雨音羽香 (あまね うか)
作風概説
タッチの多様性がとても高い。扉絵ではやや強い線の固め、と思ったら次は柔らかく細い線、さらに次は強めで単純性が高い絵、時には大人向け女性マンガのようなシャープさ、と。どれであっても高い表現力。
ラブシーンでの、身体の重さ感覚は特筆すべき。
背景などは時々ものすごく簡略化する。画面が白い作家なのかと思わせるほど。とにかく無駄がない。
二作目ではその簡略さ、無駄のなさがさらに洗練され、無駄がないという感じすら抱かせないほどに。必要のないところでの簡略化が実際にはものすごい。
髪の繊細さがとてつもない。逆に小物の質感も高い。
柔らかな色気も出すときにはとんでもない、ものすごく深くからたっぷりと出す。
ストーリーの組み立てが恐ろしく緻密。正確に頑丈な基礎を作り、鉄筋を張って固く練ったコンクリートを打ち込み、一段一段しっかり固め踊り場を作って、大きいビルになるような。
女子も男子もしっかり過去の出来事を描き、気持ちの動きを積み重ねていく。
とてつもなく大胆なことを起こすこともある。
時々何かを食べたりするのをかなり大げさに入れるなど、テンポ調整が緻密。
和菓子を話の中心にし、あちこちに単純なちびキャラを入れる、置かれた飲みかけコーヒーのパックにも単純で印象的なロゴが入る、など遊び心もある。流しめの書き文字など極端にさらっとしたセンスも。
代表作
2024「甘いのゆうわく」
購買のみたらしパンを目当てに近道していたら、告白シーンにぶつかった。きつめに断っているのを聞いてしまう。
無視して通ろうとしたら物音を立ててしまい、男のほうに咎められるが、逆に批判した…ら、女嫌いを克服したいので友達になって、と言われてしまう。
断ったが、みたらしパンを餌に…
2024「キミにかわいいをあげる。」
存在感が薄い茜ちゃんを助けてくれた采和(とわ)くん。優しいだけでなく、女子よりかわいいと言われる。
きらきらに憧れる茜ちゃんは、買ってしまったリップを、皆の前ではつける勇気がなかったので隠れてつけようとしたら、采和くんがやさぐれているのを見てしまった。で、素は相当きつい人間。
口止め料として茜ちゃんは、「わたしに可愛いを教えてください」と。…そうしたら彼はいきなりキスを…
今までの実績、現在の地位
デビューしたばかり。登場が多め。
個人的な感じ、思い出
超絶技巧の数々、強烈な満腹感に呆然としたほど。
この実力に合う作品は何か…一度すごいホラーをやって表現を広げてほしい。また、文学の古典的な短編に挑戦してもいい。
綺麗な側の絵をとことん極めてもいい。育てようによってはものすごい主力になれるはず。
とにかく実力が高すぎる。もうすぐにでも大きい原作で本誌連載にしていいと思える。