹ユニット、高上優里子(たかがみ ゆりこ)+しめ子)

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作風概説(高上優里子)

 深みがある印象的な目で、しっとりと柔らかな肌触りとさわやかなはじける輝きが同居する絵。
 とても可愛らしく、穏やかに包み込む香りのような色香も漂っている。服の質感の柔らかさがほぼコンスタントに出ている。
 背景はかなり緻密で無駄もない。小さい子を描くのもとてもうまい。
 カラーの色使いが独特で、線がややラフデッサンのような荒さがあり、まるでセピア色の写真か白黒映画のような独特の画面感覚がある。
 独特の甘みとタンニンの強さ、隠れたアルコールがとても強い迫力になることも多い。

 最新作では画面の白黒比が大きく白寄りになり、澱が抜けて軽くさわやかな香り、目立たないけれど体にしみこむ甘みになっている。

 少しスローテンポを感じさせ、優しさにあふれた独特の暖かい雰囲気と、やや難解で直接的ではないけれど深い何かを与えるストーリーが特徴。
 感動させる題材を探し、話を組み立てるのがうまい。苦悩とその克服をまっすぐ描くのも得意。
 さまざまなシーンの積み重ねがなんともいえない印象を残す。自分で作詞するのも好きらしく、結構オリジナルの歌詞入り作品がある。
 心理理解が非常に深く大胆で、「真実の鏡」を容赦なく突きつけるような部分もある。 

(高岡しゆ)軽くレースを通すようなぼやけた感じ、甘さはとても軽く、かすかにスパークリング。  顔は省略が強く、幼くざっと草書で流した印象もあるが表情豊か。  動きがとても柔らかいが力強く、スポーツドリンクが体に染みるように何よりもテーマを伝えることに徹している。  背景も非常に簡素だが、入れるところはとても強い質感がある。


代表作(高上優里子)

2001「ずっと続いてゆくのです。」短編集収録。
 G大付属の制服の、電車のあの人とN女の自分は走るレールが違う・・・ある日、電車に間に合わなくて、ホームで彼が教科書を破ろうとするのを止める。同時に猫耳帽子をかぶった小さな男の子が駅員に追われて走ってきた。
 なんとなく彼と自分と男の子の三人で逃げ、海まで続くといわれる廃線になった支線にGo!夏の暑さ、けだるさをうまく出しつつ、色々な青春の悩みをリアルに扱って深い癒しを与えてくれる傑作。
 短編集には小さなエピローグも書き下ろされた。

2001「ふたご天使」
 ふたごの相川陽菜(ヒナ)、瑠奈(ルナ)には秘密が。ヒナちゃんには卓越した運動神経、ルナちゃんは怪我などを癒す力がある。実は小さい頃、迷子になっていたときに天使からもらった二人で一対の天使の翼の力。
 それを知る謎めいたクラスメートの男子、葵田がヒナちゃんに近づいて、ルナちゃんはそれが気にいらない。それがきっかけに二人はすれ違い、ある朝翼を失って・・・姉妹の愛情を温かく見守っている。

2002「新月、満月、ひとつ星。」短編集収録。
 この世のどこかにある、個人的な空想を含め世界中の物語を納め童話の主人公たちが暮らしている世界図書館で、一つの本が管理人によって開かれた。
 その主人公の少女、朔ちゃんは作者の望がその物語を忘れたからもうすぐ消える、と宣告が下る。小さい頃病弱だった望が小さな星と友達になろうとして作り出した朔ちゃんとの約束・・・だが、今青春を満喫している彼には関係ない。
 旧校舎で隠れて童話の絵を描いている望に人間の姿を得た朔ちゃんが話しかけるが、彼は激しく拒絶する。でも元気を取り戻したい、という朔ちゃんの励ましに、彼は少しずつ心を開くが・・・特にラストが非常に難解な作品だが、だれしも持っている思い出や空想をうまく刺激してくれる。

2003「二重奏」急性リンパ性白血病で早世された浦田沙夜子さんが遺された日記をもとにしたフィクション。表題作短編集に収録。
 リコーダーのテストをすっぽかして物陰で練習しているゆっこを、見知らぬ子が応援してくれて…おかげで吹けるようになった。彼女は病気療養中の転校生、浦田沙夜子さんだった。
 とても明るく前向きで、二人でリコーダーの練習をするようになった沙夜ちゃんがしばらく休んで登校したら、副作用で髪も抜けて顔も腫れ上がっていた。負けずに元気に遊ぶ彼女だが、ゆっこは彼女の陰口を聞いて怒り、朝礼で彼女のことを紹介する。
 そうして深まっていく絆だが、今度はゆっこの転校と沙夜ちゃんの入院が…
 実話に基づいて生命の重さと深い友情を丁寧に描いた最高傑作。

2004「スイートリップ」
 おしゃれでモデル並みの美貌、人気の春日井ルリちゃんがある日、たまたま気合の入っていない服で出ようとしたとき、マンション入り口の郵便受けにいた男子は幼馴染で親友の弟、家庭の事情で十年間離れていた恵吾くんだった。
 ずっと待っていた再開、でも彼はあまりにぶっきらぼうな態度で…どうしたんだろう…
 エレベーターの中で閉じ込められたときには昔もそんなことがあったのを思い出すけど、それ以上に子供みたいに彼の前で取り乱してしまったのがみっともないし…
 危険なほどの美しさ、幼さと愚かしさの絶妙なバランス、さまざまなシーンの絡み合いがかもし出す独特の感じ…なぜか忘れられない作品。

2004「ヒカリになりたい」
 北崎美恵子さんとブラームスの実話をもとにしたフィクション。短編集収録。
 昔かまれて以来犬が大嫌いなサキちゃんの家はパン屋さん。ある日、店に犬を連れた女の人がやってきた。
 怖い、でも…盲導犬?
 近所に越してきた北崎さんとブラームス、犬は怖いけれど…でも「ブラがほんとうにわたしに光をくれたんだよ」と言う言葉に打たれ、一度目を閉じて家の中を歩いてみるなど盲導犬について理解していく。
 それはサキちゃんがバスの中で無理解からかばって声をあげるなどの行動に結びついていくが、ある日猛犬に襲われても義務を守り、反撃しなかったブラームスは心身に傷を負って…
 盲導犬について的確に啓蒙しつつ、犬と人のつながりも丁寧に描いた子供に絶対見せたい名作。

2005「大切な約束」(原作/Hikari、同名書スターツ出版刊)
 川嶋あいさんの実話を基にした作品。
 歌が大好きなつばさちゃんは、応援してくれる母親と歌手になる約束を交わした。
 だが、父の死で経済は悪化する。だが二人とも夢をあきらめず、貧困に耐えてあくまで歌のレッスンを続け、無理を重ねてつばさちゃんは上京した。
 母の励ましで困難を乗り越え、ついにデビューが決まったつばさちゃんだが…
 親子の情愛と意志をしっかり描いた傑作。

2006「ラブパズル」
増刊での一話完結シリーズ。
 宮迫高校放送部の琴子ちゃんは、いつも企画を没にされている。
 逆に過激な企画をいつも考える「やらせの常磐津」くんが部長はお気に入り。でもあんなやり方認めない…
 が、「宮高告白伝説」についての企画を組んでやるように部長命令!
「部活動連絡黒板」に、今は廃部になった「映画研究部」のプレートを活動アリにすると、旧クラブハウスの部室の鍵が開き、そこに呼び出して告白すれば必ず成功、二人は永遠に結ばれる…
 ロマンチックな話にドキッとしたけれど、それも自分ででっち上げたやらせなんじゃ?
 ドキドキする伝説が彩る様々な恋に期待大!

2007〜8「まけない。〜教室のあたし〜」単行本全一巻。
 母子家庭のりんちゃんは、母に心配をかけたくないから一生懸命頑張ろうとしているけど学級崩壊に悩まされている。
 元凶は暴力事件で私立小学校を追い出された転校生の森原あげはちゃん。
 彼女とぶつかりそうになったときに、りんちゃんの学校の卒業生だという変なお姉さんが助けてくれた。彼女は担任が長期休暇に追い込まれた、その代理の西園寺先生。
 新しい先生は教師イジメにまけず、強烈なパワーでクラスを引っ張っていく。
 そしてなぜか、りんちゃんはあげはちゃんとフリースローで対決することになり…そこでの事故で、少し心配してくれたあげはちゃんが少し気になるように…
 学校の問題と家庭の問題を見事に組み合わせて鮮やかに逆転を決めた、重いリアリティと強烈なパワーをこめた最高傑作。そのままシリーズ化し、子供たち…人間の醜さをありのまま容赦なく見せつけ、そして多くの人の深い愛を通じて闇の向こうの大きな光を強く強く与えてくれた。

2009「にげない。―あたしたちの格差ライフ―」単行本全一巻。
 小中高一貫の名門校、東上皆川学園に、中東部から外部生で入学した村山奈子ちゃん。
 外部生は背中の襟からスカーフが出てしまっているので、「しっぽちゃん」と初等部から持ち上がりのクラスメートにばかにされ、教室移動を教えてもらえないなど色々嫌がらせがある。息が詰まりそうな空気に屋上で叫んだ奈子ちゃんは、こんなのは間違っていると声を上げて孤立してしまう。
 逆にそれで全教科満点の上野谷くんや、モデルの超美人糸山さんと仲良くなる…
 学校でのさまざまな問題をまっすぐ描いたパワフルな作品。


(高岡しゆ名義、ユニット作品)2013〜14「少女結晶ココロジカル」単行本4巻まで発売中。
 圧倒的に電子技術が発展した近未来。
 人全員に、それぞれの誕生石でもある、鉱石を使った小型のコンピューターが配られあらゆる身分証明・電脳世界への入り口ともなっている。
 さらにロジックステップ、ダンスによってコンピューターに命令できる。
 そんな世界の、一月生まれ=ガーネットの少女、こころちゃんは家庭の方針で中学に入っても宝石を親に取り上げられたまま=電脳世界使用禁止。ちょっと運動が苦手。
 そのせいで、幼なじみのハルトくんともなんだかうまくいってないし…
 それを気にして、父親の書斎で見つけた宝石箱に自分のガーネット画は言っていた。
 その宝石を身につけて二度ノックすると、それで目の前にドアが出現し、それを開くとそこは壮大な電脳空間、BOX!
 そこでは、自由に活動できるかわりに国際政府からのオファーには協力する義務があり、高い実力の持ち主は集団でより複雑なプログラムを組むこともある。
 そこで、二人のアイドルのダンスに巻きこまれたこころちゃんが夢中で踊っていたら、変な光が体からあふれてハルトと共に妙なところに飛ばされて…
 圧倒される解像度が高い未来ビジョン、ダンスの華やかさ…SFとしても十分に質の高い期待作!


今までの実績、現在の地位(高上優里子)

 根強い人気がある。特にデビュー作が衝撃的で、今どう変わったかが語られる。

 増刊の登場も多く2005年秋はセンターカラーで主役を張った。
 外部の実話である原案を活かし、啓蒙の要素を入れた作品を創ることもある。

 2004年には本誌別冊付録「ネクスト☆ジェネレーション特集」で本誌進出、単行本も出たし増刊のリニューアルに伴い、シリーズも始めた。
 シリーズの後もほぼ毎号増刊に掲載され、その後も増刊シリーズの常連となって単行本も連続で出している。

 かなりの期間、いじめ漫画の読者手記・若手作家オムニバス単行本の表紙・表題作など力を発揮し、また他誌でも掲載されていたが、姉妹のしめ子とのユニットで本誌連載。

 しめ子も以前から(なかよし以外の)あちこちで活躍している作家。


個人的な感じ、思い出

 この雰囲気に惚れた。これからがますます楽しみ!

「二重奏」「ヒカリになりたい」「大切な約束」は感動したし、デビュー作の頃の切なく暖かい雰囲気と整った可愛らしさがうまく融合したのも嬉しい。
 それが熟成されて「教室のあたし」にとんでもない形で結晶したのはすばらしかった。

 初単行本に「ずっと続いてゆくのです。」の続編があったのは感動した。

 増刊でのシリーズはすごく嬉しく、「まけない。〜教室のあたし〜」の単行本化はものすごく嬉しかった。
 もっと単行本も出してほしい…「大切な約束」「ラブパズル」の単行本が出ていないことは大きな損失だと思うが。

「真実の鏡」を突きつけるといえば思い出すのが、アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』…かなり年齢層は違うが、あの最も恐ろしい話をコミック化したらどうなるのだろう、となんとなく思ってしまう。

 長い長い期間、めげるということを知らずに熱い作品を描き続け、単行本を出し続け、ついに本誌連載に結実した不撓不屈にはこの上なく感動している。
 姉妹ユニットでの連載は、終盤少し急ぎ足になったが高い迫力とテーマ性、大胆な冒険心で十分楽しませてくれた。
 次作も、またユニットかそれとも単独か、どちらにしても楽しみ。